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第4話 調子に乗った事を後悔しています

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 私は転生者だ。前世は日本に住むただの一般人だった。それをある時に思い出した。なんのきっかけかは忘れてしまったが、幼少の時期だったと思う。ただの夢かもしれないがなんとも現実的だった。今の世界と違ってたくさんの便利なものがあふれていた。それを魔法で再現しているのだ。

 私は幼い頃、王子たちに好かれようと魔力自慢をしていたように思う。王子たちに喜んで貰えるように要望を聞いて叶えていた。嬉しそうな王子たちの笑顔に私は調子に乗った。母が教育係りを引退してしばらくは会う事はなかった。しかし学院を卒業した王子たちは私を思い出したのか母を自分の子供の教育係りに戻し、私を第五王子の婚約者にさせた。大人になった王子たちの要望はエスカレートしていった。子供の頃の可愛い魔法ではなくなっていた。次々に願いを叶えていたら逃げられなくなった。
 自分たちはキレイな隣国のお姫様たちと恋を楽しんで結婚したくせに、私には第五王子をあてがい、逃がさないようにした。
 しかも第五王子からは煙たがられ嫌われていた。それはそうだろう。兄たちは美しい妻を貰っているのに自分は地味な容姿の兄のお気に入りだ。私は学院を進学出来ず将来の不安もあり、それでもいいかと思っていたが第五王子は不満だろう。第五王子もまた被害者だ。

 こんなことになってよかったのかもしれない。両親のあの手の平返しの扱いにはショックが大きかったが、自由にはなれた。わずかにお金もある。

 容量大の収納宝石にドレスや靴、鞄、高価なものを次々に収納する。慌てていた為、絨毯の上に高価なものを無造作においていた。慌てていたにも関わらず結構持ち出せた。

 思いのほか収納出来た。絨毯の上にはもうなにもない。これを売ればひと財産築けることが出来るだろう。しかしこれをどこで売るかだ。見つかれば連れ戻される。今度は第四王子と結婚しろとか言われるかもしれない。
 もういい。両親の行動にも呆れてしまった。ここまで育ててくれたのだそれは感謝している。でもこれからは自由に生きよう。楽しく生きよう。







「どういう事だ!なぜ勝手に婚約を破棄などと!」
 第一王子が第五王子に詰め寄っている。
「私にも好きな人はいる!なんで僕だけ兄上が婚約を勝手に決めるんだ!父上も母上も学院での恋愛結婚だ。相談したら婚約破棄を認めてくれた。兄上たちに文句を言われる筋合いはないだろう!」

 時は婚約破棄から三日後、第五王子は両親に婚約の報告として彼女を紹介するために城に訪れていた。その時に初めて第一、第二王子たちは事の次第を知ったのだ。

「…父上と母上が納得しているのであれば確かに私の出る幕ではないな」
「元々ないんですよ。兄上」

「…では、彼女に謝りに行かないと…可愛さ余って王族に入れたかったのだが…」
「ご自分の第三夫人でもすればよかったでしょう!」
 第一王子はすでに第二夫人がいる。

「とりあえず、彼女の邸に向かう」
 第一王子はまるでダンスをするかのような華麗なステップでくるりと身体を回転させて扉に向かう。
「もうあの邸には彼女は住んでいませんよ。一時金が返せないからと両親は邸を売ってしまったようです」
 第五王子はニヤリとしながら答える。
「では彼女はどうしているのだ?」
「知りませんよ。あなたの息子の教育係をしている彼女の母親に聞けばいいでしょう。金に換えられているかもしれませんねぇ」
「…」

 第一王子は第二王子と目を合わせ、二人は慌てて第一王子の住んでいる屋敷に向かう。第一王子はきちんと整備された城の敷地内に屋敷を構え住んでいた。

「娘はどうした?」
 母親は泣きながら言い訳をする。夫がすべて悪いのだと説明した。そして、娘はなにもかも持ち出して逃げた、どうやって持ち出して逃げたのかは分からない、今はどこにいるのかも分からない、と泣きながら訴えた。

 第一王子と第二王子はどうやって逃げ出せたのか分かっていた。自分たちが注文した品を使って逃げたのだろう。失敗した。第五王子と結婚させれば、自分たちの笑顔でなんでも作れ、それを外貨に換えられていた。大儲けが出来ていたのに…油断した。まさか第五王子が婚約破棄など愚かなことをするなど、第五王子にも甘い汁を飲ませておけばよかった。しかし実の親が娘を娼婦館に売ろうとするとは…色んな物を注文していた、回収していればよかった。

 いい金づるだったのだが…あの娘を外に出したのはまずい。内密に見つけ出し闇に葬るか…

 王子たちは動き出す。
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