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第29話
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「そ、それで結局あれは何だったのですか?」
オリバーはカバンを見ながら言った。
「ネックレスに付いている赤い魔石だが、おそらく…」
皆が息を吞み、ボム士長に注目する。
「注目されると緊張するのぉ」
「ち、っちょっとボム士長…」
「すまん、わしもまだ半信半疑でのぉ、ほっほ」
「ボム士長に鑑定出来ないものがあるなんて…」
ヨルタニアが大げさに驚いて見せる。オリバーとベゴニアはそのやり取りにうんざりしたが、機嫌を損ねる訳にも行かない。
「その半信半疑でもいいので教えてください」
「今はもうカバンに入っているではないか、そう慌てるでない」
「それはそうですが、動いたんですよ!」
「まぁ、あれはわしも驚いたがね…」
そう言うとふざけていた顔から真剣なまなざしになった。この切り替えにいつもオリバーはついていけない。そんな事を思っているとボム士長がとんでもない事を言った。
「あれは、おそらく、200年以上前に滅んだとされる吸血鬼の魔石だ」
息を吞んだ。その場にいた全員が魔法に掛かったかのように固まった。
ボム士長は固まる人たちを無視して説明をした。
あの赤い魔石は200年以上前に滅んだとされる吸血鬼の魔石だという。あの赤はまさに血の色だったのだ。しかも、一人の血ではないようだと言う。複数人の気配が感じとれるのだと言った。
「最近亡くなったミザリー婦人の気配があった。そしてわしの知らない女性だろうと思われる気配が数人感じ取れた。そして最後に一人の若い男性の姿が見えた。その男性は見目麗しい見た目をしていて、見た事があった…」
「ミザリー婦人と複数人の女性の気配?それはどういう…?持ち主だった人の魔力が微かに残っていたのでしょうか?そして男性の姿が見えたっていうのは…?」
ベゴニアがひとつひとつ疑問を口にした。
「魔力が微妙に残っていたとしても感じとれるなんて事はない。大体持ち物に魔力なんぞ残らない。空の魔石に魔力を入れるのとは違うのだ。しかもそんな事をしたって普通はどんな人物の魔力かなんてわかるものでもない」
「モンブラン伯爵の言う通りだ。普通気配なんぞ分からん。分かるとすれば直接本人の魔石に触れれば分かるかもしれん」
「本人の魔石?」
「死ねば人の中にも魔石が残る。魔獣に比べれば小さき物だがそれを形見にする子供もいるであろう。でもほとんどが誰の魔石なのかなんぞは名前が掘っていない限り分からん。それなのに別々の魔力があの魔石の中に残っていると分かったのだ。可笑しな事なのだ」
「そ、それはボム士長にも分からないと…?」
「分からん」
「で、では、見た事がある若い男性とは…?」
「あぁこれだこれだ」
ボム士長は本棚から分厚い図鑑を机にダサリと置いた。
「さっきから何かを探されていましたが、この図鑑を探されていたのですか?」
ボム士長は魔石の話をしながらずっと何かの図鑑を探していた。パラパラと図鑑をめくり、あったあったとページを広げた。
図鑑に覗き込む3人は、金髪碧眼の見目麗しい若い男性の肖像画を見た。
「こ、これは…」
「わしが見た男の顔だ」
「まさか…」
「確かにこの顔だった…」
その図鑑は「滅んだ凶悪魔界生物図鑑」とされる本だった。
「最後の吸血鬼とされるアンドレ・ホルスター、確かにこの顔だった。そしてわしを睨んでこう言った」
え?っと、3人は顔をボム士長に向けた。
「復活のジャマをするな」
オリバーはカバンを見ながら言った。
「ネックレスに付いている赤い魔石だが、おそらく…」
皆が息を吞み、ボム士長に注目する。
「注目されると緊張するのぉ」
「ち、っちょっとボム士長…」
「すまん、わしもまだ半信半疑でのぉ、ほっほ」
「ボム士長に鑑定出来ないものがあるなんて…」
ヨルタニアが大げさに驚いて見せる。オリバーとベゴニアはそのやり取りにうんざりしたが、機嫌を損ねる訳にも行かない。
「その半信半疑でもいいので教えてください」
「今はもうカバンに入っているではないか、そう慌てるでない」
「それはそうですが、動いたんですよ!」
「まぁ、あれはわしも驚いたがね…」
そう言うとふざけていた顔から真剣なまなざしになった。この切り替えにいつもオリバーはついていけない。そんな事を思っているとボム士長がとんでもない事を言った。
「あれは、おそらく、200年以上前に滅んだとされる吸血鬼の魔石だ」
息を吞んだ。その場にいた全員が魔法に掛かったかのように固まった。
ボム士長は固まる人たちを無視して説明をした。
あの赤い魔石は200年以上前に滅んだとされる吸血鬼の魔石だという。あの赤はまさに血の色だったのだ。しかも、一人の血ではないようだと言う。複数人の気配が感じとれるのだと言った。
「最近亡くなったミザリー婦人の気配があった。そしてわしの知らない女性だろうと思われる気配が数人感じ取れた。そして最後に一人の若い男性の姿が見えた。その男性は見目麗しい見た目をしていて、見た事があった…」
「ミザリー婦人と複数人の女性の気配?それはどういう…?持ち主だった人の魔力が微かに残っていたのでしょうか?そして男性の姿が見えたっていうのは…?」
ベゴニアがひとつひとつ疑問を口にした。
「魔力が微妙に残っていたとしても感じとれるなんて事はない。大体持ち物に魔力なんぞ残らない。空の魔石に魔力を入れるのとは違うのだ。しかもそんな事をしたって普通はどんな人物の魔力かなんてわかるものでもない」
「モンブラン伯爵の言う通りだ。普通気配なんぞ分からん。分かるとすれば直接本人の魔石に触れれば分かるかもしれん」
「本人の魔石?」
「死ねば人の中にも魔石が残る。魔獣に比べれば小さき物だがそれを形見にする子供もいるであろう。でもほとんどが誰の魔石なのかなんぞは名前が掘っていない限り分からん。それなのに別々の魔力があの魔石の中に残っていると分かったのだ。可笑しな事なのだ」
「そ、それはボム士長にも分からないと…?」
「分からん」
「で、では、見た事がある若い男性とは…?」
「あぁこれだこれだ」
ボム士長は本棚から分厚い図鑑を机にダサリと置いた。
「さっきから何かを探されていましたが、この図鑑を探されていたのですか?」
ボム士長は魔石の話をしながらずっと何かの図鑑を探していた。パラパラと図鑑をめくり、あったあったとページを広げた。
図鑑に覗き込む3人は、金髪碧眼の見目麗しい若い男性の肖像画を見た。
「こ、これは…」
「わしが見た男の顔だ」
「まさか…」
「確かにこの顔だった…」
その図鑑は「滅んだ凶悪魔界生物図鑑」とされる本だった。
「最後の吸血鬼とされるアンドレ・ホルスター、確かにこの顔だった。そしてわしを睨んでこう言った」
え?っと、3人は顔をボム士長に向けた。
「復活のジャマをするな」
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