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第27話
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「ボム士長、また勝手に順番を変えて…困りますわ。今日はギャラハン公爵がダンジョンから発見したとされる品物の鑑定の予定ですのに」
部屋に入って来た女性鑑定士はずかずかと入り込んでシリウス・ボムの前に沢山の書類を乱暴に置いた。
「ギャラハン公爵の暇つぶし趣味のモノだろう?どうせなんの価値もないものばかりだ。いつも鑑定をさせてはインチキだとのたまうではないか。どうせそこら辺の店から買ってきてはダンジョンから発掘したと言っているに過ぎない。ほっとけ、ああ、ヨルタニア、良ければ君が鑑定をしてくれたまえ」
ヨルタニアと呼ばれた女性鑑定士は若く美しい見た目とセクシーな見た目で高圧的にシリウス・ボムに対応していたが、シリウス・ボムは完全な無視をした。
「わたくしもそうしたいのは山々ですが鑑定士長のボム士長でなければ嫌だと申しております。倉庫には品物が大量に運び込まれております」
「…して?君の鑑定結果は?」
「…まだ2・3個ほどしか鑑定しておりませんが…」
「よい」
「二束三文かと…」
「私は忙しい。君が相手をしなさい」
「そう言わずに…相手は公爵ですから」
「忙しいのだ」
「3・4品見て頂けませんか?これはというモノを班長が選出しております」
「…」
「えっと、そちらの、まぁモンブラン伯爵にベコニア様、ご挨拶が遅れまして申し訳ございません」
ヨルタニアはそこで初めて客がいる事に気が付いたというような態度を見せた。
「久しぶりだね。ヨルタニア」
「モンブラン家の案件でしたか。ボム士長が飛び着くはずですわね」
「そんなに噂になっているのかね?」
「まぁもちろんですわ。モンブラン家のあの長女が…」
「ヨルタニア嬢、妹の悪口は許さないよ」
ベゴニアはシリウス・ボムが先ほど言った流れを止めた。
「あ、…いえ、そういう訳では…申し訳ございません。兎に角、ボム士長はギャラハン公爵の鑑定に…私がモンブラン伯爵の鑑定をいたしますわ。ボム士長には私の報告の後に鑑定して頂ければよろしいかと」
「いや、これはボム士長に最初に先入観を持たず鑑定して欲しいのだ」
オリバーは慌てて断った。女性はダメだ。
「まぁ、モンブラン伯爵…新人を育てるにはまず鑑定をこなす事が大事だとおっしゃっていましたのに、ご自分の事になるとボム士長にって…見損ないましたわ」
「いや、そういう訳ではない。しかし、これは私も細かい所が分からないんだ。まずボム士長に鑑定してほしいのだよ」
「たったひとつです。お時間は取らせません。何もなければそれでいいのです。ですのでここはボム士長にお願いしたい」
ベゴニアも女性であるヨルタニアを遠ざけようとした。
「まぁ何もなければって何があると?そんな危険な物でしたらなおさら最初は下っ端である私が鑑定する方がいいと思います。ボム士長はなくてはならない存在ですよ?」
オリバーはそれもそうだと、納得した。ウィスタリアが襲われたのだ。男性だからとシリウス・ボムに何もないとは限らない。
「それなら男性の鑑定士を呼んできてくれたまえ」
「まぁ!モンブラン伯爵とあろうお人が男女差別されるおつもりですか?!」
「え?いや、あ、そういう意味ではないのだよ」
説明が足りていないオリバーの言葉で女性より男性の方が優秀であると言っているかのようにヨルタニアは受け取ってしまった。もちろん、そんな意味ではない。
「ではどういうおつもりですか?!」
「ヨルタニア!君もしつこいぞ。新人がいただろう。あれを呼んで来い!」
ボム士長が叫んだ。
「でも!」
「命令だ」
「はい…」
ヨルタニアはキッと二人を睨んで、渋々新人男性の鑑定士を呼びに退室した。
「あんな言い方をするとはモンブラン伯爵らしくないですな。ヨルタニアは美しい見た目であるから、鑑定部に所属出来たのだと心無い事を言われている。もちろん、そんな事で所属はさせない。若いが優秀で見どころがある。ヨルタニアに鑑定させたくない理由が?」
「鑑定結果のみ報告願いたい」
オリバーが何も言えないでいると、ベゴニアが言った。部屋には長い沈黙が流れた。
部屋に入って来た女性鑑定士はずかずかと入り込んでシリウス・ボムの前に沢山の書類を乱暴に置いた。
「ギャラハン公爵の暇つぶし趣味のモノだろう?どうせなんの価値もないものばかりだ。いつも鑑定をさせてはインチキだとのたまうではないか。どうせそこら辺の店から買ってきてはダンジョンから発掘したと言っているに過ぎない。ほっとけ、ああ、ヨルタニア、良ければ君が鑑定をしてくれたまえ」
ヨルタニアと呼ばれた女性鑑定士は若く美しい見た目とセクシーな見た目で高圧的にシリウス・ボムに対応していたが、シリウス・ボムは完全な無視をした。
「わたくしもそうしたいのは山々ですが鑑定士長のボム士長でなければ嫌だと申しております。倉庫には品物が大量に運び込まれております」
「…して?君の鑑定結果は?」
「…まだ2・3個ほどしか鑑定しておりませんが…」
「よい」
「二束三文かと…」
「私は忙しい。君が相手をしなさい」
「そう言わずに…相手は公爵ですから」
「忙しいのだ」
「3・4品見て頂けませんか?これはというモノを班長が選出しております」
「…」
「えっと、そちらの、まぁモンブラン伯爵にベコニア様、ご挨拶が遅れまして申し訳ございません」
ヨルタニアはそこで初めて客がいる事に気が付いたというような態度を見せた。
「久しぶりだね。ヨルタニア」
「モンブラン家の案件でしたか。ボム士長が飛び着くはずですわね」
「そんなに噂になっているのかね?」
「まぁもちろんですわ。モンブラン家のあの長女が…」
「ヨルタニア嬢、妹の悪口は許さないよ」
ベゴニアはシリウス・ボムが先ほど言った流れを止めた。
「あ、…いえ、そういう訳では…申し訳ございません。兎に角、ボム士長はギャラハン公爵の鑑定に…私がモンブラン伯爵の鑑定をいたしますわ。ボム士長には私の報告の後に鑑定して頂ければよろしいかと」
「いや、これはボム士長に最初に先入観を持たず鑑定して欲しいのだ」
オリバーは慌てて断った。女性はダメだ。
「まぁ、モンブラン伯爵…新人を育てるにはまず鑑定をこなす事が大事だとおっしゃっていましたのに、ご自分の事になるとボム士長にって…見損ないましたわ」
「いや、そういう訳ではない。しかし、これは私も細かい所が分からないんだ。まずボム士長に鑑定してほしいのだよ」
「たったひとつです。お時間は取らせません。何もなければそれでいいのです。ですのでここはボム士長にお願いしたい」
ベゴニアも女性であるヨルタニアを遠ざけようとした。
「まぁ何もなければって何があると?そんな危険な物でしたらなおさら最初は下っ端である私が鑑定する方がいいと思います。ボム士長はなくてはならない存在ですよ?」
オリバーはそれもそうだと、納得した。ウィスタリアが襲われたのだ。男性だからとシリウス・ボムに何もないとは限らない。
「それなら男性の鑑定士を呼んできてくれたまえ」
「まぁ!モンブラン伯爵とあろうお人が男女差別されるおつもりですか?!」
「え?いや、あ、そういう意味ではないのだよ」
説明が足りていないオリバーの言葉で女性より男性の方が優秀であると言っているかのようにヨルタニアは受け取ってしまった。もちろん、そんな意味ではない。
「ではどういうおつもりですか?!」
「ヨルタニア!君もしつこいぞ。新人がいただろう。あれを呼んで来い!」
ボム士長が叫んだ。
「でも!」
「命令だ」
「はい…」
ヨルタニアはキッと二人を睨んで、渋々新人男性の鑑定士を呼びに退室した。
「あんな言い方をするとはモンブラン伯爵らしくないですな。ヨルタニアは美しい見た目であるから、鑑定部に所属出来たのだと心無い事を言われている。もちろん、そんな事で所属はさせない。若いが優秀で見どころがある。ヨルタニアに鑑定させたくない理由が?」
「鑑定結果のみ報告願いたい」
オリバーが何も言えないでいると、ベゴニアが言った。部屋には長い沈黙が流れた。
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