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第24話
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ウィスタリアはフルーツ園や栄養剤の管理を監修に来ていた農夫に任せた。持ち出しや使い込みはあの件以来厳しくなっているので問題ないだろうとマリアも許可した。
そして、ウィスタリアは長年生活拠点にしていた城の共同部屋を後にする。キレイな侍女部屋からネズミがたまに顔を出す汚れた女中部屋に移動になった時はこのまま死んでしまおうかとさえ思っていたが、住めば都とよく言ったもので今ではネズミさえ可愛く感じられた。最後にネズミの家族にお別れの挨拶をしてウィスタリアは実家に戻った。
「侍女の仕事、お疲れ様でした。最後までよく頑張ったわね」
母ビヨンセから労いの言葉を貰った。女中まで落ちた事は最後まで内緒に出来たようだ。
「本当は嫁ぐ娘を送り出したかったけど仕方ないわね」
数日後には陛下から送られた屋敷へと移り住む事になっている。しばらくは両親と実家でゆっくりと団らんを過ごす事が出来た。しかし、陛下の前で爵位を受け取る授与式が半年後に行われる為、マナー講習やドレスの発注などを急いで行う必要もある。屋敷の主人になるウィスタリアには未知との遭遇で分からない事が盛りだくさんだが、優しい父から助言を聞きつつ実家生活を謳歌していた。
そんな日々を過ごしていたウィスタリアだったがずっと気になっていた事があった。それはあの赤いネックレスだ。
「母様、ヴィヴィアンヌおば様は本当にあのネックレスを売ってしまうの?」
ずっと気になっていた事を母に聞いた。何が気になるのかもウィスタリアには分からない。
「え?まだ気になっていたの?すぐに売るわけではないわよ。ご主人が亡くなったら売りに出すと言っているからまだまだ先の話よ」
「あ、そうなのね」
「あのネックレスが気に入ったの?」
「気に入ったというか、気になるというか…なにか上手く言えないけどすごく重いモヤモヤだったのよね、母様の宝石なんかはキラキラしていて軽いモヤモヤなんだけど…でも価値が高いから重いモヤモヤなのかって…」
「そのモヤモヤにも重いとか軽いとかあるのねぇ、私の宝石は価値がないみたいで嫌ね」
「そうじゃないわ、ごめんなさい。でも…」
上手く言えない事に困った。母の宝石に価値がない訳ではないのだ。ただ何かが違う。どう言っていいのか分からない。
「明日またヴィヴィアンヌの所に行くつもりなの。あなたは授与式の準備や色々と忙しいでしょうからヴィヴィアンヌに頼んでネックレスを借りて来るわ。そしてじっくりと見極めたらいいわ」
「見極める?」
「オリバーが言っていたけど、ギフトもただ持っているだけではなにも成長もしないらしいの。何度も鑑定を繰り返して行くうちにレベルアップしている事に気が付いたって。最初は見えてこなかった価値や年代や数字が目の前に見えるようになったというのよ。不思議よね。だからあなたもレベルアップすればどんなモヤモヤか分かるかもしれないわ」
「…レベルアップ、そんな事が出来るなんて思わなかった。母様、私頑張るわ」
ビヨンセはヴィヴィアンヌからネックレスを借りて来た。やはり重いモヤモヤがする。父の鑑定結果だと、200年以上前の石でなにかの魔石らしいかった。どんな魔獣の魔石などは父でも分からないとの事だった。
そして、ウィスタリアは長年生活拠点にしていた城の共同部屋を後にする。キレイな侍女部屋からネズミがたまに顔を出す汚れた女中部屋に移動になった時はこのまま死んでしまおうかとさえ思っていたが、住めば都とよく言ったもので今ではネズミさえ可愛く感じられた。最後にネズミの家族にお別れの挨拶をしてウィスタリアは実家に戻った。
「侍女の仕事、お疲れ様でした。最後までよく頑張ったわね」
母ビヨンセから労いの言葉を貰った。女中まで落ちた事は最後まで内緒に出来たようだ。
「本当は嫁ぐ娘を送り出したかったけど仕方ないわね」
数日後には陛下から送られた屋敷へと移り住む事になっている。しばらくは両親と実家でゆっくりと団らんを過ごす事が出来た。しかし、陛下の前で爵位を受け取る授与式が半年後に行われる為、マナー講習やドレスの発注などを急いで行う必要もある。屋敷の主人になるウィスタリアには未知との遭遇で分からない事が盛りだくさんだが、優しい父から助言を聞きつつ実家生活を謳歌していた。
そんな日々を過ごしていたウィスタリアだったがずっと気になっていた事があった。それはあの赤いネックレスだ。
「母様、ヴィヴィアンヌおば様は本当にあのネックレスを売ってしまうの?」
ずっと気になっていた事を母に聞いた。何が気になるのかもウィスタリアには分からない。
「え?まだ気になっていたの?すぐに売るわけではないわよ。ご主人が亡くなったら売りに出すと言っているからまだまだ先の話よ」
「あ、そうなのね」
「あのネックレスが気に入ったの?」
「気に入ったというか、気になるというか…なにか上手く言えないけどすごく重いモヤモヤだったのよね、母様の宝石なんかはキラキラしていて軽いモヤモヤなんだけど…でも価値が高いから重いモヤモヤなのかって…」
「そのモヤモヤにも重いとか軽いとかあるのねぇ、私の宝石は価値がないみたいで嫌ね」
「そうじゃないわ、ごめんなさい。でも…」
上手く言えない事に困った。母の宝石に価値がない訳ではないのだ。ただ何かが違う。どう言っていいのか分からない。
「明日またヴィヴィアンヌの所に行くつもりなの。あなたは授与式の準備や色々と忙しいでしょうからヴィヴィアンヌに頼んでネックレスを借りて来るわ。そしてじっくりと見極めたらいいわ」
「見極める?」
「オリバーが言っていたけど、ギフトもただ持っているだけではなにも成長もしないらしいの。何度も鑑定を繰り返して行くうちにレベルアップしている事に気が付いたって。最初は見えてこなかった価値や年代や数字が目の前に見えるようになったというのよ。不思議よね。だからあなたもレベルアップすればどんなモヤモヤか分かるかもしれないわ」
「…レベルアップ、そんな事が出来るなんて思わなかった。母様、私頑張るわ」
ビヨンセはヴィヴィアンヌからネックレスを借りて来た。やはり重いモヤモヤがする。父の鑑定結果だと、200年以上前の石でなにかの魔石らしいかった。どんな魔獣の魔石などは父でも分からないとの事だった。
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