23 / 33
第23話
しおりを挟む
世間ではベゴニアが泉の発見者だと思っているが、ベゴニアはウィスタリアの事を隠すつもりはなかった。発見したのは紛れもなくウィスタリアなのだ。それで爵位でも貰えればいいし、婿も決まれば言う事はない。
女性の位置はまだまだ低いが活躍した女性には陛下から爵位が授与される。その夫が引き継ぐ事はない。
「分かりました。覚悟を決めます」
後日、兄と共にウィスタリアは登城を求められた。謁見の間に行くと陛下や各貴族の顔があった。そして兄と共に泉の発見時の事情を聞かれた。兄と共にというのが助かった。一人では受け答えすらままならなかっただろう。
発見の報告の仕方も注意はされたがお咎めなしだった。私的に使っていた訳でなかったからだろう。ウィスタリアは心底安堵した。
そしてまた後日には、ウィスタリアが言っているモヤモヤという者が本当に魔素にあたる事なのかという事になり、テストや実験を何度も繰り返した。総合的にモヤモヤと言っているのが魔素であると各貴族からも認められ、正式に国から魔素が見えるギフト持ちだと認定を貰った。
だがそれを貰ったからと言って今までの生活が変わる事は何もない。実は肩書は父の恩恵で侍女のままになっていた。もちろん事実は違うが誰の侍女にもなれない下っ端侍女であるという認識になっている。
泉の件で爵位を授与するかどうかの検討も行われていた。魔力なしの女性である事や侍女にもなれないからと今回はない事になるのかもしれなかった。しかし、兄はそれは不公平だと意義を申し立てたりと父と兄、弟、妹が頑張った。
父は伯爵であり、その兄は栄養剤の発明者で、弟は神獣の世話役で、妹は王女の侍女で頭補佐だ。母はその昔社交界の花であったりした事が追い風になり、一代限りのナイトの称号をもぎ取ったのだ。両親は喜んだ。
これで婿も決まるだろうし、妹の結婚も進みそうだとした。妹には昔から婚約者がいたのだが姉の結婚が決まるまで出来ないとしていたのだ。
4人も子供がいるのに誰も結婚をしていない事は両親に取って最大の心配事だったのかもしれない。
ウィスタリアは正式にギフト持ちが認定され、その力で魔法水を発見した事が知れ渡った。魔素が見えるギフトからスキュラーと呼ばれた。昔からある物語で人間の魔力が見えるという設定の主人公の名だ。
そして、ウィスタリアは陛下から爵位を授与され王都の端に小さな邸を貰った。
ウィスタリアはこれから正式な貴族として名を残す事になる。城の女中で働いていたという事はなかった事になった。あくまでも城の侍女だったという事だ。両親に知られると哀しませてしまうのでそれはそれでよかった。なにより貴族の娘を女中にしてしまった事に他の者が罰せられるかもしれない。黙認するのが吉だろう。
「ギフト持ちで泉を発見したなんて、あんたは本当にラッキーだったね。なんのとりえもないかと思っていたけど…まぁよかったじゃないか、これで結婚も決まるだろう」
マリアは女中を卒業してしまうウィスタリアに言った。ちょっと寂しそうでもあった。
「私は女中を続けてもよかったんだけど…」
「何を言っているのさ、ギフトは神様から与えられた使命だよ?ちゃんと国のために働きな!女中なんていてもいなくてもいいような仕事に使わなくていいんだよ」
「でも女中をやっていたから魔法水の泉を発見出来たのよ?出来もしない侍女をしていたら発見は出来なかったわ」
「…仕事が出来なかったのは魔力が極端に少ないためだったんだね。ずいぶん辛く当たって申し訳なかったよ」
それは同情した言葉であった事からウィスタリアはちょっと傷ついた。自分ではそんなに不自由だとも同情される事もないと思っていたからだ。仕事が出来ないのはそんか理由とかでもないと思ってもいた。
「マリアはちゃんと叱ってくれたし、私が出来ない事は無理やりさせなかったわ。それに私は救われたのよ。悪かったなんて思わないで…それにミスが多かったのは魔力とは関係ないし…」
一瞬の間があり、マリアは豪快に笑った。
「ハッハッハ、そりゃそうだわな…あんたはこれからもっと活躍するよ。気に入った男とも結婚できるだろう。立派な屋敷持ちになったんだからもう叱れないね…」
「ありがとう、マリア。ギフト持ちとして頑張る」
涙の別れとなった。
女性の位置はまだまだ低いが活躍した女性には陛下から爵位が授与される。その夫が引き継ぐ事はない。
「分かりました。覚悟を決めます」
後日、兄と共にウィスタリアは登城を求められた。謁見の間に行くと陛下や各貴族の顔があった。そして兄と共に泉の発見時の事情を聞かれた。兄と共にというのが助かった。一人では受け答えすらままならなかっただろう。
発見の報告の仕方も注意はされたがお咎めなしだった。私的に使っていた訳でなかったからだろう。ウィスタリアは心底安堵した。
そしてまた後日には、ウィスタリアが言っているモヤモヤという者が本当に魔素にあたる事なのかという事になり、テストや実験を何度も繰り返した。総合的にモヤモヤと言っているのが魔素であると各貴族からも認められ、正式に国から魔素が見えるギフト持ちだと認定を貰った。
だがそれを貰ったからと言って今までの生活が変わる事は何もない。実は肩書は父の恩恵で侍女のままになっていた。もちろん事実は違うが誰の侍女にもなれない下っ端侍女であるという認識になっている。
泉の件で爵位を授与するかどうかの検討も行われていた。魔力なしの女性である事や侍女にもなれないからと今回はない事になるのかもしれなかった。しかし、兄はそれは不公平だと意義を申し立てたりと父と兄、弟、妹が頑張った。
父は伯爵であり、その兄は栄養剤の発明者で、弟は神獣の世話役で、妹は王女の侍女で頭補佐だ。母はその昔社交界の花であったりした事が追い風になり、一代限りのナイトの称号をもぎ取ったのだ。両親は喜んだ。
これで婿も決まるだろうし、妹の結婚も進みそうだとした。妹には昔から婚約者がいたのだが姉の結婚が決まるまで出来ないとしていたのだ。
4人も子供がいるのに誰も結婚をしていない事は両親に取って最大の心配事だったのかもしれない。
ウィスタリアは正式にギフト持ちが認定され、その力で魔法水を発見した事が知れ渡った。魔素が見えるギフトからスキュラーと呼ばれた。昔からある物語で人間の魔力が見えるという設定の主人公の名だ。
そして、ウィスタリアは陛下から爵位を授与され王都の端に小さな邸を貰った。
ウィスタリアはこれから正式な貴族として名を残す事になる。城の女中で働いていたという事はなかった事になった。あくまでも城の侍女だったという事だ。両親に知られると哀しませてしまうのでそれはそれでよかった。なにより貴族の娘を女中にしてしまった事に他の者が罰せられるかもしれない。黙認するのが吉だろう。
「ギフト持ちで泉を発見したなんて、あんたは本当にラッキーだったね。なんのとりえもないかと思っていたけど…まぁよかったじゃないか、これで結婚も決まるだろう」
マリアは女中を卒業してしまうウィスタリアに言った。ちょっと寂しそうでもあった。
「私は女中を続けてもよかったんだけど…」
「何を言っているのさ、ギフトは神様から与えられた使命だよ?ちゃんと国のために働きな!女中なんていてもいなくてもいいような仕事に使わなくていいんだよ」
「でも女中をやっていたから魔法水の泉を発見出来たのよ?出来もしない侍女をしていたら発見は出来なかったわ」
「…仕事が出来なかったのは魔力が極端に少ないためだったんだね。ずいぶん辛く当たって申し訳なかったよ」
それは同情した言葉であった事からウィスタリアはちょっと傷ついた。自分ではそんなに不自由だとも同情される事もないと思っていたからだ。仕事が出来ないのはそんか理由とかでもないと思ってもいた。
「マリアはちゃんと叱ってくれたし、私が出来ない事は無理やりさせなかったわ。それに私は救われたのよ。悪かったなんて思わないで…それにミスが多かったのは魔力とは関係ないし…」
一瞬の間があり、マリアは豪快に笑った。
「ハッハッハ、そりゃそうだわな…あんたはこれからもっと活躍するよ。気に入った男とも結婚できるだろう。立派な屋敷持ちになったんだからもう叱れないね…」
「ありがとう、マリア。ギフト持ちとして頑張る」
涙の別れとなった。
3
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。


もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる