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第22話
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「ウィスタリア、あの時は気転が効いていたわ、ありがとうね。あれから何度か様子を見に行っているけどずいぶん落ち着いて来て以前の明るいヴィヴィアンヌに戻っているわ、本当によかった」
母が家族茶会で報告してくれた。
「よかったわ、私だってあんな嫌味を言っていた人のネックレスなんてしたくないもの」
「本当よね、でも…いったいどうしてしまったのかしら、本当に昔は素敵なご婦人だったのよ」
「年を取ってしまうのはそういうものなのかな?それより、ウィスタリアはよくそのネックレスが高価なものだと気が付いたね。装飾品マニアの母様だって分からなかったものだろう?」
「まぁベゴニアたら、マニアではないわよ。ちょっと好きなだけよぉ。それにお父様が鑑定してくださいますから価値がわかったフリをしているだけなのです。貴族のたしなみですのよ」
「おや、そうでしたか」
「私も価値なんて分からないわ、モヤモヤ度で計っているだけですもの」
「モヤモヤ度って何だい?当たり前みたく言わないでくれ…」
ベゴニアが呆れる。
「だから前にも言ったじゃないモヤモヤする所に価値があるものがあるって。兄さまは魔素がわかるギフトだと言っていたわよね?」
「装飾品にまで分かるのか…」
「宝石には古いものになればなるほど沢山の魔力が籠ると言われているからな。鑑定でも魔力が濃いほど価値が上がる。ウィスタリアは鑑定にも近いものなのかな?」
と、父オリバーが言う。
すっかりギフトだという事になっているが本当にギフトなのかは分からない。
「そうだ、ウィスタリアに報告があるんだ。泉の事なのだが検査結果が出たよ。今度正式に魔法水の泉だと発表される。ウィスタリアの事も知られてくる。ウィスタリア、覚悟をしておくのだぞ」
「え?覚悟?」
「そうだよ。モンブラン家の長女がギフトにより魔法水が湧き出る泉を発見したとなればちょっとした騒ぎになるだろうな」
ちょっと、嫌だった。今の女中見習いのままで楽しくしていたかった。
「嫌そうな顔をしているがお前だっていずれ嫁に行かねば平民になる。もちろん私が後継人になるのはやぶさかではないが…ずっとじょ…下っ端侍女のままでいいのか?」
兄は女中を隠して下っ端侍女と言ってくれた。兄としてはギリギリ攻めた言い方だったのだろう。妹のバイオレットが侍女頭補佐をしているのだからウィスタリアもそれなりの侍女の仕事をしていると両親は思っていたので驚いていた。
「下っ端ってどういう事なの?室侍女の一番下の侍女って事?まぁウィスタリア、あなたは要領の悪い子なのは分かっていたけど…もうベテランの域じゃないと困る年齢でしょう?さすがに侍女頭補佐までなってほしいなんて思ってないけど…」
両親は困った顔をしている。その下の下の女中をしているなんて知られたら失神してしまうかもしれない。
「下っ端はまぁ責任がなくて楽かもしれない。でももうそうは言ってはいられないよ。君はギフト持ちなのが分かってしまったからね」
兄から厳しい目を向けられてしまった。呑気に婿を探す事も出来なくなった歳でもあり、今後の行く末を考えなければならなくなってしまったウィスタリアだった。
母が家族茶会で報告してくれた。
「よかったわ、私だってあんな嫌味を言っていた人のネックレスなんてしたくないもの」
「本当よね、でも…いったいどうしてしまったのかしら、本当に昔は素敵なご婦人だったのよ」
「年を取ってしまうのはそういうものなのかな?それより、ウィスタリアはよくそのネックレスが高価なものだと気が付いたね。装飾品マニアの母様だって分からなかったものだろう?」
「まぁベゴニアたら、マニアではないわよ。ちょっと好きなだけよぉ。それにお父様が鑑定してくださいますから価値がわかったフリをしているだけなのです。貴族のたしなみですのよ」
「おや、そうでしたか」
「私も価値なんて分からないわ、モヤモヤ度で計っているだけですもの」
「モヤモヤ度って何だい?当たり前みたく言わないでくれ…」
ベゴニアが呆れる。
「だから前にも言ったじゃないモヤモヤする所に価値があるものがあるって。兄さまは魔素がわかるギフトだと言っていたわよね?」
「装飾品にまで分かるのか…」
「宝石には古いものになればなるほど沢山の魔力が籠ると言われているからな。鑑定でも魔力が濃いほど価値が上がる。ウィスタリアは鑑定にも近いものなのかな?」
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すっかりギフトだという事になっているが本当にギフトなのかは分からない。
「そうだ、ウィスタリアに報告があるんだ。泉の事なのだが検査結果が出たよ。今度正式に魔法水の泉だと発表される。ウィスタリアの事も知られてくる。ウィスタリア、覚悟をしておくのだぞ」
「え?覚悟?」
「そうだよ。モンブラン家の長女がギフトにより魔法水が湧き出る泉を発見したとなればちょっとした騒ぎになるだろうな」
ちょっと、嫌だった。今の女中見習いのままで楽しくしていたかった。
「嫌そうな顔をしているがお前だっていずれ嫁に行かねば平民になる。もちろん私が後継人になるのはやぶさかではないが…ずっとじょ…下っ端侍女のままでいいのか?」
兄は女中を隠して下っ端侍女と言ってくれた。兄としてはギリギリ攻めた言い方だったのだろう。妹のバイオレットが侍女頭補佐をしているのだからウィスタリアもそれなりの侍女の仕事をしていると両親は思っていたので驚いていた。
「下っ端ってどういう事なの?室侍女の一番下の侍女って事?まぁウィスタリア、あなたは要領の悪い子なのは分かっていたけど…もうベテランの域じゃないと困る年齢でしょう?さすがに侍女頭補佐までなってほしいなんて思ってないけど…」
両親は困った顔をしている。その下の下の女中をしているなんて知られたら失神してしまうかもしれない。
「下っ端はまぁ責任がなくて楽かもしれない。でももうそうは言ってはいられないよ。君はギフト持ちなのが分かってしまったからね」
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