22 / 33
第22話
しおりを挟む
「ウィスタリア、あの時は気転が効いていたわ、ありがとうね。あれから何度か様子を見に行っているけどずいぶん落ち着いて来て以前の明るいヴィヴィアンヌに戻っているわ、本当によかった」
母が家族茶会で報告してくれた。
「よかったわ、私だってあんな嫌味を言っていた人のネックレスなんてしたくないもの」
「本当よね、でも…いったいどうしてしまったのかしら、本当に昔は素敵なご婦人だったのよ」
「年を取ってしまうのはそういうものなのかな?それより、ウィスタリアはよくそのネックレスが高価なものだと気が付いたね。装飾品マニアの母様だって分からなかったものだろう?」
「まぁベゴニアたら、マニアではないわよ。ちょっと好きなだけよぉ。それにお父様が鑑定してくださいますから価値がわかったフリをしているだけなのです。貴族のたしなみですのよ」
「おや、そうでしたか」
「私も価値なんて分からないわ、モヤモヤ度で計っているだけですもの」
「モヤモヤ度って何だい?当たり前みたく言わないでくれ…」
ベゴニアが呆れる。
「だから前にも言ったじゃないモヤモヤする所に価値があるものがあるって。兄さまは魔素がわかるギフトだと言っていたわよね?」
「装飾品にまで分かるのか…」
「宝石には古いものになればなるほど沢山の魔力が籠ると言われているからな。鑑定でも魔力が濃いほど価値が上がる。ウィスタリアは鑑定にも近いものなのかな?」
と、父オリバーが言う。
すっかりギフトだという事になっているが本当にギフトなのかは分からない。
「そうだ、ウィスタリアに報告があるんだ。泉の事なのだが検査結果が出たよ。今度正式に魔法水の泉だと発表される。ウィスタリアの事も知られてくる。ウィスタリア、覚悟をしておくのだぞ」
「え?覚悟?」
「そうだよ。モンブラン家の長女がギフトにより魔法水が湧き出る泉を発見したとなればちょっとした騒ぎになるだろうな」
ちょっと、嫌だった。今の女中見習いのままで楽しくしていたかった。
「嫌そうな顔をしているがお前だっていずれ嫁に行かねば平民になる。もちろん私が後継人になるのはやぶさかではないが…ずっとじょ…下っ端侍女のままでいいのか?」
兄は女中を隠して下っ端侍女と言ってくれた。兄としてはギリギリ攻めた言い方だったのだろう。妹のバイオレットが侍女頭補佐をしているのだからウィスタリアもそれなりの侍女の仕事をしていると両親は思っていたので驚いていた。
「下っ端ってどういう事なの?室侍女の一番下の侍女って事?まぁウィスタリア、あなたは要領の悪い子なのは分かっていたけど…もうベテランの域じゃないと困る年齢でしょう?さすがに侍女頭補佐までなってほしいなんて思ってないけど…」
両親は困った顔をしている。その下の下の女中をしているなんて知られたら失神してしまうかもしれない。
「下っ端はまぁ責任がなくて楽かもしれない。でももうそうは言ってはいられないよ。君はギフト持ちなのが分かってしまったからね」
兄から厳しい目を向けられてしまった。呑気に婿を探す事も出来なくなった歳でもあり、今後の行く末を考えなければならなくなってしまったウィスタリアだった。
母が家族茶会で報告してくれた。
「よかったわ、私だってあんな嫌味を言っていた人のネックレスなんてしたくないもの」
「本当よね、でも…いったいどうしてしまったのかしら、本当に昔は素敵なご婦人だったのよ」
「年を取ってしまうのはそういうものなのかな?それより、ウィスタリアはよくそのネックレスが高価なものだと気が付いたね。装飾品マニアの母様だって分からなかったものだろう?」
「まぁベゴニアたら、マニアではないわよ。ちょっと好きなだけよぉ。それにお父様が鑑定してくださいますから価値がわかったフリをしているだけなのです。貴族のたしなみですのよ」
「おや、そうでしたか」
「私も価値なんて分からないわ、モヤモヤ度で計っているだけですもの」
「モヤモヤ度って何だい?当たり前みたく言わないでくれ…」
ベゴニアが呆れる。
「だから前にも言ったじゃないモヤモヤする所に価値があるものがあるって。兄さまは魔素がわかるギフトだと言っていたわよね?」
「装飾品にまで分かるのか…」
「宝石には古いものになればなるほど沢山の魔力が籠ると言われているからな。鑑定でも魔力が濃いほど価値が上がる。ウィスタリアは鑑定にも近いものなのかな?」
と、父オリバーが言う。
すっかりギフトだという事になっているが本当にギフトなのかは分からない。
「そうだ、ウィスタリアに報告があるんだ。泉の事なのだが検査結果が出たよ。今度正式に魔法水の泉だと発表される。ウィスタリアの事も知られてくる。ウィスタリア、覚悟をしておくのだぞ」
「え?覚悟?」
「そうだよ。モンブラン家の長女がギフトにより魔法水が湧き出る泉を発見したとなればちょっとした騒ぎになるだろうな」
ちょっと、嫌だった。今の女中見習いのままで楽しくしていたかった。
「嫌そうな顔をしているがお前だっていずれ嫁に行かねば平民になる。もちろん私が後継人になるのはやぶさかではないが…ずっとじょ…下っ端侍女のままでいいのか?」
兄は女中を隠して下っ端侍女と言ってくれた。兄としてはギリギリ攻めた言い方だったのだろう。妹のバイオレットが侍女頭補佐をしているのだからウィスタリアもそれなりの侍女の仕事をしていると両親は思っていたので驚いていた。
「下っ端ってどういう事なの?室侍女の一番下の侍女って事?まぁウィスタリア、あなたは要領の悪い子なのは分かっていたけど…もうベテランの域じゃないと困る年齢でしょう?さすがに侍女頭補佐までなってほしいなんて思ってないけど…」
両親は困った顔をしている。その下の下の女中をしているなんて知られたら失神してしまうかもしれない。
「下っ端はまぁ責任がなくて楽かもしれない。でももうそうは言ってはいられないよ。君はギフト持ちなのが分かってしまったからね」
兄から厳しい目を向けられてしまった。呑気に婿を探す事も出来なくなった歳でもあり、今後の行く末を考えなければならなくなってしまったウィスタリアだった。
3
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。


もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる