11 / 33
第11話
しおりを挟む
ウィスタリアはマリアに相談をした。
「ああ、トム…面倒な事をしてくれたねぇ」
マリアは大きなため息と眉間に皺を寄せた。
「すまない…」
「栄養剤はベゴニア様が作って置いて行ってくれたモノとはいえ、金貨数百枚はする品物なんだよ。それを簡単に補充してくれなんて…」
「ひゃく…」
トムは今にも倒れそうだ。隠れてウィスタリアも目を見開く。
「ウィスタリアもベゴニア様に任されたとはいえ、トムに預けっぱなしにしたのは問題だったねぇ」
「あっそっか、ごめんなさい」
「まぁ注意しなかった私も悪かった。こういった報告は面倒なんだよ。貴族が起こした事は私らが言っても聞かないからね…魔導士なんて中級貴族くらいが多いかね…困ったねぇ、カネを受け取っているからね…」
「もう栄養剤がないからレモンナスはないというよ」
トムは焦ってマリアに言った。
「春になればまた作ってよこせと言って来るだろうね…」
マリアは腕を組みトムに呆れた。最初から断ってくれればいいものを…と、小さな声が聞こえた。
「どうにか魔導士達にも注意して貰うようにするよ。トムもこれからは城の人間に勝手に渡さないでおくれ。貰った金貨は戻してもらうよ。魔導士達に返すからね。魔導士達にもどうにかレモンナスの代金を払わせるから…いいね、トム」
「…ああ」
もう使ってしまっているのだろうトムの顔はますます青くなった。トムは肩を落とし畑に戻っていった。
「トムには可哀そうだけど、城の畑は王族のモノで中級貴族が荒らしていいモノではないからね。どう説明して代金を支払わせるかだね…まず料理長に相談して、執事かね…はぁ」
城の裏にある畑に植えている野菜や薬草、フルーツなどはすべて王族所有のものだ。平民が作っているからと勝手に持って行ってはいけないのだが、横暴な貴族はフルーツなど勝手に持っていく事もあるようだ。頻繁になってくると報告をして注意をして貰わなくてはならない。そうなると恨まれてしまう事もある。そして、伝わり方が遅い。早くても3週間ほど掛かる。
まず農家や作業者は女中に話を通し、調理場に話が行ってメイド頭に話が行き、その時に書面にして侍女頭に報告をする。事の時にメイド頭が嫌がる。そして執事頭が書面を確認する流れだ。
マリアは執事頭とは直接話が出来るので、もう少し早いかもしれない。
「ん?ウィスタリア、薬草は取って来たのかい?」
「あっすぐに取ってきます!」
ひとつを気にするともうひとつを忘れるのがウィスタリアだ。
▽
▽
「姉さま、レモンナスをありがとうございます。ウィリーも喜んでいましたよ」
「それはよかったわ」
少しずつ気温が下がり始めた頃、相変わらずの茶会が開催されていた。
「レモンナスがどうかしたのかい?」
「ええ、ちょっとね」
「なんだい、秘密かい?」
兄ベゴニアは忙しくともこの茶会だけは来てくれる。城のテラスはなぜか嫌だったようだが…
「フフフ」
ウィスタリアは含み笑いをする。
「レモンナスと言えば、魔導士達が最近いいポーションを作っていてね。原料であるレモンナスの事も話題になっていたなぁ」
「まぁ、どんな?」
母が興味を持った。
「あまりにも質がいいので、どこの農家が出しているレモンナスなのか調べる必要があってね。いつも取引をしている農家にも確認してみたがいつものレモンナスだと言うし、夏のフルーツだから今は作ってないし納品も行ってないって事でね。魔導士達はそのポーションで給金アップもしたし、出世したものもいたから可笑しいって事になったんだよ」
「そういう話題ね…」
「そう。結局出所は城の畑からだった。私が開発した栄養剤でレモンナスを育てたらしい。城の畑からレモンナスを魔導士達に通したと報告がなかったから気が付かなったんだが…ウィスタリアは知っていたのかい?」
兄の目が光る。
「えっと…後から分かった事なの。頼んで来て貰っていた農家の人が魔導士に渡してしまっていたそうなの。で、マリアから執事に報告して貰って…ってそこまでしか知らないわ」
「そうなのかい。とにかく魔導士達は減給で罰金だ。今までのレモンナスは買い取って支払って貰う事になった。もちろん原価の3倍ね」
「農家の人はどうなるの?」
「クビかな」
仕方がない。しかしそのくらいで済んでよかった。
「まぁ農家もお金は受け取ってしまったようだが全額返金しているようだし、貴族に言われれば従うしかないしね」
「で?レモンナスがどうしたって」
追及を緩めいない兄であった。
「ああ、トム…面倒な事をしてくれたねぇ」
マリアは大きなため息と眉間に皺を寄せた。
「すまない…」
「栄養剤はベゴニア様が作って置いて行ってくれたモノとはいえ、金貨数百枚はする品物なんだよ。それを簡単に補充してくれなんて…」
「ひゃく…」
トムは今にも倒れそうだ。隠れてウィスタリアも目を見開く。
「ウィスタリアもベゴニア様に任されたとはいえ、トムに預けっぱなしにしたのは問題だったねぇ」
「あっそっか、ごめんなさい」
「まぁ注意しなかった私も悪かった。こういった報告は面倒なんだよ。貴族が起こした事は私らが言っても聞かないからね…魔導士なんて中級貴族くらいが多いかね…困ったねぇ、カネを受け取っているからね…」
「もう栄養剤がないからレモンナスはないというよ」
トムは焦ってマリアに言った。
「春になればまた作ってよこせと言って来るだろうね…」
マリアは腕を組みトムに呆れた。最初から断ってくれればいいものを…と、小さな声が聞こえた。
「どうにか魔導士達にも注意して貰うようにするよ。トムもこれからは城の人間に勝手に渡さないでおくれ。貰った金貨は戻してもらうよ。魔導士達に返すからね。魔導士達にもどうにかレモンナスの代金を払わせるから…いいね、トム」
「…ああ」
もう使ってしまっているのだろうトムの顔はますます青くなった。トムは肩を落とし畑に戻っていった。
「トムには可哀そうだけど、城の畑は王族のモノで中級貴族が荒らしていいモノではないからね。どう説明して代金を支払わせるかだね…まず料理長に相談して、執事かね…はぁ」
城の裏にある畑に植えている野菜や薬草、フルーツなどはすべて王族所有のものだ。平民が作っているからと勝手に持って行ってはいけないのだが、横暴な貴族はフルーツなど勝手に持っていく事もあるようだ。頻繁になってくると報告をして注意をして貰わなくてはならない。そうなると恨まれてしまう事もある。そして、伝わり方が遅い。早くても3週間ほど掛かる。
まず農家や作業者は女中に話を通し、調理場に話が行ってメイド頭に話が行き、その時に書面にして侍女頭に報告をする。事の時にメイド頭が嫌がる。そして執事頭が書面を確認する流れだ。
マリアは執事頭とは直接話が出来るので、もう少し早いかもしれない。
「ん?ウィスタリア、薬草は取って来たのかい?」
「あっすぐに取ってきます!」
ひとつを気にするともうひとつを忘れるのがウィスタリアだ。
▽
▽
「姉さま、レモンナスをありがとうございます。ウィリーも喜んでいましたよ」
「それはよかったわ」
少しずつ気温が下がり始めた頃、相変わらずの茶会が開催されていた。
「レモンナスがどうかしたのかい?」
「ええ、ちょっとね」
「なんだい、秘密かい?」
兄ベゴニアは忙しくともこの茶会だけは来てくれる。城のテラスはなぜか嫌だったようだが…
「フフフ」
ウィスタリアは含み笑いをする。
「レモンナスと言えば、魔導士達が最近いいポーションを作っていてね。原料であるレモンナスの事も話題になっていたなぁ」
「まぁ、どんな?」
母が興味を持った。
「あまりにも質がいいので、どこの農家が出しているレモンナスなのか調べる必要があってね。いつも取引をしている農家にも確認してみたがいつものレモンナスだと言うし、夏のフルーツだから今は作ってないし納品も行ってないって事でね。魔導士達はそのポーションで給金アップもしたし、出世したものもいたから可笑しいって事になったんだよ」
「そういう話題ね…」
「そう。結局出所は城の畑からだった。私が開発した栄養剤でレモンナスを育てたらしい。城の畑からレモンナスを魔導士達に通したと報告がなかったから気が付かなったんだが…ウィスタリアは知っていたのかい?」
兄の目が光る。
「えっと…後から分かった事なの。頼んで来て貰っていた農家の人が魔導士に渡してしまっていたそうなの。で、マリアから執事に報告して貰って…ってそこまでしか知らないわ」
「そうなのかい。とにかく魔導士達は減給で罰金だ。今までのレモンナスは買い取って支払って貰う事になった。もちろん原価の3倍ね」
「農家の人はどうなるの?」
「クビかな」
仕方がない。しかしそのくらいで済んでよかった。
「まぁ農家もお金は受け取ってしまったようだが全額返金しているようだし、貴族に言われれば従うしかないしね」
「で?レモンナスがどうしたって」
追及を緩めいない兄であった。
3
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。


結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる