ウィスタリア・モンブランが通りますよぉ

もきち

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第11話

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 ウィスタリアはマリアに相談をした。



「ああ、トム…面倒な事をしてくれたねぇ」

 マリアは大きなため息と眉間に皺を寄せた。

「すまない…」

「栄養剤はベゴニア様が作って置いて行ってくれたモノとはいえ、金貨数百枚はする品物なんだよ。それを簡単に補充してくれなんて…」

「ひゃく…」

 トムは今にも倒れそうだ。隠れてウィスタリアも目を見開く。

「ウィスタリアもベゴニア様に任されたとはいえ、トムに預けっぱなしにしたのは問題だったねぇ」

「あっそっか、ごめんなさい」

「まぁ注意しなかった私も悪かった。こういった報告は面倒なんだよ。貴族が起こした事は私らが言っても聞かないからね…魔導士なんて中級貴族くらいが多いかね…困ったねぇ、カネを受け取っているからね…」

「もう栄養剤がないからレモンナスはないというよ」

 トムは焦ってマリアに言った。

「春になればまた作ってよこせと言って来るだろうね…」

 マリアは腕を組みトムに呆れた。最初から断ってくれればいいものを…と、小さな声が聞こえた。



「どうにか魔導士達にも注意して貰うようにするよ。トムもこれからは城の人間に勝手に渡さないでおくれ。貰った金貨は戻してもらうよ。魔導士達に返すからね。魔導士達にもどうにかレモンナスの代金を払わせるから…いいね、トム」

「…ああ」

 もう使ってしまっているのだろうトムの顔はますます青くなった。トムは肩を落とし畑に戻っていった。



「トムには可哀そうだけど、城の畑は王族のモノで中級貴族が荒らしていいモノではないからね。どう説明して代金を支払わせるかだね…まず料理長に相談して、執事かね…はぁ」

 城の裏にある畑に植えている野菜や薬草、フルーツなどはすべて王族所有のものだ。平民が作っているからと勝手に持って行ってはいけないのだが、横暴な貴族はフルーツなど勝手に持っていく事もあるようだ。頻繁になってくると報告をして注意をして貰わなくてはならない。そうなると恨まれてしまう事もある。そして、伝わり方が遅い。早くても3週間ほど掛かる。



 まず農家や作業者は女中に話を通し、調理場に話が行ってメイド頭に話が行き、その時に書面にして侍女頭に報告をする。事の時にメイド頭が嫌がる。そして執事頭が書面を確認する流れだ。

 マリアは執事頭とは直接話が出来るので、もう少し早いかもしれない。



「ん?ウィスタリア、薬草は取って来たのかい?」



「あっすぐに取ってきます!」



 ひとつを気にするともうひとつを忘れるのがウィスタリアだ。




 ▽
 ▽



「姉さま、レモンナスをありがとうございます。ウィリーも喜んでいましたよ」

「それはよかったわ」

 少しずつ気温が下がり始めた頃、相変わらずの茶会が開催されていた。

「レモンナスがどうかしたのかい?」

「ええ、ちょっとね」

「なんだい、秘密かい?」

 兄ベゴニアは忙しくともこの茶会だけは来てくれる。城のテラスはなぜか嫌だったようだが…

「フフフ」

 ウィスタリアは含み笑いをする。



「レモンナスと言えば、魔導士達が最近いいポーションを作っていてね。原料であるレモンナスの事も話題になっていたなぁ」

「まぁ、どんな?」

 母が興味を持った。



「あまりにも質がいいので、どこの農家が出しているレモンナスなのか調べる必要があってね。いつも取引をしている農家にも確認してみたがいつものレモンナスだと言うし、夏のフルーツだから今は作ってないし納品も行ってないって事でね。魔導士達はそのポーションで給金アップもしたし、出世したものもいたから可笑しいって事になったんだよ」

「そういう話題ね…」

「そう。結局出所は城の畑からだった。私が開発した栄養剤でレモンナスを育てたらしい。城の畑からレモンナスを魔導士達に通したと報告がなかったから気が付かなったんだが…ウィスタリアは知っていたのかい?」

 兄の目が光る。

「えっと…後から分かった事なの。頼んで来て貰っていた農家の人が魔導士に渡してしまっていたそうなの。で、マリアから執事に報告して貰って…ってそこまでしか知らないわ」

「そうなのかい。とにかく魔導士達は減給で罰金だ。今までのレモンナスは買い取って支払って貰う事になった。もちろん原価の3倍ね」

「農家の人はどうなるの?」

「クビかな」

 仕方がない。しかしそのくらいで済んでよかった。



「まぁ農家もお金は受け取ってしまったようだが全額返金しているようだし、貴族に言われれば従うしかないしね」



「で?レモンナスがどうしたって」



 追及を緩めいない兄であった。
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