ウィスタリア・モンブランが通りますよぉ

もきち

文字の大きさ
上 下
9 / 33

第9話

しおりを挟む
「ウィスタリア!今日はゴミの回収日だよ!まだ終わってないのかい?しっかりおし!!」



「あ~!すいませ~ん。今からやりま~す」

 メイド達が集めた各部屋のゴミを女中のウィスタリアが回収する。これもすぐ忘れる。回収されたゴミは城の裏の竃の肥料になるかそのまま燃やされる。



 魔力が激小のウィスタリアは燃やすのも一苦労だ。マリアが火炎魔法で一瞬で出来る事をウィスタリアは数分掛かるし魔法を使うとその1日は使い物にならない。なので魔力を使わず普通に火を起こし、燃やしている。変に魔力を使うと疲れてしまうのだ。



 今日も燃やすためだけに午前中を使い切ってしまったウィスタリアはマリアに呆れられてしまうのだが、毎度の事なのでもう慣れっこだ。



 お昼前にやっと終わり、顔を煤だらけにして畑に訪れた。レモンナスの確認をしようと思ったのだ。朝、畑に向かおうとしたらマリアにどやされた訳である。いつも午前中まで掛かるのをマリアは分かっているので発破をかけたのだ。



「あ、トム、畑はどう?」

 畑の管理をしているトムだ。歳は40代くらい。トムはあの件以来裏の畑を管理してくれる事になった近所の農家だ。

「よう。ウィスタリアじゃないか。相変わらずどやされてたな」

「ええ、相変わらずよ」

「こっちも相変わらずいい実りだよ。もうすぐ冬だから閉鎖する事になっているがね。春までさよならだ」

「この中にレモンナスってなかった?」

「ん?あるよ。あれは城の魔導士たちが持ってっちまうがね。レモンナスがどうかしたのか?」

「あ~えっと、城のテイマーからレモンナスがないかと聞かれたのよ。あれば分けてほしいって…」

「テイマーがレモンナスを…?」

「?どうかした?」

「ん、いや…じっさまがな、昔、話をしてくれてな。テイマーがレモンナスをほしいと言われれば優先して差し上げろって言われていたんだよ」

「へぇ…なぜかしら?」



 トムはウィスタリアに近づくと小声で言った。

「神獣様を囲っていらっしゃるってな」

「し、し、神獣様って?」

「だから神獣様だよ。国に繁栄をもたらすと云われている神獣様」

「ええぇ、この国に神獣様なんて聞いた事ないわ。もっと大きな国とかに住み着くものだと思ってたけど…はは」

「大昔にも何かの神獣様がいらっしゃったそうだぞ。じっさまが子供の時の話だけどな」

「そうなの。でも神獣様とレモンナスって関係あるの?」

「ああ、レモンナスは甘くて美味しい。しかも魔素が豊富だろう?神獣が一番好きな食べ物みたいだよ」

「そ、そうなの?」

「ま、じっさまの受け売りだ」



「まぁいい、レモンナスは優先にそのテイマーに送るよ。大丈夫だ。詮索はしないでおくよ。こちとらも命は惜しいんでな」

「はぁ、よろしく…」

 ウィスタリアはピアニーというテイマーに届けるように話をして戻った。



 一瞬バレるのではないかと焦ってしまった。さすがは年の功だ。しつこく詮索してこないし昔聞いた言葉を覚えていて実行する。農家の鏡のような人だ。トムは頼りになる。




 神獣とは幻獣だとも言う。ペガサスの他に、フェンリルやユニコーン、バイコーン、フェニックスなどが存在しているのだとか。まぁ定かではない。どんな神獣がいるのかはその国の世話役のテイマーにしか分からない。テイマー同士の情報交換は神獣のためにしているが他国の事は王族にも秘密である。それは各国の決め事だ。

 そして神獣は国に1体しか住まない。神獣同士の仲が良くないのかなんなのか知らないが1体が訪れると今までいた神獣は違う国に行ってしまう。らしい。



 繁栄をもたらす神獣は歓迎ではあるがグリフォンやバジリスクなどの戦いの特価した神獣もいる。そんな神獣は国を破壊しかねないので扱いに困る事もある。なのでテイマー同士の情報交換は必須になっているのだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。

りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。 やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか 勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。 ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。 蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。 そんな生活もううんざりです 今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。 これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話

束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。 クライヴには想い人がいるという噂があった。 それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。 晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

処理中です...