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第7話
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「マニーはあれから大丈夫だったのかねぇ」
マリアがマニーの心配をしている。辞めたとは聞こえてこないので頑張っているのだと思う。
それから数日後、マリアがにこにことしながら調理室に入って来た。
「マリア、何かいい事でもあったの?」
「ん?まあね、ほら、マニーの件があったでしょ?物がなくなってマニーのせいにされているって」
「ああ、あったわね」
「解決したらしいの、侍女頭から疑って悪かったって謝られたそうなのよ。他のメイド達からも謝って貰えて今では気持ちよく仕事が出来るって言っていたよ。本当によかった」
バイオレットが動いたのかな。
「そしてこれは他の侍女から聞いた話なんだけどね。なんでも無くなったものは王妃様がこっそりと隠していたらしいよ」
なんと犯人は王妃様…!
「え?どうして王妃様が?」
「ここだけの話だよ。馬屋番のバンにくれてやってたってさ」
「えっ?!」
「声が大きいよ。王妃様はひそかにバンと逢瀬を楽しんでいたそうなんだよ。まあいい男だからね」
そうだっけ?
「部屋の中で売れるものと云えば紙かインクだろう?宝石だって王室に管理されているからね。王妃様もたまには野蛮な男と楽しみたかったのかもしれないねぇ」
「バンは私に後妻になれって言ったんだけど…」
「ああ、その話もしていたね…後妻が入れば子供の面倒を見なくて良くなるから頻繁に逢瀬が楽しめると考えていたようだよ。あんた嫁にならなくてよかったよ」
「…バンなんて論外よ。全然いい男じゃない」
「あんたにはね…」
マリアは憐みの目をウィスタリアに向ける。マリアだって夫と子供がいる。しかも恋愛結婚だそうだ。あっそう…バンも王妃様には優しかったのだろうな。
この件は内密に処理された。マニーには王妃様からお詫びにと少しの金貨が渡されたそうである。
▽
▽
「王妃様に直接聞いたの。本当は話なんて出来る身分でもなかったんだけど、王妃様の部屋で起こった事は陛下に伝える義務があるって言ったらしぶしぶ…そしたら王妃様が自分で持ち出したと告白されて…もうびっくり!絶対に秘密よ!」
もうみんな知っている…
「メイドのマニーって子がその事でひどい扱いを受けたって聞いて王妃様もさすがに心が傷んだんでしょうね。もうしないと約束してくださったの。まぁ逢瀬は続くかもしれないけど…」
はた迷惑な王妃だわ…
「見事解決だな!すごいじゃないか、バイオレット」
「さすがはバイオレット姉さま」
「わしの娘は賢い、ウンウン」
「ええ、自慢の娘よ」
今日は月一のお茶会だ。本日の会場は実家の庭である。先月、参加出来なかった両親と兄、弟がバイオレットの機嫌を取っている。
「いやだ、ウィスタリア姉さまのおかげなのよ。まぁ私も頑張ったけど、うふふ。私への評価も爆上がりよ」
「よかったわね」
「うふふ、ありがとう姉さま」
「バイオレットなぜ、ウィスタリアのおかげなんだい?」
と、父が聞く。バイオレットは先月の二人でのお茶会の話を聞かせた。
「ウィスタリアがそういった広い目を持っているのだね。とても素晴らしい事だよ。今は生活に困っている事はないかい?何かドレスや宝石を送ろうか?」
「心遣いありがとう、お父様。でも大丈夫よ」
「困った事があればなんでも言うのよ?」
母のビヨンセだ。二人は未だに城で侍女として仕事をしていると思っている。
こんな出来の悪い子をいつまでも気にかけてくれる優しい両親だ。
マリアがマニーの心配をしている。辞めたとは聞こえてこないので頑張っているのだと思う。
それから数日後、マリアがにこにことしながら調理室に入って来た。
「マリア、何かいい事でもあったの?」
「ん?まあね、ほら、マニーの件があったでしょ?物がなくなってマニーのせいにされているって」
「ああ、あったわね」
「解決したらしいの、侍女頭から疑って悪かったって謝られたそうなのよ。他のメイド達からも謝って貰えて今では気持ちよく仕事が出来るって言っていたよ。本当によかった」
バイオレットが動いたのかな。
「そしてこれは他の侍女から聞いた話なんだけどね。なんでも無くなったものは王妃様がこっそりと隠していたらしいよ」
なんと犯人は王妃様…!
「え?どうして王妃様が?」
「ここだけの話だよ。馬屋番のバンにくれてやってたってさ」
「えっ?!」
「声が大きいよ。王妃様はひそかにバンと逢瀬を楽しんでいたそうなんだよ。まあいい男だからね」
そうだっけ?
「部屋の中で売れるものと云えば紙かインクだろう?宝石だって王室に管理されているからね。王妃様もたまには野蛮な男と楽しみたかったのかもしれないねぇ」
「バンは私に後妻になれって言ったんだけど…」
「ああ、その話もしていたね…後妻が入れば子供の面倒を見なくて良くなるから頻繁に逢瀬が楽しめると考えていたようだよ。あんた嫁にならなくてよかったよ」
「…バンなんて論外よ。全然いい男じゃない」
「あんたにはね…」
マリアは憐みの目をウィスタリアに向ける。マリアだって夫と子供がいる。しかも恋愛結婚だそうだ。あっそう…バンも王妃様には優しかったのだろうな。
この件は内密に処理された。マニーには王妃様からお詫びにと少しの金貨が渡されたそうである。
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「王妃様に直接聞いたの。本当は話なんて出来る身分でもなかったんだけど、王妃様の部屋で起こった事は陛下に伝える義務があるって言ったらしぶしぶ…そしたら王妃様が自分で持ち出したと告白されて…もうびっくり!絶対に秘密よ!」
もうみんな知っている…
「メイドのマニーって子がその事でひどい扱いを受けたって聞いて王妃様もさすがに心が傷んだんでしょうね。もうしないと約束してくださったの。まぁ逢瀬は続くかもしれないけど…」
はた迷惑な王妃だわ…
「見事解決だな!すごいじゃないか、バイオレット」
「さすがはバイオレット姉さま」
「わしの娘は賢い、ウンウン」
「ええ、自慢の娘よ」
今日は月一のお茶会だ。本日の会場は実家の庭である。先月、参加出来なかった両親と兄、弟がバイオレットの機嫌を取っている。
「いやだ、ウィスタリア姉さまのおかげなのよ。まぁ私も頑張ったけど、うふふ。私への評価も爆上がりよ」
「よかったわね」
「うふふ、ありがとう姉さま」
「バイオレットなぜ、ウィスタリアのおかげなんだい?」
と、父が聞く。バイオレットは先月の二人でのお茶会の話を聞かせた。
「ウィスタリアがそういった広い目を持っているのだね。とても素晴らしい事だよ。今は生活に困っている事はないかい?何かドレスや宝石を送ろうか?」
「心遣いありがとう、お父様。でも大丈夫よ」
「困った事があればなんでも言うのよ?」
母のビヨンセだ。二人は未だに城で侍女として仕事をしていると思っている。
こんな出来の悪い子をいつまでも気にかけてくれる優しい両親だ。
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