ウィスタリア・モンブランが通りますよぉ

もきち

文字の大きさ
上 下
6 / 33

第6話

しおりを挟む
 今日は家族での月一の茶会の日だったが、姉妹で茶会となってバイオレットは憤慨している。侍女頭補佐バイオレットの住まいは城の一角にある、侍女塔の2番目にいい部屋を使用している。テラス付きの部屋だ。



「せっかく部屋もキレイにして菓子も用意したのに…」

 バイオレットは侍女頭補佐になりテラス付きの部屋になった事を自慢したかったのである。

「素敵な部屋ね。テラス付きのお部屋を使わせて貰えるなんて姉として自慢よ」

「えへへ、ありがと。姉さま」

 褒められるのが大好きな妹は昔から何も変わらない。

「それで仕事はどう?バイオレット」

「ええ、順調よ…と言いたい所だけど、どうして姉さまには分かっちゃうのかしら…」

 なんとなく聞いただけである。



「なにか問題が?」

「んー…最近、ものが無くなるのよ…消耗品だったりするからメイドがこっそり持って帰っているのかなって…まぁ昔からない話ではないそうなんだけど…でもこうも頻繁だと注意しない事には…ね」

「何が無くなるの?」

「紙とかインクかな、あとタオルとかね。他にも無くなっているものがあるか確認中なの」

 マニーが言っていた件だな。



「それって最初からメイドのせいにしていない?確信もないのにメイドのせいにするのは良くないわ」

「でもメイドが一番怪しいでしょう?部屋の出入りもするし、シーツとかに紛れ込ませて盗れたり出来るでしょ?」

「怪しいだけではね…」

「でも侍女は給金はいいのよ。わざわざ盗ったりしないでしょ?メイドは…ほら…ね?」

 バイオレットも何か言いにくそうにする。



「…ものが無くなる部屋は決まっているの?」

「王妃様の部屋と王女様の部屋が多いわ」

「多いわってたまに別の部屋から無くなるの?」

「まぁそうね、って、どうしてそんなに細かく聞くのよ?」

「え?細かく聞かないと犯人像が分からないじゃない」

「犯人像?」

「そんな王族の中でもトップクラスの人達の部屋なら入る人も決まって来るでしょう?下っ端メイドなんてトップクラスの人達の部屋なんてどこに在るかさえも知らないでしょうから狙って入る事は出来なんじゃない?なら最初から除外に出来るじゃない。反対に部屋に入れる許可を持っている人は何人いるの?」

「なるほど、王妃様と王女様の部屋に入れるメイドと侍女は大体10人ほどいるわ」

「そう…で、王族の方はなんて?」

「なんてって?」

「この件に関して話を聞いてないの?」

「そんな事聞ける訳ないでしょ?」

「どうしてよ?聞かないと分からないじゃない」

「え、でも…」

「侍女頭補佐のバイオレットがひるんでどうするのよ?二部屋から紙やインクがなくなるなら何か知っているかもしれないじゃない。まず部屋の家主に話を聞きなさい」

「そうは言うけど、王妃様よ?いくら私が侍女頭補佐といってもまだ新参者だし、若いから昔からいる侍女達からは煙たがられているし…」

 普段バイオレットは王女様付きの侍女として仕事をしている。なにかの為にと役職が付いているのだ。



「じゃあその、王妃様の侍女たちはなんて言っているの?」

「紙やインクが補充されてないってメイドを叱っていたわ…」

「ふ~んじゃ、侍女も何も知らないわね…メイドだって叱られるのが分かっていてそんなもの盗まないだろうしね…」

「だから関係ないメイドがこっそりと侵入して…」

「それはおかしいわ。だって紙やインクならどの部屋にもあるでしょう?」

「あ…」

 バイオレットはでもでもだってっと、とても部下たちには見せられないような態度を取っていたが、何か心当たりでもあったのか、覚悟を決めたようだった。そして夕方にはお茶会はお開きになった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

〖完結〗その愛、お断りします。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った…… 彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。 邪魔なのは、私だ。 そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。 「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。 冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない! *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

処理中です...