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第4話
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ギフト持ちの優秀な兄がいるウィスタリアはというと出来損ないの人間だった。兄はオタクではあったものの勉強は出来た。ウィスタリアは下から数えた方が早かった。
今の職場(城)は父オリバー・モンブラン伯爵の伝手で侍女として入れて貰ったのだ。それにも関わらずウィスタリアは侍女ではムリだとメイドになり、メイドをすれば掃除も出来ないとして、女中になった。その次は下女だろう。
侍女は高級貴族に仕えるが、メイドはその侍女に仕える。女中になれば侍女所かメイドにすら相手にしてもらえない。下女は誰もやりたがらない汚い仕事をする。下女なんて普通は孤児や貧しい家の子が幼い時になるものだ。それから仕事を覚えて試験を受けて上に上がっていくというのにウィスタリアは反対に下がっている。惨めだ。
加えて魔力も激小だ。父、兄が貴族ならば当然ウィスタリアも貴族なのだが、なぜかウィスタリアの魔力は控え目だ。貴族となれば自然と魔力は多くなるものなのだが…
ウィスタリアは地味な容姿と女中をやっているというので貴族に見えないらしくバンのような奴が出て来る。
バンが同じくらい年齢の独身ならば結婚してもいいが子育てを理由に後妻になるのは面倒で嫌だった。まぁ仕事も出来ないくせにと言われればそれまでだ。
それでも仕事をして少なくともお給金は頂いて生活は出来ている。あとはなぜかウィスタリアは何度失敗をして許して貰える。
しかしそれは貴族だからでは?いえいえ、もう貴族の名を語ってはいません。メイドに落とされる時にウィスタリアとしか自己紹介をしていない。姓を名乗っていないのだ。華やかな美人でもないウィスタリアは貴族だと思う人も少ない。
お世話になっている女中頭のマリアもウィスタリアが貴族だとは知らない。知っているのは一緒に働いていた侍女たちだけだろう。しかし、そんな侍女たちにも日中会う事も全くないので蔑んだまなざしを浴びたり嫌味を言われる事もない。
それだけ身分とは天と地の違いなのだ。
「戻りましたぁ」
「ウィスタリア、戻ったのかい?あそこのじぃさんはうるさいんだよ。大丈夫だったかい?」
「ええ、発注ミスの件は許してくれました。その変わりドブ掃除をしたら帰りにお菓子までもらっちゃって、後でお茶にしましょう」
「んまっ!お菓子なんて数ヶ月食べてないよ。あんな頑固じぃさんが許してくれるなんて本当にあんたは変な子だねぇ」
「はは、ほんと~」
失敗するし、怒られるけど最後には許してくれる。それの繰り返しだ。あ、それに甘んじている訳ではないよ~。ただうっかり…
女中としてまだまだ失敗もあるがなんとか下女にならずに済んでいる。生活魔法もマリアに習いつつ、このまま女中としてやっていけばそれでいいと思っている。
城の中では毎日何かしら忙しい。一番忙しいのはメイドかもしれない。高級貴族たちの世話にその衣類の洗濯、部屋の掃除、お風呂の支度、侍女からの言いつけなど、毎日戦争だ。女中であるマリアとウィスタリアは貴族たちが歩く所に入ってはいけないので仕事は回って来ない。
その分、給金も安いが城の裏にある共同部屋に住まわせて貰っているので生活費もそんなにかからない。ほとんどを貯金に回している。
メイドの頃は見た目にも気を使わないと行けなかったから、メイクや髪などに気を使いお金がかかっていた。それらは自腹である。今では裏方の仕事なのでほとんどお金を掛けていない。何もしていないのだ。すごく助かっている。
給金日にはベッドの下に隠しているお金を数えるのが月一の日課だ。
今の職場(城)は父オリバー・モンブラン伯爵の伝手で侍女として入れて貰ったのだ。それにも関わらずウィスタリアは侍女ではムリだとメイドになり、メイドをすれば掃除も出来ないとして、女中になった。その次は下女だろう。
侍女は高級貴族に仕えるが、メイドはその侍女に仕える。女中になれば侍女所かメイドにすら相手にしてもらえない。下女は誰もやりたがらない汚い仕事をする。下女なんて普通は孤児や貧しい家の子が幼い時になるものだ。それから仕事を覚えて試験を受けて上に上がっていくというのにウィスタリアは反対に下がっている。惨めだ。
加えて魔力も激小だ。父、兄が貴族ならば当然ウィスタリアも貴族なのだが、なぜかウィスタリアの魔力は控え目だ。貴族となれば自然と魔力は多くなるものなのだが…
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バンが同じくらい年齢の独身ならば結婚してもいいが子育てを理由に後妻になるのは面倒で嫌だった。まぁ仕事も出来ないくせにと言われればそれまでだ。
それでも仕事をして少なくともお給金は頂いて生活は出来ている。あとはなぜかウィスタリアは何度失敗をして許して貰える。
しかしそれは貴族だからでは?いえいえ、もう貴族の名を語ってはいません。メイドに落とされる時にウィスタリアとしか自己紹介をしていない。姓を名乗っていないのだ。華やかな美人でもないウィスタリアは貴族だと思う人も少ない。
お世話になっている女中頭のマリアもウィスタリアが貴族だとは知らない。知っているのは一緒に働いていた侍女たちだけだろう。しかし、そんな侍女たちにも日中会う事も全くないので蔑んだまなざしを浴びたり嫌味を言われる事もない。
それだけ身分とは天と地の違いなのだ。
「戻りましたぁ」
「ウィスタリア、戻ったのかい?あそこのじぃさんはうるさいんだよ。大丈夫だったかい?」
「ええ、発注ミスの件は許してくれました。その変わりドブ掃除をしたら帰りにお菓子までもらっちゃって、後でお茶にしましょう」
「んまっ!お菓子なんて数ヶ月食べてないよ。あんな頑固じぃさんが許してくれるなんて本当にあんたは変な子だねぇ」
「はは、ほんと~」
失敗するし、怒られるけど最後には許してくれる。それの繰り返しだ。あ、それに甘んじている訳ではないよ~。ただうっかり…
女中としてまだまだ失敗もあるがなんとか下女にならずに済んでいる。生活魔法もマリアに習いつつ、このまま女中としてやっていけばそれでいいと思っている。
城の中では毎日何かしら忙しい。一番忙しいのはメイドかもしれない。高級貴族たちの世話にその衣類の洗濯、部屋の掃除、お風呂の支度、侍女からの言いつけなど、毎日戦争だ。女中であるマリアとウィスタリアは貴族たちが歩く所に入ってはいけないので仕事は回って来ない。
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メイドの頃は見た目にも気を使わないと行けなかったから、メイクや髪などに気を使いお金がかかっていた。それらは自腹である。今では裏方の仕事なのでほとんどお金を掛けていない。何もしていないのだ。すごく助かっている。
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