ウィスタリア・モンブランが通りますよぉ

もきち

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第1話

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 私はウィスタリア。小さな国の王様が住んでいる城の調理場で働く23歳になる女中だ。23歳になってからあんなにあったお見合いの話も来なくなった。みんな大体20前後で嫁いで行く。子供を産んで子供が大きくなればまた戻ってくる感じだ。

 馬屋番のバンから後妻にならないかと言われたがバンは36歳で子供が6人もいる。奥さんとは死別だ。まだ下の子が4歳だ。いくら結婚をしたいからと6人も子供いる家に嫁ぐのは…と、お断りをしたらお前のような地味で見栄えも悪く、年を食った女ではもう貰い手がないだろうからと俺が貰ってやると言ってやっているのに生意気だと襲われかけた。

 ひどい仕打ちだ。

 近くにあった椅子でバンを殴り必死で逃げ出した。それが私の最初で最後の恋愛経験だ。まぁそれは恋愛とは呼ばない事は承知している。


「ウィスタリア!頼んだ発注にミスがあったよ!もういい加減にしとくれ!なんでそんなに仕事が出来ないんだい!今度ミスがあったら減給だよ!」

「あーん、すいませーん!今度こそ気をつけますからぁーー!」

 そして私はおっちょこちょいだ。

「それ何回言うんだね!」

「すいませーん」
「仕方ないねぇ、さっさと発注先に謝りに行って来るんだよ!何か粗品でも持って。あっそれは自腹だからね」
「えーー」
「銀貨1枚までだよぉったくもう…」
 銀貨1枚を渡される。
「はいぃ感謝しますぅ」

 こんな出来損ないの私にみんなはイライラしながらも大目に見てくれる。本当に感謝でしかない。
 女中頭のマリアは厳しい人だが意地悪ではない。出来ない私に丁寧に仕事を教えてくれる。生活魔法の達人であるマリアは、調理の下ごしらえを長年一人で行っていた。女中の仕事なんて誰もやりたがらない。仕事を覚えてしまえばメイドや侍女に昇格していく。マリアは生活魔法の中でも調理の下ごしらえが得意だったため残っている。本当なら侍女頭にでもなっていても可笑しくない優秀な人なのだ。



 ある日のこと、マリアが珍しく困っていた。
「マリア、どうしたの?」
「ああ、ウィスタリア、あんたに言っても仕方ないけどねぇ、今度お城で舞踏会があるだろう?その時にお出しする甘味の材料がないんだってさぁ、どこの仕入れ先にも今は品切れ中でね」
「何がないの?」
「何って甘味といえばフルーツだよ。色々なフルーツを発注していたのにさぁ今になってないって言われてもね。もう何ヶ月前から発注していたんだよ?」


 毎年秋口に行われている舞踏会がある。王様が各領主を招き入れ振舞う。もちろん年貢を快く払わせるためだ。各領主が集まり舞踏会と言いつつ情報交換を行いながら、王室が出す甘味を味わうのが恒例だ。皆それを楽しみに喜んで出席するのだ。しかしその甘味がないという。

 舞踏会で出すフルーツは毎年外国から輸入している。何日も前からフルーツが届き始め、マリアが下ごしらえをしていく。それらを砂糖漬けにして保存するのだ。毎年外国にまで貴族を派遣し調達する調査員までいる。

 もちろん他に料理は振舞われるが甘味が最大の目玉なのだ。その甘味がないとなると印象が良くない。もしかしたら来年から年貢を渋り出すかもしれない。舞踏会を出席する貴族も減るかもしれない。辺境伯などは裏切るかもしれない。そこまで甘味一つで話が大きくなるのだ。

 そう、これは王族の沽券に関わるのだ。


 もちろん、女中のマリアやウィスタリアはそこまでの話は知らない。フルーツがないと困るなぁ程度である。

 さて、どうするのか…






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お料理ストーリーではありません(´▽`)


よろしくお願いいたします。過去の作品もよろしくお願いいたします(^^♪
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