1 / 33
第1話
しおりを挟む
私はウィスタリア。小さな国の王様が住んでいる城の調理場で働く23歳になる女中だ。23歳になってからあんなにあったお見合いの話も来なくなった。みんな大体20前後で嫁いで行く。子供を産んで子供が大きくなればまた戻ってくる感じだ。
馬屋番のバンから後妻にならないかと言われたがバンは36歳で子供が6人もいる。奥さんとは死別だ。まだ下の子が4歳だ。いくら結婚をしたいからと6人も子供いる家に嫁ぐのは…と、お断りをしたらお前のような地味で見栄えも悪く、年を食った女ではもう貰い手がないだろうからと俺が貰ってやると言ってやっているのに生意気だと襲われかけた。
ひどい仕打ちだ。
近くにあった椅子でバンを殴り必死で逃げ出した。それが私の最初で最後の恋愛経験だ。まぁそれは恋愛とは呼ばない事は承知している。
「ウィスタリア!頼んだ発注にミスがあったよ!もういい加減にしとくれ!なんでそんなに仕事が出来ないんだい!今度ミスがあったら減給だよ!」
「あーん、すいませーん!今度こそ気をつけますからぁーー!」
そして私はおっちょこちょいだ。
「それ何回言うんだね!」
「すいませーん」
「仕方ないねぇ、さっさと発注先に謝りに行って来るんだよ!何か粗品でも持って。あっそれは自腹だからね」
「えーー」
「銀貨1枚までだよぉったくもう…」
銀貨1枚を渡される。
「はいぃ感謝しますぅ」
こんな出来損ないの私にみんなはイライラしながらも大目に見てくれる。本当に感謝でしかない。
女中頭のマリアは厳しい人だが意地悪ではない。出来ない私に丁寧に仕事を教えてくれる。生活魔法の達人であるマリアは、調理の下ごしらえを長年一人で行っていた。女中の仕事なんて誰もやりたがらない。仕事を覚えてしまえばメイドや侍女に昇格していく。マリアは生活魔法の中でも調理の下ごしらえが得意だったため残っている。本当なら侍女頭にでもなっていても可笑しくない優秀な人なのだ。
ある日のこと、マリアが珍しく困っていた。
「マリア、どうしたの?」
「ああ、ウィスタリア、あんたに言っても仕方ないけどねぇ、今度お城で舞踏会があるだろう?その時にお出しする甘味の材料がないんだってさぁ、どこの仕入れ先にも今は品切れ中でね」
「何がないの?」
「何って甘味といえばフルーツだよ。色々なフルーツを発注していたのにさぁ今になってないって言われてもね。もう何ヶ月前から発注していたんだよ?」
毎年秋口に行われている舞踏会がある。王様が各領主を招き入れ振舞う。もちろん年貢を快く払わせるためだ。各領主が集まり舞踏会と言いつつ情報交換を行いながら、王室が出す甘味を味わうのが恒例だ。皆それを楽しみに喜んで出席するのだ。しかしその甘味がないという。
舞踏会で出すフルーツは毎年外国から輸入している。何日も前からフルーツが届き始め、マリアが下ごしらえをしていく。それらを砂糖漬けにして保存するのだ。毎年外国にまで貴族を派遣し調達する調査員までいる。
もちろん他に料理は振舞われるが甘味が最大の目玉なのだ。その甘味がないとなると印象が良くない。もしかしたら来年から年貢を渋り出すかもしれない。舞踏会を出席する貴族も減るかもしれない。辺境伯などは裏切るかもしれない。そこまで甘味一つで話が大きくなるのだ。
そう、これは王族の沽券に関わるのだ。
もちろん、女中のマリアやウィスタリアはそこまでの話は知らない。フルーツがないと困るなぁ程度である。
さて、どうするのか…
--------------------------------------------------------------------
お料理ストーリーではありません(´▽`)
よろしくお願いいたします。過去の作品もよろしくお願いいたします(^^♪
馬屋番のバンから後妻にならないかと言われたがバンは36歳で子供が6人もいる。奥さんとは死別だ。まだ下の子が4歳だ。いくら結婚をしたいからと6人も子供いる家に嫁ぐのは…と、お断りをしたらお前のような地味で見栄えも悪く、年を食った女ではもう貰い手がないだろうからと俺が貰ってやると言ってやっているのに生意気だと襲われかけた。
ひどい仕打ちだ。
近くにあった椅子でバンを殴り必死で逃げ出した。それが私の最初で最後の恋愛経験だ。まぁそれは恋愛とは呼ばない事は承知している。
「ウィスタリア!頼んだ発注にミスがあったよ!もういい加減にしとくれ!なんでそんなに仕事が出来ないんだい!今度ミスがあったら減給だよ!」
「あーん、すいませーん!今度こそ気をつけますからぁーー!」
そして私はおっちょこちょいだ。
「それ何回言うんだね!」
「すいませーん」
「仕方ないねぇ、さっさと発注先に謝りに行って来るんだよ!何か粗品でも持って。あっそれは自腹だからね」
「えーー」
「銀貨1枚までだよぉったくもう…」
銀貨1枚を渡される。
「はいぃ感謝しますぅ」
こんな出来損ないの私にみんなはイライラしながらも大目に見てくれる。本当に感謝でしかない。
女中頭のマリアは厳しい人だが意地悪ではない。出来ない私に丁寧に仕事を教えてくれる。生活魔法の達人であるマリアは、調理の下ごしらえを長年一人で行っていた。女中の仕事なんて誰もやりたがらない。仕事を覚えてしまえばメイドや侍女に昇格していく。マリアは生活魔法の中でも調理の下ごしらえが得意だったため残っている。本当なら侍女頭にでもなっていても可笑しくない優秀な人なのだ。
ある日のこと、マリアが珍しく困っていた。
「マリア、どうしたの?」
「ああ、ウィスタリア、あんたに言っても仕方ないけどねぇ、今度お城で舞踏会があるだろう?その時にお出しする甘味の材料がないんだってさぁ、どこの仕入れ先にも今は品切れ中でね」
「何がないの?」
「何って甘味といえばフルーツだよ。色々なフルーツを発注していたのにさぁ今になってないって言われてもね。もう何ヶ月前から発注していたんだよ?」
毎年秋口に行われている舞踏会がある。王様が各領主を招き入れ振舞う。もちろん年貢を快く払わせるためだ。各領主が集まり舞踏会と言いつつ情報交換を行いながら、王室が出す甘味を味わうのが恒例だ。皆それを楽しみに喜んで出席するのだ。しかしその甘味がないという。
舞踏会で出すフルーツは毎年外国から輸入している。何日も前からフルーツが届き始め、マリアが下ごしらえをしていく。それらを砂糖漬けにして保存するのだ。毎年外国にまで貴族を派遣し調達する調査員までいる。
もちろん他に料理は振舞われるが甘味が最大の目玉なのだ。その甘味がないとなると印象が良くない。もしかしたら来年から年貢を渋り出すかもしれない。舞踏会を出席する貴族も減るかもしれない。辺境伯などは裏切るかもしれない。そこまで甘味一つで話が大きくなるのだ。
そう、これは王族の沽券に関わるのだ。
もちろん、女中のマリアやウィスタリアはそこまでの話は知らない。フルーツがないと困るなぁ程度である。
さて、どうするのか…
--------------------------------------------------------------------
お料理ストーリーではありません(´▽`)
よろしくお願いいたします。過去の作品もよろしくお願いいたします(^^♪
2
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。


結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる