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ふたりの王子 ー追撃
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「予定はなんだって?」
昨日と一昨日と門前払いを食らった。さすがに今日は貴族らしく訪問の一報を告げた。そこでようやく主人の予定を聞かされた。
「本日戻るとさ。午後からなら時間が取れるらしいぞ」
「やっとか…だから最初から連絡をしろと何度も…あ、紅茶専門店だって、少しゆっくりしようよ」
「そうだな…」
コルクスはベルナルに色々文句を言うだけは言う。しかし根にもたないのがコルクスだ。すぐに話を変えて気分を変えてくれる。
オープンカフェになっている店に足を踏み入れた。狭いが雰囲気がいいキレイな店内に皆が紅茶を楽しんでいた。そこに一人紳士が自分を見ている事に気が付いた。コバック男爵だ。
ベルナルは少々驚いた。コバック男爵の店なのだろうか。何だか店に馴染んでいるように見えた。すぐにコバック男爵に挨拶をした。爵位が上の方から話しかけるのが貴族のマナーだ。コバック男爵も話しかけられるのを待っていたようだ。
店内を見渡した。店内は広くない。すぐにその人物を探し出せた。
なるほど、やはり連絡を取っていたようだ。この数日、邸に居なかったのはそのせいかもしれない。しかし、やっと見つかった。これで旅も終わる。コルクスに合図を送ると頷いた。
しかし黒のショールをしている人物はまったくの別人だ。水色の少女とも違う。困惑している事はもちろん感じさせないようにするのも貴族だ。
「ご一緒しても?」
と、一緒に邸に戻る事を提案したが、同行者が他にもいたようで却下された。目的の人物と堂々と一緒に馬車に乗り込んだ。もう隠す必要がないのだろう。
「もう逃げも隠れもしないって事かな?」
コルクスも同じ事を思っていたようだ。
「ああ」
「仕掛けてないの?」
「盗聴をか?仕込もうとしたらコバックが俺の範囲からズレた。あれは男爵にしておくのが勿体ないほどの厄介奴だ」
「隠密でも付けとけばよかったんだよ。王都にいるのはサクだっけ?」
「あいつらは陛下の隠密。ジクはモグリベルに戻ったしサクはシンフォニーに付いている」
「いつまで付かせているんだ。それこそ無駄だろう」
「陛下が満足するまでだろうな。シンフォニーなんかほっとけばいいんだが…」
「まぁ反逆されると困るしな…」
「命を助けたんだぞ?」
「自分のやった事を忘れて逆恨みはする奴はいるもんなんだよ」
「確かにな」
コバック男爵の邸に着き、前を先に進んでいたコバック男爵達が馬車から4人が降りた。そしてそのまま二人を待たずに邸に入った。
「おい、逃げる気じゃないだろうな!」
馬車が止まるのを待たずベルナルは馬車の扉を開け飛び出した。そこへコバック男爵の執事が制止した。
「お待ちください。二人のレディがいます。お客様を迎える準備が整っておりません。少々お時間を頂けますか?」
「そ…それは仕方がありません。待ちましょう」
ベルナルは襟を整え落ち着かせた。やっとアリアナに会える。やっと不可解な事が解明されるのだ。ベルナルの心は躍った。
ベルナル達は応接室に通された。そして小一時間は待たされた。まさか逃げたのではないだろうか。ベルナルはコルクスを見る。コルクスは首を振る。逃げてはいないようだ。
コルクスは土属性を持っている。大地からの振動や足音で邸の中に何人いるのか、何人出たのか分かるらしい。ベルナルは風属性で同じように風の流れを読めば人の行動が分かるらしかったがベルナルはそこら辺の技術は放棄していた。
ようやく執事が応接室にやってきた。
「お待たせしました」
「やっとか…」
ベルナルとコルクスは立ち上がって待った。そしてコバック男爵とアリアナの両親、そして最後にピンクプラチナの髪をしたアリアナが現れた。
黒のショールの女の姿はない。地味で汚れた臙脂色のローブを来た女はいなかった。そこにはピンクプラチナの長い髪を若い子がするような流行の髪形をし、水色のドレスを着ているアリアナがいた。
昨日と一昨日と門前払いを食らった。さすがに今日は貴族らしく訪問の一報を告げた。そこでようやく主人の予定を聞かされた。
「本日戻るとさ。午後からなら時間が取れるらしいぞ」
「やっとか…だから最初から連絡をしろと何度も…あ、紅茶専門店だって、少しゆっくりしようよ」
「そうだな…」
コルクスはベルナルに色々文句を言うだけは言う。しかし根にもたないのがコルクスだ。すぐに話を変えて気分を変えてくれる。
オープンカフェになっている店に足を踏み入れた。狭いが雰囲気がいいキレイな店内に皆が紅茶を楽しんでいた。そこに一人紳士が自分を見ている事に気が付いた。コバック男爵だ。
ベルナルは少々驚いた。コバック男爵の店なのだろうか。何だか店に馴染んでいるように見えた。すぐにコバック男爵に挨拶をした。爵位が上の方から話しかけるのが貴族のマナーだ。コバック男爵も話しかけられるのを待っていたようだ。
店内を見渡した。店内は広くない。すぐにその人物を探し出せた。
なるほど、やはり連絡を取っていたようだ。この数日、邸に居なかったのはそのせいかもしれない。しかし、やっと見つかった。これで旅も終わる。コルクスに合図を送ると頷いた。
しかし黒のショールをしている人物はまったくの別人だ。水色の少女とも違う。困惑している事はもちろん感じさせないようにするのも貴族だ。
「ご一緒しても?」
と、一緒に邸に戻る事を提案したが、同行者が他にもいたようで却下された。目的の人物と堂々と一緒に馬車に乗り込んだ。もう隠す必要がないのだろう。
「もう逃げも隠れもしないって事かな?」
コルクスも同じ事を思っていたようだ。
「ああ」
「仕掛けてないの?」
「盗聴をか?仕込もうとしたらコバックが俺の範囲からズレた。あれは男爵にしておくのが勿体ないほどの厄介奴だ」
「隠密でも付けとけばよかったんだよ。王都にいるのはサクだっけ?」
「あいつらは陛下の隠密。ジクはモグリベルに戻ったしサクはシンフォニーに付いている」
「いつまで付かせているんだ。それこそ無駄だろう」
「陛下が満足するまでだろうな。シンフォニーなんかほっとけばいいんだが…」
「まぁ反逆されると困るしな…」
「命を助けたんだぞ?」
「自分のやった事を忘れて逆恨みはする奴はいるもんなんだよ」
「確かにな」
コバック男爵の邸に着き、前を先に進んでいたコバック男爵達が馬車から4人が降りた。そしてそのまま二人を待たずに邸に入った。
「おい、逃げる気じゃないだろうな!」
馬車が止まるのを待たずベルナルは馬車の扉を開け飛び出した。そこへコバック男爵の執事が制止した。
「お待ちください。二人のレディがいます。お客様を迎える準備が整っておりません。少々お時間を頂けますか?」
「そ…それは仕方がありません。待ちましょう」
ベルナルは襟を整え落ち着かせた。やっとアリアナに会える。やっと不可解な事が解明されるのだ。ベルナルの心は躍った。
ベルナル達は応接室に通された。そして小一時間は待たされた。まさか逃げたのではないだろうか。ベルナルはコルクスを見る。コルクスは首を振る。逃げてはいないようだ。
コルクスは土属性を持っている。大地からの振動や足音で邸の中に何人いるのか、何人出たのか分かるらしい。ベルナルは風属性で同じように風の流れを読めば人の行動が分かるらしかったがベルナルはそこら辺の技術は放棄していた。
ようやく執事が応接室にやってきた。
「お待たせしました」
「やっとか…」
ベルナルとコルクスは立ち上がって待った。そしてコバック男爵とアリアナの両親、そして最後にピンクプラチナの髪をしたアリアナが現れた。
黒のショールの女の姿はない。地味で汚れた臙脂色のローブを来た女はいなかった。そこにはピンクプラチナの長い髪を若い子がするような流行の髪形をし、水色のドレスを着ているアリアナがいた。
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