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シンのはなし 2
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シンは古着屋で買った大きなカバンに剣と男の服を詰め込み、カバンと一緒に買ったワンピースと女性用のコートに帽子とマフラーをグルグルと巻いて、業務ギルドに向かった。
「こんにちは、登録をしたいのですが」
その声に受付の職員が目線を動かす、職員が見たその先には美しい女性が優しそうな笑顔で立っていた。化粧っけはないが気品あふれる佇まいに職員はしばらく見惚れてしまった。
「あの…」
「あっと、すいません。こ、こちらに記入をお願いします」
「はい」
「な、何を教える事が出来ますか?」
職員は焦って緊張してしまうほど記入している姿も美しい。
「勉強が得意です。小さい子や女性に文字や計算を教えたいと思っています」
「そうですか、えっと、そういった講師の方は結構いるんですよ。余っている講師の方もいらっしゃって、他に何か得意な事はありますか?」
「そうですか。では刺繍とか、編み物も得意です」
「刺繍はいいですね。この間まで刺繍を教えてくれていたおばあちゃんがいたんですけど、亡くなってしまったので空席なんですよ。1番弟子みたいな人もいたんですけど他の街に行ってしまって、その元生徒さん達に声を掛けてみましょう」
「お願いします」
「では、募集は明日から10日間です。店の前のボードや街のボードなど業務ギルドの受付からの紹介などで募集期間の10日間は積極的に宣伝をします。あと業務ギルドで教室を借りますか?それですと2時間大銅貨2枚、2000ルーになります。教室が始まりましたら一人の生徒さんに付き、3割のお支払いをお願いします。人気になればたくさんの生徒さんも来られるので3割引かれても利益は見込めますよ。募集期間の宣伝費用の金額は一律銀貨3枚になります。大丈夫ですか?」
「まぁ宣伝費用とやらにお金がいるのですね」
上目遣いにそっと職員を見る。
「はい、人件費がかかりますので、よろしくお願いします」
「分かりました」
シンの美しさに見惚れてサービスをしてくれるのではないかと淡い期待したが華麗にスルーされてしまい少し傷つくシンだった。
そしてシンがヴァイで支払いを終える。
「ありがとうございます。ではまた10日後にこちらに起こし下さい。生徒数や今後の事を話し合いましょう。あ、それと刺繍をいくつかあれば持ってきて貰えますか?」
「今はないので明日には持ってきます」
「はい、よろしくお願いします」
シンは剣が少しはみ出しているカバンを持って布や糸が売っている裁縫店に向かった。刺繍用の安値の真っ白な糸だけを買い込み支払いをする。わざわざ自分で刺繍をしなくてもお店でやってくれる所もあるし、魔法円を買えば細かな刺繍も一瞬にして、お気に入りのスカートに施す事が出来るのだ。
しかし、貴族の間では花嫁修業で刺繍は相変わらずの習慣だ。貴族同士で見せ合いが始まる。魔法円の刺繍は形が決まっているのですぐにバレる。お店で頼んでしてもらえれば個性がなくなり、即バレし軽蔑される。面倒でも自分でしならればならないのが貴族なのだ。
白い布に数枚徹夜をして刺繍を完成させた。貴族だった頃プロ級の腕前と称賛され尊敬のまなざしだったシンにはあまり満足行く仕上がりではなかったが、最近は刺繍なんかしている暇などないのだ腕が落ちているのは仕方がないと諦めた。
またワンピースを着てシンは業務ギルドに顔を出した。
「あ、昨日の刺繍の方!」昨日と同じ職員がいた。
「ええ、刺繍を持ってきました」
「わあ、プロ並みですね。素敵です。もう生徒さんが3名ほど応募してきています。でもどの程度が分からないからとまだ未定にしています。これを見せれば入会してくれるでしょう。これなら1人当たり2時間で1000ルーで設定しても大丈夫でしょう。あまり高い設定ですと生徒さんが来ませんから、よろしいですか?」
「ええ、十分です」
それからしばらくシンは宿で刺繍の練習をした。生徒にどれほどの人たちが来るのかわからない。まったくした事がないような人かはたまた、おばあさんに習っていたすでに上手な人が来るのかもしれない。
「こんにちは、登録をしたいのですが」
その声に受付の職員が目線を動かす、職員が見たその先には美しい女性が優しそうな笑顔で立っていた。化粧っけはないが気品あふれる佇まいに職員はしばらく見惚れてしまった。
「あの…」
「あっと、すいません。こ、こちらに記入をお願いします」
「はい」
「な、何を教える事が出来ますか?」
職員は焦って緊張してしまうほど記入している姿も美しい。
「勉強が得意です。小さい子や女性に文字や計算を教えたいと思っています」
「そうですか、えっと、そういった講師の方は結構いるんですよ。余っている講師の方もいらっしゃって、他に何か得意な事はありますか?」
「そうですか。では刺繍とか、編み物も得意です」
「刺繍はいいですね。この間まで刺繍を教えてくれていたおばあちゃんがいたんですけど、亡くなってしまったので空席なんですよ。1番弟子みたいな人もいたんですけど他の街に行ってしまって、その元生徒さん達に声を掛けてみましょう」
「お願いします」
「では、募集は明日から10日間です。店の前のボードや街のボードなど業務ギルドの受付からの紹介などで募集期間の10日間は積極的に宣伝をします。あと業務ギルドで教室を借りますか?それですと2時間大銅貨2枚、2000ルーになります。教室が始まりましたら一人の生徒さんに付き、3割のお支払いをお願いします。人気になればたくさんの生徒さんも来られるので3割引かれても利益は見込めますよ。募集期間の宣伝費用の金額は一律銀貨3枚になります。大丈夫ですか?」
「まぁ宣伝費用とやらにお金がいるのですね」
上目遣いにそっと職員を見る。
「はい、人件費がかかりますので、よろしくお願いします」
「分かりました」
シンの美しさに見惚れてサービスをしてくれるのではないかと淡い期待したが華麗にスルーされてしまい少し傷つくシンだった。
そしてシンがヴァイで支払いを終える。
「ありがとうございます。ではまた10日後にこちらに起こし下さい。生徒数や今後の事を話し合いましょう。あ、それと刺繍をいくつかあれば持ってきて貰えますか?」
「今はないので明日には持ってきます」
「はい、よろしくお願いします」
シンは剣が少しはみ出しているカバンを持って布や糸が売っている裁縫店に向かった。刺繍用の安値の真っ白な糸だけを買い込み支払いをする。わざわざ自分で刺繍をしなくてもお店でやってくれる所もあるし、魔法円を買えば細かな刺繍も一瞬にして、お気に入りのスカートに施す事が出来るのだ。
しかし、貴族の間では花嫁修業で刺繍は相変わらずの習慣だ。貴族同士で見せ合いが始まる。魔法円の刺繍は形が決まっているのですぐにバレる。お店で頼んでしてもらえれば個性がなくなり、即バレし軽蔑される。面倒でも自分でしならればならないのが貴族なのだ。
白い布に数枚徹夜をして刺繍を完成させた。貴族だった頃プロ級の腕前と称賛され尊敬のまなざしだったシンにはあまり満足行く仕上がりではなかったが、最近は刺繍なんかしている暇などないのだ腕が落ちているのは仕方がないと諦めた。
またワンピースを着てシンは業務ギルドに顔を出した。
「あ、昨日の刺繍の方!」昨日と同じ職員がいた。
「ええ、刺繍を持ってきました」
「わあ、プロ並みですね。素敵です。もう生徒さんが3名ほど応募してきています。でもどの程度が分からないからとまだ未定にしています。これを見せれば入会してくれるでしょう。これなら1人当たり2時間で1000ルーで設定しても大丈夫でしょう。あまり高い設定ですと生徒さんが来ませんから、よろしいですか?」
「ええ、十分です」
それからしばらくシンは宿で刺繍の練習をした。生徒にどれほどの人たちが来るのかわからない。まったくした事がないような人かはたまた、おばあさんに習っていたすでに上手な人が来るのかもしれない。
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