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王都にて 陛下とシンフォニー
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「シンフォニー、急に呼び出して悪かったね」
「いえ、とんでもございません」
陛下の突然の呼び出しでも淑女は冷静で洗練された態度を忘れない。
「…君には私の息子が大変申し訳ない事をしたと思っていた」
「勿体ないお言葉ですわ。陛下には何度も謝罪をして頂きました」
「しかし、今回のことは寛容するわけにはいかない」
「…」
「分かるだろう、シンフォニー。君は賢い女性だ。もう花嫁衣裳も装飾品もすべてアリアナ用に仮縫いまで進んでいる。各国の要人を招待し結婚披露パーティーの日程も決まっている。花嫁の変更などありえない」
「…ですが、私は長い間この国の王妃になるための教育を受け、品格を落とさぬよう常に注意を払い、私は完璧な王子の婚約者であり続けました。そうした中で婚約破棄を言い渡されたのです!たった一夜で私の今までの苦労は水の泡と消えました。婚約破棄をされた私は深い森の中にいるようでした。しかし陛下からの心温まるお言葉を頂き、周りから何を言われても平常心を保てておりました。そんな恩ある陛下にあのアリアナ・カビラの裏の顔を知っている私が黙って見過ごせる事が出来るでしょうか?答えはノーです。陛下に恩をお返しする為にアリアナの悪を暴き、この国の未来を守ったのだと私は自負しております。しかもアリアナは妃教育からも逃げ、要人の名も覚えられないと泣き言を言って侍女達を困らせていたそうです。それを聞いて私はやはりアリアナにこの国の王妃を任せてはおけないとユリウスに話を聞いて貰ったのです。私は間違った事など…」
シンフォニーは自分の正当性を語った。
「隣国の第二王子は気持ちのいい男であった。シンフォニーの絵姿も気に入ってな。すぐにでも会いたいと言っておったよ。わしの馬鹿息子の事など忘れて、君を裏切ったこの国の事もわすれて隣国で幸せになればよかったのに…」
「…陛下?」
「シンフォニー、なぜ先に私に相談しなかったのだ。そなたの話なら一にも二にも先に話を聞いたであろう」
「陛下…」
「残念だ…君は賢い女だと思っていた」
「しかし…」
「隣国の祝い事にこの国を数日間留守にしている間に、わしが認めた正式な王子の婚約者を落とし入れ、尚且つ王子の婚約者に返り咲こうとはなんとも浅ましい女である。わしは祝い事の席で隣国の第二王子と面会させてもらった。シンフォニー、君にはつらい思いをさせた事への償いにどんな男なのかを見定めようとしたのだ。この男にならシンフォニーを任せても安心だと思った。…しかし、もちろんこの話はなくなる。隣国への謝罪もせねばならぬ。すべてはわしの馬鹿息子のしでかした事だが…」
国王はため息混じりで話を進めた。
「陛下、私は…」
「途中からそなたが手引きをしていた事は分かっておる」
「!」
「そなたは知っていたのだろう?わしの迂闊な部下がアリアナこそが次期王妃に相応しいとわしが思っているという事に。どこで聞いたかは言わんでいい。知っていたのだろう?」
「いいえ、私はそのようなことは…」
「すでに生まれる前から王子との婚約は決まっていた。わしが次期王妃はどこぞの娘がいいと言った所で他の貴族から反対されるのは分かっていた。色々な派閥があるからのう。そこまではわしはワンマンではない。一人のしがない占い師によって導かれた結果じゃったが、まあわしの古い友人だとでも思ってくれたらいい。しかし、よく当たる占い師ではあった。わしは気になりアリアナをこっそりと探ってはいたが婚約者にさせようとは思ってはいなかった。しかし高等部に入り王子からアリアナと結婚したいと言ってくるではないか、これは運命ではないか、そう思ってユリウスの婚約破棄という馬鹿な行動を今回のみ許したのだ」
「陛下…」
「わしはアリアナと無理やり結婚させたいと思った事はない。王子の希望だった。しかし、そなたは勝手に動いた。なぜか一度婚約破棄をさせ、そしてアリアナを悪者に仕立て上げ、すんなりと元サヤに収まる計画をしていたようだが…」
「陛下、私は…」
「まさか、こんな事をしでかすとは…」
「陛下、聞いてください…私は」
「自作自演で悲劇のヒロインにでも仕立て上げたかったのか?シンフォニーよ。そなたが相手にしたのは次期国王の婚約者だ!この王が認めた息子の婚約者を亡き者にしようと企てたという事なのだぞ!元サヤに収まると本気で思うたか?なんと愚かな…黙って隣国に嫁いでいれば幸せはすぐ目の前だったというのに…」
国王の顔は温厚とはほど遠いものだった。シンフォニーはその時初めて自分は失敗したのだと悟った。
「覚悟をする事だな、シンフォニー。アリアナが見つからなければそなたは処刑だ。王に盾を突いたのだ。家族は資産を没収され平民に落ちることになるだろう」
「陛下、待って、待って、待ってください。陛下――」
「牢にぶち込め」
「陛下、お許しをー-、いやー-!触らないでー-、陛下――」
シンフォニーは兵士に取り押さえられ連れていかれた。
「いえ、とんでもございません」
陛下の突然の呼び出しでも淑女は冷静で洗練された態度を忘れない。
「…君には私の息子が大変申し訳ない事をしたと思っていた」
「勿体ないお言葉ですわ。陛下には何度も謝罪をして頂きました」
「しかし、今回のことは寛容するわけにはいかない」
「…」
「分かるだろう、シンフォニー。君は賢い女性だ。もう花嫁衣裳も装飾品もすべてアリアナ用に仮縫いまで進んでいる。各国の要人を招待し結婚披露パーティーの日程も決まっている。花嫁の変更などありえない」
「…ですが、私は長い間この国の王妃になるための教育を受け、品格を落とさぬよう常に注意を払い、私は完璧な王子の婚約者であり続けました。そうした中で婚約破棄を言い渡されたのです!たった一夜で私の今までの苦労は水の泡と消えました。婚約破棄をされた私は深い森の中にいるようでした。しかし陛下からの心温まるお言葉を頂き、周りから何を言われても平常心を保てておりました。そんな恩ある陛下にあのアリアナ・カビラの裏の顔を知っている私が黙って見過ごせる事が出来るでしょうか?答えはノーです。陛下に恩をお返しする為にアリアナの悪を暴き、この国の未来を守ったのだと私は自負しております。しかもアリアナは妃教育からも逃げ、要人の名も覚えられないと泣き言を言って侍女達を困らせていたそうです。それを聞いて私はやはりアリアナにこの国の王妃を任せてはおけないとユリウスに話を聞いて貰ったのです。私は間違った事など…」
シンフォニーは自分の正当性を語った。
「隣国の第二王子は気持ちのいい男であった。シンフォニーの絵姿も気に入ってな。すぐにでも会いたいと言っておったよ。わしの馬鹿息子の事など忘れて、君を裏切ったこの国の事もわすれて隣国で幸せになればよかったのに…」
「…陛下?」
「シンフォニー、なぜ先に私に相談しなかったのだ。そなたの話なら一にも二にも先に話を聞いたであろう」
「陛下…」
「残念だ…君は賢い女だと思っていた」
「しかし…」
「隣国の祝い事にこの国を数日間留守にしている間に、わしが認めた正式な王子の婚約者を落とし入れ、尚且つ王子の婚約者に返り咲こうとはなんとも浅ましい女である。わしは祝い事の席で隣国の第二王子と面会させてもらった。シンフォニー、君にはつらい思いをさせた事への償いにどんな男なのかを見定めようとしたのだ。この男にならシンフォニーを任せても安心だと思った。…しかし、もちろんこの話はなくなる。隣国への謝罪もせねばならぬ。すべてはわしの馬鹿息子のしでかした事だが…」
国王はため息混じりで話を進めた。
「陛下、私は…」
「途中からそなたが手引きをしていた事は分かっておる」
「!」
「そなたは知っていたのだろう?わしの迂闊な部下がアリアナこそが次期王妃に相応しいとわしが思っているという事に。どこで聞いたかは言わんでいい。知っていたのだろう?」
「いいえ、私はそのようなことは…」
「すでに生まれる前から王子との婚約は決まっていた。わしが次期王妃はどこぞの娘がいいと言った所で他の貴族から反対されるのは分かっていた。色々な派閥があるからのう。そこまではわしはワンマンではない。一人のしがない占い師によって導かれた結果じゃったが、まあわしの古い友人だとでも思ってくれたらいい。しかし、よく当たる占い師ではあった。わしは気になりアリアナをこっそりと探ってはいたが婚約者にさせようとは思ってはいなかった。しかし高等部に入り王子からアリアナと結婚したいと言ってくるではないか、これは運命ではないか、そう思ってユリウスの婚約破棄という馬鹿な行動を今回のみ許したのだ」
「陛下…」
「わしはアリアナと無理やり結婚させたいと思った事はない。王子の希望だった。しかし、そなたは勝手に動いた。なぜか一度婚約破棄をさせ、そしてアリアナを悪者に仕立て上げ、すんなりと元サヤに収まる計画をしていたようだが…」
「陛下、私は…」
「まさか、こんな事をしでかすとは…」
「陛下、聞いてください…私は」
「自作自演で悲劇のヒロインにでも仕立て上げたかったのか?シンフォニーよ。そなたが相手にしたのは次期国王の婚約者だ!この王が認めた息子の婚約者を亡き者にしようと企てたという事なのだぞ!元サヤに収まると本気で思うたか?なんと愚かな…黙って隣国に嫁いでいれば幸せはすぐ目の前だったというのに…」
国王の顔は温厚とはほど遠いものだった。シンフォニーはその時初めて自分は失敗したのだと悟った。
「覚悟をする事だな、シンフォニー。アリアナが見つからなければそなたは処刑だ。王に盾を突いたのだ。家族は資産を没収され平民に落ちることになるだろう」
「陛下、待って、待って、待ってください。陛下――」
「牢にぶち込め」
「陛下、お許しをー-、いやー-!触らないでー-、陛下――」
シンフォニーは兵士に取り押さえられ連れていかれた。
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