1 / 8
第1話 余命
しおりを挟む
さくらは今、ホスピスに向かうタクシーに乗車している。ホスピスは緑深い山の中腹にあり、市街地から車で30分程度の場所にある。
さくらが膵臓がんだと発覚したのは4ヶ月前だ。
膵臓がんは発見されにくいと言われているがんで、発見されたときには手遅れの場合が多い。さくらもそのひとりだ。もう手の施しようがないと医者に言われた。そして、病院からこれからお世話になるホスピスを紹介してもらった。さくらは終活を終え、いつでもお迎えがきても良い状態にしていた。
佐伯さくら40歳、女。独身。
4ヶ月前に余命1年だと言われた。なんの予兆もなかった。初めて友人とシャレで人間ドックを受けたのだ。再検査の通知を受けても肥満かなくらいしか考えてなかった。
さくらはまさか自分が50歳まで生きられないとは考えていなかった。誰しもそうだが自分は100歳まで生きるだろうと、思っていたのだ。母は早くに亡くなったが父は存命だ。しかも健康だ。自分もそうなるだろうと思っていた。
余命を聞いた後、セカンドオピニオンを受け、3件もの病院で診察を受けた。結果は同じだった。余命がちょっと早くなっただけだった。
だって、どこもなんともないだもん。
本当にそんな病気なのか??
実感がわかない。
しかし、実感が得られる事態が起こった。3度目の診察の帰り突然と身体に痛みが走った。立っていられなくなり倒れた。そのまま入院することになったのだ。倒れたのが病院内であったことが幸いし、すぐに対処してもらえた。家で倒れていれば、一人暮らしのさくらはそのまま死ぬことになっていただろう。
まぁ余命を言われているのだから早めに死んだとして対した問題じゃないようにも思う。
さくらは死ぬ覚悟が出来ている。
さくらは、常々長生きをしたいなどと思ったことはなかった。さくらはひとりだ。長く生きていてもなんの楽しみもない。夫子どももなし、孫ももちろんなし。母は死んでいる。父兄姉がいるが連絡は取りあっていない。だから余命を聞いた時はショックだったが、すぐに切り替えた。
準備をしなければ!
一人暮らしのさくらだ。一人の時に家で死んいたら色々迷惑が掛かるだろう。すぐに取り掛かる。まず仕事を退職し、マンションを売る。さくらは25歳の時にマンションを購入していた。中古のマンションで高額ではないがまだ、ローンが残っている。父兄姉に連絡するつもりはない。財産も渡さない。そんなにないけど。断捨離を進め、売れるものは売った。
ホスピスの費用はマンションを売却してからでもいいことになり準備を進めた。たびたび気を失うような身体の痛みに薬を大量に飲んではやり過ごした。やっとホスピスに移れた時は、安堵した。
ホスピスにはさくらより年齢が下であろう人もいた。看護師さんも深入りしてこない。子どもはいるのか、親は、誰かお見舞いに来ないのか、など要らないことは聞いてこない。有り難かった。聞かれても言う気はないが。
余命を聞いて半年が過ぎた。あと何日生きる事が出来るだろうか。これからは老後のお金の心配をする事もないのだ。これからはゆっくりと過ごせる。さくらは老後を考えていたがその心配がなくなることがうれしかった。
ちょうどよかったのだ。さくらはそう思った。さくらには家族がいた。2匹の猫たちだ。キジ猫のコマ、黒猫のムギ。マンションを購入したのも猫を飼いたかったからだった。念願の猫を飼えてさくらは幸せだった。
しかし、その猫たちも年を取りさくらが37歳の時、コマより若いムギが死んだ。その1年後、コマも死んだ。
2匹とも10年以上も生きてくれた。しかしやはりつらい。さくらはこの1年、ずっと泣いていた。新しい子を迎えるかどうか迷っているところだったのだ。
さくらが膵臓がんだと発覚したのは4ヶ月前だ。
膵臓がんは発見されにくいと言われているがんで、発見されたときには手遅れの場合が多い。さくらもそのひとりだ。もう手の施しようがないと医者に言われた。そして、病院からこれからお世話になるホスピスを紹介してもらった。さくらは終活を終え、いつでもお迎えがきても良い状態にしていた。
佐伯さくら40歳、女。独身。
4ヶ月前に余命1年だと言われた。なんの予兆もなかった。初めて友人とシャレで人間ドックを受けたのだ。再検査の通知を受けても肥満かなくらいしか考えてなかった。
さくらはまさか自分が50歳まで生きられないとは考えていなかった。誰しもそうだが自分は100歳まで生きるだろうと、思っていたのだ。母は早くに亡くなったが父は存命だ。しかも健康だ。自分もそうなるだろうと思っていた。
余命を聞いた後、セカンドオピニオンを受け、3件もの病院で診察を受けた。結果は同じだった。余命がちょっと早くなっただけだった。
だって、どこもなんともないだもん。
本当にそんな病気なのか??
実感がわかない。
しかし、実感が得られる事態が起こった。3度目の診察の帰り突然と身体に痛みが走った。立っていられなくなり倒れた。そのまま入院することになったのだ。倒れたのが病院内であったことが幸いし、すぐに対処してもらえた。家で倒れていれば、一人暮らしのさくらはそのまま死ぬことになっていただろう。
まぁ余命を言われているのだから早めに死んだとして対した問題じゃないようにも思う。
さくらは死ぬ覚悟が出来ている。
さくらは、常々長生きをしたいなどと思ったことはなかった。さくらはひとりだ。長く生きていてもなんの楽しみもない。夫子どももなし、孫ももちろんなし。母は死んでいる。父兄姉がいるが連絡は取りあっていない。だから余命を聞いた時はショックだったが、すぐに切り替えた。
準備をしなければ!
一人暮らしのさくらだ。一人の時に家で死んいたら色々迷惑が掛かるだろう。すぐに取り掛かる。まず仕事を退職し、マンションを売る。さくらは25歳の時にマンションを購入していた。中古のマンションで高額ではないがまだ、ローンが残っている。父兄姉に連絡するつもりはない。財産も渡さない。そんなにないけど。断捨離を進め、売れるものは売った。
ホスピスの費用はマンションを売却してからでもいいことになり準備を進めた。たびたび気を失うような身体の痛みに薬を大量に飲んではやり過ごした。やっとホスピスに移れた時は、安堵した。
ホスピスにはさくらより年齢が下であろう人もいた。看護師さんも深入りしてこない。子どもはいるのか、親は、誰かお見舞いに来ないのか、など要らないことは聞いてこない。有り難かった。聞かれても言う気はないが。
余命を聞いて半年が過ぎた。あと何日生きる事が出来るだろうか。これからは老後のお金の心配をする事もないのだ。これからはゆっくりと過ごせる。さくらは老後を考えていたがその心配がなくなることがうれしかった。
ちょうどよかったのだ。さくらはそう思った。さくらには家族がいた。2匹の猫たちだ。キジ猫のコマ、黒猫のムギ。マンションを購入したのも猫を飼いたかったからだった。念願の猫を飼えてさくらは幸せだった。
しかし、その猫たちも年を取りさくらが37歳の時、コマより若いムギが死んだ。その1年後、コマも死んだ。
2匹とも10年以上も生きてくれた。しかしやはりつらい。さくらはこの1年、ずっと泣いていた。新しい子を迎えるかどうか迷っているところだったのだ。
11
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

女たらし魔法使いの弟子
草部昴流
ファンタジー
アナベルは、正体不明の男に殺害された両親の仇を討つため、魔法使いの弟子に志願しつづけていた。しかし、だれからもまったくあいてにされない。あるとき、彼女はささやかな偶然から女たらしの魔法使いルーフレッドの弟子になることに成功する。ルーフレッドは、皮肉屋で口が悪く、意地悪なようでいて、どこか優しいところもあり、アナベルは、はたして自分の秘密を告白したものかどうか、思い迷う。そして――。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
死が二人を別こうとも。
すずなり。
恋愛
同じクラスに気になる女の子がいる。かわいくて・・・賢くて・・・みんなの人気者だ。『誰があいつと付き合うんだろうな』・・・そんな話が男どもの間でされてる中、俺は・・・彼女の秘密を知ってしまう。
秋臣「・・・好きだ!」
りら「!!・・・ごめんね。」
一度は断られた交際の申し込み。諦めれない俺に、彼女は秘密を打ち明けてくれた。
秋臣「それでもいい。俺は・・・俺の命が終わるまで好きでいる。」
※お話の内容は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もございません。
※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※誤字脱字や表現不足などは日々訂正していきますのでどうかご容赦ください。(目が悪いので見えてない部分も多いのです・・・すみません。)
※ただただこの世界を楽しんでいただけたら幸いです。 すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる