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Case.05 奪回
海上 二日目 五月十六日 午前七時五十三分
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身体に程よく回っていたアルコールが薬になったのか、今朝は驚くほど気持ちの良い目覚めだった。
緊張に加え、慣れぬ船泊で体調を崩すかもしれないのではと危惧していたが、普段よりも眠りが深かったらしく、シャワーから出て着替え終わった今も、疲れの一片も感じない。
(昨日のって、夢じゃないよね…?)
テーブルに置いたトランプの切れ端を確認し、王司は昨晩の出来事を思い出す。
ディーラーに扮した未荻がトランプの意を組んで、自分達の仕事を手伝うに相応しいかを問うようにゲームを仕掛けた。
配られたカードを淡々と捲り選び、男は戸惑う様子も顔色も変えず、誌面で見せる静謐さを携えたまま、彼女に自身の手札の一切を悟らせることなく勝利を重ね続けたのだ。
恐ろしく思える程の勝負強さを見せられ、話すこともままならないまま、秘密裏の顔合わせは終わった。
「りーいーさ、里依紗ってばー!」
「ひゃっ?!」
「やっと動いたー…ずっと固まってるからどうしたのかと思ったよ。髪編んで欲しいんだけどいい?」
鏡前に座り、艶やかな白金と真紅の二色髪を一房掴んで見せる志鐘 香菜里に頷き、椅子と櫛を手に移動する。
生活に必要な家具類が作り付けられた部屋内では地上のホテルのなんら変わりない。
しかし、空調では身体を冷やしすぎるからと、開けていた窓から入っていた潮の香りが、ここが海上である事を改めて認識させられる。
「水葉はまだ寝てる?」
「うん、まだ酔っちゃってるみたい。お昼には起きるって」
昨晩、自分達とは別行動をしていた北尾 水葉は、人が入れる場所で船体の中でも海一番に近い貨物室へ侵入。
目当てとしている品が何処にあるか調査してくれていた彼女は、長時間に渡って不規則に揺らされていたせいで、船に酔い切ってしまったらしい。
起きてからシャワーを浴びる前に様子を見に行ったが、顔色が悪かったため未荻に連絡を入れて休ませることにしたが、それを彼女に伝えるのを忘れていた。
「そういえば理衣沙、ハヤトさんと一緒に遊んだんでしょ?!いいなぁ、私もそっち行きたかった…」
「船に居る間は一緒なんだし、このあと会えるよ?」
「そりゃラフなハヤトさん見られるのはレアだけど、ドレスアップ姿は夜じゃなきゃ見られないじゃん、先に見たのが羨ましいの!」
子供のように拗ねて頬を膨らませて頭を揺らす志鐘に苦笑し、「髪が出来ないから」と王司は柔らかく窘める。
(……あのカード、ちゃんと二つで一枚になる様になってた。未荻さんが【請負屋さん】に渡した物で間違ってない)
冷たく柔かな微笑み。
鉱石の様な深い色の紫電の目。
頭の奥を痺れさせるような、響く低音。
雑誌の印象のままで見れば、確かに見惚れてしまうだろう。
しかし、昨日の一戦で《HAYATO》と云う男が持つ別の顔 - 業務代行請負人としての一面を見せられたせいか、王司の中には憧れよりも、自身がミスをしないかの不安が高まっている。
(……もうお一方は解らないけど、足引っ張らないようにしないと)
「理衣沙、大丈夫?手が止まって百面相になってるけど」
「はぇっ、ゴメン!」
鏡越しに片眉を顰める志鐘の髪を解き直しながら、胸につかえる息をゆっくりと吐いた。
**********
『──。パパ、おしごとがんばってねー!』
「はいはーい頑張ってくるよー。ばいばーい」
画面の向こう側、目一杯に小さな手を振る愛娘の声援と妻の控えめな笑みに手を振りかえし、千都世は電話映像を切って紅玉のような眼球の上へ偽装の茶色を被せる。
本来ならば主賓であるHAYATOのマネージングとスタイリングだけをすれば良いのだが、案件内容が内容なだけに彼らへ依頼を委託したのは自分達だ。
針穴を探す程度でも手伝うつもりはある。
呼ばれた本人のマネージャー兼スタイリストとして共に乗船したのが昨日。
招かれた者達同士の顔通しを兼ねたパーティーは疾斗に任せて見て回った限り、客は主賓を除けば自分のような付人や遣いと見られる人間くらいで、他は船内スタッフや警備員だった。
広さに対して客数が明らかに少ない事を考えると、この客船は主催による貸切である事は間違いないだろう。
「おぅ朱櫻。おはようさん」
「あーら疾風ちゃん、お・は・よ ♪ 疾斗ちゃん一緒じゃないのね?」
「船内散歩がてらジムルーム行った。そろそろ戻ってくるだろ多分」
「あらそぉ~。ところで疾風ちゃん、どぉしてそんなヘンな顔してるワケ?」
返した挨拶へ僅かに怪訝な顔を見せた疾風を覗き込んで口角を上げて見せれば、視線が逸らされる。
普通に話せと言わんばかりの気配を漂わせる管理長へ、しなを作りながらあえて問い続けてやれば、眉間の皺を増やして顔面を押し返される。あからさまな拒否反応を遊ぶように身体を左右に振っていると、僅かながら電子シャッター音が聴こえた。
「ちょっとハヤトちゃん、アナタ何やってんのよ?!」
「いや、[旦那がウチの兄貴にセクハラ疑惑だ]って通報しようかと…」
「やめてやめて、アタシ咲良に嫌われたら生きていけない!」
いつの間にか背後に経っていた疾斗が手に持つ携帯端末を慌てて取り上げれば、画面には既にアドレス帳の検索表示。
本気だったのかと睨め付ければ、どちらとも取れない笑みを浮かべて肩を竦めて見せる。少々行き過ぎた悪ふざけが苛立たせてしまったのか、珍しく表情からも僅かな怒気を感じるのは気のせいだろうか。
表情を変えない彼に対しての心拍の警鐘が耳奥に響く中、取り上げていた携帯端末を差し出せば、それを暫く見つめたのちに悪戯を成功させた子供のように顔を崩す。
回収されていった携帯端末が疾斗の上着へと片づけられていくのを確認し、胸を撫で下ろして息を抜いたと同時、足音が一つ増えた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
疾斗が声を向けた方へ向き直れば、目鼻立ちがはっきりとした黄色系二色髪の娘が控えめに頭を下げる。
「初めまして、Elder Phantomのリーダーを務めている、王司里依紗と申します」
「ハヤトのスタイリング担当の千都世 朱櫻よ。よろしくね」
自信なさげに俯き続ける王子の前へ手を差し出せば、数拍空けておずおずと握り返す。
「そちらの方は、昨日会場にいらっしゃったディーラーさん、ですよね?」
「あの賑わいで人の顔覚えてるたァ、大した観察眼してる。新堂だ、よろしく頼む」
画面の中での彼女は堂々とした態度でコメントを返して明るく笑い、力強い歌声で二人を引っ張っていく印象があった。しかし、目の前にいる本人はまるで真反対の印象だ。
キャラクターイメージにしてはあまりにも違う姿に一瞬本人か疑うが、髪色や声の感じからして誰かが入れ替わっているわけではないだろう。
「なんか、お顔がそっくりですね?」
「双子だからな。顔だけは似ている。カードの片割れだ」
付け加えられた一言に王司は僅かに身体を慄かせ、一瞬の間を置いて首を傾ぐ。
「……千都世さんじゃ、ないんですか?」
「アタシも請負屋よ。でも、頂いたお話が大きすぎたから、二人にお願いしたの」
アタシ、新堂サンとハヤトちゃんの足下にも及ばない下っ端だからね。
僅かな虚偽を混ぜるも、限りなく事実に近い解を答えれば、不思議そうに目を瞬かせて二人を見上げ直す。
外見で判断すれば、疾斗達よりも年齢を重ねている自分の方が上に見えるのは無理もない。
しかし、職に就いた年数では二人の職歴の半分程である上に本職ではない。
中堅層に値こそするが稼ぎは少ないため、下っ端というのもあながち間違いでもないと言える。
多少の手伝いやスタイリングは任せて、と笑って見せれば、やや困惑しながらも頷いて笑う。
ようやくテレビで見かけた笑顔が見られたことに安堵しつつ、千都世は人の気配が一向に増えない事に首を傾げた。
「そういえば理衣沙ちゃん、他の人達は?」
「未荻さんと香菜里ちゃんは多分そろそろ来ます。水葉ちゃんは結構ひどい船酔いしちゃってるので、お昼くらいになると思うんですけど…」
「昼か……流石にまずいかもしれないな」
疾斗の発言に王司は目を丸くするが、共に話をしていた疾風に目を向ければ、彼とこちらの意を組んで男は頷く。
このクルージングパーティーは、疾斗や王司を含む参加者全員、誰が参加しているのか知らされないという、少々異質な取り決めがされていた。
そのルールがある以上、疾斗はマネージャー役として付いてきた千都世以外の人間とは初対面、もしくは多少の知人程度くらいである筈の状況になる。
まして、Elder Phantomは音楽・HAYATOは雑誌や映像モデル。芸能界とはいえ普段賑わせている場所が違う。
多少の時間を共にするのは良いが、同じ場所で長時間話し込む状況は不自然と言えるだろう。
「王司サン、だったか。午後からの顔通しは疾斗だけでいいか?水葉って子には悪ィが、ある程度方向性を決めねえと、宝物の奪回どころか動くのも難しくなっちまう」
「そ、そうなんですか?」
疾風の提案は若い娘には些か疑問が残る物だったらしい。こちらを見上げる王司に自分達の置かれている状況を掻い摘んで説明すれば、内容を理解したと同時に顔へ影を落として何度も頷く。
「水葉への説明と説得は私がします」と意気込む彼女の隣、何かを見つめる猫のように一点を睨める疾斗を見る。
三日月を映す右眼の先を見れば、数センチほどの小さなレンズがこちらを見つめていた。
緊張に加え、慣れぬ船泊で体調を崩すかもしれないのではと危惧していたが、普段よりも眠りが深かったらしく、シャワーから出て着替え終わった今も、疲れの一片も感じない。
(昨日のって、夢じゃないよね…?)
テーブルに置いたトランプの切れ端を確認し、王司は昨晩の出来事を思い出す。
ディーラーに扮した未荻がトランプの意を組んで、自分達の仕事を手伝うに相応しいかを問うようにゲームを仕掛けた。
配られたカードを淡々と捲り選び、男は戸惑う様子も顔色も変えず、誌面で見せる静謐さを携えたまま、彼女に自身の手札の一切を悟らせることなく勝利を重ね続けたのだ。
恐ろしく思える程の勝負強さを見せられ、話すこともままならないまま、秘密裏の顔合わせは終わった。
「りーいーさ、里依紗ってばー!」
「ひゃっ?!」
「やっと動いたー…ずっと固まってるからどうしたのかと思ったよ。髪編んで欲しいんだけどいい?」
鏡前に座り、艶やかな白金と真紅の二色髪を一房掴んで見せる志鐘 香菜里に頷き、椅子と櫛を手に移動する。
生活に必要な家具類が作り付けられた部屋内では地上のホテルのなんら変わりない。
しかし、空調では身体を冷やしすぎるからと、開けていた窓から入っていた潮の香りが、ここが海上である事を改めて認識させられる。
「水葉はまだ寝てる?」
「うん、まだ酔っちゃってるみたい。お昼には起きるって」
昨晩、自分達とは別行動をしていた北尾 水葉は、人が入れる場所で船体の中でも海一番に近い貨物室へ侵入。
目当てとしている品が何処にあるか調査してくれていた彼女は、長時間に渡って不規則に揺らされていたせいで、船に酔い切ってしまったらしい。
起きてからシャワーを浴びる前に様子を見に行ったが、顔色が悪かったため未荻に連絡を入れて休ませることにしたが、それを彼女に伝えるのを忘れていた。
「そういえば理衣沙、ハヤトさんと一緒に遊んだんでしょ?!いいなぁ、私もそっち行きたかった…」
「船に居る間は一緒なんだし、このあと会えるよ?」
「そりゃラフなハヤトさん見られるのはレアだけど、ドレスアップ姿は夜じゃなきゃ見られないじゃん、先に見たのが羨ましいの!」
子供のように拗ねて頬を膨らませて頭を揺らす志鐘に苦笑し、「髪が出来ないから」と王司は柔らかく窘める。
(……あのカード、ちゃんと二つで一枚になる様になってた。未荻さんが【請負屋さん】に渡した物で間違ってない)
冷たく柔かな微笑み。
鉱石の様な深い色の紫電の目。
頭の奥を痺れさせるような、響く低音。
雑誌の印象のままで見れば、確かに見惚れてしまうだろう。
しかし、昨日の一戦で《HAYATO》と云う男が持つ別の顔 - 業務代行請負人としての一面を見せられたせいか、王司の中には憧れよりも、自身がミスをしないかの不安が高まっている。
(……もうお一方は解らないけど、足引っ張らないようにしないと)
「理衣沙、大丈夫?手が止まって百面相になってるけど」
「はぇっ、ゴメン!」
鏡越しに片眉を顰める志鐘の髪を解き直しながら、胸につかえる息をゆっくりと吐いた。
**********
『──。パパ、おしごとがんばってねー!』
「はいはーい頑張ってくるよー。ばいばーい」
画面の向こう側、目一杯に小さな手を振る愛娘の声援と妻の控えめな笑みに手を振りかえし、千都世は電話映像を切って紅玉のような眼球の上へ偽装の茶色を被せる。
本来ならば主賓であるHAYATOのマネージングとスタイリングだけをすれば良いのだが、案件内容が内容なだけに彼らへ依頼を委託したのは自分達だ。
針穴を探す程度でも手伝うつもりはある。
呼ばれた本人のマネージャー兼スタイリストとして共に乗船したのが昨日。
招かれた者達同士の顔通しを兼ねたパーティーは疾斗に任せて見て回った限り、客は主賓を除けば自分のような付人や遣いと見られる人間くらいで、他は船内スタッフや警備員だった。
広さに対して客数が明らかに少ない事を考えると、この客船は主催による貸切である事は間違いないだろう。
「おぅ朱櫻。おはようさん」
「あーら疾風ちゃん、お・は・よ ♪ 疾斗ちゃん一緒じゃないのね?」
「船内散歩がてらジムルーム行った。そろそろ戻ってくるだろ多分」
「あらそぉ~。ところで疾風ちゃん、どぉしてそんなヘンな顔してるワケ?」
返した挨拶へ僅かに怪訝な顔を見せた疾風を覗き込んで口角を上げて見せれば、視線が逸らされる。
普通に話せと言わんばかりの気配を漂わせる管理長へ、しなを作りながらあえて問い続けてやれば、眉間の皺を増やして顔面を押し返される。あからさまな拒否反応を遊ぶように身体を左右に振っていると、僅かながら電子シャッター音が聴こえた。
「ちょっとハヤトちゃん、アナタ何やってんのよ?!」
「いや、[旦那がウチの兄貴にセクハラ疑惑だ]って通報しようかと…」
「やめてやめて、アタシ咲良に嫌われたら生きていけない!」
いつの間にか背後に経っていた疾斗が手に持つ携帯端末を慌てて取り上げれば、画面には既にアドレス帳の検索表示。
本気だったのかと睨め付ければ、どちらとも取れない笑みを浮かべて肩を竦めて見せる。少々行き過ぎた悪ふざけが苛立たせてしまったのか、珍しく表情からも僅かな怒気を感じるのは気のせいだろうか。
表情を変えない彼に対しての心拍の警鐘が耳奥に響く中、取り上げていた携帯端末を差し出せば、それを暫く見つめたのちに悪戯を成功させた子供のように顔を崩す。
回収されていった携帯端末が疾斗の上着へと片づけられていくのを確認し、胸を撫で下ろして息を抜いたと同時、足音が一つ増えた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
疾斗が声を向けた方へ向き直れば、目鼻立ちがはっきりとした黄色系二色髪の娘が控えめに頭を下げる。
「初めまして、Elder Phantomのリーダーを務めている、王司里依紗と申します」
「ハヤトのスタイリング担当の千都世 朱櫻よ。よろしくね」
自信なさげに俯き続ける王子の前へ手を差し出せば、数拍空けておずおずと握り返す。
「そちらの方は、昨日会場にいらっしゃったディーラーさん、ですよね?」
「あの賑わいで人の顔覚えてるたァ、大した観察眼してる。新堂だ、よろしく頼む」
画面の中での彼女は堂々とした態度でコメントを返して明るく笑い、力強い歌声で二人を引っ張っていく印象があった。しかし、目の前にいる本人はまるで真反対の印象だ。
キャラクターイメージにしてはあまりにも違う姿に一瞬本人か疑うが、髪色や声の感じからして誰かが入れ替わっているわけではないだろう。
「なんか、お顔がそっくりですね?」
「双子だからな。顔だけは似ている。カードの片割れだ」
付け加えられた一言に王司は僅かに身体を慄かせ、一瞬の間を置いて首を傾ぐ。
「……千都世さんじゃ、ないんですか?」
「アタシも請負屋よ。でも、頂いたお話が大きすぎたから、二人にお願いしたの」
アタシ、新堂サンとハヤトちゃんの足下にも及ばない下っ端だからね。
僅かな虚偽を混ぜるも、限りなく事実に近い解を答えれば、不思議そうに目を瞬かせて二人を見上げ直す。
外見で判断すれば、疾斗達よりも年齢を重ねている自分の方が上に見えるのは無理もない。
しかし、職に就いた年数では二人の職歴の半分程である上に本職ではない。
中堅層に値こそするが稼ぎは少ないため、下っ端というのもあながち間違いでもないと言える。
多少の手伝いやスタイリングは任せて、と笑って見せれば、やや困惑しながらも頷いて笑う。
ようやくテレビで見かけた笑顔が見られたことに安堵しつつ、千都世は人の気配が一向に増えない事に首を傾げた。
「そういえば理衣沙ちゃん、他の人達は?」
「未荻さんと香菜里ちゃんは多分そろそろ来ます。水葉ちゃんは結構ひどい船酔いしちゃってるので、お昼くらいになると思うんですけど…」
「昼か……流石にまずいかもしれないな」
疾斗の発言に王司は目を丸くするが、共に話をしていた疾風に目を向ければ、彼とこちらの意を組んで男は頷く。
このクルージングパーティーは、疾斗や王司を含む参加者全員、誰が参加しているのか知らされないという、少々異質な取り決めがされていた。
そのルールがある以上、疾斗はマネージャー役として付いてきた千都世以外の人間とは初対面、もしくは多少の知人程度くらいである筈の状況になる。
まして、Elder Phantomは音楽・HAYATOは雑誌や映像モデル。芸能界とはいえ普段賑わせている場所が違う。
多少の時間を共にするのは良いが、同じ場所で長時間話し込む状況は不自然と言えるだろう。
「王司サン、だったか。午後からの顔通しは疾斗だけでいいか?水葉って子には悪ィが、ある程度方向性を決めねえと、宝物の奪回どころか動くのも難しくなっちまう」
「そ、そうなんですか?」
疾風の提案は若い娘には些か疑問が残る物だったらしい。こちらを見上げる王司に自分達の置かれている状況を掻い摘んで説明すれば、内容を理解したと同時に顔へ影を落として何度も頷く。
「水葉への説明と説得は私がします」と意気込む彼女の隣、何かを見つめる猫のように一点を睨める疾斗を見る。
三日月を映す右眼の先を見れば、数センチほどの小さなレンズがこちらを見つめていた。
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