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Case.02 雨
東都 東地区γ− 一月二十七日 午後十二時十八分
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灰の濃淡で彩られる中庭に、眩しくさえ思える白が差し込んでいる。
硝子扉に手を差し出せば音なく開き、体内に滞留し続ける水分に冷やされた身体が春の陽気に暖められる。
─ 能力の使用代償による病状悪化により、新堂によってこの施設に預けられ、二日間ほど生死を彷徨っていたらしい。
施設の持ち主という男から説明を受けただけだが、言われてみれば新堂が呼び掛ける声を聞いた記憶はあれど、その後の事をよく覚えていない。
(依頼は出来たんだっけか…?憶えてねぇ…)
麻酔はとうに切れている筈だが、眠っていた時間が長過ぎたためか、まだ頭に靄がかかっている。
本来の内臓は過剰な水分に壊され、人工的に作られた物へ換えられているらしいが、数回の交換手術により肉体が限界を迎え、今入れている物が最後だと通告されている。
『キミ、いま生きてること自体おかしい位なんだからね?』
(……執着心ってやつかねぇ)
また家族で暮らしたいという希望に縋り、この世に生を縛りつけているのだろうか。
黒髪の男の言葉を思い出して自らの幻想に嗤い、唐須間は顔を擦ろうと右腕を持ち上げるが、指が上手く曲がらず仕方なしに袖口で拭う。
運動中枢はまだ然程浸食されていないらしいが、それでも筆記や細かい作業はもう出来ない。
試験的に作られた進行延引剤が効いているとはいえ、動けなくなるのも時間の問題だろう。
「──ハイハイ、気をつけますよー」
誰かが話しているのか、やけに軽い口調の返事が聞こえる。
声の方へ振り向けば、携帯端末を耳に当てて面倒そうに受け答えをする研究所長が辺りを見回している。見えているのかよく分からない糸目で唐須間の姿を見つけると緩く手を振って近づいて来た。
「やっと見つけたよー、部屋に居ないから探してたんだよ。キミとお話したいって人から電話」
「誰…です」
「声聞けばわかるでしょ?耳は大丈夫なんだし」
落とされたら困るから、とフリーハンズモードに切り替えたそれを胸ポケットに差し込まれる。
「……もしもし」
『よぅ、おっさん。調子はどうだ?』
「……オメーさんのせいであちこち改造されて生き長らえちまってるよ、新堂兄」
『はっ、そうかいそりゃ良かった。仕事が無意味にならずに済んだ』
軽口を鼻で笑った請負人は、記憶が曖昧の脳を揺するような不可解な発言を落とす。
何を言っているのかと尋ねようにも、不快な電子雑音が胸元から耳を刺激し、あちらも声が届いていないのか返事か問いかも解らない音だけが聞こえる。
傍らに立つ糸目の男を見れば、首を傾げて胸から引き抜いた端末を手に取り確認すれば、「向こうが弱電波だねー」と肩を竦めて笑い、身体を揺らして接続を待つ。
『──っ、おーい?』
「聞こえたよー。って言うかお客さんっていつ来るの?もう待ち飽きてきたんだけど?」
『仕方ねェだろ、そこのおっさんのせいで里央経由でそっち向かってもらう他ねェんだから』
「えー…あんまり他人に来て欲しくないんだけどなぁ。気が散っちゃう」
『テメーはいつだってそうだろ』
軽妙なリズムで進む会話に織り交ぜられた棘の痛みを胸奥に感じつつ、唐須間は二人の何気ない話に交ざり、時に笑い呆れながらそれを楽しむ。
復讐の赫雨に濡れ、暴飲豪遊暴殺を繰り返す自分を止める声に耳を貸さなかった。
この五年間、子供達との会話は外出制止と否定以外には無いに等しく、こんなに笑った記憶もない。
「斑鳩所長、新堂さんのご友人とお連れ様三人が見えました」
「あ、そう?じゃ、車ごと医療棟門へ案内してあげて」
「え、正門じゃないんですか?」
若い男の問い掛けに動きを止め、送話部を手で塞いだ斑鳩が顔を上げて静かに息を深く吐く。
「無意味な質問だなぁ…。時間無いんだけど?」
絵に描いた狐の様な細目が開いた瞬間、纏っていた和やかな空気は一瞬に掻き消え、ゆるりと口角を上げる。
糸月すらもない暗黒の夜にも似た双眼の中、色彩を失ってしまっている筈の瞳が【紅】を捉える。
「──っ申し訳あり」
「謝るより先に行く。返事も要らない、はいほら早く」
所長の追い払う手に気付くやいなや、大蛇に睨まれた小動物の如く固まっていた青年は即時踵を返し走り出す。
色彩が戻ったのかと中庭の花を見るが、そこには濃淡だけが鮮やかな灰色の花壇しか見えない。
上背を汗に冷やされながら斑鳩と呼ばれた男へと顔を向けるも、悍ましい色を携えた瞳は既に瞼下へと収め、何事でも無かった様に端末越しの新堂と話している。
何事もなかったように、和やかな空気を纏って。
自分以外の時間が遡及したような妙な感覚に、自らの居場所を確認するように時計を見上げれば、長針も秒針も進んでいる。
何が何を異質に思わせるのか。自身の思考が定まらなくなる。
「ねーぇ、大丈夫?」
軽く呼び掛ける声と同時、足元から顔を覗き込む斑鳩が視界に映り思わず飛び退く。
「あっはは、そんなびっくりした?」
「す…んません…」
「いーよいーよ、気にしないで」
からからと無邪気な子供のように笑い、自分に付いて来てくれと手招く男から数歩引き、唐須間は警戒を巡らせて足を踏み出す。
気を向けていなかったとはいえ、一切の音も気配も感じる事は出来なかったことと、先の瞬刻に覗かせた鮮烈なる紅瞳に、僅かな畏怖を覚えた唐須間の身体は細かに震えている。
言葉を流して先を歩く斑鳩へ意味の無い相槌を打ち、時に混ぜられる笑い話に愛想笑いを返しながら白く長い廊下を行く。
止めどなく溢れ続ける興味の向かない話題へ頷くことさえも怠さを覚え始めた頃、見覚えのない擦り硝子扉が見えてきたところで、斑鳩はぴたりと立ち止まると、こちらへと振り向いた。
「ボクがキミと会う事は二度とないから忠告がてらに言っておくんだけどさ」
「……何、です?」
「───────。莫迦やって、家族泣かせないようにね」
**********
「───あぁ、ありがとう。社長にも宜しく伝えてくれ。─あぁ、またな」
耳に押し当てていた受話部から都築の音声が途切れた事を確認し、テーブル上の飴包みと交換に携帯端末を置く。
連絡を待つため、能力代償の強制睡眠に少しでも抵抗しようとコーヒーを飲み続けていたせいか、口へ放り込んだ飴の甘味さえ大して感じられないほど、味覚が鈍っている。
距離感もわからないままマグカップへと手を伸ばすと、同じ顔をした実兄が呆れた顔で手首を掴んだ。
「もうやめとけ、何杯目だと思ってんだ」
「…つい」
「飲むならホットミルクにしとけ」
取り上げられたカップを目で追うことすら億劫に思え、疾斗は素直に渡された飲料へと口を付けた。
都築からの電話は、唐須間達の再会と送迎と飛伽組の事実上の解体となった事の連絡だった。
情報が各都単位であるこの国では、他都に起きている情勢や事件を取り上げることは少ない。
携帯端末を音声認識機能で立ち上げ、ホログラムスクリーンで南都のニュースサイトを開いてみれば、飛雅の人相と居住写真が真報虚報交じりの文章と共に大々的に映されている。
貼り合わせそうになる左目を細く開いた狭い視界、音量を下げて点けているテレビ画面へと目を向ければ、アナウンサーは何の変わり映えもない退屈なニュースを読み上げ続けている。
とはいえ、極東国内にある非営利組織の中では大規模な飛伽組の頭目逮捕が耳に入れば、各都は挙って特集番組を放送する事だろう。
─請負屋の存在と関与など知る事なく。
スクリーンを重い右手で振り払い消し、自室に向かおうとソファから身体を起こす。しかしあまりの眠気にうまく膝へ力が入らず、疾斗は立つことを諦めてソファのリクライニングを倒して横になる。
傍にあったクッションを引き寄せて頭の下に置き、天井を見上げれば、覗き込んできた実兄が寝の体制に入った自分へ薄手の毛布を顔に投げた。
「……雑」
「起きたら風邪引いてましたー、よかマシだろ。部屋行かねえんだな」
「…面倒」
「そうかい。ま、代償睡眠はそこで寝てもらった方がこっちとしてもいい。体勢交換が楽だしな」
「だった…聞か、なく…も、いい……」
疾風の他愛ない問いの解すら、舌が縺れて答えることがだるくなる。
心地よい硬さのソファに身を委ね、疾斗は夢すらも見ることが出来ない、泥の様に重い眠りの世界へと落ちていった。
硝子扉に手を差し出せば音なく開き、体内に滞留し続ける水分に冷やされた身体が春の陽気に暖められる。
─ 能力の使用代償による病状悪化により、新堂によってこの施設に預けられ、二日間ほど生死を彷徨っていたらしい。
施設の持ち主という男から説明を受けただけだが、言われてみれば新堂が呼び掛ける声を聞いた記憶はあれど、その後の事をよく覚えていない。
(依頼は出来たんだっけか…?憶えてねぇ…)
麻酔はとうに切れている筈だが、眠っていた時間が長過ぎたためか、まだ頭に靄がかかっている。
本来の内臓は過剰な水分に壊され、人工的に作られた物へ換えられているらしいが、数回の交換手術により肉体が限界を迎え、今入れている物が最後だと通告されている。
『キミ、いま生きてること自体おかしい位なんだからね?』
(……執着心ってやつかねぇ)
また家族で暮らしたいという希望に縋り、この世に生を縛りつけているのだろうか。
黒髪の男の言葉を思い出して自らの幻想に嗤い、唐須間は顔を擦ろうと右腕を持ち上げるが、指が上手く曲がらず仕方なしに袖口で拭う。
運動中枢はまだ然程浸食されていないらしいが、それでも筆記や細かい作業はもう出来ない。
試験的に作られた進行延引剤が効いているとはいえ、動けなくなるのも時間の問題だろう。
「──ハイハイ、気をつけますよー」
誰かが話しているのか、やけに軽い口調の返事が聞こえる。
声の方へ振り向けば、携帯端末を耳に当てて面倒そうに受け答えをする研究所長が辺りを見回している。見えているのかよく分からない糸目で唐須間の姿を見つけると緩く手を振って近づいて来た。
「やっと見つけたよー、部屋に居ないから探してたんだよ。キミとお話したいって人から電話」
「誰…です」
「声聞けばわかるでしょ?耳は大丈夫なんだし」
落とされたら困るから、とフリーハンズモードに切り替えたそれを胸ポケットに差し込まれる。
「……もしもし」
『よぅ、おっさん。調子はどうだ?』
「……オメーさんのせいであちこち改造されて生き長らえちまってるよ、新堂兄」
『はっ、そうかいそりゃ良かった。仕事が無意味にならずに済んだ』
軽口を鼻で笑った請負人は、記憶が曖昧の脳を揺するような不可解な発言を落とす。
何を言っているのかと尋ねようにも、不快な電子雑音が胸元から耳を刺激し、あちらも声が届いていないのか返事か問いかも解らない音だけが聞こえる。
傍らに立つ糸目の男を見れば、首を傾げて胸から引き抜いた端末を手に取り確認すれば、「向こうが弱電波だねー」と肩を竦めて笑い、身体を揺らして接続を待つ。
『──っ、おーい?』
「聞こえたよー。って言うかお客さんっていつ来るの?もう待ち飽きてきたんだけど?」
『仕方ねェだろ、そこのおっさんのせいで里央経由でそっち向かってもらう他ねェんだから』
「えー…あんまり他人に来て欲しくないんだけどなぁ。気が散っちゃう」
『テメーはいつだってそうだろ』
軽妙なリズムで進む会話に織り交ぜられた棘の痛みを胸奥に感じつつ、唐須間は二人の何気ない話に交ざり、時に笑い呆れながらそれを楽しむ。
復讐の赫雨に濡れ、暴飲豪遊暴殺を繰り返す自分を止める声に耳を貸さなかった。
この五年間、子供達との会話は外出制止と否定以外には無いに等しく、こんなに笑った記憶もない。
「斑鳩所長、新堂さんのご友人とお連れ様三人が見えました」
「あ、そう?じゃ、車ごと医療棟門へ案内してあげて」
「え、正門じゃないんですか?」
若い男の問い掛けに動きを止め、送話部を手で塞いだ斑鳩が顔を上げて静かに息を深く吐く。
「無意味な質問だなぁ…。時間無いんだけど?」
絵に描いた狐の様な細目が開いた瞬間、纏っていた和やかな空気は一瞬に掻き消え、ゆるりと口角を上げる。
糸月すらもない暗黒の夜にも似た双眼の中、色彩を失ってしまっている筈の瞳が【紅】を捉える。
「──っ申し訳あり」
「謝るより先に行く。返事も要らない、はいほら早く」
所長の追い払う手に気付くやいなや、大蛇に睨まれた小動物の如く固まっていた青年は即時踵を返し走り出す。
色彩が戻ったのかと中庭の花を見るが、そこには濃淡だけが鮮やかな灰色の花壇しか見えない。
上背を汗に冷やされながら斑鳩と呼ばれた男へと顔を向けるも、悍ましい色を携えた瞳は既に瞼下へと収め、何事でも無かった様に端末越しの新堂と話している。
何事もなかったように、和やかな空気を纏って。
自分以外の時間が遡及したような妙な感覚に、自らの居場所を確認するように時計を見上げれば、長針も秒針も進んでいる。
何が何を異質に思わせるのか。自身の思考が定まらなくなる。
「ねーぇ、大丈夫?」
軽く呼び掛ける声と同時、足元から顔を覗き込む斑鳩が視界に映り思わず飛び退く。
「あっはは、そんなびっくりした?」
「す…んません…」
「いーよいーよ、気にしないで」
からからと無邪気な子供のように笑い、自分に付いて来てくれと手招く男から数歩引き、唐須間は警戒を巡らせて足を踏み出す。
気を向けていなかったとはいえ、一切の音も気配も感じる事は出来なかったことと、先の瞬刻に覗かせた鮮烈なる紅瞳に、僅かな畏怖を覚えた唐須間の身体は細かに震えている。
言葉を流して先を歩く斑鳩へ意味の無い相槌を打ち、時に混ぜられる笑い話に愛想笑いを返しながら白く長い廊下を行く。
止めどなく溢れ続ける興味の向かない話題へ頷くことさえも怠さを覚え始めた頃、見覚えのない擦り硝子扉が見えてきたところで、斑鳩はぴたりと立ち止まると、こちらへと振り向いた。
「ボクがキミと会う事は二度とないから忠告がてらに言っておくんだけどさ」
「……何、です?」
「───────。莫迦やって、家族泣かせないようにね」
**********
「───あぁ、ありがとう。社長にも宜しく伝えてくれ。─あぁ、またな」
耳に押し当てていた受話部から都築の音声が途切れた事を確認し、テーブル上の飴包みと交換に携帯端末を置く。
連絡を待つため、能力代償の強制睡眠に少しでも抵抗しようとコーヒーを飲み続けていたせいか、口へ放り込んだ飴の甘味さえ大して感じられないほど、味覚が鈍っている。
距離感もわからないままマグカップへと手を伸ばすと、同じ顔をした実兄が呆れた顔で手首を掴んだ。
「もうやめとけ、何杯目だと思ってんだ」
「…つい」
「飲むならホットミルクにしとけ」
取り上げられたカップを目で追うことすら億劫に思え、疾斗は素直に渡された飲料へと口を付けた。
都築からの電話は、唐須間達の再会と送迎と飛伽組の事実上の解体となった事の連絡だった。
情報が各都単位であるこの国では、他都に起きている情勢や事件を取り上げることは少ない。
携帯端末を音声認識機能で立ち上げ、ホログラムスクリーンで南都のニュースサイトを開いてみれば、飛雅の人相と居住写真が真報虚報交じりの文章と共に大々的に映されている。
貼り合わせそうになる左目を細く開いた狭い視界、音量を下げて点けているテレビ画面へと目を向ければ、アナウンサーは何の変わり映えもない退屈なニュースを読み上げ続けている。
とはいえ、極東国内にある非営利組織の中では大規模な飛伽組の頭目逮捕が耳に入れば、各都は挙って特集番組を放送する事だろう。
─請負屋の存在と関与など知る事なく。
スクリーンを重い右手で振り払い消し、自室に向かおうとソファから身体を起こす。しかしあまりの眠気にうまく膝へ力が入らず、疾斗は立つことを諦めてソファのリクライニングを倒して横になる。
傍にあったクッションを引き寄せて頭の下に置き、天井を見上げれば、覗き込んできた実兄が寝の体制に入った自分へ薄手の毛布を顔に投げた。
「……雑」
「起きたら風邪引いてましたー、よかマシだろ。部屋行かねえんだな」
「…面倒」
「そうかい。ま、代償睡眠はそこで寝てもらった方がこっちとしてもいい。体勢交換が楽だしな」
「だった…聞か、なく…も、いい……」
疾風の他愛ない問いの解すら、舌が縺れて答えることがだるくなる。
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