パソニフィ・コンフュージョン

沼蛙 ぽッチ & デブニ

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第35話 胸焼けした後に見るにゃんこ

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突然、気まぐれにゃんこのミトさんがやってきた。
「小池、レンタルされろ!」
「まいどありー。」
引き続きお家にいたオコメさんは、はわはわと戸惑い硬直した。
(レトルトちゃんが、危険にゃんこにレンタルされちゃう!?)
「あれ?用務員さん、何でここにいんの?」
オコメさんは、突然ノブ子を抱きしめてススススッと後退した。
「オコメさんの新しい遊び……?」

「そうそう、一緒に遊ぼーぜ。お前と一緒に遊んでなかったなーって。」
「明日修学旅行なのに?」
「だからだよ。私は取り巻きの奴等と一緒に回る事になるだろ?放課後だって、一緒にどっかに寄るみたいなん、してねーじゃん。」
「あ……あのっ」
「そんなに震える程コイツのこと心配なら、用務員さんも一緒にいこーぜ。なっ!」
「はひっ……はい。」
「アキヨシー!ノブ子借りていっていいー?後、用務員さんもー!」
丁度通りかかったハルヨシは手で円を作り、いいよー。と勝手に言った。
「ん?アキヨシなんかお酒でも飲んでる?なんかご機嫌じゃん。」

「えっ、アキヨシの双子の弟!?」
「私はあの方が帰るまで、ノブ子ちゃんの近くに居ることにしたのです!」
それは、今朝オコメさんは衝撃の光景を見てしまったからだった。

それは、オコメさんが目撃者になる前の晩の出来事。
「おにぃ寒いー。」
「ちょっと狭いから入ってくんな。反省してソファで寝てろよ。」
と、背中を向ける様に寝返りを打った。一見嫌がってる様に見える仕草だった。しかし実は、弟が入れる様にスペースを作ってあげた優しいお兄ちゃんなアキヨシなのだった。
「寒いって……お前パンツ一丁で入ってくんなよな。」
オコメさんが見てない時も、大分胸焼けのする様な光景だった。

「おにぃあったかーい。」
と、弟はアキヨシの背中にピッタリ張り付いた。
狭いって!っとアキヨシは振り返った。そこには真剣な顔をした弟が居た。
「おにぃ…ノブ子ちゃんと出会ってずいぶんと大変だったんだね。」
「……仕方ないよ。理由は分からないけど僕があの子を擬人化させてしまったのかもしれないから……」
「結果、それでも良かったよ。おにぃって、じいじが亡くなってから、ずっとここで一人じゃん。お爺ちゃん子過ぎるよ。」
「それでも、僕は幸せだよ……おじぃの博物館を継ぐ事が出来て。」
「好き事で仕事してるおにぃは凄いと思う。だけど、一人は寂しかったでしょ?」
「僕は前一人だった時よりも、今の方が孤独を感じる……」
「フフフッ最近のおにぃ、寂しがりやだもんねー。何でだろ、周りに人が増えると余計に寂しくなるやつ。」
「賑やかな日々がある程つらい。あの子もいつか僕の前から居なくなってしまうんだ……」
「おにぃは本格的にお嫁さん探した方がいいと思うなぁー。オコメちゃんとか家庭的だしどーなの?」
「あの子も擬人化の子だから駄目。僕より先に居なくなっちゃうよ……」
「おにぃ…泣いてるの?」
「お前が妬ましい……奥さんと子供が居て。しかも、僕を一人にしたから……」
「大人になって結果的に離れちゃったけど、俺はおにぃの事今でも大好きだよ。」
「そんなの言うのずるいよ……」
「おにぃ可愛いー。お酒入ると直ぐ泣くー。」
うっせ。と、アキヨシは弟の胸に頭をコツンッと当てた。
「ねぇ……ノブ子ちゃんって何の動物だったの?」
「お前は口が軽いから言えねー。」
「えー、そんなに言えない事なの?」
「とりあえず、あの子の友だちの間では"ランフォリンクス"って事にしようって落ち着いた。」
「恐竜図鑑で見たあれ!?また、なんで?」
「皆あの子の正体は知りたいけど、仲良くなりすぎたんだ。知ってしまって後悔したら、自分自身が許せなくなったりするから、怖くて目をそらしたんだよ。」
「ノブ子ちゃん、皆から愛されてて良かったね。」
「青春を見守るのは辛い……」
「じゃぁ、おにぃの為に合コンをセッティングしよう!」
「お前、妻子持ちが何やってんの!?」
「良いじゃん、息抜き。」
「何でお前はそんなにチャラチャラしてるの!?本当に僕と同じ遺伝子持ってる?」
「おにぃが真面目過ぎるだけでしょ?」
「僕なら、妻と子供がいたら絶対一生大切にするのに!」
「大切にホルマリン漬けにして保存しそう。」
「何そのイメージ!!」
と、おじさん2人はキャッキャウフフと話疲れていつの間にか寝てしまったのだった。

「ご主人様方、ご朝食をお作りしました─」
と、ドアをノックして開けると目の前の光景に思わず硬直した。
「あ、オコメちゃんおはよー。」
と、ハルヨシは気だるく片手を挙げて挨拶した。
「アキヨシが分裂したみたい……フフッ」
「ノブ子ちゃん、見ちゃいけません!!」
オコメさんは、教育に悪いものと言わんばかりにノブ子の目をふさいだ。

そこには、半裸状態の同じ顔をしたおじさん2人が同じベッドで抱きしめあって寝ていたのだから仕方のない事だった─

「ノブ子ちゃんの生活環境に相応しくありません!!」
「アキヨシいつも朝、裸だよ?」
どうでも良い情報だが、アキヨシもハルヨシと同じくパンツ一丁で寝るタイプだった。
「うへー、朝からおっさん2人の裸は見たくないわー。オコメさん気の毒ー。」
意外にも話が通じるミトさんに、すっかりオコメさんは警戒心が薄れていた。

「ここ、服屋さん?」
「とりあえず、取り巻き達と一緒にやってきた事をお前としてみたい!」
「オコメ……お邪魔かしら……」
気遣ってくれるオコメさんに、ミトさんは小声で話しかけた。
「オコメさんが私を警戒するのは妥当だよ。」
「なっ、知って……」
「分かるよ。大体私を見ると怯えるのが普通じゃん。怯えないコイツは異常だから。」
「あなたは……危険なのですか?」
「そーだよ。だから、コイツの保護者してくれるんだろ?」
頼んだよ。と、明るく言うミトさんを見て、オコメさんは……彼女の底知れぬ寂しさや孤独さを感じ取ったのだった。
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