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第34話 カオス三者面談
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担任の先生は、信じられないとばかりに目をギュッと瞑り、目の前の光景が現実なのかを確かめた。
「えっと……小池さんのお義父様と……」
「用務員兼保護者のオコメです。」
「用務員さんが、お義母様でしたか……」
「いえ、ノブ子ちゃんの保護者です。」
「……まぁいいでしょう。ですが先生は、納得出来ない事が一点あります。」
「林さん……何故貴方もここにいるのですか?」
「私も彼女の保護者ですから!」
先生はストレスを感じて、今度は目を見開いたまま深い呼吸をひとつした─
◇
私は「小池ネイチャーミュージアム」に来ていました。
暇が出来るとこちらの博物館に行くことが、すっかり私の日課になっていました。今日は、妖精さんがいない日なのにもかかわらず……
「いらっしゃーい。」
その時出て来られた方を見て、私は感激いたしました!
「アキヨシさん素晴らしいです!ご自身のクローンをお作りになられていたなんて!!」
「クローンって!!最近の女子高生って面白い事言うんだねえ。」
「最近の女子高生なんて言ってるところも、アキヨシさんにそっくりです!」
「君って、ノブ子ちゃんのお友達なの?制服が一緒だし。」
「お友達以上恋人未満の関係です!」
何それ、面白ーい。と彼は噴き出しました。
「だけどよく、僕がアキヨシじゃないってわかったね?」
「はい。アキヨシさんは、もっと陰鬱な感じですし。髪を染める様なタイプじゃないです。白衣も着てません。」
「白衣着るとそれっぽいと思ったんだけどなー。だけど、髪型以外はかなり似てない?」
「いえ、つむじの生えてる方向が逆向きです。涙ぼくろの位置がアキヨシさんは、右目なのに対して貴方は左目にありますし。後、体型もアキヨシさんの方がフィールドワークをするからか引き締まっています。」
「えー何か、おにぃ女子高生に好かれてない?」
「好いてはいません。むしろ苦手です。」
えーそうかなあ。あやしー。と、からかわれて、アキヨシさんには無いイラつきを感じました。
「あ、そうそう。三者面談なんだってね!家事代行のオコメさんもノブ子ちゃんの保護者としてついて行くっていう。前代未聞の面白い事になったって知ってるー?」
「それ詳しく!!」
(オコメさんって、確か学校の用務員さんでしたよね……?)
「という訳で、アキヨシさんの弟さんに聞いて妖精さんの三者面談に乗り込むことにしたのです!」
「ハルヨシってば、口が軽いんだから!!」
何でよりによって、林さんに話すかなあ。と、アキヨシは狼狽した。そして、博物館の館長を任せている事に一抹の不安を感じた。
「ハルヨシさんの方が接客向いているんじゃないですかあ?馴れ馴れしい感じは苦手でしたが、お話するのは楽しかったですし。」
「あいつはノリが軽過ぎる!!」
「あのー、ノブ子さんの三者面談始めてもよろしいですか?」
先生はすっかり困惑しきって、疲れた顔をしていた。
「「是非!!」」
オコメさんと林さんの声が重なりあった。しかしその後、アキヨシを挟んで私の方がより保護者ですけど?と言わんばかりに、不穏な見つめ合いが始まっていた。
「先生、お気になさらず続けて下さい!」
アキヨシは、とりあえずスルーすることにした。
「それでは……少し早いのですが、ノブ子さんは進路を決めていますか?」
「私の将来の夢は永久就職です!」
私が養います!という林さんの発言を聞かなかったことにして、先生は次に話を進めることにした。
「……それは、専業主婦をしたいという事ですね。他に進学や就職は考えて無いですか?」
「……アキヨシの手伝いはして…ます。」
「この子は、進学はまだ考えていないみたいです。私が館長しています博物館の手伝いをして貰ってますので、今のところ引き続き手伝ってもらう方向で検討しています。」
そうなんですね!私もサポート致します!というオコメさんの発言もスルーして、先生は次に話を進める事にした。
「成績は突出はしてはいませんが、バランスよくこなせていると思います。しかし、よく保健室に行かれてますので、ノブ子さんの体調面が心配といったところでしょうか。擬人化の方ですので、何か特別な理由があるのでしょうか?」
オコメさんと林さんは、興味津々に耳をそばだてた。
「ええ、この子。体力はあまりありませんので、体育など激しい運動は出来ません。体育祭など、出来ないところは見学にさせて頂きたいと思います。」
私…健康だよ?という娘の言葉も、ややこしくなるのでアキヨシはあえてスルーした。
「あの……差し支えなければお教えして頂きたいのですが、娘さんは……爬虫類や虫などの擬人化の方じゃないですよね?」
アキヨシに視線が集中した。
「ええ、先生に不快感を与える様な動物ではなかったことは確かですので安心して下さい。」
ノブ子ちゃんは、"ランフォリンクス"だったんです!と、林さんは冗談を言った。
それを聞いたオコメさんは、やはり徳を積んだわんちゃんであるレトルトちゃんが恐竜に生まれ変わるのは納得出来ます!と、何故か合意した。
「……それでは、近々修学旅行がありますので、案内をお渡ししておきますね。」
「へぇ、今年は海外なんですね!僕の時は国内でしたよ。」
「今年は、海外旅行に詳しい先生が担当してくれていますので。楽しみにして下さいね。」
「妖精さん、一緒の班になりましょうね!」
「うん、林さんとなら安心……」
(安心する分、不安も付きまとうんだよなー。)と、アキヨシはため息をついた。
「先生、ありがとうございました。娘は目立つタイプではありませんので、こんなに気を使って頂いているなんて嬉しい限りです。これからもよろしくお願いします。」
と、小池一行は退出した。
担任の先生は、一番気になった事はあえて聞かなかった。いや、怖くて聞けなかった……
(小池さんのお義父さん、用務員さんと林さんとどういう関係なの!?)
娘公認のどろどろとした三角関係を持つお義父さんとか……訳が解らなかった。
「えっと……小池さんのお義父様と……」
「用務員兼保護者のオコメです。」
「用務員さんが、お義母様でしたか……」
「いえ、ノブ子ちゃんの保護者です。」
「……まぁいいでしょう。ですが先生は、納得出来ない事が一点あります。」
「林さん……何故貴方もここにいるのですか?」
「私も彼女の保護者ですから!」
先生はストレスを感じて、今度は目を見開いたまま深い呼吸をひとつした─
◇
私は「小池ネイチャーミュージアム」に来ていました。
暇が出来るとこちらの博物館に行くことが、すっかり私の日課になっていました。今日は、妖精さんがいない日なのにもかかわらず……
「いらっしゃーい。」
その時出て来られた方を見て、私は感激いたしました!
「アキヨシさん素晴らしいです!ご自身のクローンをお作りになられていたなんて!!」
「クローンって!!最近の女子高生って面白い事言うんだねえ。」
「最近の女子高生なんて言ってるところも、アキヨシさんにそっくりです!」
「君って、ノブ子ちゃんのお友達なの?制服が一緒だし。」
「お友達以上恋人未満の関係です!」
何それ、面白ーい。と彼は噴き出しました。
「だけどよく、僕がアキヨシじゃないってわかったね?」
「はい。アキヨシさんは、もっと陰鬱な感じですし。髪を染める様なタイプじゃないです。白衣も着てません。」
「白衣着るとそれっぽいと思ったんだけどなー。だけど、髪型以外はかなり似てない?」
「いえ、つむじの生えてる方向が逆向きです。涙ぼくろの位置がアキヨシさんは、右目なのに対して貴方は左目にありますし。後、体型もアキヨシさんの方がフィールドワークをするからか引き締まっています。」
「えー何か、おにぃ女子高生に好かれてない?」
「好いてはいません。むしろ苦手です。」
えーそうかなあ。あやしー。と、からかわれて、アキヨシさんには無いイラつきを感じました。
「あ、そうそう。三者面談なんだってね!家事代行のオコメさんもノブ子ちゃんの保護者としてついて行くっていう。前代未聞の面白い事になったって知ってるー?」
「それ詳しく!!」
(オコメさんって、確か学校の用務員さんでしたよね……?)
「という訳で、アキヨシさんの弟さんに聞いて妖精さんの三者面談に乗り込むことにしたのです!」
「ハルヨシってば、口が軽いんだから!!」
何でよりによって、林さんに話すかなあ。と、アキヨシは狼狽した。そして、博物館の館長を任せている事に一抹の不安を感じた。
「ハルヨシさんの方が接客向いているんじゃないですかあ?馴れ馴れしい感じは苦手でしたが、お話するのは楽しかったですし。」
「あいつはノリが軽過ぎる!!」
「あのー、ノブ子さんの三者面談始めてもよろしいですか?」
先生はすっかり困惑しきって、疲れた顔をしていた。
「「是非!!」」
オコメさんと林さんの声が重なりあった。しかしその後、アキヨシを挟んで私の方がより保護者ですけど?と言わんばかりに、不穏な見つめ合いが始まっていた。
「先生、お気になさらず続けて下さい!」
アキヨシは、とりあえずスルーすることにした。
「それでは……少し早いのですが、ノブ子さんは進路を決めていますか?」
「私の将来の夢は永久就職です!」
私が養います!という林さんの発言を聞かなかったことにして、先生は次に話を進めることにした。
「……それは、専業主婦をしたいという事ですね。他に進学や就職は考えて無いですか?」
「……アキヨシの手伝いはして…ます。」
「この子は、進学はまだ考えていないみたいです。私が館長しています博物館の手伝いをして貰ってますので、今のところ引き続き手伝ってもらう方向で検討しています。」
そうなんですね!私もサポート致します!というオコメさんの発言もスルーして、先生は次に話を進める事にした。
「成績は突出はしてはいませんが、バランスよくこなせていると思います。しかし、よく保健室に行かれてますので、ノブ子さんの体調面が心配といったところでしょうか。擬人化の方ですので、何か特別な理由があるのでしょうか?」
オコメさんと林さんは、興味津々に耳をそばだてた。
「ええ、この子。体力はあまりありませんので、体育など激しい運動は出来ません。体育祭など、出来ないところは見学にさせて頂きたいと思います。」
私…健康だよ?という娘の言葉も、ややこしくなるのでアキヨシはあえてスルーした。
「あの……差し支えなければお教えして頂きたいのですが、娘さんは……爬虫類や虫などの擬人化の方じゃないですよね?」
アキヨシに視線が集中した。
「ええ、先生に不快感を与える様な動物ではなかったことは確かですので安心して下さい。」
ノブ子ちゃんは、"ランフォリンクス"だったんです!と、林さんは冗談を言った。
それを聞いたオコメさんは、やはり徳を積んだわんちゃんであるレトルトちゃんが恐竜に生まれ変わるのは納得出来ます!と、何故か合意した。
「……それでは、近々修学旅行がありますので、案内をお渡ししておきますね。」
「へぇ、今年は海外なんですね!僕の時は国内でしたよ。」
「今年は、海外旅行に詳しい先生が担当してくれていますので。楽しみにして下さいね。」
「妖精さん、一緒の班になりましょうね!」
「うん、林さんとなら安心……」
(安心する分、不安も付きまとうんだよなー。)と、アキヨシはため息をついた。
「先生、ありがとうございました。娘は目立つタイプではありませんので、こんなに気を使って頂いているなんて嬉しい限りです。これからもよろしくお願いします。」
と、小池一行は退出した。
担任の先生は、一番気になった事はあえて聞かなかった。いや、怖くて聞けなかった……
(小池さんのお義父さん、用務員さんと林さんとどういう関係なの!?)
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