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第29話 アラビアン生徒会長
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「よく来たの。出迎え出来ずすまぬ。このままで失礼するぞえ。我は最小限の動きしかできぬゆえ。」
小柄な彼女は、木彫りの装飾とエキゾチックっなタッセル付きの敷物が掛けられた椅子に座っていた。
「これは、我の重みに耐えられる椅子なのじゃ。」
(装飾は……関係ないのでは?)
上下白い制服に映える褐色の肌。
校則に引っ掛からないのかと心配になるほど、コインが連なる金色の装飾品を全身に付けていて、今にも水タバコでも吸いそうな雰囲気だ。
(ベリーダンサー衣装……今度妖精さんにも着て頂きましょう!)
「今年から擬人化の貴方が生徒会長になられたと聞いてびっくりしました。」
「珍しいものに人は食いつくのでな。好奇な目で見られる事には慣れておる。」
「私が入るのは、見学してから決めさせて頂いても?」
「かまわぬ。しかし、連れと一緒にという条件じゃったが……まだ来てないのかえ?」
「私……会長さんの声しか聞こえない。」
「なんと!?我も声しか聞こえぬ!しかし、鈴虫の様な好い声じゃ……。」
「鈴虫……見たことある?」
「いや、イヤフォンでしか聞いたことがないがな。其にしても、見えぬものに話しかけている様じゃ……」
「見えないとはどういう事です?お二人とも近くに居ますけれど。」
「入口までは雅な会長さん見えてたけど…近づいたら見えなくなった。」
「ほう…それは誠に不思議なことよの。聡美が本物の妖精を呼んで来たのかと思ったがの。ホッホッホ。」
カチッとガスコンロを止めた音がした。
鍋からはスパイシーな香りがして、そこからティーカップへと飲み物が注がれた。
役員である女子生徒は、コトッと会長の前へとそれを置いた。
「うむ。そなたも座るのじゃ。それでは、定例会議を始める。」
◇
携帯の液晶画面が点滅しているところ……
(また校舎裏の倉庫の前居ますね。直ぐ行きますー!)
私は妖精さんに会いにいく途中でした。
「林さん、ちょっといい?」
突然腕を掴まれ、引き留められた。
「全然気配に気がつきませんでした。……ミミズク先輩。」
「林さんが隙があり過ぎるだけでしょ?」
(隙って……暗殺でもするんですか、この人。)
「何か私に用でも?」
「俺もう秋で抜けるからさ。生徒会役員引き継いでくんない?現会長が林さんを指名したから引き留めただけ。」
(そういえば、ミミズク先輩はもう大学受験なんでしたっけね。)
「ふむ……今回の就任された会長さんって─」
この学校は、擬人化の在校生徒が他の学校に比べて多い。それは、生徒会が擬人化の生徒に配慮したルールを作り上げたからだからだ。
差別しないことっていうのはまあ……一般常識の綺麗事だとしても。
ミミズク先輩の様に、生徒会に擬人化の生徒を入れるというのもそうだ。
一般生徒と出来る限り平等に、柔軟に個別に対応するというのが、本校の特色だ。
元何の動物だったかを公表することに関してはメリット、デメリットがあるので任意だ。
しかし、公表していた方が色々と都合が良い。
ミトなんて上手くやっている。猫は人と身近な生き物だから、どんな性質を持つかイメージがつきやすく皆に受け入れ易くなる。
(本当は"猫科"みたいですけどね─)
そんな校風がここ数年で出来上がり、この学校は擬人化生徒にとって、過ごしやすいという口コミが広がったのだった。
「気乗りしませんねえ。前会長までの方針のお陰で新入生に擬人化の方が入ってくる様になりましたし。妖精さんとも出会えました。それに私こう見えて忙しいんですよ?」
「そうだよね……だけど林さんって俯瞰して物事見てくれそうだし、後会長の好み……いや、一度会議室に見学に行ってみて。お願いはしないけど。」
「私にお願いをしないのは得策です。借りは返して欲しいですからね。」
(しかし彼女は、初の擬人化生徒会長なんですよね……)
「仕方ないですね。一度見学には行きましょう。」
生徒会選挙での現会長の演説は、印象に残っている。
「我は、象の擬人化の華・ラジアータである。前年度までの生徒会は、擬人化の生徒に快適な学校生活を約束し提供してくれた。しかし、我は其の状況に少々意義を申し立てしたい!!」
胸元の首飾りが揺れ、シャランという音がマイクを通し響いた。
「我ら擬人化生徒を他の生徒と同じ様に接するのではなく、区別はした方が良いと考える。同じ空間に居る擬人化の生徒は、人間の見た目はしておるが、完全に人間だとは言えぬ。好意を向けてくれるのはかまわぬが、注意点があることをお主らに知っておいてほしい─」
ミトも生徒会室に連れていこうとしたが、「アイツ本当マジで苦手!今回私はパスで!!」と、断られた。
(生徒会長と何かあったのでしょうか……?)
「我は見た目に反して、象の擬人化故に3トン程の体重がある。それが、他の生徒にどう驚異を与えるか分かるか?本気をだせば、校舎を容易に壊すことも出来るし、お主らの足をうっかり踏みも出来ぬ!我の見た目に騙されてはならぬ。気を抜いてはならぬ─」
「あの子可愛くない?」
「見た目派手ー!」
「小柄なのに象の擬人化とかギャップが良い!」
「話し方も独特で面白ーい。」
「擬人化の生徒会長って面白そーじゃない?」
彼女の演説がちゃんと聴かれていたかは定かではないが、面白そうという生徒たちの平和ボケした好意によって、彼女が生徒会長に決まったのだった。
元動物だった事を公表出来ない、妖精さんはどういう扱いになってしまうのだろうか……
(擬人化生徒と通常生徒との区別化ですか……)
……私はくいっと眼鏡を持ち上げた。
小柄な彼女は、木彫りの装飾とエキゾチックっなタッセル付きの敷物が掛けられた椅子に座っていた。
「これは、我の重みに耐えられる椅子なのじゃ。」
(装飾は……関係ないのでは?)
上下白い制服に映える褐色の肌。
校則に引っ掛からないのかと心配になるほど、コインが連なる金色の装飾品を全身に付けていて、今にも水タバコでも吸いそうな雰囲気だ。
(ベリーダンサー衣装……今度妖精さんにも着て頂きましょう!)
「今年から擬人化の貴方が生徒会長になられたと聞いてびっくりしました。」
「珍しいものに人は食いつくのでな。好奇な目で見られる事には慣れておる。」
「私が入るのは、見学してから決めさせて頂いても?」
「かまわぬ。しかし、連れと一緒にという条件じゃったが……まだ来てないのかえ?」
「私……会長さんの声しか聞こえない。」
「なんと!?我も声しか聞こえぬ!しかし、鈴虫の様な好い声じゃ……。」
「鈴虫……見たことある?」
「いや、イヤフォンでしか聞いたことがないがな。其にしても、見えぬものに話しかけている様じゃ……」
「見えないとはどういう事です?お二人とも近くに居ますけれど。」
「入口までは雅な会長さん見えてたけど…近づいたら見えなくなった。」
「ほう…それは誠に不思議なことよの。聡美が本物の妖精を呼んで来たのかと思ったがの。ホッホッホ。」
カチッとガスコンロを止めた音がした。
鍋からはスパイシーな香りがして、そこからティーカップへと飲み物が注がれた。
役員である女子生徒は、コトッと会長の前へとそれを置いた。
「うむ。そなたも座るのじゃ。それでは、定例会議を始める。」
◇
携帯の液晶画面が点滅しているところ……
(また校舎裏の倉庫の前居ますね。直ぐ行きますー!)
私は妖精さんに会いにいく途中でした。
「林さん、ちょっといい?」
突然腕を掴まれ、引き留められた。
「全然気配に気がつきませんでした。……ミミズク先輩。」
「林さんが隙があり過ぎるだけでしょ?」
(隙って……暗殺でもするんですか、この人。)
「何か私に用でも?」
「俺もう秋で抜けるからさ。生徒会役員引き継いでくんない?現会長が林さんを指名したから引き留めただけ。」
(そういえば、ミミズク先輩はもう大学受験なんでしたっけね。)
「ふむ……今回の就任された会長さんって─」
この学校は、擬人化の在校生徒が他の学校に比べて多い。それは、生徒会が擬人化の生徒に配慮したルールを作り上げたからだからだ。
差別しないことっていうのはまあ……一般常識の綺麗事だとしても。
ミミズク先輩の様に、生徒会に擬人化の生徒を入れるというのもそうだ。
一般生徒と出来る限り平等に、柔軟に個別に対応するというのが、本校の特色だ。
元何の動物だったかを公表することに関してはメリット、デメリットがあるので任意だ。
しかし、公表していた方が色々と都合が良い。
ミトなんて上手くやっている。猫は人と身近な生き物だから、どんな性質を持つかイメージがつきやすく皆に受け入れ易くなる。
(本当は"猫科"みたいですけどね─)
そんな校風がここ数年で出来上がり、この学校は擬人化生徒にとって、過ごしやすいという口コミが広がったのだった。
「気乗りしませんねえ。前会長までの方針のお陰で新入生に擬人化の方が入ってくる様になりましたし。妖精さんとも出会えました。それに私こう見えて忙しいんですよ?」
「そうだよね……だけど林さんって俯瞰して物事見てくれそうだし、後会長の好み……いや、一度会議室に見学に行ってみて。お願いはしないけど。」
「私にお願いをしないのは得策です。借りは返して欲しいですからね。」
(しかし彼女は、初の擬人化生徒会長なんですよね……)
「仕方ないですね。一度見学には行きましょう。」
生徒会選挙での現会長の演説は、印象に残っている。
「我は、象の擬人化の華・ラジアータである。前年度までの生徒会は、擬人化の生徒に快適な学校生活を約束し提供してくれた。しかし、我は其の状況に少々意義を申し立てしたい!!」
胸元の首飾りが揺れ、シャランという音がマイクを通し響いた。
「我ら擬人化生徒を他の生徒と同じ様に接するのではなく、区別はした方が良いと考える。同じ空間に居る擬人化の生徒は、人間の見た目はしておるが、完全に人間だとは言えぬ。好意を向けてくれるのはかまわぬが、注意点があることをお主らに知っておいてほしい─」
ミトも生徒会室に連れていこうとしたが、「アイツ本当マジで苦手!今回私はパスで!!」と、断られた。
(生徒会長と何かあったのでしょうか……?)
「我は見た目に反して、象の擬人化故に3トン程の体重がある。それが、他の生徒にどう驚異を与えるか分かるか?本気をだせば、校舎を容易に壊すことも出来るし、お主らの足をうっかり踏みも出来ぬ!我の見た目に騙されてはならぬ。気を抜いてはならぬ─」
「あの子可愛くない?」
「見た目派手ー!」
「小柄なのに象の擬人化とかギャップが良い!」
「話し方も独特で面白ーい。」
「擬人化の生徒会長って面白そーじゃない?」
彼女の演説がちゃんと聴かれていたかは定かではないが、面白そうという生徒たちの平和ボケした好意によって、彼女が生徒会長に決まったのだった。
元動物だった事を公表出来ない、妖精さんはどういう扱いになってしまうのだろうか……
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……私はくいっと眼鏡を持ち上げた。
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