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第28話 サツキ姫と予言の書
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「ひっ…け、けも、獣…」
目の前の親猪を見たサツキは、
(あのピンク髪の巨乳女……。)
何故かオコメさんを思い出した後、ブラックアウトした─
オコメさんは猪……ではなく、ミニブタの擬人化だとサツキはまだ知らない。
サツキは、アキヨシと隣に居るオコメさんの2人の背中を見ながら、いつの間にか自分の内に意識が向いて、ガヤガヤとした家族たちの声が聞こえなくなっていた─
ピンク髪のあの子は、愛読している少女漫画の主人公にそっくり。
いつも博士に理不尽に転送装置で飛ばされて困り顔。
転送途中で変身して、悪の敵と戦うの。
その博士がアキヨシ先生みたいって思ってたっけな………。
ミートちゃんは、音速で時空を越えるヒーローで、本当の正体を隠してる。
それじゃあ私は、どこのポジションなの?
恋路を邪魔するライバルのキャラは、ストーリーの展開にさほど必要ではなかった様な……。
そんな事を考えていたら、どんどん皆の姿が小さくなって、あっという間に迷子になっちゃった─
「アキヨシ…サツキ電話とってくれない…どうしよう!」
「ちょっと、携帯貸して!」
「…………………そうだな…この履歴からだな。…よし、追跡完了!良かったぁ、そこまでコースから外れてないみたいだ!しかも動かないで居てくれている。」
「今サツキどこにいんの!?」
「スマホ画面の点滅している所が、今彼女の居る場所です!」
「………デジャヴ!!」
ミトさんは、全身の毛が逆立つような感覚に襲われたが、今はそれどころではないので享受した。
「君は救急セットを確認して!」
「わかった……」
僕はミトちゃんが本当はなんの動物だったかを知っている。大学で斎藤さんの就職先は、決まった時に報告を受けていたし。
彼女に起こった事を聞いて、仕事場からある日を境に居なくなった動物が居るから。だけど彼女は─
「電話に気づかないだけかもしれないけれど、何かあったかも知れないから急ごう!」
◇
一緒にいたスタッフは「斎藤!」と、腕を捕んでシャトルの中に引き込んでくれた。
それと同時に、後ろにもベンガルトラがいて飛びかかって来たのだった。
その拍子に、虎の爪が背中を掠め激痛が走った。
「おい!大丈夫か!?」
シャトル内のお客さんの不安の声がガヤガヤと聞こえてきた。
黒豹のミートちゃんは、エサやりイベントで真っ先に来てくれる程お肉が大好物だから、ミートと名前が付けられていた。
ミートちゃんの威嚇の表情に釘づけになって気がつかなかったけれど、それは私に向けた表情ではなかったのだ………
ミートちゃんと虎は、園内のシステムが止めに入るまで格闘していた。
「お姉さん大丈夫なの!?」
私は渡されたタオルで背中を押さえて、その傷を隠した。
「皆さん大変長らくお待たせしましたー!いやー、虎と黒豹が縄張り争いしているとはスタッフの私でもビックリでした!それでは、出発します。引き続き園内をお楽しみください!」
そして、本部の巡回車に乗り換え、冷や汗がだらだらと流れる中、思わず叫んだ。
「い゛痛み止めを下さーーい!!」
暫く、仕事に行けなかった時間は、私の気持ちを弱らせるのに充分だった。
書類仕事をする部署への移動を打診されたが、体を動かしていないとどうも私は内に籠ってしまう性格みたいで、ペンギンショーの方へと移動させて貰った。
そして、傷口もすっかり塞がった頃。
早朝の園内で警報器がなった─
敷地内にある社員寮に住む私も、その音で目が覚めたのを覚えている。
その時、発見された少女は何の衣類も身につけておらず、短髪に金色の瞳をしていた。
「アイツは…どうなった?」それが、彼女の第一声だったらしい。
◇
「サツキさん!!」
「サツキ!!」
(ああ、また私を探しに来てくれたのね……)
「ミートちゃん……あの時と同じ金色の瞳……」
「サツキさん!背中から血が出てるじゃないか!」
「大丈夫です……昔の傷が掠れて濡れて広がっただけで……せっ先生!?」
アキヨシはサツキの背中をたくしあげ、傷口の処置をした。
「……よし!確かに、大丈夫そうだ。」
「サツキは私が担ぐよ。」
サツキさんを担ぐミトさんの横顔は、何だか悲しげだった。
(少女漫画のライバルキャラはお姫様。皆の事情を何も知らない。だから、空気を読まずに恋路の邪魔が出来るのね……)
サツキは、ミトさんの背中で安心していた。
(ミートちゃん……私の大好きな黒豹……)
僕が調べたミトちゃんに関することは、彼女が擬人化した後の情報。ミートという名前の黒豹は今まだあの動物園に居る。消息が無くなったのは、ベンガルトラの方だ─
(ミトちゃんは、彼女にも正体を隠している………)
サツキは館内で休み、落ち着きを取り戻した。
「私動物園で働いてるのに、大き目の動物が駄目で…」
「だけど、ペンギンもちょっと怖いの居るけど大丈夫なの?」
「何で先生その事知って……」
「サツキ…それは何かゾッとするから聞かん方が良いぞ……。」
すっかりミトさんにとってアキヨシは、林さんと同じ様な人物像になっていた。
「だけど、猪に突進されてなくって良かったよ。」
「次見かけたら私が仕留めて、ぼたん鍋にしてやるよ!」
「いや、それは駄目だから。」
「うり坊……私も見たかった……」
「……この子の言うことは気にしないで。」
「アキヨシ先生!!」
「急にどうしたんだい!?」
サツキは気合いの入った声を出した。
「先生さっき私の裸見ましたよね?しかも、ほっホックまで外して!」
「えっ?そ、それは仕方なく……」
「仕方なくぅー?」
サツキは大げさにムッとした表情をした。
共謀しているミトさんは、アキヨシに耳打ちした。その脅しにアキヨシは動揺して目が泳いだ。
「………サツキさん。僕とお食事でも?」
「よろしいですわ!」
少女漫画のライバルキャラはお姫様。皆の事情を何も知らない。だから、空気を読まずに恋路の邪魔だって出来るのよ─
目の前の親猪を見たサツキは、
(あのピンク髪の巨乳女……。)
何故かオコメさんを思い出した後、ブラックアウトした─
オコメさんは猪……ではなく、ミニブタの擬人化だとサツキはまだ知らない。
サツキは、アキヨシと隣に居るオコメさんの2人の背中を見ながら、いつの間にか自分の内に意識が向いて、ガヤガヤとした家族たちの声が聞こえなくなっていた─
ピンク髪のあの子は、愛読している少女漫画の主人公にそっくり。
いつも博士に理不尽に転送装置で飛ばされて困り顔。
転送途中で変身して、悪の敵と戦うの。
その博士がアキヨシ先生みたいって思ってたっけな………。
ミートちゃんは、音速で時空を越えるヒーローで、本当の正体を隠してる。
それじゃあ私は、どこのポジションなの?
恋路を邪魔するライバルのキャラは、ストーリーの展開にさほど必要ではなかった様な……。
そんな事を考えていたら、どんどん皆の姿が小さくなって、あっという間に迷子になっちゃった─
「アキヨシ…サツキ電話とってくれない…どうしよう!」
「ちょっと、携帯貸して!」
「…………………そうだな…この履歴からだな。…よし、追跡完了!良かったぁ、そこまでコースから外れてないみたいだ!しかも動かないで居てくれている。」
「今サツキどこにいんの!?」
「スマホ画面の点滅している所が、今彼女の居る場所です!」
「………デジャヴ!!」
ミトさんは、全身の毛が逆立つような感覚に襲われたが、今はそれどころではないので享受した。
「君は救急セットを確認して!」
「わかった……」
僕はミトちゃんが本当はなんの動物だったかを知っている。大学で斎藤さんの就職先は、決まった時に報告を受けていたし。
彼女に起こった事を聞いて、仕事場からある日を境に居なくなった動物が居るから。だけど彼女は─
「電話に気づかないだけかもしれないけれど、何かあったかも知れないから急ごう!」
◇
一緒にいたスタッフは「斎藤!」と、腕を捕んでシャトルの中に引き込んでくれた。
それと同時に、後ろにもベンガルトラがいて飛びかかって来たのだった。
その拍子に、虎の爪が背中を掠め激痛が走った。
「おい!大丈夫か!?」
シャトル内のお客さんの不安の声がガヤガヤと聞こえてきた。
黒豹のミートちゃんは、エサやりイベントで真っ先に来てくれる程お肉が大好物だから、ミートと名前が付けられていた。
ミートちゃんの威嚇の表情に釘づけになって気がつかなかったけれど、それは私に向けた表情ではなかったのだ………
ミートちゃんと虎は、園内のシステムが止めに入るまで格闘していた。
「お姉さん大丈夫なの!?」
私は渡されたタオルで背中を押さえて、その傷を隠した。
「皆さん大変長らくお待たせしましたー!いやー、虎と黒豹が縄張り争いしているとはスタッフの私でもビックリでした!それでは、出発します。引き続き園内をお楽しみください!」
そして、本部の巡回車に乗り換え、冷や汗がだらだらと流れる中、思わず叫んだ。
「い゛痛み止めを下さーーい!!」
暫く、仕事に行けなかった時間は、私の気持ちを弱らせるのに充分だった。
書類仕事をする部署への移動を打診されたが、体を動かしていないとどうも私は内に籠ってしまう性格みたいで、ペンギンショーの方へと移動させて貰った。
そして、傷口もすっかり塞がった頃。
早朝の園内で警報器がなった─
敷地内にある社員寮に住む私も、その音で目が覚めたのを覚えている。
その時、発見された少女は何の衣類も身につけておらず、短髪に金色の瞳をしていた。
「アイツは…どうなった?」それが、彼女の第一声だったらしい。
◇
「サツキさん!!」
「サツキ!!」
(ああ、また私を探しに来てくれたのね……)
「ミートちゃん……あの時と同じ金色の瞳……」
「サツキさん!背中から血が出てるじゃないか!」
「大丈夫です……昔の傷が掠れて濡れて広がっただけで……せっ先生!?」
アキヨシはサツキの背中をたくしあげ、傷口の処置をした。
「……よし!確かに、大丈夫そうだ。」
「サツキは私が担ぐよ。」
サツキさんを担ぐミトさんの横顔は、何だか悲しげだった。
(少女漫画のライバルキャラはお姫様。皆の事情を何も知らない。だから、空気を読まずに恋路の邪魔が出来るのね……)
サツキは、ミトさんの背中で安心していた。
(ミートちゃん……私の大好きな黒豹……)
僕が調べたミトちゃんに関することは、彼女が擬人化した後の情報。ミートという名前の黒豹は今まだあの動物園に居る。消息が無くなったのは、ベンガルトラの方だ─
(ミトちゃんは、彼女にも正体を隠している………)
サツキは館内で休み、落ち着きを取り戻した。
「私動物園で働いてるのに、大き目の動物が駄目で…」
「だけど、ペンギンもちょっと怖いの居るけど大丈夫なの?」
「何で先生その事知って……」
「サツキ…それは何かゾッとするから聞かん方が良いぞ……。」
すっかりミトさんにとってアキヨシは、林さんと同じ様な人物像になっていた。
「だけど、猪に突進されてなくって良かったよ。」
「次見かけたら私が仕留めて、ぼたん鍋にしてやるよ!」
「いや、それは駄目だから。」
「うり坊……私も見たかった……」
「……この子の言うことは気にしないで。」
「アキヨシ先生!!」
「急にどうしたんだい!?」
サツキは気合いの入った声を出した。
「先生さっき私の裸見ましたよね?しかも、ほっホックまで外して!」
「えっ?そ、それは仕方なく……」
「仕方なくぅー?」
サツキは大げさにムッとした表情をした。
共謀しているミトさんは、アキヨシに耳打ちした。その脅しにアキヨシは動揺して目が泳いだ。
「………サツキさん。僕とお食事でも?」
「よろしいですわ!」
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