愛犬はブルーアイズ

雨夜美月

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19. 愛を注ぐ

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 俺はクリスに手を引かれながら、例の屋敷のクリスの部屋に連れてこられていた。

 俺がクリスを好きだといったからその気になっているのだろう、ベッドに押し倒されて今にも脱がされそうな勢いでキスの嵐が降ってくる。
 
「クリス、落ち着けって」

 俺はクリスの髪を撫でると、ようやくクリスが顔を上げて俺を見る。
 乱れても輝きを失わない髪とそれと同じ色の長い睫が揺れ、どうしてこんなに綺麗な男が俺に執着するのかと不思議に思う。

 このまま流されてしまいたいけど、きちんと言わなくてはいけない。
 俺はごくんと喉を上下させ、覚悟を決めて静かに息を吸い込む。

「俺はお前のことが好きだよ。だからお前が他に大切な相手がいるなら身を引く。二股は無理だ、お前がもう一人を切れないっていうなら俺はお前のものにならない」

「……えっ?」

 せっかく俺がはっきり言ってやったのに、クリスはなんだかうれしそうにしているからむっとして目線をそらす。

「何度でも言います。恋しいと思うのはあなただけです、トーマ」

 海のように深い色の瞳に見つめられ、甘い声の波に意識がさらわれていくようだった。

 名前が呼ばれ、そっと唇同士が触れあう。濡れた舌の感触が上唇を掠め、許しを請うように唇の端を舐められる。たどたどしく髪を撫でられ、クリスの侵入を拒もうとした気持ちはついに折れた。

「……ん、…………、ん……っ」

 どこまでもやさしい口づけに心がとろかされる。クリスが俺だけだと言ってくれるのならその言葉だけで他に何もいらない気がした。

「あなたにひどいことをした僕を許してくれますか?」

「本当に……俺だけだっていうなら、許してやってもいい」

 覆いかぶさってきたクリスの腕に抱かれ、ベッドの上で再び唇をふさがれる。

「償いをさせて下さい」

 耳元で低く響く艶めいた声に、ぞくりと心地よい痺れが全身に走った。

「……好きに、すればいいだろ」

 クリスの唇がやんわりとキスを降らせながら首筋に沿って下りてくる。くすぐったいようなその感触に俺は小さく身をよじった。

「嫌ですか?」

「……うるさい、聞くな」

 俺の怒りに触れたと思ったのかクリスはためらいがちに肩や腕に触れてくるばかりで、控えめな接触にもどかしさが募っていく。

「クリス……ッ」

 素っ裸で身体を撫でられている状況はまるで焦らされているようで、悔しいことに俺の下半身は反応してきてしまっていた。

「お前、いい加減に……――ん、あっ!」

 クリスの指先が胸の先を掠め、思わず声が上がってしまう。

「ここ、良いですか?」

 俺の胸元に頬ずりをするような仕草をみせたクリスが、淡い色の舌を覗かせもう一度その場所を舐め上げる。

「……ふ、…………っ、んん」

 クリスは俺の顔色を窺いながらころころと舌先で乳首を転がし、さらにもう一方を指先で摘んでやんわりと揉みしだく。

「も、そこやめ……っ、そんなとこ感じな……あっ」

「ここはこんなに尖って好さそうにしてますよ? それとも、こっちの方がいいですか?」

 クリスの空いた手がするりと俺の内腿を撫で、すぐそばで反応を示していた昂ぶりがひくりと揺れる。

「こんな風にここも舐めて欲しいですか?」

 クリスはちろりと覗かせた舌で、濡れて光沢を放つ胸の先をくすぐるように舐める。

「それとも、こうですか?」

 乳首を唇で軽く吸われ、口の中に包まれた先端を舌先で擦られると、もう俺は耐えられずに自分の足の間に手を伸ばしていた。

「ダメです」

「――……あっ、何!」

 そこに触れようとしていた手首が掴みあげられてしまう。これ以上じらされるなんてつらいだけで全然償いになんてなってない。

「――僕がします」

 クリスに掴まれた指先に痺れが走る、いやらしく反り返ったそこがクリスの唇にすっぽりと包まれていた。

「……あ、やめ。口で、なんて……や、だ」

「どうして? ここはこんなに蜜を垂らして悦んでいますよ?」

 ちゅくちゅくと濡れた音を響かせながら先端を飴のように舐め回され、ときおり深く飲み込んで吸い上げられる。
 クリスの唇で与えられる快感の大きさにこれ以上ないほど張りつめ、後ほんの少しで欲望を吐きだしてしまいそうだった。

「……――っ!」

 もう達してしまうと思った瞬間クリスの唇から解放され、突然投げ出されてしまった身体は絶頂を求めて狂おしくわななく。

「――っ、そこは……っ」

 クリスの指が足の間の奥に伸ばされる。さっき散々弄られたそこにまた何かされるのかと思うと、反射的に身体が強張った。

「すみません……。ひどいことはしません、傷がついてしまっていないか見せて下さい」

 クリスはそう言って俺の両膝を持ち上げる。
大事なところを隠しようもない服従のポーズに、言葉が出ないほどの羞恥が襲ってくる。

「外側は、大丈夫でしょうか……?」

 クリスの顔が脚の間に近づけられ、息が触れるだけで窄まりがひくりと収縮する。 次の瞬間その場所にぬるりと温かい感触が這う。

「ちょ、クリス何して……っ! そんなとこ、や、やめ……、あ、あ……っ!」

 散々なぶられたその場所をゆるゆると舌で撫でられ、やがて滑り込むようにして中まで侵入してきた。
 普段決して人に触れさせることのない場所を舌で犯される感触に、先ほどいきかけた昂ぶりが再び反応を示す。

「痛みはないですか……?」

 たっぷりと唾液で潤ったそこに指が差し入れられて中を確かめられると、得も言われぬ快感がそこから沸き起こる。

「い、たく……、ない……、けど」

 気持ちいい。こんなの初めてのときも、無理やり突っ込まれたさっきも感じたことがない。クリスの長い指が中で動くたび、自身から壊れたように先走りが溢れてくる。
 もっとして欲しい、そう目だけでクリスに訴える。今ならクリスを受け入れることが出来る気がする。

「もしかして気持ちいいですか……?」

 クリスの言葉に羞恥心がこみ上げる、部屋が薄暗くなかったら真っ赤になった顔を見られてしまっていたはずだ。

「お、お前はいいのかよ……っ」

 俺は意を決してその言葉を口にする。クリスはズボンをはいたままだったが、くつろげた前から覗くそこは下着越しにもはっきりと張り詰めていることが分かった。

「僕はいいんです……。今はただあなたに気持ち良くなって欲しい」

「だったら、……い、入れろよ!」

 小さく聞き返したクリスが目を丸くする。俺の中に挿入した指の動きも止まってしまい、俺はますますもどかしさが募る。

「だから、俺に気持ち良くなって欲しいんだったら早くしろ!」

 ごくりと唾を飲み下したクリスが下着からそれを取り出すと勢いをつけて跳ね上がる。

「いいんですか……?」

 ためらうような、色欲に上擦るような声で囁きを落とされ、腰の奥がじんと熱く揺れる。

「うるせ、早くしろって言って……、ん、ああっ!」

 押し当てられた欲望は潤いの力を借りてあっさりと先端を飲み込ませる。

「あ……、や……っ」

 一番太いところだけ埋め込まれ、俺は思わずそこを締め付けてしまう。指とは違う圧倒的な大きさに引きつれる感じはあるが痛みはない、それどころかもっと奥まで欲しくてクリスの背中に脚を絡みつかせていた。

「大丈夫ですか……?」
「も、いいからっ、……早くしろっ!」

 受け入れた場所でクリスが更に膨らむのを感じて、声にならない喘ぎが漏れる。腰が支えられて最奥を貫かれると、気が遠くなる程の快感にうち震えた。

「モリナガさんの中、熱い……っ」

 卑猥な音を響かせながら抜き差しが繰り返され、浅く吐き出されるクリスの吐息に心臓が壊れそうなほど高鳴っていた。

「ああ……、モリナガさん、すごく気持ちいいです。それに、ああっ、うれしすぎて死んでしまいそう」

「俺を置いていくなよ、せめていかせてからにしろっ」

「もちろんですっ」

 ぐっと押し上げられたクリスの昂ぶりがある一点を掠める。その瞬間電流のような激しい快感が俺を貫き、俺は何の前触れもなく射精してしまっていた。

「あ、うそ……イッったのか……? あ、ちょっと待って……っ!」

 俺の制止を聞くことなく、クリスはいっそう激しさを増して突き上げてくる。

「や、やめ……! もうイって、……あ、あ、ああっ!」

「可愛いです、俺のペニスでよがるモリナガさん。ここですよね、そんなに気持ちいいですか?」

 膝を抱え直され、ぐりと、俺があっけなく達した場所を何度も押し上げられる。

「ん、ああっ、……あっ、そこ、やめ……っ」

「恋人がこんなに悦んでいるのに、やめられるわけないじゃないですか」

「あっ、やめっ、……そこ、……あ、ああっ」

 その場所ばかりを淫らに突き上げられ、絶頂を迎えたばかりの敏感すぎる身体に気が狂いそうなほどの快感が与えられる。
 俺の足の間では今にも弾けそうに欲望が膨らんでいて、触れられてもいないのにはしたなく絶頂の名残をとろとろと零している。

「今俺のをたっぷり注いであげますね」

「あ、や……っ、なんか、だめ……うあ、あ、あ、またいく……いきそ……あ、ああっ」

「いいですよ、ほら、ここですよね。ああ、出しますよ、ちゃんと受け止めて下さい。ああ、トーマ……ッ」

 最奥を貫かれ、どくんとクリスが大きく脈打つ。体内に熱いものを叩きつけられ、俺も白濁を飛び散らせて絶頂を迎えていた。

「ああトーマ、愛しています。どこへも行かないで下さい」

 繋がったままクリスが身をかがめ、俺の身体を抱きしめてくる。その腕は温かくて、俺が欲しいと必死で、いつだって俺の胸を熱くさせる。
 愛しい人を抱き返しながら、俺もだという言葉を声に出さずにクリスの肩に押し当てた唇だけでつぶやいた。
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