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第二章〜フルージア学園〜

第十三話「強すぎるって罪」

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チリンチリン……

パリスと昔話とこれまでお互いがどう過ごしていたかの話でコーヒータイムを楽しんでいたのだが、控えめなベルの音が響き、二人の間に流れていた穏やかな空気が止まった。

「私は呪い解除の研究をしているハンネル、『封魔の腕輪』のことでお話を少しよろしいかな」

「……お待ちください」

何かあれば絶対助けに出てこいとだけ約束をして、パリスをブラックボックスの中へ押し込みんで、訝しみながら扉を開けるとそこには、それはそれは偉そうなお爺さんと……ロイドがいた。

「これが『封魔の腕輪』……なんと禍々しい……」

見るのすら嫌と言わんばかりに顔を顰められ……一応俺の腕についている物なのだからその反応に少し傷つきながらも話があると部屋の中へ入るつもりでいたようなので中へ招き入れた。
ブラックボックスは部屋の隅に置いてあるので……違和感はあるが、腕輪に意識が向いてるだろうから突っ込まれることはないだろう。

闇属性の俺が国民を守る聖女となることは、魔族を絶対悪としている教会にとっても国王にとっても認めたくはない事のようで……もう既に王国のために結界を張っていることは内密にされていて、魔族と戦争になった際に、聖女としてこの王都の結界を張る役目にあるのが俺。

そのもしもの切り札の俺の魔力を封じてしまったことを教会に知られる前になんとかしたい学園の思惑、土下座しっぱなしのロイドと解呪専門の教師が青い顔をして解呪を試みているのをぼんやり眺めながら遠い記憶のゲームの世界へ思いを馳せていた。

ゲームの世界では聖女でありながらもクロリアスティーナは散々な目に遭っていた。闇属性を聖女として認めたくなくて箝口令をしいている教会も国王も謎だと思うが、なんの試験もなく、聖女というだけで入学を許すこの学園も馬鹿だなと思う……そこはクロリアスティーナ編はサブストーリーみたいなもんだしその辺の設定はガバガバだったのかもしれないな。

「今度こそ……解呪!!」

ハンネル師が解呪と唱えた瞬間、腕輪から溢れ出ていた黒紫のオーラが消え……たと思ったが、すぐにまた溢れ出す。

「申し訳ありません……力及ばず……」

結局、解呪専門の教師でも腕輪の呪いを解く事はできないようだ。

「すまないっ!!本当に申し訳ない!!俺がもう少し注意して運んでいたら……まさかここまで強力な呪いとは……」

全くその通りだとは思うのだが……避難するよりも今は早くお引き取り願いたい。俺の安全はひとまずパリスで確保出来たと思っているので……むしろ聖女の座から降りたいぐらいだ。

「結界の方は、魔導具で張り続けられるので当面は大丈夫と思うので……解呪の方法はこれから探していきましょう?だから今日はもう……」

キュリリリィィィィン♡

何でだよ。
効果音と共にロイドのハートにまた一つ光が……ハードモードじゃ無かったか?こんな簡単に好感度上がりすぎじゃね?

「お前……聖女から魔力を奪った俺にそんな慈愛に満ちた笑顔を……聖女は陰湿な雰囲気で部屋に引きこもりの結界を張れる以外は聖女失格と聞いていたのに……教会も結界さえ張れていれば邪魔だからと学園へ押し付けたと噂だったのに……」

失礼過ぎる裏事情を本人にペラペラとまぁ……。
陰湿なのは未来に希望が無かったから。部屋に引きこもっていたのは、こいつら攻略対象者達と絡まないようにだ。
教会では結界を張る魔導具の研究にちゃんと強力して来たし、何もしていなかった訳では無い。

「噂なんて当てにならないものだな……俺としたことがちゃんと己の目で確認せずに話だけで誰かを嫌悪していたなんて恥ずかしいぜ」

ニッと光属性の笑顔で微笑まれたが、全然ときめかねぇ……ほぉぉぉ、嫌悪してたんだ。

魔力は封じられてしまったが、封魔の腕輪を嵌められて良かったかもしれないな。
確かロイドの攻略で失敗すると……俺を魔族だと決めつけたロイドに光の力でその本性を暴いてやる……みたいに動物の様な扱いで犯されるんだったか。

「腕輪の呪いの解呪……絶対方法を探し出してみせるよ」

腕輪の嵌まった手を取られて……指先へのキス!!

エルネルク王子といい、何故同じ事を……?何かのキーになっていたっけ?

勇者とは思えない冷たい瞳で見下しながらクロリアスティーナを犯すスチルを思い出して身震いがした。

「俺も今日の事で疲れてしまって……もう休みたいので今日はもう良いですか?」

絶望で食事はあまり喉を通らず痩せた体。
部屋から出ず日光に当たってこなかった青白い顔……少し具合いの悪そうな演技をしただけでも病んで見えるのはありがたくもある。

解呪の方法を探ってみると教師とロイドはそれ以上長居をする事なく部屋を出ていってくれた。

なんとか難なくやり過ごせた。
好感度が上がってしまった事には冷や汗も出たが……低過ぎると死亡もしくは凌辱強姦。
高過ぎると高すぎたで執拗な愛の執着強姦。

目指すは真ん中……よりちょっと下ぐらい。
出来ることなら今の好感度をキープしてロイドとの絡みは無くしたいものだ。

教会の方には教師たちから必ず解呪の方法を見つけると連絡をしてくれるらしいので、事あるごとに聖女らしく!!と口煩い連中と会わなくて済むのは助かるな。

部屋の鍵を閉めてから、ブラックボックスをノックしたが反応がない。
俺以外の者をブラックボックスへ入れた事は無いので……何か予期せぬ事態にでも?

「パリス?どうした?」

恐る恐るブラックボックスの中へ足を踏み入れると……俺の心配を他所にパリスはソファーで寝入っていた。

「なんだよ……ちょっと心配しちゃったじゃん」

なにぶん他人を中へ招くのは初めての事だったので、返事の無いことに心配したが杞憂で良かったが……パリスも居るからと安心していたが寝てしまっていたなら、ロイド達を部屋へ入れたのは中々危ない状況だったのでは?

「守るって言ったくせに寝てんなよ」

近くまで行って鼻でもつまんでやろうかとした手を掴まれる。

「寝入ってねぇよ。いつでも飛び出せる。危険は感じなかったからな」

生命の危険だけじゃなく貞操の危険からも守っていただきたいところだな。

「呪いの解呪、やっぱ無理だったな」

「簡単な呪いのはずなのに強力なんだってさ。よくわかんない」

呪いとしてはよくある形式のものらしいのだが、その呪いがあまりに強力で通常の方法では解呪できないとのことだ。

「お前の魔力を吸って呪いの力が上がってるからな、お前より弱い人間に解呪出来る訳ないわな」

「は?俺の魔力を吸ってって……俺の首絞めてんの俺自身ってこと?」

パリスの体を端に追いやりながらソファーに腰を下ろし背もたれに伸び伸びと体を投げ出した。

「あ~……疲れた」

ロイドは馬鹿だが、攻略対象者の中では一番話をしやすい相手ではないかと思う。そのロイドと話しただけで疲れてしまったのに、これから他の攻略対象者たちとも絡んでいかないといけないのかと思うと憂鬱でたまらない。

カーペットや壁紙を用意して模様替えしてもいいな……。

黒い天井を見上げながら現実から目を背けるように内装への構想を練った。

このゲームはどれだけ俺が強くなっても、俺に無双させる気はないようだ

俺は考えることを放棄した。
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