上 下
5 / 16
第一章〜はじまりの村〜

第五話「新しい目標」

しおりを挟む
暴食の闇でハックバードを吸収した事により新たに手に入れた《洞察力》はかなり優秀だった。
なんとスキルの詳細がわかるヘルプ機能だったのだ。

「ブラックボックス」

《洞察力》のおかげで謎だった《ブラックボックス》の超優秀さにも気づくことが出来た。
この《ブラックボックス》は何物でもなく何物にでもなれるのだ。

例えば俺が洗濯機を想像しながらブラックボックスを作り出せば、それは洗濯機になり。
俺がお風呂を想像しながら作り出せばお風呂になる。
水はどこからどこへ?そんな難しい事は考えなくていいのだ。洗濯する物という認識だけあればいい。
それは俺が知っているものだけでなく。異世界でお馴染みのアイテムボックスだって作り出せる。
理屈なんて何も知らなくていい。

そして《暴食の闇》は思った通り、盾ではなくブラックホールのように吸い込み吸収する魔法だった。
ただしレベルがかけ離れていると逃げ出されたりする様だが、ハックバードはパリスに両翼に怪我を負わされていた為に逃げ出すことが出来なかったようだ。

「《暴食の闇》はかなりチートじゃないか?」

防御であり攻撃でもある。しかも取り込んだ相手から経験値を吸収できて、罠のように使えば放置で無限レベルアップだって可能じゃないか。ただ、俺の意思に関係なく人間も吸い込まれるので注意は必要だ。

《影潜り》は文字通り影の中に姿を隠すことができる。
こうなると《貫く闇》がしょぼく聞こえるが、貫く闇に打たれた魔物から生命力と魔力を吸収し回復できるという、どれも闇らしい、いやらしい魔法だらけだ。

【クロリアスティーナ】
《人族/村人/男/5歳》
Lv.9
生命力:32
魔力:121
力:9
守備:5
素早さ:10
精神:2

《魔法:適正属性 闇》
貫く闇 Lv.1
暴食の闇 Lv.3
影潜り Lv.1
プチファイア Lv.1
ウォーター Lv.1

《特性》
ブラックボックス Lv.2
洞察力 Lv.2
苦痛耐性 Lv.3
状態異常耐性 Lv.1

……なに、この魔法以外はゴミステータス。
Lv.6のマリサですら力が25あったのに。
影からコソコソ殺るのに長けていて、逆に不意を疲れたら木の棒で殴られただけで一撃死な弱さは健在。

「よぉぉぉし!!表だって目立つことなく、影からコソコソレベルを稼ぐぞ!!」

悲しくなる意気込みを胸に、俺はハッピーエンド目指してこの世界を生き抜くことを誓った。

ーーーーーー

「女神ブリトリニアの祝福を……」

ありがたい神父様の言葉も耳に入らず、初めてのポトの村以外の景色が気になって仕方なかった、ファンタジーゲームを彷彿とさせる豪華な聖堂はそれだけで胸が高まるものだ。

馬車で3日かけてこのルーシンの街へやってきたのは10歳になって……女神様から魔法を承るありがたい儀式に参加する為。すでに魔法を使える俺には必要のない儀式だけど国民の務めだと親に無理やり馬車に押し込まれたのだ。
徐々にゲームの本編へ向けて進行しているようで怖いけれど……初めてみる村の外の世界は純粋にワクワクした。

「クロリア、あまりキョロキョロするなよ。みっともない」

同じく10歳になったパリスに服を引っ張られる。
昔のヤンチャぶりはどこへやら、すっかり落ち着いてしまい真面目に神父様の話を聞く元ガキ大将の横顔に思わず微笑ましくなってしまった。元々発育の良い身体と茶髪だった髪は徐々に黒みがかってそれも相まって同じ歳なのにすごく大人っぽく見える様になった。

パリスも随分成長したな……子の成長を感じて涙するマリサの気持ちがすごくわかる。
5年前、森での一件以来すっかり仲良くなって、一緒に遊んでいるうちに俺も大分逞しくなった。
食べすぎても吐かなくなったし、一日中走り回っても寝込むこともなくなり、闇魔法を使う陰湿な少年はそこら辺にいる少年へと育った。

魔法が使えるという『特別』も今日でおしまい。
儀式終了後は属性の違いはあれど、みんな魔法を扱えるようになるから魔法を使っても目立つこともなくなる。

聖堂の中には近隣の街や村から集まってきた同じ歳の子供たちが数百人ほど……。
周囲を見回していた俺だが、一人の少年の姿に慌てて目を背けて神父様の姿に集中した。

胸がバクバク騒ぎ出す……恐怖。

なんでなんでなんで……人違い?いや、あの顔は絶対ヤツだ。

転生して初めて出会った……ブリ☆スクの攻略対象者。
赤く燃える様な髪に天の光の様な金色の瞳、リリアブランシュと同じく光魔法の使い手で勇者と呼ばれる『ロイド・ニムケ』だ。
こちらに気づかれない様に関わってはいけないと落ち着きをなくしていると、ザワザワと聖堂内も落ち着きがなくなった。何事かと顔を上げると神父様の横に……金髪碧眼の超絶美少年。
なんで?なんで王都じゃなく、ここにいるんだフローレイト王国第二王子『エルネルク・ヴィルケン・リーゲル』

「女神ブリトニアの慈愛の光が暖かく降り注ぐ今日、私たちはその祝福を授かるため、ここ聖地シャイノール大聖堂へお集まりになった事と思います」

村から一番近い聖堂が聖地だったとは!!もしかして……
新入生代表の様にはじまった王子のスピーチは耳に入らず、周りに注意してみると……いますよねぇぇぇ。

水色の髪と深い青の瞳が涼やかな生徒会長『ハンス・ダルト・レプシウス』
煌めく銀髪の隙間に見える赤い瞳を細めながらと笑みを浮かべスピーチを聞いているのは宰相の息子『ニキアス・ヨアン・ゲルティエス』
短く切り揃えられた茶髪と芯の強そうなブラウンの瞳、スッと背筋を伸ばし見るからに堅物そうな聖騎士『ラスカー・グロード』

よくよく見たら攻略対象が勢揃いしてるじゃねぇかぁぁぁ!!
しかも……

白いほどに輝く金髪と、愛らしい桃色の瞳を持つあの美少女は……『リリアブランシュ』!!
クロリアスティーナルートではブラックサイドリリアブランシュとして心体共にいじめ抜いてきてくれるリリアブランシュ!!

「おい……大丈夫か?顔が真っ青だぞ」
軽く眩暈がして、心配してくれるパリスの服を掴んだ。
「俺……終わったかもしれない……」

物語はこうして強制的に……確実に始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

双子の妹の代わりに学園に来ているのですが、どうやら乙女ゲームの世界だったようです。

りまり
BL
冷遇されている双子の兄が妹の代わりに学園に通い、そこで前世の記憶を取り戻し断罪されてしまう王太子殿下の婚約者様を救うのだが、なぜか王太子殿下と殿下の婚約者様に溺愛されてしまう話です。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

悪役令嬢の兄になりました。妹を更生させたら攻略対象者に迫られています。

りまり
BL
妹が生まれた日、突然前世の記憶がよみがえった。 大きくなるにつれ、この世界が前世で弟がはまっていた乙女ゲームに酷似した世界だとわかった。 俺のかわいい妹が悪役令嬢だなんて!!! 大事なことだからもう一度言うが! 妹が悪役令嬢なんてありえない! 断固として妹を悪役令嬢などにさせないためにも今から妹を正しい道に導かねばならない。 え~と……ヒロインはあちらにいるんですけど……なぜ俺に迫ってくるんですか? やめて下さい! 俺は至ってノーマルなんです!

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

勇者召喚に巻き込まれた僕は異世界でのんびり暮らしたい

りまり
BL
勇者召喚に巻き込まれた僕は一般常識を取得したら街で暮らそうと思っていたのに、大変そうな宰相閣下の手伝いをしてしまったらどういう訳か屋敷に囲われてしまった。 何度逃げ出すが連れ戻されえしまう。 そんな時一緒に召喚された勇者君と騎士君に合うが、なぜか目がヤバイのだ。 スローライフを満喫したいのに!!!! 何故か邪魔ばかりしてくる。

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

処理中です...