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これは嫉妬です
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ナディユさんは魔機作りの天才らしい。
同じ魔機を作っても作り手が違えば効果に差が出て、魔法の才能の差を埋める為の魔機も、作り手の才能によって左右されるとの事。
ナディユさんの星では、見知らぬスマホを魔改造したり、宇宙船を一晩で作り変えたり、みんながそういう天才系なのかと思ったけれど、ナディユさんが特別だった様だ。
それしか無いと言ったがそれがあるなら良いじゃないか。
俺は他者と比べて秀でたものなど持ち合わせていないので、率直に凄いと感心したのだが、ナディユさんは浮かない顔をしていた。
「結局、星を何とかしたいと言いながら……星を滅ぼす原因となった魔機を手放す選択を私は出来ませんでした」
魔機を作る天才のナディユさんは魔機を分解させる天才でもあって……王族の血を残そうと女体化を押し進める邪魔をする、ナディユさんが殺されずにいたのはそういう理由だったのだろう。
自国で優秀な魔機を作り、敵方の魔機を無効化させる職人は手放したく無いよな。例のお兄さんが暗殺でもしようもんならお兄さんの立場も不味いわ。
「今まで当然の様にあった便利な生活を手放すのはなかなかの勇気がいる事だと思いますよ。俺だって、いきなり家電全て捨てろと言われたら困りますもん」
休みの日はスマホで漫画を読むかゲームをするかしかしていなかったからな……ご飯炊くのだって炊飯器無いと炊けないし、洗濯だって風呂だって……戦争となると次元の違う話ではあるけれど、無くなったらどうしていいか困るのは一緒。
「人の暮らしを便利にする魔機もたくさんありますが、人を殺める為の魔機もたくさんあります……私の作ってきた魔機は……どれだけの人の命を奪って来たのでしょうね」
魔弾式銃を見つめる顔は、薄く笑みを浮かべていたけれど……それはとても悲しそうな笑顔だったけれど、他者の死とは無縁の場所で生きてきた俺には掛ける言葉が見つからない。
自分の作り出した物が人の命を奪う為の物になる……考えると心が重いけど、地球にだって銃を作る人も刀鍛冶の人もいる。俺はまだ突き付けられた事は無いけれど、憎悪は作った人よりもそれを使う者に向かうだろう。
人を守る警察だって自衛隊だって武器を持っている。
「罪滅ぼし……自分自身の罪の呵責から逃げる為に星を救う方法を考えてきましたが、結局私は自分の婚約者一人も守れない私に星を守るなんて無謀でした」
ナディユさんの撃った弾が木の枝を撃ち抜いて果実ごと地面に落ちてきた。
果実を拾おうとしたナディユさんの手を握る。
「……俺はナディユさんの魔機で命を救われましたよ」
「克馬さん……」
ま隣にあるナディユさんの顔にゆっくりと自分の顔を近づける。避けない……から、これぐらいは許されたか?
薄く開いたその唇へ、自分の唇を押し当てた。
人の温もりを感じるなんて何年ぶりだろう……柔らかな感触はそれだけで……心が穏やかになる。
「か……克馬さん……」
唇を離すと、目の前の顔は笑ってしまいそうなほど真っ赤に染まってしまっている。
「慰める為のキス、恋愛イベント一つクリアですね」
「こ、こんな事、突然しては駄目です!!」
尻もちをついて、指を震わせ……中学生でももっと落ち着いているだろうと思える位、目に見えて動揺している。
婚約者がいたんだし、俺と子作りしようと言う位だからキスぐらい慣れているだろうと思ったが初心過ぎる……想像以上に若い?2~3歳年下なぐらいだと踏んでいたんだけど……俺はもしかしたら悪い大人になってしまったかもしれない。
「そんなに嫌でした?もうしないので許してください」
子供なら子供として接してあげないと……謝罪しながら頭を撫でてやると真っ赤な顔で俺を睨み上げてくる。
「い……嫌じゃ無いですけど……こういう事をいきなりされると驚きます……」
嫌じゃないのか……良かった。
「次からは予告をすれば良いですか?わかりました」
「つ……次!!」
落ちていた果物を拾い上げて、ナディユさんを起き上がらせようと手を差し伸べ……伸ばした手を掴まれて体を引かれ、バランスを崩しそのまま……。
仕返しのつもりなのか、ナディユさんの唇と再び重なり合う。
「ほら……突然されたら驚きますよね?」
「いえ、嬉しいです」
自分からしてきたと言う事は、先程の嫌じゃないってのも社交辞令では無いだろう。
自分では恋愛感情は無かったと言っていたが、婚約者を大切に思っていた気持ちは伝わってきている。裏切られ……気付いても引き返す事も出来ない程絶望したのも、本当に大切な人だったから……。
こんな……俺がいるだろうとついキスしてしまうぐらい……。
嫉妬とか、俺もまだまだ若いな。
しかし、久し振りのキスは気持ち良かった。
今の会社に入って、友達連中とも時間が合わず遊ぶ機会が減り、女性と出会う機会も無くなり……次第に孤独になって行ったが、元来俺は好きな人間にはかなり甘える方だ。
恋愛イベントっぽい事を幾つかこなしていけばナディユさんも納得してくれるだろうか?
さて、異世界漫画のヒロイン達はどんな恋愛イベントを起こしていたっけな……。
異世界の異星人との二人きりの異世界は存外楽しめそうである。
同じ魔機を作っても作り手が違えば効果に差が出て、魔法の才能の差を埋める為の魔機も、作り手の才能によって左右されるとの事。
ナディユさんの星では、見知らぬスマホを魔改造したり、宇宙船を一晩で作り変えたり、みんながそういう天才系なのかと思ったけれど、ナディユさんが特別だった様だ。
それしか無いと言ったがそれがあるなら良いじゃないか。
俺は他者と比べて秀でたものなど持ち合わせていないので、率直に凄いと感心したのだが、ナディユさんは浮かない顔をしていた。
「結局、星を何とかしたいと言いながら……星を滅ぼす原因となった魔機を手放す選択を私は出来ませんでした」
魔機を作る天才のナディユさんは魔機を分解させる天才でもあって……王族の血を残そうと女体化を押し進める邪魔をする、ナディユさんが殺されずにいたのはそういう理由だったのだろう。
自国で優秀な魔機を作り、敵方の魔機を無効化させる職人は手放したく無いよな。例のお兄さんが暗殺でもしようもんならお兄さんの立場も不味いわ。
「今まで当然の様にあった便利な生活を手放すのはなかなかの勇気がいる事だと思いますよ。俺だって、いきなり家電全て捨てろと言われたら困りますもん」
休みの日はスマホで漫画を読むかゲームをするかしかしていなかったからな……ご飯炊くのだって炊飯器無いと炊けないし、洗濯だって風呂だって……戦争となると次元の違う話ではあるけれど、無くなったらどうしていいか困るのは一緒。
「人の暮らしを便利にする魔機もたくさんありますが、人を殺める為の魔機もたくさんあります……私の作ってきた魔機は……どれだけの人の命を奪って来たのでしょうね」
魔弾式銃を見つめる顔は、薄く笑みを浮かべていたけれど……それはとても悲しそうな笑顔だったけれど、他者の死とは無縁の場所で生きてきた俺には掛ける言葉が見つからない。
自分の作り出した物が人の命を奪う為の物になる……考えると心が重いけど、地球にだって銃を作る人も刀鍛冶の人もいる。俺はまだ突き付けられた事は無いけれど、憎悪は作った人よりもそれを使う者に向かうだろう。
人を守る警察だって自衛隊だって武器を持っている。
「罪滅ぼし……自分自身の罪の呵責から逃げる為に星を救う方法を考えてきましたが、結局私は自分の婚約者一人も守れない私に星を守るなんて無謀でした」
ナディユさんの撃った弾が木の枝を撃ち抜いて果実ごと地面に落ちてきた。
果実を拾おうとしたナディユさんの手を握る。
「……俺はナディユさんの魔機で命を救われましたよ」
「克馬さん……」
ま隣にあるナディユさんの顔にゆっくりと自分の顔を近づける。避けない……から、これぐらいは許されたか?
薄く開いたその唇へ、自分の唇を押し当てた。
人の温もりを感じるなんて何年ぶりだろう……柔らかな感触はそれだけで……心が穏やかになる。
「か……克馬さん……」
唇を離すと、目の前の顔は笑ってしまいそうなほど真っ赤に染まってしまっている。
「慰める為のキス、恋愛イベント一つクリアですね」
「こ、こんな事、突然しては駄目です!!」
尻もちをついて、指を震わせ……中学生でももっと落ち着いているだろうと思える位、目に見えて動揺している。
婚約者がいたんだし、俺と子作りしようと言う位だからキスぐらい慣れているだろうと思ったが初心過ぎる……想像以上に若い?2~3歳年下なぐらいだと踏んでいたんだけど……俺はもしかしたら悪い大人になってしまったかもしれない。
「そんなに嫌でした?もうしないので許してください」
子供なら子供として接してあげないと……謝罪しながら頭を撫でてやると真っ赤な顔で俺を睨み上げてくる。
「い……嫌じゃ無いですけど……こういう事をいきなりされると驚きます……」
嫌じゃないのか……良かった。
「次からは予告をすれば良いですか?わかりました」
「つ……次!!」
落ちていた果物を拾い上げて、ナディユさんを起き上がらせようと手を差し伸べ……伸ばした手を掴まれて体を引かれ、バランスを崩しそのまま……。
仕返しのつもりなのか、ナディユさんの唇と再び重なり合う。
「ほら……突然されたら驚きますよね?」
「いえ、嬉しいです」
自分からしてきたと言う事は、先程の嫌じゃないってのも社交辞令では無いだろう。
自分では恋愛感情は無かったと言っていたが、婚約者を大切に思っていた気持ちは伝わってきている。裏切られ……気付いても引き返す事も出来ない程絶望したのも、本当に大切な人だったから……。
こんな……俺がいるだろうとついキスしてしまうぐらい……。
嫉妬とか、俺もまだまだ若いな。
しかし、久し振りのキスは気持ち良かった。
今の会社に入って、友達連中とも時間が合わず遊ぶ機会が減り、女性と出会う機会も無くなり……次第に孤独になって行ったが、元来俺は好きな人間にはかなり甘える方だ。
恋愛イベントっぽい事を幾つかこなしていけばナディユさんも納得してくれるだろうか?
さて、異世界漫画のヒロイン達はどんな恋愛イベントを起こしていたっけな……。
異世界の異星人との二人きりの異世界は存外楽しめそうである。
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