君と二人で愛の異世界開拓ごっこ 婚約者に裏切られた悔しさを晴らす為に二人で『人間の始まり』になりましょうって正気ですか?

藤雪たすく

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気持ちと数値

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右側からのナディユさん。
左側からのナディユさん。
俯瞰気味に……あおりで……。

うん。どの角度から見ても整ってやがるな。

「あの……克馬さん?どうかしましたか?ちょっと緊張してしまうのですが……」

果物や植物を採取していくナディユさんの顔をいろんな角度からジッと観察していると、クレームが入った。

「ナディユさん、俺の心拍数は如何ほどでしょうか?」

「心拍数ですか?……66ですけど……」

平常心か……二人しかいないから、助けてもらったから……とかではなく、婚約者にもったいない事をするなと感じた理由は、もしかしたらナディユさんの術中に嵌って完全に恋に落ちたかと思ったが……違ったか。

検証は終わったが……そもそもあの心拍数は合っているのだろうか?完璧に体の造りが同じなのか、同じ計り方をしているのか……。

ナディユさんは違うと言うけれど?俺……結構ナディユさんの事を好きな筈なんだけど。

一緒にいても嫌じゃないし、むしろ楽しい。
顔だって嫌いじゃない、むしろ憧れるレベル。
話していてもつまらなくない、むしろ面白い。

やっぱ……俺、ナディユさんの事好きだよな?

でもナディユさんは違うと言って信じてくれないしな……逆転の発想で、信じないのでは無くて信じたくないのでは?
婚約者を見返したくて現地人を探したが俺しか居なくて仕方なく利用するが、惚れられるのは困るのでは?
婚約者を見返したいでは無く、これだけの国を整えたから自分のところへ戻っておいでと言う未練なのでは?

考え出すと妄想は止まらず、立ち止まっていたナディユさんの背中にぶつかった。
高い樹に生っていた実を落とそうと、銃で枝を狙っていたのであろうナディユさんの手元が狂って実が弾けてしまい、果汁たっぷりな実だったらしく、それは俺とナディユさんに降り注ぎ、血の様に赤い果汁を頭から浴びた姿は中々怪しい。

「大丈夫ですか?何か気になる事でも?」

自分よりも先に俺の頭を布で拭いてくれるナディユさんを見上げた。血も滴るいい男だ。

「ナディユさんが気になります」

「…………克馬さんといると心臓がオーバーワークで早死にしてしまいそうですね」

一瞬の真顔の停止の後、直ぐに微笑み返された。
恋で過労死はまだ聞いた事が無いから大丈夫だろう。

「人は意外と丈夫ですよ。2、3日寝なくても意外といけるものです」

いっそ倒れてくれたら、すっぱり会社を辞められるのになあ、なんて考えたりするぐらい健康……いや、辛くても倒れなければ辞めれないと考えていた時点で病んでいたか?

たった3日。
されど3日。
ナディユさんとのこの生活は神様がくれた休暇なのかもしれないと思える程、心が開放された気持ちになっている。
ソロキャンプにハマる人の気持ちが分かったよ。

「そうですね……でも夜はゆっくり寝ましょう。お互いもう何かに追われている訳ではありませんので、のんびり楽しみましょう」

日中はこうして島の調査、入浴中でも飛び出して来たり、睡眠時に筋トレしたり、朝も早くから炊飯器を改造したり、とてもナディユさんがのんびりしている様には思えないが?

俺を拭き終わり自分の頭を拭くナディユさんの手から布を奪って、俺もナディユさんの頭を拭いていくが、頭頂部が見えない悔しさからつい手つきが乱暴になってしまったのは仕方が無い。

「ナディユさんはもっとのんびりしていただいても良いと思いますよ。ナディユさんの魔機に頼っている俺が言うのも何ですが……改造、改造でのんびり出来てます?」

俺を快適に過ごさせてくれようという心意気ならもう十分伝わっている。

「そうですね……でも私にはこれしか無いですから……」

俯かせてしまった……頭頂部がよく見えるのは助かるが……何が地雷だった?改造命だった?趣味を止めたと思われたのだろうか?

「いえ……仕事の延長だと体が休まらないんじゃないのかと思っただけで、それが趣味なら良いんですが……」

「仕事と言うか趣味と言うか……シェーニエ家というのは元々魔機を作る事に秀でた一族で、私もその才能を受け継いだもので、幼い頃から研究室を与えられ、ずっとそれしかやって来なかったので、のんびりと言われても何をして良いのかが分からないのですよね……」

「俺も仕事以外は家に籠もっている引き籠もりだったので分からなくは無いですけどね」

俺も正直、何をして過ごして良いのか有意義な時間の使い方は分からない。

「……調査続けましょうか?」

「そうですね」

二人揃って遊びは思い付かず、調査を続行する事になった。
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