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絶滅か倫理か
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流石は宇宙人、俺の想像の斜め上から来た。
俺と恋人ごっこをして幸せな異星ライフを送ってやる!!みたいな事を想像していたのだけれど……そんな過程はすっ飛ばしていた。
「私と克真さんで……この星の父と母になりたい」
この星の父と母……どういう事?
「この星の人間の始まりとして貴方と愛を育みたいです」
「この星の人間の始まりって……」
それって……俺とナディユさんが子供を産んで……この星に人間の社会を作っていくって事?
俺の手を強く握りしめて、真っ直ぐに見詰めてくる瞳は……本気モードだ……マジかぁ。
さっきクローンと女体化の危険性を語られて……人間的な良心のある人で良かったと安心したばかりなのに……良い人だと思ったからこそ、そんな事は言って欲しく無かったけど、所詮は宇宙人。
俺とは思考回路が違うのだろう。残念だ。
「ナディユさん……俺は話を聞いて、女体化に反対するナディユさんに感心していました。その貴方からそんな事を言われるとは思いませんでした」
「克真さんを女体化の魔機なんて使うわけ無いでしょう!!あれは相当な負担を体に掛けると分かっているのに!!克真さんは私の大切なヒロイ……は……初恋の相手なのですから!!」
言い直してくれたけど合ってるのか、それは?
「ナディユさん……初恋って……」
「私、初めて克真さんを見た時にとても心が踊りました。もっともっと貴方を知りたいという欲求に駆られ……有無を言わさずリサーチボックスに押し込んだり……こんな事初めてです」
「それは恋ではなく、ただの知的好奇心では……」
誰にも恋した事無い王子様が異世界人と出会って一目惚れって、絵に描いた様なテンプレだな……これも異世界漫画が宇宙人に与える悪影響だな。
「貴方を女体化させたいなんて、少しも考えていません。私が女体化するのだって駄目です。私は少しでも長く克真さんと共にいたいですから」
熱烈なプロポーズを受けるが……どうにもなあ。
「ナディユさんの気持ちは嬉しいのですが、お応えは出来そうにないです。調べて分かっていると思いますが、俺は男なので女体化なりの方法を取らない限りはナディユさんの期待には応えられませんから……」
恋人として過ごす位は出来るし、性的欲求解消の相手もナディユさんとなら考えられる。
だが……求められている事が子供を産んでナディユ王国を作るとなると俺には無理だ。
大体神話の世界ならともかく、二人で子供を作れたところでその後は近親相姦の繰り返しだぞ……異世界だから知ったこっちゃないと投げやりになったとしても、濃すぎる血は子供が不幸になる。
「うん。無理です」
「はい……分かっています。今はそうかもしれませんが、いつか克真さんに好いて貰える様に努力いたします。そして二人の愛の結晶を残しましょう」
「努力をして貰っても越えられない壁って物はありまして、子供は無理ですって……」
断る俺の目の前にナディユさんは手のひらサイズの……卵?を取り出した。
「何の卵ですか?」
「私も男性のパートナー同士で子を残せる研究をしていたと言いましたよね。これがその成果です……と、言ってもまだ研究段階ですが……恐らく克真さんの世界では人間が踏み込んではいけない領域の魔機かもしれませんが……生命を造り出す……生命創造機です」
手渡されたけれど……とてもそんな大層な物には見えないと言うのが正直な感想。ただの卵にしか見えない。
「この魔機の中には私の星のあらゆる生物のデータが書き込まれています。そのデータを元に魔素を使って生命を造るのです……ただ、その生命を『人間』と呼んで良いものか答えが出ず、人体実験はまだ行っていません」
人造人間を人間と呼ぶかどうか、人が生命を人工的に造るのは神への冒涜ともとれなくない。
相手の体を顧みない女体化を押し進めるのは非人道的行為だと思うが、クローンや人造人間は非倫理的行為だろう。
ナディユさんの星では人類の滅亡が掛かっていて……道徳や倫理とかは薄らいでいるのだろう。
「動物では成功しているんです。人間での初めての被験者は私と婚約者で行うつもりでいたのですが……そういう点では動物達の方が優れていたようですね。私と彼ではこの生命創造機を動かすことができなかった」
「人間には使えなかったってことですか?神の怒り?」
「いえ、私たちの星では『神』は信じられていませんから、神の怒りというのは……単純に私と彼とでは無理だったということです。克真さんのおかげで何故上手くいかなかったのかがはっきりとわかりました」
俺のおかげで?婚約者と動かせなかった物が、異星人で異世界人な俺が動かせるとは思えない。ナディユさんが何を根拠に言っているのかわからないが、過度な期待をされても困るなあ……卵をナディユさんに返すと宝物のように卵に頬を寄せている。
「魔素で肉体を造りますが、生命を造り出すのに一番必要な物……それは愛。きっと愛の力が足りなかったのです」
「愛……ですか?」
ラブ イズ オール?
いきなりのドリーマー?
神は信じないのに愛は信じているのか?
これなら問題点は多かろうが、クローンだったり女体化の方が現実味がある気がする。
婚約者なのに辛辣だと同情していたが『理想だけの夢見がちの馬鹿』はあながち間違っていなかったのではないだろうか……。
俺と恋人ごっこをして幸せな異星ライフを送ってやる!!みたいな事を想像していたのだけれど……そんな過程はすっ飛ばしていた。
「私と克真さんで……この星の父と母になりたい」
この星の父と母……どういう事?
「この星の人間の始まりとして貴方と愛を育みたいです」
「この星の人間の始まりって……」
それって……俺とナディユさんが子供を産んで……この星に人間の社会を作っていくって事?
俺の手を強く握りしめて、真っ直ぐに見詰めてくる瞳は……本気モードだ……マジかぁ。
さっきクローンと女体化の危険性を語られて……人間的な良心のある人で良かったと安心したばかりなのに……良い人だと思ったからこそ、そんな事は言って欲しく無かったけど、所詮は宇宙人。
俺とは思考回路が違うのだろう。残念だ。
「ナディユさん……俺は話を聞いて、女体化に反対するナディユさんに感心していました。その貴方からそんな事を言われるとは思いませんでした」
「克真さんを女体化の魔機なんて使うわけ無いでしょう!!あれは相当な負担を体に掛けると分かっているのに!!克真さんは私の大切なヒロイ……は……初恋の相手なのですから!!」
言い直してくれたけど合ってるのか、それは?
「ナディユさん……初恋って……」
「私、初めて克真さんを見た時にとても心が踊りました。もっともっと貴方を知りたいという欲求に駆られ……有無を言わさずリサーチボックスに押し込んだり……こんな事初めてです」
「それは恋ではなく、ただの知的好奇心では……」
誰にも恋した事無い王子様が異世界人と出会って一目惚れって、絵に描いた様なテンプレだな……これも異世界漫画が宇宙人に与える悪影響だな。
「貴方を女体化させたいなんて、少しも考えていません。私が女体化するのだって駄目です。私は少しでも長く克真さんと共にいたいですから」
熱烈なプロポーズを受けるが……どうにもなあ。
「ナディユさんの気持ちは嬉しいのですが、お応えは出来そうにないです。調べて分かっていると思いますが、俺は男なので女体化なりの方法を取らない限りはナディユさんの期待には応えられませんから……」
恋人として過ごす位は出来るし、性的欲求解消の相手もナディユさんとなら考えられる。
だが……求められている事が子供を産んでナディユ王国を作るとなると俺には無理だ。
大体神話の世界ならともかく、二人で子供を作れたところでその後は近親相姦の繰り返しだぞ……異世界だから知ったこっちゃないと投げやりになったとしても、濃すぎる血は子供が不幸になる。
「うん。無理です」
「はい……分かっています。今はそうかもしれませんが、いつか克真さんに好いて貰える様に努力いたします。そして二人の愛の結晶を残しましょう」
「努力をして貰っても越えられない壁って物はありまして、子供は無理ですって……」
断る俺の目の前にナディユさんは手のひらサイズの……卵?を取り出した。
「何の卵ですか?」
「私も男性のパートナー同士で子を残せる研究をしていたと言いましたよね。これがその成果です……と、言ってもまだ研究段階ですが……恐らく克真さんの世界では人間が踏み込んではいけない領域の魔機かもしれませんが……生命を造り出す……生命創造機です」
手渡されたけれど……とてもそんな大層な物には見えないと言うのが正直な感想。ただの卵にしか見えない。
「この魔機の中には私の星のあらゆる生物のデータが書き込まれています。そのデータを元に魔素を使って生命を造るのです……ただ、その生命を『人間』と呼んで良いものか答えが出ず、人体実験はまだ行っていません」
人造人間を人間と呼ぶかどうか、人が生命を人工的に造るのは神への冒涜ともとれなくない。
相手の体を顧みない女体化を押し進めるのは非人道的行為だと思うが、クローンや人造人間は非倫理的行為だろう。
ナディユさんの星では人類の滅亡が掛かっていて……道徳や倫理とかは薄らいでいるのだろう。
「動物では成功しているんです。人間での初めての被験者は私と婚約者で行うつもりでいたのですが……そういう点では動物達の方が優れていたようですね。私と彼ではこの生命創造機を動かすことができなかった」
「人間には使えなかったってことですか?神の怒り?」
「いえ、私たちの星では『神』は信じられていませんから、神の怒りというのは……単純に私と彼とでは無理だったということです。克真さんのおかげで何故上手くいかなかったのかがはっきりとわかりました」
俺のおかげで?婚約者と動かせなかった物が、異星人で異世界人な俺が動かせるとは思えない。ナディユさんが何を根拠に言っているのかわからないが、過度な期待をされても困るなあ……卵をナディユさんに返すと宝物のように卵に頬を寄せている。
「魔素で肉体を造りますが、生命を造り出すのに一番必要な物……それは愛。きっと愛の力が足りなかったのです」
「愛……ですか?」
ラブ イズ オール?
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神は信じないのに愛は信じているのか?
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