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好感度アップイベント

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赤い実、青い実、白い実……体温計……鑑定魔機というらしい物で食用可能と表示様々な木の実を採取してはアイテムボックスへ収納していく。

「美味しく食べられる実が多いと嬉しいなあ」

虫は嫌だが木の実なら大歓迎だな。
名前は食べて味をみてから決めよう。

「お米に似た物も見つかると良いですね。日本人はお米なんですよね」

異世界に行った漫画では大体お米を熱望してるからな……俺は手軽だしパンでも十分満足だけど。ナディユさんの出してくれたパンはありがちなカチコチパンじゃなく柔らかいし、今日集めた木の実でジャムとか作れるなら作りたいなぁ。

好きなのはブルーベリージャム……掌に乗せた収穫したばかりの小さな実達に期待を寄せた。

ーーーーーー

安全なナディユさんの後ろを付いて、森の奥へ奥へと進んできてしまったけれど……少し不安な事もある。

帰り道は分かるのだろうか?

後ろを振り返ると俺達が歩いてきた目印なんて無い。

「帰り道って、分かるんですか?」

木を見上げたり、足元の草を確認しながら前を進む背中に投げ掛けた。

「方向は分かりますよ。でも戻る必要もありませんから、宇宙船をここへ呼び寄せる事が出来ます。宇宙へ出る力が無いだけで、飛行能力は生きてますから」

「え……じゃあ宇宙船に乗って探索した方が速いんじゃ……」

空からなら、すぐに海があるとか集落があるとか分かるのでは?

「面白くないじゃないですか。宇宙船の中だと足を滑らせて転けそうになる体を支えたり、段差のある場所で手を貸す為に、手を握ったりするイベントも何も起きないんですよ?まだ一度も足を滑らせてもらえていないのに……」

妙な期待をされていたようだ。
山道は慣れてたから……整備されていなくてもこれぐらいの平坦な道なら足をとられる事もないんだけど、これは謎のイベントを起こさないと暫くの間、探索が終わらなそうだな……。

木の実の採集を続けながら、期待に添えるような落差のある場所や崖下りポイントを探すけど中々ない物である。
意識を周囲に集中させていると、微かな音を耳が拾った。

聞こえてきたであろう方向に顔を向けて耳を澄ますと……やっぱり聞こえる、波の音だ。

「ナディユさん、波の音が聞こえます。海が近いみたいです」

「音……あ、本当ですね。行ってみましょう」

子供みたいな笑顔を見せてナディユさんは俺が指差した方向へ進み出した。
そちらへ向かうとすぐに森が切れて、砂浜が広がっていた。

断崖絶壁でなくて良かったよ。
ナディユさんなら崖を降りると言い出しかねないからな。

「海は初めてですか?」

「はい。どういうものかは知っていますし、海洋生物も研究には使っていましたが用意されていただけなので……実際に目にするのは初めてです」

研究……研究室から出ない引きこもり研究者。
だから外の世界にこんなに楽しそうなのかな?

「砂浜は歩きづらいので気をつけましょう」

「は……はい……」

転ばないように繋いだ手を引くと、緊張した顔でナディユさんは砂浜へ足を踏み入れた。

「砂地は初めてですが、本当に歩きづらいのですね」

砂浜の独特の感触に、ナディユさんは楽しそうに足元を見ながら歩いている。
転びそうだなぁ……なんて人の事を気にしすぎていたせいで、凹凸のある砂浜の窪みに足が嵌まって体がよろけた。

踏ん張ったところで腰を抱かれ、ナディユさんの方へ引き寄せられる。
まるでお姫様を抱き上げる王子様のようなスマイルが目の前に……。

「大丈夫ですか?」

……眩しいな。

「はい。ありがとうございます」

砂浜に下ろしてもらうと、手を握ったまま海へと向かって二人で歩き出した。
盗み見るように見上げると、海を見つけた時の子供のようなワクワクを滲ませた顔ではなく、満足そうな落ち着いた笑顔……例の待望のイベントはこれでクリアできたのだろうか。これで満足してくれたならそれで良いけど……。

波打ち際まできたところで、海を見つけたが……貝を探すなら岩場の方がいい、というよりも濡れながら岩場を徘徊して小さな貝を探さずとも猪の肉はまだまだ在庫があるはずだ。

海を見つけた感動は薄らいでいるのだが、ナディユさんはいそいそとアイテムボックスから大きなドーム型の何かを取り出した。

「これは何に使う魔機ですか?」

先ほど注意されたばかりだから、今回は使われる前にちゃんと聞いた。

「魔法炉です。材料を投入すると色々作れますので、何か足りないものがあったら仰ってくださいね」

そう言いながらナディユさんは魔弾式銃を構えて炉の上部に魔法を放ち、土魔法だったのか大量の土が炉の中に吸い込まれていく。何を作るのかなぁ……とのんびり傍観しているとすぐに炉の下部から大きな土鍋が吐き出されてきた。

「鍋……」

海鮮鍋でも楽しむのかと思ったが、相手はナディユさんだ……鍋……海……。

「塩ですか?」

「はい!!やはり基本なのですね」

塩作りは全く基本ではないが、俺が言い当てたことでナディユさんの勘違いを異世界漫画知識を肯定することになってしまった様だ。

ーーーーーー

ただひたすら火の番をするだけなのだが、歩くのにも疲れていたのでいい休憩だ。

木の枝を折り、倒した猪の眺めだった毛と骨で作った簡易釣竿でどうして、何メートルもありそうな海蛇の様な物が釣れるのかなぁと、ナディユさんが楽しそうに釣りをしているのをぼんやりと眺めている。

満喫しているなぁ……婚約者を寝取られて、その婚約者に裏切られ、遠く離れた未知の星に漂流させられた人にはとても見えない。

鍋の中の海水がドロドロに煮詰まってきた頃にナディユさんは釣りから戻ってきた。

「大漁ですよ。食べられる魚もたくさん取れたので焼いて食べましょう」

自動調理鍋が魚を捌いてくれている間に塩を煮詰め、出来たばかりの塩を綺麗に処理された魚に振って串を打ち、焼き始めた。焼ける匂いは、まんま焼き魚の匂い。この辺の差異がない世界だったことは本当に救いだよ。
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