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妙な空気
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早速出かけようと俺の腕を掴んで駆け出すナディユさんの後ろを渋々着いていく。
徹夜明けだし、出来れば一眠りしてからにして欲しかったけど、遠足へ行く子供のようにはしゃぐ姿に拒否は出来なかった。
「そうだ、克真さん。これをお返ししておきますね」
そう言って渡されたのは、先ほどバラバラになっていた俺のスマホだった。
「わざわざ元に戻してくれたんですか?」
どうせ直して貰っても使えないもんだから良かったのに。
何の気なく立ち上げてみるとまだ充電が残っていたようで、画面が明るくなったが……見覚えのないアプリのアイコンが並んでいた。
「この星でも使えるように作り替えておきました。宇宙船と繋がっていますので宇宙船に登録されている情報を外でも閲覧することが出来ますし……離れていても私と通話可能です」
笑いながらナディユさんが取り出したのは俺のものとそっくりのスマホだった。
「トップ画面にある銃のマークのアイコンをタップしてみてください」
言われるままにアイコンをタップするとカメラの画面に切り替わった……ただ、中心には照準が……。
「攻撃したい物……今はあの木を狙ってみましょうか。照準を合わせて4つのボタンから好きな物を選んで押してください」
画面下部に表示されたボタンには『火』『水』『風』『雷』と書かれている。指示に従いカメラを木に向けて『火』のボタンを押してみると……カメラに映し出されていた木を火の弾が撃ち抜いた。
「……は?」
唖然とする俺の横でナディユさんは満足そうに頷いた。
「魔弾式銃より威力は落ちますが此処から魔弾を撃つ事が出来るようにしました。あとこれは私のスペアですが、亜空間収納……克真さんの世界風にいうとアイテムボックスです」
ライトの代わりに魔法の弾が出るように魔改造されたスマホと移動ポケットのように取り外し可能なポケットを渡される。俺が意味のないToDoリストを作っている間にスマホを解析して改造して複製までしていたとは恐れ入ったよ。
俺でも扱える武器とアイテムボックスまで貰ってしまった。
「ナディユさん、何から何までありがとうございます」
「この星の住人が姿を見せない今の状況では、私と克真さんの二人きりです。力を合わせて生き抜きましょう」
ぎゅっと手を握られて微笑まれた……でも残念ながら力を合わせてではなく、ナディユさんにおんぶに抱っこで生き抜く事になると思います。
「俺で役に立てるかわかりませんが……頑張ります」
ーーーーーー
さあ探検だ……と、森に足を踏み入れる前に大きな獣が現れたが、遭遇して秒でナディユさんに倒されていた。
知性のある生き物かどうか確認する前にやってしまっていいのだろうか。
「ある程度は翻訳機が言葉や感情を読み取って翻訳してくれます。この獣は目の前に現れた餌を食べる事しか考えていませんでした。食うか食われるかという場面でしたね」
俺もまあ……これ食われるなってのは肌で感じ取っていたけど、ナディユさんの躊躇の無さから、もしかしたら俺も出会い方を間違えていたら、目が合った瞬間に瞬殺されていたんじゃって、いまさらながら怖くなっただけだ。
「克真さんからは『敵か味方か』って怯える気持ちと私の言葉を理解しようとする姿勢が見えたのですぐに知性のある生き物だとすぐ分かりましたよ。姿も似てましたしね」
にこっと微笑まれ、俺も笑顔を返す。
ナディユさんが人型の宇宙人で本当に助かった。
それはそうとして……。
「この獣、倒したは良いですけど、どうしますか?」
「少し待っていてくださいね」
そういうとナディユさんはポケット……アイテムボックスから体温計のような物を取り出して獣の体に突き刺した。
優しそうな顔をしているけど、銃を撃つ時も今も……戸惑い無くやるよね。
「……味までは分かりませんが、毒は無さそうですね」
やっぱり食べる気だ……バーベキューやりたがってたもんな。
「……俺は漫画みたいに捌けないですよ。血とか見るの苦手です」
「私もやった事は無いですけど……何とかなるかな……でも……」
この人、異世界漫画の知識で捌く気だ……出来れば俺は宇宙船の中で待たせて貰えないかな。グロいシーンは2次元ならまだ見られるが、実写のスプラッター映画とかは無理。この死体を見ているだけでも割ときてる。
「極力魔機に頼らない生活を経験してみたかったのですが、克真さんは本当に血が苦手なようですから、ここは大人しく魔機に頼りましょうか」
ナディユさんがアイテムボックスから炊飯器に似た物を取り出し、その蓋を開けると馬鹿でかい獣の死体がその炊飯器の中に吸い込まれた。
「最新式の自動調理鍋です。食肉獣の解体から調理までこなしてくれるんですが……今回は解体だけで……焚き火で串焼きは譲れません」
まあ、そこはスプラッター見なくて済むなら何でも良い。
「便利な道具ですね。異世界とかどうなるものかと不安でしたが、ナディユさんとご一緒出来て良かった……一人なら確実に死んでいるところでした」
ナディユさんの隣に腰をおろして、一緒に炊飯器を覗き込む。何か文字が表示されているけれど、俺には解読出来なかった。
「私と一緒で良かったと思って貰えるんですか?……私も、克真さんと出会えて良かったです」
うん?
二人で炊飯器を眺めているのだが……なんか空気がおかしくないかい?
微笑みながら炊飯器を見つめるナディユさんの頬……仄かに赤い。
……深く追求してはいけない予感に黙って炊飯器を見つめ続けた。
徹夜明けだし、出来れば一眠りしてからにして欲しかったけど、遠足へ行く子供のようにはしゃぐ姿に拒否は出来なかった。
「そうだ、克真さん。これをお返ししておきますね」
そう言って渡されたのは、先ほどバラバラになっていた俺のスマホだった。
「わざわざ元に戻してくれたんですか?」
どうせ直して貰っても使えないもんだから良かったのに。
何の気なく立ち上げてみるとまだ充電が残っていたようで、画面が明るくなったが……見覚えのないアプリのアイコンが並んでいた。
「この星でも使えるように作り替えておきました。宇宙船と繋がっていますので宇宙船に登録されている情報を外でも閲覧することが出来ますし……離れていても私と通話可能です」
笑いながらナディユさんが取り出したのは俺のものとそっくりのスマホだった。
「トップ画面にある銃のマークのアイコンをタップしてみてください」
言われるままにアイコンをタップするとカメラの画面に切り替わった……ただ、中心には照準が……。
「攻撃したい物……今はあの木を狙ってみましょうか。照準を合わせて4つのボタンから好きな物を選んで押してください」
画面下部に表示されたボタンには『火』『水』『風』『雷』と書かれている。指示に従いカメラを木に向けて『火』のボタンを押してみると……カメラに映し出されていた木を火の弾が撃ち抜いた。
「……は?」
唖然とする俺の横でナディユさんは満足そうに頷いた。
「魔弾式銃より威力は落ちますが此処から魔弾を撃つ事が出来るようにしました。あとこれは私のスペアですが、亜空間収納……克真さんの世界風にいうとアイテムボックスです」
ライトの代わりに魔法の弾が出るように魔改造されたスマホと移動ポケットのように取り外し可能なポケットを渡される。俺が意味のないToDoリストを作っている間にスマホを解析して改造して複製までしていたとは恐れ入ったよ。
俺でも扱える武器とアイテムボックスまで貰ってしまった。
「ナディユさん、何から何までありがとうございます」
「この星の住人が姿を見せない今の状況では、私と克真さんの二人きりです。力を合わせて生き抜きましょう」
ぎゅっと手を握られて微笑まれた……でも残念ながら力を合わせてではなく、ナディユさんにおんぶに抱っこで生き抜く事になると思います。
「俺で役に立てるかわかりませんが……頑張ります」
ーーーーーー
さあ探検だ……と、森に足を踏み入れる前に大きな獣が現れたが、遭遇して秒でナディユさんに倒されていた。
知性のある生き物かどうか確認する前にやってしまっていいのだろうか。
「ある程度は翻訳機が言葉や感情を読み取って翻訳してくれます。この獣は目の前に現れた餌を食べる事しか考えていませんでした。食うか食われるかという場面でしたね」
俺もまあ……これ食われるなってのは肌で感じ取っていたけど、ナディユさんの躊躇の無さから、もしかしたら俺も出会い方を間違えていたら、目が合った瞬間に瞬殺されていたんじゃって、いまさらながら怖くなっただけだ。
「克真さんからは『敵か味方か』って怯える気持ちと私の言葉を理解しようとする姿勢が見えたのですぐに知性のある生き物だとすぐ分かりましたよ。姿も似てましたしね」
にこっと微笑まれ、俺も笑顔を返す。
ナディユさんが人型の宇宙人で本当に助かった。
それはそうとして……。
「この獣、倒したは良いですけど、どうしますか?」
「少し待っていてくださいね」
そういうとナディユさんはポケット……アイテムボックスから体温計のような物を取り出して獣の体に突き刺した。
優しそうな顔をしているけど、銃を撃つ時も今も……戸惑い無くやるよね。
「……味までは分かりませんが、毒は無さそうですね」
やっぱり食べる気だ……バーベキューやりたがってたもんな。
「……俺は漫画みたいに捌けないですよ。血とか見るの苦手です」
「私もやった事は無いですけど……何とかなるかな……でも……」
この人、異世界漫画の知識で捌く気だ……出来れば俺は宇宙船の中で待たせて貰えないかな。グロいシーンは2次元ならまだ見られるが、実写のスプラッター映画とかは無理。この死体を見ているだけでも割ときてる。
「極力魔機に頼らない生活を経験してみたかったのですが、克真さんは本当に血が苦手なようですから、ここは大人しく魔機に頼りましょうか」
ナディユさんがアイテムボックスから炊飯器に似た物を取り出し、その蓋を開けると馬鹿でかい獣の死体がその炊飯器の中に吸い込まれた。
「最新式の自動調理鍋です。食肉獣の解体から調理までこなしてくれるんですが……今回は解体だけで……焚き火で串焼きは譲れません」
まあ、そこはスプラッター見なくて済むなら何でも良い。
「便利な道具ですね。異世界とかどうなるものかと不安でしたが、ナディユさんとご一緒出来て良かった……一人なら確実に死んでいるところでした」
ナディユさんの隣に腰をおろして、一緒に炊飯器を覗き込む。何か文字が表示されているけれど、俺には解読出来なかった。
「私と一緒で良かったと思って貰えるんですか?……私も、克真さんと出会えて良かったです」
うん?
二人で炊飯器を眺めているのだが……なんか空気がおかしくないかい?
微笑みながら炊飯器を見つめるナディユさんの頬……仄かに赤い。
……深く追求してはいけない予感に黙って炊飯器を見つめ続けた。
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