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自主的キャトられ

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徹夜明けに仕事へ行く前に缶コーヒーを買って、お釣りを取ろうと、返却口へ吸い込まれて……気が付くとこの森の中に……よく読んでいた異世界物に俺が巻き込まれたと半信半疑で森の中を歩いていると見た事も無いデカい化け物に襲われた。

約束されているはずのチートなど無く、あっさり殺されかけたところを颯爽と現れたイケメンに助けてもらった訳で、これからこの人の街に行ってこの世界の常識を覚えながら、なんやかんやあって次第にスキルに目覚めて行くパターンかと思ったら……まさかの宇宙人!!

逆にこの星の文明を聞かれてしまった。
俺がこの世界の事を知るわけが無いじゃないか。

「異世界?」

怪訝そうな顔を向けられても知らないよ。俺が聞きたいよ。異世界で無かったとしても、ここは俺には未知の土地……迷う事なく頷いた。

「そうですか……」

考え込んでしまった宇宙人。

何を考えているのかは分からないけれど、この宇宙人は俺を襲ってきた化け物を倒した、銃の様な武器を持っている。

丸腰の俺は逆らわない方が良いし、この宇宙人から逃げ出したところでまた化け物に遭遇するのがオチだろう。

「俺は武器も何も持っていないので、貴方とご一緒させて欲しいです……出来れば貴方の星まで連れて行って貰えると助かるのですが……」

こんな未開の地に留まるより、文明の発達してそうなこの宇宙人の星に移住したい。

「そうですね、ここの生物は危険な物が多いようです。ひとまず私の宇宙船へと戻りましょうか?そこで落ち着いて話をしましょう」

宇宙人と名乗る男の宇宙船にのこのこと自分から着いていくなんて、警戒心がなさ過ぎると親や友人には馬鹿にされるかも知れないが、もはや俺の理解のキャパはオーバーもオーバー、受け入れる器は溢れた物で沈んだ。

突然の異世界転生で、転生先はヨーロッパ風では無くジュラシック風。第一異世界人は現地人では無く宇宙人。

もうどうにでもなれと『投げやり』という言葉が1番相応しい心境だ。だから誰も俺を非難できないと思う。

謎の赤い草をかき分けて進んで行くと青い幹に紫色の葉を繁らせた木々が薙ぎ倒されていた。その先には……SFチックなメタリックな丸い大きな球。

「あれが宇宙船ですか?」

少しずつ近づいても入り口らしきものは見つからない。

「ええ、一人用なので狭いですが……外で寝泊まりするよりは快適だと思います」

大きいとはいえ、宇宙人の背より少し高いくらいで、この大きさの中に二人で入るとかなり狭く感じるだろう。

球を見上げる俺の横で宇宙人が球に手を触れると、球面を光の筋が走り一部が迫り出して来て、口を開いた。

「どうぞ」

促されるままに足を踏み入れると……さすがというか何というか……異空間だよ。外から見た大きさを完全無視した大きさの部屋の中だった。

真っ白で落ち着かないけれど、テーブルと椅子、ベッド、電話ボックスの様なガラスの箱、キッチンらしき物もあって、壁にはいくつかのドアが並んでいた。

「こちらへ来ていただけますか?」

扉のうちの一つを開けた宇宙人に呼ばれて、ついて行った先の部屋は打って変わって仄暗い部屋。部屋の中心には淡い青緑の光の輪。
その輪の中に立つように言われて移動すると……足元から壁が伸びてきてガラスの円筒の中に閉じ込められた。

「すみません……少し調べさせてくださいね。大丈夫、痛くは無いですから……」

大丈夫、予想の範囲内だ。
これから何かを埋め込まれるのか何をされるのか……血を全て抜かれるのは勘弁だけど、痛くないって言ってるから信用しよう。

どのみち、この宇宙人と共にいなければ俺が生き残れる道はないだろうから。

つま先から膝、腿、腹……胸へと光の線が移動してくる。宇宙人は空中に浮き上がっている文字を押して何かを操作している様だ。

「出身は……確かに『不明』になってますね。似た物はあるけれど、この宇宙にあるどの物質とも適合しない……本当に異世界人。まさか理論上の話だけの存在に遭遇できるなんて……」

何が書かれているのか、翻訳機とやらは言葉は変換してくれるが文字までは翻訳してくれないようで、俺にはさっぱりだが、俺もまさか物語の中だけの存在に2重で会えるとは思わなかったよ。

「体の造りはほぼ一緒なんですね。遺伝子の光も……異なる世界で生きているのにこんなに似た進化をするなんて神秘的ですね」

微笑まれてもそうですね、と笑い返す事しか出来ないけど。異世界だから何でもありじゃね?と思うのはこっちの都合か。
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