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魔王の災厄
魔王の小さな恋
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強さとは?弱さとは何だろう?
俺は今、初めて力とはなんだという事について悩んでいる。
「まさかお前が竜血石を受け取るとは思わなかった……しかもスライム……あはははははっ!!」
「笑うな、失礼だろう」
大笑いしながら床を転がるアルファドラゴンは無視し、ベッドに寝転びながら小さな竜血石を眺め続けた。
竜血石とは雄の竜特有の求愛の道具で、恋した相手への血を吐くほどの狂おしい想いが胸の中で固まった物。
それを相手へと贈り、受け取ってもらえれば晴れて番になれる。
『愛しています』を表現するだけの為の物なので強制力も拘束力もないが、雄が竜血石を作れるのは一生に一度だけ、それだけの想いで愛していると伝えるためだけの物。
今日俺はその竜血石を受け取ってしまった。
相手は生まれて間もないスライムだったから、恐らくこの竜血石は先日俺が殺した水竜が誰かに贈るために作っていた途中の物を拾ったのだろう。
真っ直ぐな好意、指で突いただけで弾けてしまいそうな脆弱な体で必死に俺を求めて触手を伸ばしてくる姿に、初めて胸が締め付けられるという体験をした。
ふよふよと俺の頬に触れる触手の感触を思い出して思わず頬が緩んだ。
スライムなんて今まで意識にも入れた事なかったけれど、あの愛らしい姿を思い出しただけで……胸が……熱く……。
「お……おいっ!!やめろ!!戻ってこい!!」
慌てた顔のアルファドラゴンが俺の体を揺さぶっていた。
「何だ……あ?鱗?」
自分の手を見ると腕は固い鱗に覆われて、鋭い爪が生えていた。
「俺、どうした?」
「竜化しかけてた。竜化は力を増幅させてくれるが慣れてないうちは力に飲み込まれるぞ。若い竜人族が我を忘れ暴れ回る姿を何度も見た。そういう奴は大概……」
アルファドラゴンは俺の胸に手を押し当て目を閉じ……さも可笑しそうににっこりと笑った。
「初恋おめでとう、竜血石が作られ始めてる」
「恋?俺が?」
自分の胸に手を当ててみるがよくわからない。
恋をしたのか、俺は。
「あんな偉そうにしてた奴が初恋!!しかもスライムに……ぶはっ!!魔王と古代竜の力を受け継いだ最強の魔物が最弱の魔物、スライムに……わははははははっ!!」
自分の気持ちと向き合おうと思ったが騒がしさに考えが纏まらず、黙らせようと頭を殴ったらアルファドラゴンの首の骨は折れた。
いつもと変わらない力加減だったのだが、竜化の影響だろうか。
恋なのか?
初めて他者からの物を嬉しいと思った。
初めて何かを可愛いと思った。
初めて一緒にいたいと思った。
初めて……守ってやりたいと思った。
恋なのか。
会いたい、会いたいなぁ。
もう一度会えば、この気持ちはもっと確かな物に変わるだろう。
「待て、どこに行く気だ」
出掛けようとした俺の足を、もう再生したらしいアルファドラゴンが掴んで止めた。力を封じられ弱い癖に生命力だけはしつこ過ぎる程だ。
「カカロン洞窟、やっぱりあいつを連れて来る。竜血石を渡されたんだ、あいつは俺の伴侶。守らないと……」
「今はやめとけって!!あの洞窟にいる魔物程度ならお前の結界は破られたりしないから!!今のお前が近づいたら力加減がわからずお前自身があのスライムを潰してしまうぞ」
邪魔する頭を潰してやろうかと、上げた足をゆっくり下ろした。
「それは困るな。わかった、もう少し我慢する」
風に飛ばされただけで消えてしまいそうだった姿を思い出して、大人しくもそもそとベッドに戻った。
早く会いたい、早く自分の力にも飲み込まれないぐらい成長しなければ……。
心が落ち着くまで今は竜血石を育てる事に専念しよう。
俺の竜血石が出来たら、今度は俺があいつに竜血石を渡すんだ。
喜んでくれるだろうか?嬉しそうに体を震わせる姿を想像したら自然に笑みが溢れた。
俺は今、初めて力とはなんだという事について悩んでいる。
「まさかお前が竜血石を受け取るとは思わなかった……しかもスライム……あはははははっ!!」
「笑うな、失礼だろう」
大笑いしながら床を転がるアルファドラゴンは無視し、ベッドに寝転びながら小さな竜血石を眺め続けた。
竜血石とは雄の竜特有の求愛の道具で、恋した相手への血を吐くほどの狂おしい想いが胸の中で固まった物。
それを相手へと贈り、受け取ってもらえれば晴れて番になれる。
『愛しています』を表現するだけの為の物なので強制力も拘束力もないが、雄が竜血石を作れるのは一生に一度だけ、それだけの想いで愛していると伝えるためだけの物。
今日俺はその竜血石を受け取ってしまった。
相手は生まれて間もないスライムだったから、恐らくこの竜血石は先日俺が殺した水竜が誰かに贈るために作っていた途中の物を拾ったのだろう。
真っ直ぐな好意、指で突いただけで弾けてしまいそうな脆弱な体で必死に俺を求めて触手を伸ばしてくる姿に、初めて胸が締め付けられるという体験をした。
ふよふよと俺の頬に触れる触手の感触を思い出して思わず頬が緩んだ。
スライムなんて今まで意識にも入れた事なかったけれど、あの愛らしい姿を思い出しただけで……胸が……熱く……。
「お……おいっ!!やめろ!!戻ってこい!!」
慌てた顔のアルファドラゴンが俺の体を揺さぶっていた。
「何だ……あ?鱗?」
自分の手を見ると腕は固い鱗に覆われて、鋭い爪が生えていた。
「俺、どうした?」
「竜化しかけてた。竜化は力を増幅させてくれるが慣れてないうちは力に飲み込まれるぞ。若い竜人族が我を忘れ暴れ回る姿を何度も見た。そういう奴は大概……」
アルファドラゴンは俺の胸に手を押し当て目を閉じ……さも可笑しそうににっこりと笑った。
「初恋おめでとう、竜血石が作られ始めてる」
「恋?俺が?」
自分の胸に手を当ててみるがよくわからない。
恋をしたのか、俺は。
「あんな偉そうにしてた奴が初恋!!しかもスライムに……ぶはっ!!魔王と古代竜の力を受け継いだ最強の魔物が最弱の魔物、スライムに……わははははははっ!!」
自分の気持ちと向き合おうと思ったが騒がしさに考えが纏まらず、黙らせようと頭を殴ったらアルファドラゴンの首の骨は折れた。
いつもと変わらない力加減だったのだが、竜化の影響だろうか。
恋なのか?
初めて他者からの物を嬉しいと思った。
初めて何かを可愛いと思った。
初めて一緒にいたいと思った。
初めて……守ってやりたいと思った。
恋なのか。
会いたい、会いたいなぁ。
もう一度会えば、この気持ちはもっと確かな物に変わるだろう。
「待て、どこに行く気だ」
出掛けようとした俺の足を、もう再生したらしいアルファドラゴンが掴んで止めた。力を封じられ弱い癖に生命力だけはしつこ過ぎる程だ。
「カカロン洞窟、やっぱりあいつを連れて来る。竜血石を渡されたんだ、あいつは俺の伴侶。守らないと……」
「今はやめとけって!!あの洞窟にいる魔物程度ならお前の結界は破られたりしないから!!今のお前が近づいたら力加減がわからずお前自身があのスライムを潰してしまうぞ」
邪魔する頭を潰してやろうかと、上げた足をゆっくり下ろした。
「それは困るな。わかった、もう少し我慢する」
風に飛ばされただけで消えてしまいそうだった姿を思い出して、大人しくもそもそとベッドに戻った。
早く会いたい、早く自分の力にも飲み込まれないぐらい成長しなければ……。
心が落ち着くまで今は竜血石を育てる事に専念しよう。
俺の竜血石が出来たら、今度は俺があいつに竜血石を渡すんだ。
喜んでくれるだろうか?嬉しそうに体を震わせる姿を想像したら自然に笑みが溢れた。
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