幼馴染に聖女として異世界に呼び出し喰らいました

藤雪たすく

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◆第11話「手厚い援護付きレベル上げ?」

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「モウブレーパスの討伐、確かに確認いたしました!!」

目を何度も瞬きさせていたギルド受付嬢の瞳が鋭くなり悠也を捉えた。

「最速のDランク昇格ですよ。この巨体の首を一刀両断だなんて……もしやどこかの名のある騎士様では……」

片道1日掛かる場所で目的の魔物を探し出して狩る。
クエストを受けた二日後に達成するのは、登録をしたばかりの新人冒険者がなせる技ではない。しかも超巨大で太い首をスッパリと斬り落としている。
不正でなければ、何かしらの戦闘経験者と思われるのは当然だろうが、悠也はどうやら騎士様と思われたらしい。

ギルド受付嬢その瞳は事務職を淡々とこなす冷めた瞳ではなく、ギラギラという擬音がよく似合う瞳だ……これって……。

悠也をチラリと見上げるが、やつはその視線をたいして気にしてる様子はない。
おそらくいま悠也が考えていることは「話は良いから早く冒険者証を発行してくれないかな」だろう。
このぼんやりした男が騎士様……笑いそうになったが強いのは真実なので笑いを飲み込んだ。

俺には一切向けられる事の無かった羨望の眼差しから逃れて、ギルドの建物から出てようやく落ち着いて息を吐き出す。

「すごいグイグイくるお姉さんだったな。お前が騎士様とか……絶対お前のこと狙ってたよな、面倒くさいを隠そうとしないお前の顔は面白かった」

「面倒だったけど……やっと悠生が俺の方見て笑ってくれてたから、まぁ感謝かな」

少し寂しそうに笑われたけど、けど俺は決して悪くない。
頼れるのはお互いのみの状況で、聖女の祝福の契約なんてしちゃったけど……だからって昨夜みたいなのはっ!!

愛を確かめあったわけじゃない。
俺が悠也に対して抱いているのは……。

「ゆうちゃ……悠生、全然嫌がらないから良いんだって思っちゃったけど……怒ってる?そんなに嫌だった」

怒ってはない。顔を見れないのは恥ずかしいから。
嫌悪感なんて……なかったから困ってるんだ。

「…………」

「まあ何とかDランクの冒険者証もらえたし、ようやく自由に生きる用意が出来たって気がするね」

何も答えず黙った俺に空気を変えようとしてくれたのか、悠也は大きく背伸びをして歩き始め、俺はそれに甘えることにした。

冒険者ランクは上がり、モウブレーパスの討伐料も貰えたので懐も暖かい。悠也の貯金はまだまだあるのでと、今回の討伐料は全て俺が……という事で俺の収納に入っている。金貨10枚はなかなかのお小遣いだ。自分が自由に使っていいお金があるって安心するね。

「どうしようか?身分証は手に入れたし、他の街に行くのもいいしこの街をもっと楽しんでも良いけど」

「武器が欲しい」

他の街へ行くにしても、この街でもっと生活基盤を整えるにしても武器が欲しいのです。

「武器?似合わないよ、戦闘は俺に任せておいてくれればいい。わざわざ危ない目に合わせるなんて……」

「守られてるだけなんてつまんないだろ?俺だって自分で戦えるようになりたいんだよ。危ないと思ったなら助けてくれたらいい……お前を頼りにしてない訳じゃねぇよ」

例え力の差はあれど……今までの様な対等な関係でいたいというわがままだ。

渋々ながら武器屋へと同行してくれた。

「やっぱり憧れは剣だよな……」

昨日訪れた魔法雑貨屋とは違い、無骨な店内に用意された様々な武器を一通り見て回る。
ステータスに『適正武器』などはないので、どんな武器を選んでも良いのだろうが、大剣とハンマーは重くて扱えなかった。

短剣という事になるだろうか?聖女という職業を踏まえると杖のイメージだが、俺に魔法は使えない。

「槍とか弓なら敵との距離を保てるよ?」

どうしても中距離~遠距離武器を薦めてきて、積極的に戦闘に参加させる気がないのが伺える。

「槍は慣れてないうちは扱いが……」

広い場所ならいいが、狭い場所だといろんなとこに引っかかった。そして弓は……弦がクソ硬い、漫画じゃエルフの綺麗なお姉さんが自在に扱っていたのに、俺は聖女の力と引き換えに身長だけでなく筋力まで失ったのだろうか。おそらく剣で斬りつけたところで力が足りないだろうが、矢を飛ばせない事態よりはマシ。

「やっぱり短剣かな。これに決め……」

問題なく触れる重さだ。
レベルが上がったら新たな武器を買えばいい、初心者には初心者でも扱いやすい物がいいよな。
鞘や刀身の装飾もファンタジー感あってかっこいい。
そう決めて購入をしようと店員を向き直した時にはすでに悠也がお金を払っていた。

「俺が払うよ」

言っても悠也が狩ったモウブレーパスの買取金だけどな。

「二人のお金なんだからどっちが払っても一緒だよ」

それはそうなんだけど……気持ちの問題?

「ありがとう」

金貨1枚、その店の中では中の上といった価格帯。金貨10枚しか持っていない俺にとって金貨1枚は高額だが、命を預けるものをケチってはいけない。

一緒に買ってもらったベルトに剣を装着して歩くといよいよ冒険者っぽい。マントの下は学校の制服だけど。ただの制服だが悠也が魔法を掛けてあるのでドラゴンの攻撃すら防ぐとか何とか……。

「街の周りにスライムいたよな?地道にスライム倒してレベル上げをするのがセオリーだと思うんだけど……」

数日前は悠也に助けてもらった訳だけど、あの速度なら触手にさえ気をつけたら勝てそうな気がする。柔らかそうだし。

「まぁスライムならいきなり致命傷を与えてくる事ないみたいだし……その辺にいて子供でも狩れるって言ってたから大丈夫かな」

それは受付嬢に初日に聞いた情報だ。よほどのことがない限りスライム被害の報告はないと……たまに大量発生を起こして農作物の被害などはあるらしいが。

経験値は期待できないけど武器の扱いの練習にはいいんじゃないだろうか。

======

「悠生……これはもう才能だよ」

「うるせぇ!!何の才能だよ!!」

何度も剣をスライムに叩き込むが全てポヨンポヨンと弾き返されている。子供でもそこらの木の棒で核を叩き潰せると聞いていたのに!!たまにドロップする魔石は子供たちの小遣い稼ぎだとか。

その小遣い稼ぎすらできない!!

かれこれ10数分スライムへ向けて素振りが繰り返されているだけで1匹も倒せてはいない。

「最弱のスライムすら倒せないんじゃレベル上げなんてどうやって……ひっ!!」

いい加減鬱陶しくなってきたのか、目を覚ましたのかスライムの触手が左腕に巻き付いてきた。

「悠生っ!!」

「……大丈夫だ」

すぐに助けてもらっていては修行にならないので、悠也には俺が助けてというまで手を出すなとお願いしてある。

触手ぐらいの細さなら……剣で断ち切ろうとするが全く手応えがない。悠也に試し斬りをしてもらった時は大木を切っていたのに、俺か?俺の力か?技術か?

「うひゃっ!!」

必死にギコギコやっている背中にピタリと冷たいものが張り付いた。

「な……何?」

背中に張り付いてきたソレはモゾモゾと動きながら俺の体に巻き付いてくる。はっとスライムを見ると顔はないのに「いつから触手が一本だけだと勘違いしていた?」と言わんばかりの顔をしている気がする。

「くそムカつ……っ!?」

意地でも切り落としてやると握る力を込め直した剣を落としてしまう。
剣などそっちのけで慌てて体を這う触手を掴んで引き離そうとしたが、その腕にすら触手が絡みつき……こ……これはお色気系でお約束のスライム責め!!違う!!これは強気な女剣士とか可愛い清純な聖女とかがやられて需要がある物であり、俺がやられても仕方ないんだ!!
肩書きだけは『聖女』だが。

「離れろこいつ!!」

逃げ出そうともがけばもがくほどスライムの体が俺の体に絡みついてきて……ヌルヌルと動く粘性の体に……。

「んっ……」

思わず漏れた声にカッと顔が熱くなる。魔物に体の自由を奪われた上にこんな声出して……感じさせられるなんて。
俺のそんな羞恥心などお構いなしにスライムは胸を、下半身をヌメヌメと移動していく。

「は……悠也……あっ!!」

俺の言いつけを守って静観している悠也に救いの手を伸ばして近づこうとした時、アレにまでヌルッと巻きつかれたせいで、不意に足の力が抜け転けた俺の体を悠也が抱き止めてくれた。これで助けてもらえると安堵したが、スライムの拘束は中々解かれない。

「悠也?」

不思議に思い悠也の顔を見上げると、真っ赤な顔で固まったように凝視してきている。その間にもスライムは俺の体の上を這い回り、悠也の腕の中で体がビクビクと反応してしまう。

「悠生……ごめん」

早く助けてくれと悠也の胸に預けていた体を軽く起こされ、謝罪をされてから……。

「ん……んん……あ、あ……ん」

悠也に口を塞がれ、体をスライムに、口内を悠也に蹂躙される。
下着の中に入り込んできてソレに絡みついているスライムの触手が何か明確な意図があるような動きに変わり、下半身にどんどん熱が集まって、高まっていく興奮。それを後押しするような悠也のキス。

嫌だ……魔物にイカされるなんて……。

「だめ……俺、魔物にイカされちゃう……はるちゃ……ぅんんっ!?」

ギリギリで溢れそうになっていた射精感すら冷めるような感覚にサッと血の気がひく。スライム……お尻に感じる確かめるように押され感覚。入ってこようとしてる?悠也の助けはまだない。俺……俺、スライムに犯されるのか?悠也以外にはって……魔物には通用しないのか?

「や……やだぁ……」

ぐっと押し込もうとしてくる力にじわっと涙が浮かんだ時、カッと目の前が真っ白の光で埋め尽くされた。
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