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第1話「小さな違和感」
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朝起きて、顔を洗ってご飯を食べて歯を磨く。毎日のルーティーン。
制服に着替えて学校へ……玄関の扉を開けて暫し考えて家の中にいる母親へ声を掛けた。
「母さん!!俺なんか忘れ物してないっけ?」
「知らないわよ、そんな事!!自分で管理しなさい、遅刻しても知らないわよ!?」
当然の返しが返ってきて、その声押されるように家を出るが……やはり違和感が拭えない。
毎日と同じ朝なのに何かがおかしい。何がおかしいのかわからないけど、登校中出会う学友達におはようと声をかけながらいつも通りの道をいつも通りに歩いて学校へ……。
「どうした高梨?誰かに用事か?」
友人に声を掛けられはっと顔を上げる。
ここは3組の教室、俺は1組だ。
「いや……特に……なんで俺3組に来たんだっけ?」
もうボケかよ、と笑う友人にわりぃと手を上げて立ち去り1組へと急いだ。無意識に3組の教室へ行っていた。何故だ?
======
「はぁぁぁ……何なんだ今日は……」
帰り道、一人大きな溜息を吐き出した。
教科書や提出物の忘れ物は何も無かった。それなのにずっと心に引っかかっている違和感。
お昼の時間、誰と約束をしているでもないのに弁当を持って立ち上がったり。下校時には、また自然と3組へと足が向いていた。
そもそも俺は一人で登下校をしていただろうか?
思い出そうとしても一緒に帰るような相手に心当たりはなかった。
狐につままれたような……とはこんな事を言うのかな?などと考えながら歩いていると歩道に落書きが……。
「すっげぇ……細かい落書きだなぁ」
朝通った時には気が付かなかったが、歩道には、よく漫画で見る『魔法陣』の様な物が細かく書き込まれていた。
踏んで行く気になれず、飛び越えて行くが………。
「ん?」
なんかあの魔法陣、着いてきてないか?
けっこう歩いた筈なのに真後ろにその魔法陣はまだあった。
「気持ち悪……」
足早に進みながら、視線だけで後ろを確認すると、やはり着いてきている。
まるで鏡に反射させた光の様な動きでススッと俺の後をつけてきている。
少し距離を取ったり、近づいたり、左右に揺れたり……迷っている?
ただの図形に迷ってるも何もないが、このときは迷っている様に感じた。
追い付かれてはいけないと感じて家路を急ぐ……が、俺の足は一軒の家の前で止まった。自分の家ではない。表札には『瀬野』と書かれている。
瀬野なんて知り合いはいないはず……ってしまった!!
足元では、あの魔法陣が光を放っていた。
======
「……ちゃん、ゆうちゃん。起きて」
揺り起こして来る手を払いのけ寝返りで反発を試みる。
「んんん……ゆうちゃんって呼ぶなって言ってるだろ、悠也」
はるや……悠也……。
「悠也!?」
慌てて起き上がると、ゲームのキャラクターみたいな服を着た遥也と目があった。
瀬野悠也。
近所に住んでいて、ずっと小学校の時からの友達で、毎日一緒に登下校して……どうして俺は今までこいつの事を忘れていたんだろう。
今朝から続いていた違和感がスッと消えた。
「ゆうちゃん、痛いとことかない?大丈夫?」
「いや……どこも……っていうかお前のその格好なに?コスプレ?」
周囲を見回すと……森?
俺は悠也の家の前にいたはずでは?
どういう状況?
「ん~……ここはね、あれだよ。いわゆる異世界?」
「は?異世界?」
どこかぼんやりとしていて抜けてる奴だとは思っていたけれど……ここまで重症だったとは……。
「その顔……ゆうちゃん信じてないでしょ」
「だから、ゆうちゃんって呼ぶなっての。もういいから帰ろうぜ」
暗くなる前に家に帰ろうと立ち上がったが、思いの他真剣な顔をした悠也に腕を掴まれた。
「ゆうちゃ……悠生、ちゃんと聞いて?ここは本当に異世界なんだよ」
とぼけた奴だが、質の悪い冗談を言う奴ではない。ではここは本当に?
いやいやいや……はいそうですかと信じるには突拍子もな……。
「おまっ!?何してっ!!手!!燃えてる!!」
悠也の左手の中でゆらゆらと炎が燃え上がっているのに、当の本人は何事もないように俺を見上げている。
「魔法だよ。俺の魔法……だから平気」
そう言って左手を握りしめると、すんなりと炎は消えてしまった。
「魔法……マジかよ……」
悠也の手を確認してみても、熱くもないし火傷をした様子もない。
魔法?本当に魔法?本当に異世界……なのか?
「じゃあ俺も?」
異世界転移といえば転移サービスのチートな能力でどんなクズでもチョロい感じにハーレムを作れるという……ついに俺にも念願の彼女がっ!?
「でも定番の神様とか王様とかに会ってないんだけど……なんの為に転移?」
定番の流れなら、神様に間違えて死なせてごめんねの能力を授かったり、王様に世界を救ってください勇者様、みたいなのがあると思うんだけど……。
「森だな……」
「うん、森だよ」
俺に授けられたスキルとか使命を説明してくれる人は?
周囲を見渡しても、悠也しかいない。
「悠也はいつから……なんの為にこの世界に飛ばされたんだ?偉そうな人とかには会ったのか?」
俺はいつからこいつが居なくなっていた事に気が付かなかったんだろう?
「3日前、よくわからないんだけど……」
======
悠也の話によると、3日前に変な模様に飲み込まれそうになった女の子を助けようとした俺を助けようとして突き飛ばしたら、気が付いたらこの世界に飛ばされていたらしい。
変な模様……あの魔法陣か!!
悠也は俺を助けてくれたのに……こいつの存在自体を忘れていたなんて。
「ごめん……悠也」
「うんん、そういうものらしいから。多分ゆ……悠生の存在も元の世界では最初から無かった事になってると思う」
親が悲しんだり事件になってないというのは安心だけど……忘れられているというのは、帰る場所がないのは悲しすぎるだろ。
……でも悠也は俺のせいで、たった一人でそんな3日間を過ごしたんだよな。俺よりもっと辛かっただろうに、けっきょく俺までこの世界に来てしまった理由はわからないけど、俺が落ち込んでたら駄目だな。
「で?悠也は勇者とかなのか?命令されたのは魔王討伐とかか?」
悠也は小さく首を横に振った。
「俺の召喚は間違いだったみたいだから……」
「間違い?」
そうか……異世界に転移したからって誰でも良いわけではないのか。
「うん、本当は『聖女召喚の儀式』だったみたい」
そっかぁ、聖女召喚かぁ~。
そりゃ悠也じゃ聖女にはなれないよな。覚えてないけど俺が助けようとしたという女の子が、本来転移されるべきだった聖女なんだろう。
……ん?
制服に着替えて学校へ……玄関の扉を開けて暫し考えて家の中にいる母親へ声を掛けた。
「母さん!!俺なんか忘れ物してないっけ?」
「知らないわよ、そんな事!!自分で管理しなさい、遅刻しても知らないわよ!?」
当然の返しが返ってきて、その声押されるように家を出るが……やはり違和感が拭えない。
毎日と同じ朝なのに何かがおかしい。何がおかしいのかわからないけど、登校中出会う学友達におはようと声をかけながらいつも通りの道をいつも通りに歩いて学校へ……。
「どうした高梨?誰かに用事か?」
友人に声を掛けられはっと顔を上げる。
ここは3組の教室、俺は1組だ。
「いや……特に……なんで俺3組に来たんだっけ?」
もうボケかよ、と笑う友人にわりぃと手を上げて立ち去り1組へと急いだ。無意識に3組の教室へ行っていた。何故だ?
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「はぁぁぁ……何なんだ今日は……」
帰り道、一人大きな溜息を吐き出した。
教科書や提出物の忘れ物は何も無かった。それなのにずっと心に引っかかっている違和感。
お昼の時間、誰と約束をしているでもないのに弁当を持って立ち上がったり。下校時には、また自然と3組へと足が向いていた。
そもそも俺は一人で登下校をしていただろうか?
思い出そうとしても一緒に帰るような相手に心当たりはなかった。
狐につままれたような……とはこんな事を言うのかな?などと考えながら歩いていると歩道に落書きが……。
「すっげぇ……細かい落書きだなぁ」
朝通った時には気が付かなかったが、歩道には、よく漫画で見る『魔法陣』の様な物が細かく書き込まれていた。
踏んで行く気になれず、飛び越えて行くが………。
「ん?」
なんかあの魔法陣、着いてきてないか?
けっこう歩いた筈なのに真後ろにその魔法陣はまだあった。
「気持ち悪……」
足早に進みながら、視線だけで後ろを確認すると、やはり着いてきている。
まるで鏡に反射させた光の様な動きでススッと俺の後をつけてきている。
少し距離を取ったり、近づいたり、左右に揺れたり……迷っている?
ただの図形に迷ってるも何もないが、このときは迷っている様に感じた。
追い付かれてはいけないと感じて家路を急ぐ……が、俺の足は一軒の家の前で止まった。自分の家ではない。表札には『瀬野』と書かれている。
瀬野なんて知り合いはいないはず……ってしまった!!
足元では、あの魔法陣が光を放っていた。
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「……ちゃん、ゆうちゃん。起きて」
揺り起こして来る手を払いのけ寝返りで反発を試みる。
「んんん……ゆうちゃんって呼ぶなって言ってるだろ、悠也」
はるや……悠也……。
「悠也!?」
慌てて起き上がると、ゲームのキャラクターみたいな服を着た遥也と目があった。
瀬野悠也。
近所に住んでいて、ずっと小学校の時からの友達で、毎日一緒に登下校して……どうして俺は今までこいつの事を忘れていたんだろう。
今朝から続いていた違和感がスッと消えた。
「ゆうちゃん、痛いとことかない?大丈夫?」
「いや……どこも……っていうかお前のその格好なに?コスプレ?」
周囲を見回すと……森?
俺は悠也の家の前にいたはずでは?
どういう状況?
「ん~……ここはね、あれだよ。いわゆる異世界?」
「は?異世界?」
どこかぼんやりとしていて抜けてる奴だとは思っていたけれど……ここまで重症だったとは……。
「その顔……ゆうちゃん信じてないでしょ」
「だから、ゆうちゃんって呼ぶなっての。もういいから帰ろうぜ」
暗くなる前に家に帰ろうと立ち上がったが、思いの他真剣な顔をした悠也に腕を掴まれた。
「ゆうちゃ……悠生、ちゃんと聞いて?ここは本当に異世界なんだよ」
とぼけた奴だが、質の悪い冗談を言う奴ではない。ではここは本当に?
いやいやいや……はいそうですかと信じるには突拍子もな……。
「おまっ!?何してっ!!手!!燃えてる!!」
悠也の左手の中でゆらゆらと炎が燃え上がっているのに、当の本人は何事もないように俺を見上げている。
「魔法だよ。俺の魔法……だから平気」
そう言って左手を握りしめると、すんなりと炎は消えてしまった。
「魔法……マジかよ……」
悠也の手を確認してみても、熱くもないし火傷をした様子もない。
魔法?本当に魔法?本当に異世界……なのか?
「じゃあ俺も?」
異世界転移といえば転移サービスのチートな能力でどんなクズでもチョロい感じにハーレムを作れるという……ついに俺にも念願の彼女がっ!?
「でも定番の神様とか王様とかに会ってないんだけど……なんの為に転移?」
定番の流れなら、神様に間違えて死なせてごめんねの能力を授かったり、王様に世界を救ってください勇者様、みたいなのがあると思うんだけど……。
「森だな……」
「うん、森だよ」
俺に授けられたスキルとか使命を説明してくれる人は?
周囲を見渡しても、悠也しかいない。
「悠也はいつから……なんの為にこの世界に飛ばされたんだ?偉そうな人とかには会ったのか?」
俺はいつからこいつが居なくなっていた事に気が付かなかったんだろう?
「3日前、よくわからないんだけど……」
======
悠也の話によると、3日前に変な模様に飲み込まれそうになった女の子を助けようとした俺を助けようとして突き飛ばしたら、気が付いたらこの世界に飛ばされていたらしい。
変な模様……あの魔法陣か!!
悠也は俺を助けてくれたのに……こいつの存在自体を忘れていたなんて。
「ごめん……悠也」
「うんん、そういうものらしいから。多分ゆ……悠生の存在も元の世界では最初から無かった事になってると思う」
親が悲しんだり事件になってないというのは安心だけど……忘れられているというのは、帰る場所がないのは悲しすぎるだろ。
……でも悠也は俺のせいで、たった一人でそんな3日間を過ごしたんだよな。俺よりもっと辛かっただろうに、けっきょく俺までこの世界に来てしまった理由はわからないけど、俺が落ち込んでたら駄目だな。
「で?悠也は勇者とかなのか?命令されたのは魔王討伐とかか?」
悠也は小さく首を横に振った。
「俺の召喚は間違いだったみたいだから……」
「間違い?」
そうか……異世界に転移したからって誰でも良いわけではないのか。
「うん、本当は『聖女召喚の儀式』だったみたい」
そっかぁ、聖女召喚かぁ~。
そりゃ悠也じゃ聖女にはなれないよな。覚えてないけど俺が助けようとしたという女の子が、本来転移されるべきだった聖女なんだろう。
……ん?
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