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貴方の1番、俺の1番

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ルノさんの指輪を見る目に期待の籠もっている様に見えるのは俺の気のせいだろうか。

「俺の世界ではペア……対をなす様に作られた指輪を結婚したい相手、人生の伴侶になって欲しい相手に贈るのが一般的で、それをルノさんに渡したくて……」

ペアリングが婚約指輪なのか結婚指輪なのか、何のために指輪を贈るのかは詳しい事わからないけど……テレビとかでプロポーズといえば指輪を贈ってお揃いのリングをつけるという知識だけ植え付けられている。

スマホがあればすぐに調べるけど、彼女いなかったし、結婚とか全く考えた事なかったから謂れは知らない。

「こっちにそういう指輪が売ってないみたいだから、自作したんですけど……ちょっと困った事になりました」

「困った事?シーナの作る物にやり過ぎは合っても間違った物は無いだろう?」

顔に、焦らさず早く寄越せの文字が見えるよ。隠しもせずに嬉しそうなルノさんの視線から目を逸らし、指輪を睨む。

『手作りのペアリング:永遠の愛を誓った証。不義は許さない指切り拳万』

永遠の愛を誓うのは良いとして……指切り拳万の文字が気になる。

わざわざ指切り……ただの約束する時のフレーズかもしれないけれど、なんせ合成材料がハサミなのだ。そして蛇は嫉妬深く執念深い……素直に呪いと名乗らないところに性質の悪さを感じるよ。

「……最悪、浮気は指を斬り落とされそうな執念を感じるので、使って良いものかどうか迷ってます。」

「そうか。それで?どの指につけたら良い?」

俺の話を聞いていたのかルノさんは俺の手から指輪を一つ持ち上げた。

「危ないですって、コバットリスの皮じゃ無くて鍛冶屋の人にお願いして新しく作ってもらう事にします」

あれだけの細工ができるなら、シンプルな指輪ぐらい頼めばオーダーメイドで作ってもらえるだろう。最初からそうして置けばよかった。なまじ作れちゃうから、人にお願いする事を忘れてた。

「浮気なんてあり得ないから危険なんて無いだろ?」

事もなげに……永遠なんてわかんないじゃん。心変わりなんてよくある事。

でもあくまで許さないのは『不義』であって、お互い納得して別れるぶんには問題ないかもしれないしな。

そもそも本当に指を斬り落とすなんて書いてないし……ルノさんを悲しませる様な事を俺がしたなら指を斬り落とされても良いや。

ルノさんの手から指輪を取り、左手を持ち上げる。

俺も……この先、貴方以上の人なんていると思えないから……貴方に俺の全てを捧げます。

口にはできなかったけれど、そう誓いながらルノさんの薬指に指輪をはめた。

指輪交換の習慣とか何も無いはずなのに、薬指にはめられた指輪を見つめるルノさんの表情は指輪に変な効果がついていたのでは無いかと疑ってしまうほど多幸感が溢れていて……少し躊躇ってしまったけれど、もう一つの指輪を自分の指にはめようとして、手を掴まれた。

「シーナの指輪はシーナがしてくれたみたいに俺もやりたい」

結婚式じゃないから……それは恥ずかしいから教えてはないんだけど、同じ様に左手を持ち上げられ、俺の左手にも指輪が光る……いや、本当に光ってる。て、いうか発光してる!!

「うわっ!!」

眩しさに目が眩んだが光は一瞬で収まった。
ゆっくり目を開いて何が起こったのかを確認してみると……白い。青と紫の毒々しい色だったコバットリスの皮の色が白くなった。なぜ白くなったのか?

「白い蛇皮なんて……初めて見る」

ルノさんは突然白くなったことよりも白い蛇皮を興味深そうに眺めている。

「……俺が住んでいたとこでは白蛇は神様の使いだって言われたりしてましたね」

本物の白蛇を見た事はないけれど……白蛇を狩った訳じゃなく、紫の蛇が白くなってしまっただけだから、罰当たりはギリセーフかな?

「特別な白い蛇の皮で出来た指輪をシーナと揃いで身に付けられるなんて……シーナの国の風習はとても幸せな気持ちになれるものだね」

元は多分俺の国の風習では無さそうだけど、そんなに喜んで貰えたら俺も嬉しい。

「俺も……ルノさんと繋がってるみたいで幸せです」

「シーナの次に大切にする」

そう言って笑うルノさんを抱き締めた。

出来れば指輪よりも自分の命を大切にして欲しいけど、この人の命は俺が大切に守っていけば良い。

戦闘力では全然敵わないけれど、魔物と戦う事だけが人生ではない。俺にだってこの人を守れる何かがきっとあるはずだ。

心の底からこの人を守りたいと思った……それは男とか女とか関係無く、湧き上がってくる純粋な愛。

「あらためて……ルノさん、必ず貴方を幸せにします。どうか俺に付いてきてください」

大きくて温かな手に、頬を包み込まれて上を向かされる。面と向かって言うのは恥ずかしかったのに……ぶつかり合った視線。

潤んだ青い瞳はやっぱり綺麗で……吸い込まれてしまいそう。

「いつまでも、どこまでも……君に付いていくよ」

ゆっくりと近づいて来る顔に、瞳を閉じると柔らかな温もりが優しく唇に触れた。

神様……俺の一生をこの人に捧げる事を……誓います。
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