83 / 87
貴方の1番、俺の1番
しおりを挟む
ルノさんの指輪を見る目に期待の籠もっている様に見えるのは俺の気のせいだろうか。
「俺の世界ではペア……対をなす様に作られた指輪を結婚したい相手、人生の伴侶になって欲しい相手に贈るのが一般的で、それをルノさんに渡したくて……」
ペアリングが婚約指輪なのか結婚指輪なのか、何のために指輪を贈るのかは詳しい事わからないけど……テレビとかでプロポーズといえば指輪を贈ってお揃いのリングをつけるという知識だけ植え付けられている。
スマホがあればすぐに調べるけど、彼女いなかったし、結婚とか全く考えた事なかったから謂れは知らない。
「こっちにそういう指輪が売ってないみたいだから、自作したんですけど……ちょっと困った事になりました」
「困った事?シーナの作る物にやり過ぎは合っても間違った物は無いだろう?」
顔に、焦らさず早く寄越せの文字が見えるよ。隠しもせずに嬉しそうなルノさんの視線から目を逸らし、指輪を睨む。
『手作りのペアリング:永遠の愛を誓った証。不義は許さない指切り拳万』
永遠の愛を誓うのは良いとして……指切り拳万の文字が気になる。
わざわざ指切り……ただの約束する時のフレーズかもしれないけれど、なんせ合成材料がハサミなのだ。そして蛇は嫉妬深く執念深い……素直に呪いと名乗らないところに性質の悪さを感じるよ。
「……最悪、浮気は指を斬り落とされそうな執念を感じるので、使って良いものかどうか迷ってます。」
「そうか。それで?どの指につけたら良い?」
俺の話を聞いていたのかルノさんは俺の手から指輪を一つ持ち上げた。
「危ないですって、コバットリスの皮じゃ無くて鍛冶屋の人にお願いして新しく作ってもらう事にします」
あれだけの細工ができるなら、シンプルな指輪ぐらい頼めばオーダーメイドで作ってもらえるだろう。最初からそうして置けばよかった。なまじ作れちゃうから、人にお願いする事を忘れてた。
「浮気なんてあり得ないから危険なんて無いだろ?」
事もなげに……永遠なんてわかんないじゃん。心変わりなんてよくある事。
でもあくまで許さないのは『不義』であって、お互い納得して別れるぶんには問題ないかもしれないしな。
そもそも本当に指を斬り落とすなんて書いてないし……ルノさんを悲しませる様な事を俺がしたなら指を斬り落とされても良いや。
ルノさんの手から指輪を取り、左手を持ち上げる。
俺も……この先、貴方以上の人なんていると思えないから……貴方に俺の全てを捧げます。
口にはできなかったけれど、そう誓いながらルノさんの薬指に指輪をはめた。
指輪交換の習慣とか何も無いはずなのに、薬指にはめられた指輪を見つめるルノさんの表情は指輪に変な効果がついていたのでは無いかと疑ってしまうほど多幸感が溢れていて……少し躊躇ってしまったけれど、もう一つの指輪を自分の指にはめようとして、手を掴まれた。
「シーナの指輪はシーナがしてくれたみたいに俺もやりたい」
結婚式じゃないから……それは恥ずかしいから教えてはないんだけど、同じ様に左手を持ち上げられ、俺の左手にも指輪が光る……いや、本当に光ってる。て、いうか発光してる!!
「うわっ!!」
眩しさに目が眩んだが光は一瞬で収まった。
ゆっくり目を開いて何が起こったのかを確認してみると……白い。青と紫の毒々しい色だったコバットリスの皮の色が白くなった。なぜ白くなったのか?
「白い蛇皮なんて……初めて見る」
ルノさんは突然白くなったことよりも白い蛇皮を興味深そうに眺めている。
「……俺が住んでいたとこでは白蛇は神様の使いだって言われたりしてましたね」
本物の白蛇を見た事はないけれど……白蛇を狩った訳じゃなく、紫の蛇が白くなってしまっただけだから、罰当たりはギリセーフかな?
「特別な白い蛇の皮で出来た指輪をシーナと揃いで身に付けられるなんて……シーナの国の風習はとても幸せな気持ちになれるものだね」
元は多分俺の国の風習では無さそうだけど、そんなに喜んで貰えたら俺も嬉しい。
「俺も……ルノさんと繋がってるみたいで幸せです」
「シーナの次に大切にする」
そう言って笑うルノさんを抱き締めた。
出来れば指輪よりも自分の命を大切にして欲しいけど、この人の命は俺が大切に守っていけば良い。
戦闘力では全然敵わないけれど、魔物と戦う事だけが人生ではない。俺にだってこの人を守れる何かがきっとあるはずだ。
心の底からこの人を守りたいと思った……それは男とか女とか関係無く、湧き上がってくる純粋な愛。
「あらためて……ルノさん、必ず貴方を幸せにします。どうか俺に付いてきてください」
大きくて温かな手に、頬を包み込まれて上を向かされる。面と向かって言うのは恥ずかしかったのに……ぶつかり合った視線。
潤んだ青い瞳はやっぱり綺麗で……吸い込まれてしまいそう。
「いつまでも、どこまでも……君に付いていくよ」
ゆっくりと近づいて来る顔に、瞳を閉じると柔らかな温もりが優しく唇に触れた。
神様……俺の一生をこの人に捧げる事を……誓います。
「俺の世界ではペア……対をなす様に作られた指輪を結婚したい相手、人生の伴侶になって欲しい相手に贈るのが一般的で、それをルノさんに渡したくて……」
ペアリングが婚約指輪なのか結婚指輪なのか、何のために指輪を贈るのかは詳しい事わからないけど……テレビとかでプロポーズといえば指輪を贈ってお揃いのリングをつけるという知識だけ植え付けられている。
スマホがあればすぐに調べるけど、彼女いなかったし、結婚とか全く考えた事なかったから謂れは知らない。
「こっちにそういう指輪が売ってないみたいだから、自作したんですけど……ちょっと困った事になりました」
「困った事?シーナの作る物にやり過ぎは合っても間違った物は無いだろう?」
顔に、焦らさず早く寄越せの文字が見えるよ。隠しもせずに嬉しそうなルノさんの視線から目を逸らし、指輪を睨む。
『手作りのペアリング:永遠の愛を誓った証。不義は許さない指切り拳万』
永遠の愛を誓うのは良いとして……指切り拳万の文字が気になる。
わざわざ指切り……ただの約束する時のフレーズかもしれないけれど、なんせ合成材料がハサミなのだ。そして蛇は嫉妬深く執念深い……素直に呪いと名乗らないところに性質の悪さを感じるよ。
「……最悪、浮気は指を斬り落とされそうな執念を感じるので、使って良いものかどうか迷ってます。」
「そうか。それで?どの指につけたら良い?」
俺の話を聞いていたのかルノさんは俺の手から指輪を一つ持ち上げた。
「危ないですって、コバットリスの皮じゃ無くて鍛冶屋の人にお願いして新しく作ってもらう事にします」
あれだけの細工ができるなら、シンプルな指輪ぐらい頼めばオーダーメイドで作ってもらえるだろう。最初からそうして置けばよかった。なまじ作れちゃうから、人にお願いする事を忘れてた。
「浮気なんてあり得ないから危険なんて無いだろ?」
事もなげに……永遠なんてわかんないじゃん。心変わりなんてよくある事。
でもあくまで許さないのは『不義』であって、お互い納得して別れるぶんには問題ないかもしれないしな。
そもそも本当に指を斬り落とすなんて書いてないし……ルノさんを悲しませる様な事を俺がしたなら指を斬り落とされても良いや。
ルノさんの手から指輪を取り、左手を持ち上げる。
俺も……この先、貴方以上の人なんていると思えないから……貴方に俺の全てを捧げます。
口にはできなかったけれど、そう誓いながらルノさんの薬指に指輪をはめた。
指輪交換の習慣とか何も無いはずなのに、薬指にはめられた指輪を見つめるルノさんの表情は指輪に変な効果がついていたのでは無いかと疑ってしまうほど多幸感が溢れていて……少し躊躇ってしまったけれど、もう一つの指輪を自分の指にはめようとして、手を掴まれた。
「シーナの指輪はシーナがしてくれたみたいに俺もやりたい」
結婚式じゃないから……それは恥ずかしいから教えてはないんだけど、同じ様に左手を持ち上げられ、俺の左手にも指輪が光る……いや、本当に光ってる。て、いうか発光してる!!
「うわっ!!」
眩しさに目が眩んだが光は一瞬で収まった。
ゆっくり目を開いて何が起こったのかを確認してみると……白い。青と紫の毒々しい色だったコバットリスの皮の色が白くなった。なぜ白くなったのか?
「白い蛇皮なんて……初めて見る」
ルノさんは突然白くなったことよりも白い蛇皮を興味深そうに眺めている。
「……俺が住んでいたとこでは白蛇は神様の使いだって言われたりしてましたね」
本物の白蛇を見た事はないけれど……白蛇を狩った訳じゃなく、紫の蛇が白くなってしまっただけだから、罰当たりはギリセーフかな?
「特別な白い蛇の皮で出来た指輪をシーナと揃いで身に付けられるなんて……シーナの国の風習はとても幸せな気持ちになれるものだね」
元は多分俺の国の風習では無さそうだけど、そんなに喜んで貰えたら俺も嬉しい。
「俺も……ルノさんと繋がってるみたいで幸せです」
「シーナの次に大切にする」
そう言って笑うルノさんを抱き締めた。
出来れば指輪よりも自分の命を大切にして欲しいけど、この人の命は俺が大切に守っていけば良い。
戦闘力では全然敵わないけれど、魔物と戦う事だけが人生ではない。俺にだってこの人を守れる何かがきっとあるはずだ。
心の底からこの人を守りたいと思った……それは男とか女とか関係無く、湧き上がってくる純粋な愛。
「あらためて……ルノさん、必ず貴方を幸せにします。どうか俺に付いてきてください」
大きくて温かな手に、頬を包み込まれて上を向かされる。面と向かって言うのは恥ずかしかったのに……ぶつかり合った視線。
潤んだ青い瞳はやっぱり綺麗で……吸い込まれてしまいそう。
「いつまでも、どこまでも……君に付いていくよ」
ゆっくりと近づいて来る顔に、瞳を閉じると柔らかな温もりが優しく唇に触れた。
神様……俺の一生をこの人に捧げる事を……誓います。
230
お気に入りに追加
2,827
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。

ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる