76 / 87
知らない魔物は要注意
しおりを挟む
目が覚めて、身動きが取れないと思ったらルノさんに抱きしめられていた。
そうか……ベッドに運べなかったからここで一緒に寝たんだった。
「おはようシーナ」
いつもと変わりないルノさんだ。やっぱり昨夜の記憶はないみたいだな。
「まだおはようの時間じゃないですよ。ルノさんはもう少し休んでいてください」
あたりはまだ夜明け前の薄暗さ。俺は喉が乾いて目が覚めてしまっただけなので、水を飲もうと腕の中から抜け出すとキッチンへ向かった。
グラスを取り出し、テーブルの上のピッチャーに手を伸ばしかけたところでグラスの中に、水が満たされた。
「ありがとうございます。ルノさんも飲みますか?」
グラスを取り出そうとして、ルノさんなら自由に口の中に適量な水を直接出せるのかと、悩んでいると『飲む』と答えが返ってきたのでグラスを取り出した。
「頭痛とか平気なんですか?前回は二日酔いで寝込んでましたよね」
あの姿もなかなか見ることのできない姿だったな。
「今日は二日酔いになんてなっている場合じゃないからね」
「今日、何か用事ありましたっけ?」
ギルドへ討伐した魔物の買取はもうちょっとのんびりしてからという事にした、新しい依頼はしばらく受けない。レイニート様から呼び出しも受けていないから、久々詰所の台所でお昼ご飯と晩ご飯作り、その間に掃除もしてしまいたい……ルノさんは気にしないでと笑った。
目も覚めてしまったし、まだ早いけど朝ごはんでも作ろうかな。
いっぱい作って、みんなが起きてくる前に詰所に持ってけば一緒に食べられる。
ルノさんもいいねをくれたので、早速料理開始……と思ったけど、この家のキッチングッズ全部新品を用意してくれていたようで『お手製』に変えていく作業からだった。
ーーーーーー
「なんだよ、二人きりの生活がそんなに寂しかったかのか?」
朝ごはんを大量に用意して朝っぱらから詰所に着いた俺とルノさんを見て隊長はにやっと笑う。
……隊長の言葉通り寂しいという気持ちはある。お姉ちゃんが嫁に行って出て行った後のような、兄が一人暮らしすると家を出て行ったような……絶望はないが微妙な寂しさを感じた。俺は大家族ではなかったけど。
「ああ?もう里帰りか?」
「シーナは15すぎてもまだまだガキっぽいな!!」
賑やかに食堂に入ってきた隊員達も、早朝から詰所にやってきていた俺を見て笑った。
「そんな事いう人は食べてくれなくて良いです。1つ金貨1枚するガビラクトパーの高級卵を贅沢にと一人3つ使ったオムレツなのに……ルノさんお家に帰ってふたりで食べましょ?」
「「あのガビラクトパーの卵だと!?」」
海沿いの街で生まれただけありゴルカーさんとナタスンさんはこの卵の価値を知っている様だ。
「シーナ様!!是非そのオムレツを食べさせてください!!」
海に面した断崖絶壁に卵用の巣を作り自らの卵を餌に生き物を誘き寄せ捕食するガビラクトパー……この卵を手に入れる為にどれだけ苦労したことか……。
卵はルノさんが楽々と回収してくれたんだけど、海中から伸びてきた無数のガビラクトパーの触手……あんなに生命力が強いとは思わなかった。
「シーナが危険な目に合いながら入手した卵だからな。よく味わって食べろよ」
ルノさんの言葉にガビラクトパーを知っている者と知らない者とで反応が分かれた。
「ルノさん……余計な事を言わなくて良いです」
「いや、ちゃんとシーナの努力の結晶だと言う事を噛み締めて貰わないと駄目だろう」
ガビラクトパー……本当に嫌な魔物だった。
切り取られた触手があんなに動き回るとは……。
「大丈夫か……遠い目をして……」
オットーさんは農村部の出身だからガビラクトパーを知らないみたいだな……商人の子だからアシルさんは知っている様だ。真っ赤な顔で俯かないで欲しい……何を想像したか知らないがそこまでの事は起こってないからな。
すぐにルノさんに助けてもらったから。
あの触手も食用可らしいが、タコやイカに似た見た目だったら持って帰って来たけど食べる気になれず燃やしてきた。スライム依頼の衝撃的な魔物であった。
未開の地はドラゴン肉をはじめ、ガビラクトパーの卵など高級食材の宝庫で、考え様によっては美食パラダイス。
でも……でも出来ればもう2度と行きたくないと思う。
中に詰め込まれた素材と食材の総額がいくらになるのか想像も出来ない収納鞄をそっと撫でた。
マルトリノさんに卸したら一財産だよ。
ーーーーーー
価値は分からなくてもその味は分かるようで皆美味しそうに食べてくれる。ドラゴン肉に引き続き、皆の舌が肥えすぎないか心配だな。
「隊長、コバットリスの目撃情報はありませんか?」
ルノさんが隊長の前の食器を片付けながら隊長に聞いているのが洗い物をしながらなんとなく耳に入った。
コバットリス?目撃情報ってぐらいだから魔物っぽいけど……それがどうしたんだろう。
「コバットリスか。そうか……遂に……やったな」
「……はい。いろいろご心配をお掛けしました」
「お前からそんな言葉を聞けるとはな……」
「おめでとうございます!!副隊長!!」
少し照れた様なルノさんを隊員の皆も背中を叩いて激励していて、食堂の隅ではレフさんの肩をハイケンさんが励ますように叩いている……何事だろうか?
聞きたいけれど……聞いてはいけないと心の忠告に従って素知らぬふりをして洗い物を続けた。
そうか……ベッドに運べなかったからここで一緒に寝たんだった。
「おはようシーナ」
いつもと変わりないルノさんだ。やっぱり昨夜の記憶はないみたいだな。
「まだおはようの時間じゃないですよ。ルノさんはもう少し休んでいてください」
あたりはまだ夜明け前の薄暗さ。俺は喉が乾いて目が覚めてしまっただけなので、水を飲もうと腕の中から抜け出すとキッチンへ向かった。
グラスを取り出し、テーブルの上のピッチャーに手を伸ばしかけたところでグラスの中に、水が満たされた。
「ありがとうございます。ルノさんも飲みますか?」
グラスを取り出そうとして、ルノさんなら自由に口の中に適量な水を直接出せるのかと、悩んでいると『飲む』と答えが返ってきたのでグラスを取り出した。
「頭痛とか平気なんですか?前回は二日酔いで寝込んでましたよね」
あの姿もなかなか見ることのできない姿だったな。
「今日は二日酔いになんてなっている場合じゃないからね」
「今日、何か用事ありましたっけ?」
ギルドへ討伐した魔物の買取はもうちょっとのんびりしてからという事にした、新しい依頼はしばらく受けない。レイニート様から呼び出しも受けていないから、久々詰所の台所でお昼ご飯と晩ご飯作り、その間に掃除もしてしまいたい……ルノさんは気にしないでと笑った。
目も覚めてしまったし、まだ早いけど朝ごはんでも作ろうかな。
いっぱい作って、みんなが起きてくる前に詰所に持ってけば一緒に食べられる。
ルノさんもいいねをくれたので、早速料理開始……と思ったけど、この家のキッチングッズ全部新品を用意してくれていたようで『お手製』に変えていく作業からだった。
ーーーーーー
「なんだよ、二人きりの生活がそんなに寂しかったかのか?」
朝ごはんを大量に用意して朝っぱらから詰所に着いた俺とルノさんを見て隊長はにやっと笑う。
……隊長の言葉通り寂しいという気持ちはある。お姉ちゃんが嫁に行って出て行った後のような、兄が一人暮らしすると家を出て行ったような……絶望はないが微妙な寂しさを感じた。俺は大家族ではなかったけど。
「ああ?もう里帰りか?」
「シーナは15すぎてもまだまだガキっぽいな!!」
賑やかに食堂に入ってきた隊員達も、早朝から詰所にやってきていた俺を見て笑った。
「そんな事いう人は食べてくれなくて良いです。1つ金貨1枚するガビラクトパーの高級卵を贅沢にと一人3つ使ったオムレツなのに……ルノさんお家に帰ってふたりで食べましょ?」
「「あのガビラクトパーの卵だと!?」」
海沿いの街で生まれただけありゴルカーさんとナタスンさんはこの卵の価値を知っている様だ。
「シーナ様!!是非そのオムレツを食べさせてください!!」
海に面した断崖絶壁に卵用の巣を作り自らの卵を餌に生き物を誘き寄せ捕食するガビラクトパー……この卵を手に入れる為にどれだけ苦労したことか……。
卵はルノさんが楽々と回収してくれたんだけど、海中から伸びてきた無数のガビラクトパーの触手……あんなに生命力が強いとは思わなかった。
「シーナが危険な目に合いながら入手した卵だからな。よく味わって食べろよ」
ルノさんの言葉にガビラクトパーを知っている者と知らない者とで反応が分かれた。
「ルノさん……余計な事を言わなくて良いです」
「いや、ちゃんとシーナの努力の結晶だと言う事を噛み締めて貰わないと駄目だろう」
ガビラクトパー……本当に嫌な魔物だった。
切り取られた触手があんなに動き回るとは……。
「大丈夫か……遠い目をして……」
オットーさんは農村部の出身だからガビラクトパーを知らないみたいだな……商人の子だからアシルさんは知っている様だ。真っ赤な顔で俯かないで欲しい……何を想像したか知らないがそこまでの事は起こってないからな。
すぐにルノさんに助けてもらったから。
あの触手も食用可らしいが、タコやイカに似た見た目だったら持って帰って来たけど食べる気になれず燃やしてきた。スライム依頼の衝撃的な魔物であった。
未開の地はドラゴン肉をはじめ、ガビラクトパーの卵など高級食材の宝庫で、考え様によっては美食パラダイス。
でも……でも出来ればもう2度と行きたくないと思う。
中に詰め込まれた素材と食材の総額がいくらになるのか想像も出来ない収納鞄をそっと撫でた。
マルトリノさんに卸したら一財産だよ。
ーーーーーー
価値は分からなくてもその味は分かるようで皆美味しそうに食べてくれる。ドラゴン肉に引き続き、皆の舌が肥えすぎないか心配だな。
「隊長、コバットリスの目撃情報はありませんか?」
ルノさんが隊長の前の食器を片付けながら隊長に聞いているのが洗い物をしながらなんとなく耳に入った。
コバットリス?目撃情報ってぐらいだから魔物っぽいけど……それがどうしたんだろう。
「コバットリスか。そうか……遂に……やったな」
「……はい。いろいろご心配をお掛けしました」
「お前からそんな言葉を聞けるとはな……」
「おめでとうございます!!副隊長!!」
少し照れた様なルノさんを隊員の皆も背中を叩いて激励していて、食堂の隅ではレフさんの肩をハイケンさんが励ますように叩いている……何事だろうか?
聞きたいけれど……聞いてはいけないと心の忠告に従って素知らぬふりをして洗い物を続けた。
119
お気に入りに追加
2,696
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
キスから始まる主従契約
毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。
ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。
しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。
◯
それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。
(全48話・毎日12時に更新)
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる