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一世一代
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「俺では隊長の期待に添えることはできません」
隊長と同じ様に、俺だってルノさんに幸せになって欲しい。でも、俺ではルノさんを幸せにしてはあげられないんだ。
「は?何でだよ……あんだけ睦まじげな姿を見せつけてきておきながら、どうしてお前はそこを頑なに拒むんだ?」
「……いろいろです」
「いろいろじゃわかんねぇよ。ルノがお前に対する気持ちはおいといて、お前だってルノの事が好きなんだろ?」
まだ、この後に及んで口にして良いものか悩んでしまう。一度口に出してしまえば、もうなかった事には出来ない。
「……だって……」
「だって、何だ?」
「だって……ルノさん……大き……ぃ……」
「は……?」
沈黙するな隊長!!何か言ってくれ、沈黙と視線が痛い。
「えっと……それはルノのナニの話だろうか?」
一緒にお風呂に入るとどうしても目がいってしまう……MAXはわからないけれど、平常時で……無茶なのはわかる。
「あんなの無理!!あんなの絶対死んじゃうよ!!俺まだ防御力2桁なったばっかなのに!!攻撃力3桁のルノさんを受け入れられるわけないじゃん!!」
「いや……攻撃力ってそういうもんじゃねぇから……」
スライムみたいに弾けちゃうとか嫌だし、もしそんな事になったらルノさんだって魔物化しちゃう。
ルノさんが、みんなの事をその手で殺めるのも、みんなの手でルノさんが殺されてしまうのもどっちも嫌だ。
「そういうのは、無理してやるもんじゃねぇから……やれねぇならやらなきゃ良いんじゃねえかな?」
慰めの様に頭をポンポンと叩いてくれるけど、ルノさんだって男だ。
「俺調べでは恋人と別れる理由の第一位は『彼女がさせてくれない』だもん!!出来ないから別れるって言われるぐらいなら、初めから付き合わない方が良いじゃんか!!」
「お前調べがどこ調べか知らねぇが、それだけが一緒にいる理由じゃねぇだろ?」
「……あんたが、男同士で付き合うの女の代わりだって言ったんじゃん……これから街が平和になって女性と会う機会が増えたら?世界に溢れる魔力が薄れてルノさんの魔力も薄くなったら?ルノさん、子供が欲しいってなった時……俺はただの邪魔じゃんか。ルノさん俺の事好きだって言うわりに俺に執着無いし、俺である理由が無くなったら俺なんて……」
「お前の目は本当に節穴だな。あれが執着と言わなかったらなんて言うんだよ……」
あれってどれだ。
俺が隊長に頬にキスされててもニコニコ笑っていることか?
レイニート様に迫られてても危険が無ければただ見守ってくれていることか?
俺が誰と結婚したって側に居させてくれれば良いって宣言することか?
ルノさんにとって、結局俺は弟の幻影のままなんじゃないのか?
「あのなぁ……ルノをずっと側で見てきた俺が断言してやるよ、お前がルノの初恋なのは間違いねぇ。お前と出会ってあいつは恋を初めて知ったみたいで、その恋心をどう扱って良いかわからねぇんだろ」
あれだけ格好良くて恋愛経験ゼロって事は無いだろうに、家族の事件が起こる前は普通に学校に行ってたんだから……。
「ルノにとって1番身近にあった恋愛の一例がエレーナだったんだ。お前もエレーナを怖がっていたし、あいつなりにエレーナの様になりたくないと思ったんだろう……その結果、お前には何も求めずただ愛し続けるだけって結論に至ったんだろ……至りきれてはねぇけどな」
「エレーナとルノさんは全く違うよ」
「それは、ルノが好きになったのがお前だったからってだけの結果論だ。相手が受け入れてくれなければルノだって道を間違えてた可能性は十分ある。あいつはお前に見せないようにしているだけでその執着心はなかなかだぞ?お前の一言で一喜一憂するし……今だって俺は死神の鎌を首に掛けられている気持ちだ」
隊長の首を見てもそんな物は無い。
遠くを見つめる隊長の目線を追うと……ルノさんがレイニート様と話しているだけだ。
「俺を信じろとは言わねぇが、もう少しルノを信じてやれよ……さて、夜も更けてきた事だしお開きかな」
隊長が手を叩いたのを合図の様に、今まで呑んで笑って騒いでいた隊員達が、一斉に片付けを始めた。さすがは腐っても軍隊。
俺も急いで立ち上がり片付けに加わった。
ーーーーーー
賑やかなパーティーが終わると途端に静かな夜が訪れる。
お風呂から上がると、お酒も入っていたしもう寝てしまっているだろうと思っていたけれどルノさんは縁側に座って外を眺めていた。
酔っ払ったルノさんは終始笑顔。
横に座るの、その笑顔がもっとくにゃっと柔らかくなる。
……新発見。
虫の鳴き声が聞こえてくる……秋の訪れの様な懐かしい鈴のような音。正体不明な鳴き声の主は見たくないけれど。
ただ静かに時が流れて行く。
全くの予想外だけど……同棲が始まる。
同じ部屋で寝泊まりするのは一緒だけど、違う。
隣の部屋のドアを叩いても隊長がいる訳じゃない。リビングに行っても隊員達がいる訳じゃない。
周りを魔物に囲まれたテント生活とも違う。
隊長に言われたから……だけじゃなくて、自分でもいつかははっきりさせなければと思っていた。思っていたけど、失うのが怖くて聞けなかった。
「ルノさんは……俺の事を好きだと言ってくれます」
「ああ、シーナの事が大好きだよ」
これは日常……いつだってルノさんは俺を好きだと言ってくれる。
「それは……どういう好きなんですか?弟みたい?それとも恋人みたいに?」
だんだんルノさんの顔を見るのが怖くなり、頭の角度が下がってくる。胸が……喉が締め付けられる。
「恋人……になれたら素敵だね。でもシーナにそれを無理強いしたくない。シーナはシーナが心から好きだと思う人と一緒になってくれたら嬉しい」
恋人になりたい……とは一応思ってくれるのか。
「もし俺が隊長と付き合っても……ルノさんは嬉しいと思うんですか?」
「…………もちろん、それでシーナの笑顔が見られなら」
俺を1番に思ってくれる優しさは1番残酷だ。
そうやって……譲れるぐらいの気持ちしか向けられてないんじゃないかと思ってしまう。
「俺は嫌です。俺はルノさんが他の人と……誰かのものになるなんて嫌です。あと俺が誰と付き合っても気にしないなんて言うルノさんは嫌だ……もっと俺を……欲しがって……欲しい」
バクバクと心臓が悲鳴みたいに大きな音を上げている。逃げたい……大声を上げながら逃げてしまいたい。
「シーナ……俺が、君を独り占めしてしまって良いのか?」
ルノさんの手が頬に触れる。
ゆっくり頷くと、暖かく包み込んでくれるいつもの触れ方と少し変わった……俺を見つめる目もいつもと違う。
いつもの子供を見守る様な目ではなく……ゆっくりと近づいてくる顔、お酒の匂いのする熱い吐息がかかる。
これは……この流れは……。
もしこのままの流れで進んで、本当に死んだらどうしようとドキドキとハラハラと心臓が忙しない。
ルノさんなら途中でも止めたら止めてくれるとは思うけど……俺は……本当にルノさんを受け入れられるだろうか。
とっさに『ルノを信じてやれ』という隊長の言葉が頭をよぎった……信じる……信じてる。俺はルノさんを愛してる。
ゆっくりと俺の体は後ろへ押される様に倒されて、ルノさんの体が上から覆いかぶさった……。
「…………」
ルノさんったらベタだなぁ……俺の横で寝息を立てるルノさんの姿に、ストンと緊張が抜け落ちて笑いが漏れた。
安堵の様な、残念な様なため息を大きく吐いて、ルノさんの腕の中から抜け出すと布団をもって縁側に戻った。
俺にルノさんを運ぶのは無理。板間の上は少し硬いが、ルノさんの横で一緒に布団に入り込んだ。
きっと明日にはベタに今夜の会話は覚えていないんだろうな。
「ルノさん、愛してます」
ルノさんの胸に顔を擦り寄せると体を抱き込まれた。
「俺も……愛してる……」
寝ているのか起きているのか……ルノさんの腕の中でふわふわとした夢見心地を感じながら、いつしか眠りに落ちていた。
隊長と同じ様に、俺だってルノさんに幸せになって欲しい。でも、俺ではルノさんを幸せにしてはあげられないんだ。
「は?何でだよ……あんだけ睦まじげな姿を見せつけてきておきながら、どうしてお前はそこを頑なに拒むんだ?」
「……いろいろです」
「いろいろじゃわかんねぇよ。ルノがお前に対する気持ちはおいといて、お前だってルノの事が好きなんだろ?」
まだ、この後に及んで口にして良いものか悩んでしまう。一度口に出してしまえば、もうなかった事には出来ない。
「……だって……」
「だって、何だ?」
「だって……ルノさん……大き……ぃ……」
「は……?」
沈黙するな隊長!!何か言ってくれ、沈黙と視線が痛い。
「えっと……それはルノのナニの話だろうか?」
一緒にお風呂に入るとどうしても目がいってしまう……MAXはわからないけれど、平常時で……無茶なのはわかる。
「あんなの無理!!あんなの絶対死んじゃうよ!!俺まだ防御力2桁なったばっかなのに!!攻撃力3桁のルノさんを受け入れられるわけないじゃん!!」
「いや……攻撃力ってそういうもんじゃねぇから……」
スライムみたいに弾けちゃうとか嫌だし、もしそんな事になったらルノさんだって魔物化しちゃう。
ルノさんが、みんなの事をその手で殺めるのも、みんなの手でルノさんが殺されてしまうのもどっちも嫌だ。
「そういうのは、無理してやるもんじゃねぇから……やれねぇならやらなきゃ良いんじゃねえかな?」
慰めの様に頭をポンポンと叩いてくれるけど、ルノさんだって男だ。
「俺調べでは恋人と別れる理由の第一位は『彼女がさせてくれない』だもん!!出来ないから別れるって言われるぐらいなら、初めから付き合わない方が良いじゃんか!!」
「お前調べがどこ調べか知らねぇが、それだけが一緒にいる理由じゃねぇだろ?」
「……あんたが、男同士で付き合うの女の代わりだって言ったんじゃん……これから街が平和になって女性と会う機会が増えたら?世界に溢れる魔力が薄れてルノさんの魔力も薄くなったら?ルノさん、子供が欲しいってなった時……俺はただの邪魔じゃんか。ルノさん俺の事好きだって言うわりに俺に執着無いし、俺である理由が無くなったら俺なんて……」
「お前の目は本当に節穴だな。あれが執着と言わなかったらなんて言うんだよ……」
あれってどれだ。
俺が隊長に頬にキスされててもニコニコ笑っていることか?
レイニート様に迫られてても危険が無ければただ見守ってくれていることか?
俺が誰と結婚したって側に居させてくれれば良いって宣言することか?
ルノさんにとって、結局俺は弟の幻影のままなんじゃないのか?
「あのなぁ……ルノをずっと側で見てきた俺が断言してやるよ、お前がルノの初恋なのは間違いねぇ。お前と出会ってあいつは恋を初めて知ったみたいで、その恋心をどう扱って良いかわからねぇんだろ」
あれだけ格好良くて恋愛経験ゼロって事は無いだろうに、家族の事件が起こる前は普通に学校に行ってたんだから……。
「ルノにとって1番身近にあった恋愛の一例がエレーナだったんだ。お前もエレーナを怖がっていたし、あいつなりにエレーナの様になりたくないと思ったんだろう……その結果、お前には何も求めずただ愛し続けるだけって結論に至ったんだろ……至りきれてはねぇけどな」
「エレーナとルノさんは全く違うよ」
「それは、ルノが好きになったのがお前だったからってだけの結果論だ。相手が受け入れてくれなければルノだって道を間違えてた可能性は十分ある。あいつはお前に見せないようにしているだけでその執着心はなかなかだぞ?お前の一言で一喜一憂するし……今だって俺は死神の鎌を首に掛けられている気持ちだ」
隊長の首を見てもそんな物は無い。
遠くを見つめる隊長の目線を追うと……ルノさんがレイニート様と話しているだけだ。
「俺を信じろとは言わねぇが、もう少しルノを信じてやれよ……さて、夜も更けてきた事だしお開きかな」
隊長が手を叩いたのを合図の様に、今まで呑んで笑って騒いでいた隊員達が、一斉に片付けを始めた。さすがは腐っても軍隊。
俺も急いで立ち上がり片付けに加わった。
ーーーーーー
賑やかなパーティーが終わると途端に静かな夜が訪れる。
お風呂から上がると、お酒も入っていたしもう寝てしまっているだろうと思っていたけれどルノさんは縁側に座って外を眺めていた。
酔っ払ったルノさんは終始笑顔。
横に座るの、その笑顔がもっとくにゃっと柔らかくなる。
……新発見。
虫の鳴き声が聞こえてくる……秋の訪れの様な懐かしい鈴のような音。正体不明な鳴き声の主は見たくないけれど。
ただ静かに時が流れて行く。
全くの予想外だけど……同棲が始まる。
同じ部屋で寝泊まりするのは一緒だけど、違う。
隣の部屋のドアを叩いても隊長がいる訳じゃない。リビングに行っても隊員達がいる訳じゃない。
周りを魔物に囲まれたテント生活とも違う。
隊長に言われたから……だけじゃなくて、自分でもいつかははっきりさせなければと思っていた。思っていたけど、失うのが怖くて聞けなかった。
「ルノさんは……俺の事を好きだと言ってくれます」
「ああ、シーナの事が大好きだよ」
これは日常……いつだってルノさんは俺を好きだと言ってくれる。
「それは……どういう好きなんですか?弟みたい?それとも恋人みたいに?」
だんだんルノさんの顔を見るのが怖くなり、頭の角度が下がってくる。胸が……喉が締め付けられる。
「恋人……になれたら素敵だね。でもシーナにそれを無理強いしたくない。シーナはシーナが心から好きだと思う人と一緒になってくれたら嬉しい」
恋人になりたい……とは一応思ってくれるのか。
「もし俺が隊長と付き合っても……ルノさんは嬉しいと思うんですか?」
「…………もちろん、それでシーナの笑顔が見られなら」
俺を1番に思ってくれる優しさは1番残酷だ。
そうやって……譲れるぐらいの気持ちしか向けられてないんじゃないかと思ってしまう。
「俺は嫌です。俺はルノさんが他の人と……誰かのものになるなんて嫌です。あと俺が誰と付き合っても気にしないなんて言うルノさんは嫌だ……もっと俺を……欲しがって……欲しい」
バクバクと心臓が悲鳴みたいに大きな音を上げている。逃げたい……大声を上げながら逃げてしまいたい。
「シーナ……俺が、君を独り占めしてしまって良いのか?」
ルノさんの手が頬に触れる。
ゆっくり頷くと、暖かく包み込んでくれるいつもの触れ方と少し変わった……俺を見つめる目もいつもと違う。
いつもの子供を見守る様な目ではなく……ゆっくりと近づいてくる顔、お酒の匂いのする熱い吐息がかかる。
これは……この流れは……。
もしこのままの流れで進んで、本当に死んだらどうしようとドキドキとハラハラと心臓が忙しない。
ルノさんなら途中でも止めたら止めてくれるとは思うけど……俺は……本当にルノさんを受け入れられるだろうか。
とっさに『ルノを信じてやれ』という隊長の言葉が頭をよぎった……信じる……信じてる。俺はルノさんを愛してる。
ゆっくりと俺の体は後ろへ押される様に倒されて、ルノさんの体が上から覆いかぶさった……。
「…………」
ルノさんったらベタだなぁ……俺の横で寝息を立てるルノさんの姿に、ストンと緊張が抜け落ちて笑いが漏れた。
安堵の様な、残念な様なため息を大きく吐いて、ルノさんの腕の中から抜け出すと布団をもって縁側に戻った。
俺にルノさんを運ぶのは無理。板間の上は少し硬いが、ルノさんの横で一緒に布団に入り込んだ。
きっと明日にはベタに今夜の会話は覚えていないんだろうな。
「ルノさん、愛してます」
ルノさんの胸に顔を擦り寄せると体を抱き込まれた。
「俺も……愛してる……」
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