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「しかしあれだな……どうするかの結論は出ねぇよな。俺かルノの養子にするとしても教会には行かねえといけねぇしな……」
教会は俺の思う教会ではなく役所みたいなもんなのかな?
「あるじゃないですか。国にも教会にも影響を受けない所が……」
「あ~……冒険者ギルドな……それは俺も考えたが……」
自由の代名詞、冒険者!!
国にも教会にも影響されないって、この世界でも冒険者はやっぱり自由なんだ。
「冒険者ギルドは初めこそ国から追われる犯罪者の集まりだったとしても、地位向上に努め今では独立した機関として国を跨いで活動をしている……汚れ仕事も請け負っているから下手に敵に回せないってのが真実でしょうが」
「汚れ仕事って……暗殺……とかですか?俺には無理かも……」
元犯罪者集団とか聞くとちょっと躊躇するな。
「そういう仕事を請け負うかどうかは自由だ。問題はそこじゃねぇんだ……登録するのに問題がな……」
隊長とルノさんがシンクロした様に俺を見てから同時に溜め息を吐いた。わからないけどなんか少し傷付きますが?
「15歳になれば誰でも登録出来る、身元を明かさず偽名でも登録可、何の問題が有るのですか?」
レイニート様もわからない様で首をかしげた。
「……シーナ、お前のステータス全部開示して見せてやれ」
「え?嫌です」
絶対馬鹿にされるもん。100%断言できる。
「ここにきて恥ずかしがってる場合か!!さっさと見せろ!!」
ダンッ!!と壊す勢いで拳をテーブルに叩きつけられ、慌ててステータスを全て公開した。全てと言っても全て見られる訳ではないけれど。
「こ……これは……」
俺を鑑定しているらしいレイニート様。
いっそ気持ち良く感じるぐらい嫌味を並べられるかと思ったけど予想に反して頭を抱えられてしまった。
……魔力が0なのがやはりネックなのだろうか?
「……Lv.2……君は5歳児か?」
向けられた視線は馬鹿にする物では無かったが、憐れみの籠もった視線の方が俺の心を傷付けた。
そう……俺はまだLv.2。
エレーナとの死闘を越えた俺……なのにLv.2。
エレーナを倒したのはミニルノさん。どうやらスキルで作り出した物が倒しても、俺に経験値的な物は入ってこないらしい。
俺のスキルなのに!!と文句を言いたかったけど、エレーナを倒したのは神様と言う事にしているので誰にも相談出来ずにいる。
ミニルノさんの存在はルノさんにも言えない俺だけの秘密だからな。
なので、あの勇敢なぬいぐるみ達をいっぱい作ってテイマーになる夢も速攻、断たれた。
「登録するのに最悪年齢も、見た目さえそう見えれば詐称は出来る……ただ一つだけ虚偽しちゃいけねぇ条件がレベルが5以上だという事……そこを偽ると本人の命どころか周りまで危険に晒す事になるからな……」
「有って無い様な条件かと思っていたが……まさかそこに引っ掛かる者がいるとは……」
5歳児のカイとリーナがLv.3だもんなぁ……。
でも俺は異世界から来たばかりなんだから、この世界では0歳児も同様!!Lv.2でも褒めて欲しいよ。
ルノさんに慰める様に頭を撫でられたけどその優しさ逆に悲しいって気付いた。
「いや、ここには魔物戦に対して優秀な教師がたくさん揃って……」
「こいつの誕生日がいつかわからねぇ。いつ15歳になるかもわからねぇ上に……Lv.2にするのに俺はスライム一匹の為に半日を費やしたんだぞ?Lv.5に上がるまで付き合うのは……俺には……」
隊長、気が短いからなぁ。あの時はスライムしか見えてなくて気付かなかったけど、内心かなりイライラしていたんだろう。
でも考えてほしい。俺はあのスライムを1度倒している。それにLv.2に上がった。つまり作業ゲーの苦痛をこなせばスライム倒し続けてLv.5を目指す事が出来るではないか。何匹倒せばいいのか知らないけど。
「詰所から出ずに一生過ごすか、ルノルトスと人間のいない土地で過ごすか、冒険者を目指し死ぬ気でレベルを上げるか……シーナ君の気持ち次第ですね。シーナ君、君はどう生きたい?君の人生だ、君が選びたまえ」
「俺は……」
詰所から出ない……今は良くてもいつか不満が爆発しそうだ。ルノさんと二人で未開の土地へ……その選択は彼女と変わりない。
そうなると冒険者1択。
レベル上げは過酷そうだけど生きる為なら根性見せなくては……やっぱり異世界来たからには冒険者って称号憧れるし。
「俺は、冒険者になりたいです」
「……良いのか?かなり根性が必要だぞ」
「でもそうすれば、これからも一緒に街を歩けるんですよね」
心配そうに見下ろしてくるルノさんへ心配しないでと笑顔を向けた。
「シーナ……俺も頑張るよ」
ルノさんに抱きしめられ……それだけで全てが上手く行きそうな安心感に包まれた。
ーーーーーー
その日から俺のレベル上げ地獄のスパルタ教育が始まった。
3人交代の保護者同伴制で街の外へ出て特訓に向かう事になったのだが……。
ルノさんは俺と魔物の目があった瞬間に魔物を瞬殺してしまう。
「ごめん……わかってる!!わかってるいるんだがシーナに敵意を向けられると体が勝手に……」
ひどく落ち込み苦悩するルノさんの姿に申し訳なくなった。
レイニート様は初めて見る俺の戦闘姿に驚かれたのか、早口でまくし立てられた言葉に俺の心が戦闘不能となった。
隊長は……笑顔ながらに頭を掻きむしる姿に、隊長の頭皮が心配になり戦闘どころでは無くなった。
レベルがダンチな3人がつくよりも、ライバルと競い合うのが良いのではと白羽の矢が立てられたのがナタリア先生の戦闘教室だった。
お友達と一緒なら頑張れるよね的にカイとリーナと共に立入禁止が解かれた西区にやって来ている。
隊長が生け捕りにしてくれた魔物相手に戦闘訓練をする、安全な釣り堀スタイル。
「ナタリア~シーナがスライムと遊んでる」
「遊ぶの良いの?リーナも遊ぶ!!」
遊んでるんじゃないよ。お兄ちゃんは真剣に戦闘中なんだよ。
ナタリアに渡された剣はカイとリーナと同じ物。
二人はサックリとスライムを倒してしまったというのに俺はというと……。
「ナタリア先生……剣が刺さりません……」
おかしい。1度は倒せてレベルも上がったのに何故だ?
ボインボインとスライムに剣を弾き返される俺を見るナタリアさんの目が痛い。
「ガイトドフさんに壊滅的とは聞いていたけど……」
けど……何でしょうか?
俺は魔力だけではなく戦闘センスも皆無の様だった。
俺がスライムと戦っているのに飽きてきたのかリーナは剣で土を掘り返したり遊び始めてしまった。
くそぅ……スライムめ……。
あの日の感覚を思い出し、深呼吸をして剣を握る手に全神経を集中させる。
俺はできる、俺はできる……俺はやれるんだ!!
大きく振り上げた剣に全ての力を込めて目一杯振り下ろした。
ボイン。
跳ね返された自分の込めた力の反動で尻もちをついた俺めがけてスライムが飛び込んでくる。
「危ない!!シーナ!!」
カッコよく飛び込んできたカイの剣がスライムの体を引き裂いた。
ナタリアさんとリーナだけではなく、俺まで守ろうとしてくれるなんてお前はもう立派な戦士だよ。
俺はというと、モロに浴びたスライムの粘液をリーナに雑巾で拭き取って貰っている。
……お手製の雑巾はどこを拭いても汚れる事は無いけれど、今までどんな物を拭いてきたのか……お兄ちゃんとっても気になるなぁ。
始めたばかりだけど、俺のせいでいきなり休憩時間になってしまった。
「ナタリアさんすいません……」
時間があまりない事も隊長から聞いているだろうに……。
「気にしないで?シーナちゃん疲れてるみたいだからって、ガイトドフさんからものんびり楽しみながらで良いって言われてるから」
はじめから成果は期待されていなかったと言う訳か。
ゆっくり羽でも伸ばして来いという隊長の優しさかな。
優秀な教師3人につきっきりで見てもらって魔物一匹倒せなかった申し訳無さでヘコんでたし、カイとリーナが元気良く遊ぶ姿を眺めているのは気持ちが解れる。
「シーナちゃん……ありがとう」
「何がですか?」
先生をお願いしたのはこっちなのに。
「カイとリーナ……シーナちゃんがくれた雑巾のお陰であの子達少しずつ元気になって……こうして外にも出られる様になったし、シーナちゃんを守るんだって自信も出てきたみたい」
「そうですか……お役に立てたみたいで嬉しいです」
俺の自信は地に落ちましたけど。
「「ナタリア~シーナ~!!見て、ノウモ~!!」」
土遊びをしていた二人が蔓に沢山実をつけたノウモを掲げている。
これだけ広大な農地だ。魔物の襲撃に遭わずに残されていた作物もあったんだろう。
「すごいね。大きなノウモだ」
「まだいっぱいあったよ~シーナも行こう」
「シーナどっちがいっぱい取れるか競争」
2つの小さな手に引かれながらボコボコの畑の跡地を歩いていく。
……もう誰も住んでいないって言ってたから大丈夫かな。
広大な土地を見渡す。
あの時は雨が降っていたせいもあるけれど、逃げるのに必死で景色なんて覚えてないし、ルノさんと出会った場所は見当もつかない。
西区と言われて少し身構えてたけど案外平気なものだ。
寧ろ広い土地を吹き抜けていく風が心地良かった。
「うぎぎ……何で抜けるの君たち……」
カイとリーナがズボッとノウモを抜いていく横で俺はまだ一本の蔓と格闘している。こんなところまでレベルの差が出てくるのか?
誇らしげに笑う二人……。
良いだろう……大人の力というものを見せてやる。
収納鞄から植木鉢にノウモを植える時オットーさんから貰ったスコップ(お手製済)を取り出した。
「うりゃあぁぁっ!!」
「あ!!シーナズルい!!」
「シーナズルした!!」
大人気なくチートを駆使したノウモ掘り競争はリーナの勝利で終わり、詰所に戻ると焼きノウモパーティーを楽しんで3人を見送った。
「ちびっ子達に負けてらんないよな……」
小さな姿に勇気を貰い、明日からまた頑張ろうと夕陽に向い決意するのだった。
教会は俺の思う教会ではなく役所みたいなもんなのかな?
「あるじゃないですか。国にも教会にも影響を受けない所が……」
「あ~……冒険者ギルドな……それは俺も考えたが……」
自由の代名詞、冒険者!!
国にも教会にも影響されないって、この世界でも冒険者はやっぱり自由なんだ。
「冒険者ギルドは初めこそ国から追われる犯罪者の集まりだったとしても、地位向上に努め今では独立した機関として国を跨いで活動をしている……汚れ仕事も請け負っているから下手に敵に回せないってのが真実でしょうが」
「汚れ仕事って……暗殺……とかですか?俺には無理かも……」
元犯罪者集団とか聞くとちょっと躊躇するな。
「そういう仕事を請け負うかどうかは自由だ。問題はそこじゃねぇんだ……登録するのに問題がな……」
隊長とルノさんがシンクロした様に俺を見てから同時に溜め息を吐いた。わからないけどなんか少し傷付きますが?
「15歳になれば誰でも登録出来る、身元を明かさず偽名でも登録可、何の問題が有るのですか?」
レイニート様もわからない様で首をかしげた。
「……シーナ、お前のステータス全部開示して見せてやれ」
「え?嫌です」
絶対馬鹿にされるもん。100%断言できる。
「ここにきて恥ずかしがってる場合か!!さっさと見せろ!!」
ダンッ!!と壊す勢いで拳をテーブルに叩きつけられ、慌ててステータスを全て公開した。全てと言っても全て見られる訳ではないけれど。
「こ……これは……」
俺を鑑定しているらしいレイニート様。
いっそ気持ち良く感じるぐらい嫌味を並べられるかと思ったけど予想に反して頭を抱えられてしまった。
……魔力が0なのがやはりネックなのだろうか?
「……Lv.2……君は5歳児か?」
向けられた視線は馬鹿にする物では無かったが、憐れみの籠もった視線の方が俺の心を傷付けた。
そう……俺はまだLv.2。
エレーナとの死闘を越えた俺……なのにLv.2。
エレーナを倒したのはミニルノさん。どうやらスキルで作り出した物が倒しても、俺に経験値的な物は入ってこないらしい。
俺のスキルなのに!!と文句を言いたかったけど、エレーナを倒したのは神様と言う事にしているので誰にも相談出来ずにいる。
ミニルノさんの存在はルノさんにも言えない俺だけの秘密だからな。
なので、あの勇敢なぬいぐるみ達をいっぱい作ってテイマーになる夢も速攻、断たれた。
「登録するのに最悪年齢も、見た目さえそう見えれば詐称は出来る……ただ一つだけ虚偽しちゃいけねぇ条件がレベルが5以上だという事……そこを偽ると本人の命どころか周りまで危険に晒す事になるからな……」
「有って無い様な条件かと思っていたが……まさかそこに引っ掛かる者がいるとは……」
5歳児のカイとリーナがLv.3だもんなぁ……。
でも俺は異世界から来たばかりなんだから、この世界では0歳児も同様!!Lv.2でも褒めて欲しいよ。
ルノさんに慰める様に頭を撫でられたけどその優しさ逆に悲しいって気付いた。
「いや、ここには魔物戦に対して優秀な教師がたくさん揃って……」
「こいつの誕生日がいつかわからねぇ。いつ15歳になるかもわからねぇ上に……Lv.2にするのに俺はスライム一匹の為に半日を費やしたんだぞ?Lv.5に上がるまで付き合うのは……俺には……」
隊長、気が短いからなぁ。あの時はスライムしか見えてなくて気付かなかったけど、内心かなりイライラしていたんだろう。
でも考えてほしい。俺はあのスライムを1度倒している。それにLv.2に上がった。つまり作業ゲーの苦痛をこなせばスライム倒し続けてLv.5を目指す事が出来るではないか。何匹倒せばいいのか知らないけど。
「詰所から出ずに一生過ごすか、ルノルトスと人間のいない土地で過ごすか、冒険者を目指し死ぬ気でレベルを上げるか……シーナ君の気持ち次第ですね。シーナ君、君はどう生きたい?君の人生だ、君が選びたまえ」
「俺は……」
詰所から出ない……今は良くてもいつか不満が爆発しそうだ。ルノさんと二人で未開の土地へ……その選択は彼女と変わりない。
そうなると冒険者1択。
レベル上げは過酷そうだけど生きる為なら根性見せなくては……やっぱり異世界来たからには冒険者って称号憧れるし。
「俺は、冒険者になりたいです」
「……良いのか?かなり根性が必要だぞ」
「でもそうすれば、これからも一緒に街を歩けるんですよね」
心配そうに見下ろしてくるルノさんへ心配しないでと笑顔を向けた。
「シーナ……俺も頑張るよ」
ルノさんに抱きしめられ……それだけで全てが上手く行きそうな安心感に包まれた。
ーーーーーー
その日から俺のレベル上げ地獄のスパルタ教育が始まった。
3人交代の保護者同伴制で街の外へ出て特訓に向かう事になったのだが……。
ルノさんは俺と魔物の目があった瞬間に魔物を瞬殺してしまう。
「ごめん……わかってる!!わかってるいるんだがシーナに敵意を向けられると体が勝手に……」
ひどく落ち込み苦悩するルノさんの姿に申し訳なくなった。
レイニート様は初めて見る俺の戦闘姿に驚かれたのか、早口でまくし立てられた言葉に俺の心が戦闘不能となった。
隊長は……笑顔ながらに頭を掻きむしる姿に、隊長の頭皮が心配になり戦闘どころでは無くなった。
レベルがダンチな3人がつくよりも、ライバルと競い合うのが良いのではと白羽の矢が立てられたのがナタリア先生の戦闘教室だった。
お友達と一緒なら頑張れるよね的にカイとリーナと共に立入禁止が解かれた西区にやって来ている。
隊長が生け捕りにしてくれた魔物相手に戦闘訓練をする、安全な釣り堀スタイル。
「ナタリア~シーナがスライムと遊んでる」
「遊ぶの良いの?リーナも遊ぶ!!」
遊んでるんじゃないよ。お兄ちゃんは真剣に戦闘中なんだよ。
ナタリアに渡された剣はカイとリーナと同じ物。
二人はサックリとスライムを倒してしまったというのに俺はというと……。
「ナタリア先生……剣が刺さりません……」
おかしい。1度は倒せてレベルも上がったのに何故だ?
ボインボインとスライムに剣を弾き返される俺を見るナタリアさんの目が痛い。
「ガイトドフさんに壊滅的とは聞いていたけど……」
けど……何でしょうか?
俺は魔力だけではなく戦闘センスも皆無の様だった。
俺がスライムと戦っているのに飽きてきたのかリーナは剣で土を掘り返したり遊び始めてしまった。
くそぅ……スライムめ……。
あの日の感覚を思い出し、深呼吸をして剣を握る手に全神経を集中させる。
俺はできる、俺はできる……俺はやれるんだ!!
大きく振り上げた剣に全ての力を込めて目一杯振り下ろした。
ボイン。
跳ね返された自分の込めた力の反動で尻もちをついた俺めがけてスライムが飛び込んでくる。
「危ない!!シーナ!!」
カッコよく飛び込んできたカイの剣がスライムの体を引き裂いた。
ナタリアさんとリーナだけではなく、俺まで守ろうとしてくれるなんてお前はもう立派な戦士だよ。
俺はというと、モロに浴びたスライムの粘液をリーナに雑巾で拭き取って貰っている。
……お手製の雑巾はどこを拭いても汚れる事は無いけれど、今までどんな物を拭いてきたのか……お兄ちゃんとっても気になるなぁ。
始めたばかりだけど、俺のせいでいきなり休憩時間になってしまった。
「ナタリアさんすいません……」
時間があまりない事も隊長から聞いているだろうに……。
「気にしないで?シーナちゃん疲れてるみたいだからって、ガイトドフさんからものんびり楽しみながらで良いって言われてるから」
はじめから成果は期待されていなかったと言う訳か。
ゆっくり羽でも伸ばして来いという隊長の優しさかな。
優秀な教師3人につきっきりで見てもらって魔物一匹倒せなかった申し訳無さでヘコんでたし、カイとリーナが元気良く遊ぶ姿を眺めているのは気持ちが解れる。
「シーナちゃん……ありがとう」
「何がですか?」
先生をお願いしたのはこっちなのに。
「カイとリーナ……シーナちゃんがくれた雑巾のお陰であの子達少しずつ元気になって……こうして外にも出られる様になったし、シーナちゃんを守るんだって自信も出てきたみたい」
「そうですか……お役に立てたみたいで嬉しいです」
俺の自信は地に落ちましたけど。
「「ナタリア~シーナ~!!見て、ノウモ~!!」」
土遊びをしていた二人が蔓に沢山実をつけたノウモを掲げている。
これだけ広大な農地だ。魔物の襲撃に遭わずに残されていた作物もあったんだろう。
「すごいね。大きなノウモだ」
「まだいっぱいあったよ~シーナも行こう」
「シーナどっちがいっぱい取れるか競争」
2つの小さな手に引かれながらボコボコの畑の跡地を歩いていく。
……もう誰も住んでいないって言ってたから大丈夫かな。
広大な土地を見渡す。
あの時は雨が降っていたせいもあるけれど、逃げるのに必死で景色なんて覚えてないし、ルノさんと出会った場所は見当もつかない。
西区と言われて少し身構えてたけど案外平気なものだ。
寧ろ広い土地を吹き抜けていく風が心地良かった。
「うぎぎ……何で抜けるの君たち……」
カイとリーナがズボッとノウモを抜いていく横で俺はまだ一本の蔓と格闘している。こんなところまでレベルの差が出てくるのか?
誇らしげに笑う二人……。
良いだろう……大人の力というものを見せてやる。
収納鞄から植木鉢にノウモを植える時オットーさんから貰ったスコップ(お手製済)を取り出した。
「うりゃあぁぁっ!!」
「あ!!シーナズルい!!」
「シーナズルした!!」
大人気なくチートを駆使したノウモ掘り競争はリーナの勝利で終わり、詰所に戻ると焼きノウモパーティーを楽しんで3人を見送った。
「ちびっ子達に負けてらんないよな……」
小さな姿に勇気を貰い、明日からまた頑張ろうと夕陽に向い決意するのだった。
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