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継ぎ接ぎだらけのお姫様
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「タイチョ~!!」
「お!!カイ、リーナ!!元気だったか!!」
小さな腕をめいいっぱい広げて走ってくる二人の体をしゃがんで受け止めた隊長が抱き上げた。
「タイチョー、寂しかったよ!!」
「俺もお前らに会えなくて寂しかったぞ!!」
両脇から頬に可愛らしいキスを受けて、隊長も愛しそうにキスのお返しをした。
ほのぼのとした親子のある日の一コマ。
「隊長の隠し子?」
「違う、違う。あの子らはカイとリーナ。月猫亭で働いてるナタリアの弟と妹だよ」
俺の疑問に今日の門番、アシルさんが律儀に答えてくれた。鑑定してみると、確かに件のナタリアさんの義理の弟と妹だった。
隊長が159回もふられてるからもっと険悪なのかと思ったが二人の懐きっぷりから、かなり家族ぐるみで仲良くしてそうな雰囲気じゃないか。
ほっこりする光景……そっかぁ~あの時ルノさんにはこう見えてたのかぁ~。て、おい……俺は流石にあそこまで子供じゃないぞ!?ルノさんには俺がどう見てんだ?
「カイ、リーナ!!走ったら危ないって言ったでしょ!!」
幼い二人に、そう声を掛けながら俺の横を通り過ぎて行った影……素朴なワンピースにエプロン。肩までの茶色の髪が元気良く揺れている。
これがナタリアさんかっ!!若い!!
隊長がプロポーズしてるって言うから勝手に年上の経験豊富なお姉様を想像していたが……若い、若すぎないか!?
ナタリア・リシェール 18歳 女 エルポープス出身。
18歳って……俺との方が歳近いじゃん!!隊長ロリコンだったか!!
「おお、ナタリア。ついに結婚する気になったか」
「シーナちゃん紹介してくれるって言ってたのに全然音沙汰ないから、仕事の邪魔かと思ったけど、勝手に来ちゃった」
あ……隊長の黒歴史がまた更新された。意外に軽いプロポーズだった……ん?あ……。
ナタリアさんの紹介文を読んで……隊長の予想外に純粋な思いを見てしまって、俺はバツが悪くなり退散しようとゆっくり後退りしたけど……。
「シーナ!!紹介するぞ、俺の未来の嫁のナタリアちゃんだ!!」
きっちり紹介されてしまった。
「貴方がシーナちゃんね、ずっと会ってみたかったの」
ナタリアさん、流石というか……ホワッとした笑顔で完全に隊長をスルーしてる。
「あの……はじめまして、シーナです」
「紳士のルノルトスさんがしっかり守ってるとは聞いてるけどこんなに可愛いくて警備隊の住み込みなんてしてて平気なの?ガイトドフさんにイタズラされたりしてない?心配だわ」
お……俺の鼻が血を吹き出さないか心配です!!
ぎゅ~!!と抱きしめられて……胸が当たってます!!そんな心配そうなウル顔で覗き込んで来ないで!!
「誰がこんなガキに手ぇ出すかよ」
両肩に幼子を乗せて笑ってないで貴方の嫁を止めてください!!
「シーナちゃん会えて嬉しい」
「ナ……ナタリアさん……俺は……」
ナタリアさんの体を押し返そうとして、胸が手に…すみません!!不可抗力であって……わっわざとじゃありませんっ!!
「ナタリア、離してやれ。年頃の男の子にはちと刺激が強いみてぇだ」
「ルノルトスさんが幸せそうにデートしてたって噂だし、ガイトドフさんからも可愛いって聞いてたけど、本当に可愛かったから、つい……ごめんね。気を悪くしないで?」
キュッと手を握られて小首を傾げられながら謝られちゃあ文句は言えねぇ。
「へらへらしてんな。本当にお前はコロッと騙されそうだな」
隊長はそう言ってナタリアさんの首根っこを掴んで俺から離す。嫁の扱いがぞんざい。
「失敬な。俺はちゃんと女の子の本質を見抜いた上で……「なら、こいつの色気の無い色仕掛けに乗ってんなっての」
「えへへ……」
隊長に首根っこ掴まれながらナタリアさんは舌をペロッと出すと隊長の手から抜け出した。
「よろしくしてもらいたいのは本当だよ。よろしくね、シーナちゃん」
「は……はあ……」
差し出された手と握手を交わすと元気良く手を振られる。
あれ?
鑑定では結構、重い過去でそれでも強く生きている健気な女性像だったんだけど……。
「で?今日のその格好はなんだ?」
「男の子の好感度を上げて取り入るなら、ふわふわワンピースは鉄板でしょ!!」
隊長の指摘にナタリアさんはワンピースを見せつけるように裾を託し上げた。素朴で健気な女性はかなり活発な様で……。
「シーナちゃんお姫様探してるんだよね?どう?お姫様みたいだった?」
スカートの裾を翻しながらくるくる回る姿は可愛らしいけれど……隊長め、人の失言を言いふらしたな。
「はん!!似合わねぇ化粧なんてしてんじゃねぇよ。だいたいこんな安物の服着たお姫様なんているわけねぇ……ってイタタタっ!!」
隊長の口が両脇から引っ張られ変形している。
「ナタリア頑張ってお洒落したんだ!!」
「そんな事言うタイチョー嫌い!!」
「分かった、分かった!!綺麗だよ!!どこからどう見てもお姫様です!!」
隊長の謝罪に二人は満足そうに頷くと、お詫びとばかりに隊長の頬にキスをした。
何これ……森のくまさんと戯れるメルヘンか!?
お兄さんキュンとしちゃったよ!!
この世界の子供は皆、未来に絶望し感情を失った瞳をしていると聞かされてたのに、全然キラキラしているじゃないか。ちょっと痩せてるのが気になるけど元気そうだし。
「よろしくね、えっと……カイとリーナ?」
手を差し出すと二人は顔を見合わせてからおずおずと小さな手で触れてから、ぎゅっと握ってくれた。
「俺はチビ達と遊ぶので忙しい、シーナはナタリアに茶でも飲ませてやってくれ」
茶でもって……あんたのせいでナタリアさん沈んじゃってるんですけど……。
「あの……ナタリアさん、俺は派手なドレスとかより素朴なワンピースの方が良いっていうか……その、よく似合ってると思いますよ」
実際キュンキュンさせて頂きました。隊長のは嫉妬だと思うし。
「…………」
慰めようとしてもナタリアさんは唇を噛み締めて俯いたままだ。
どうすんだよこれ……俺に女の子喜ばす話術なんて期待しないでよ。
「あ~……ゆっくりお茶でもしませんか?」
ナタリアさんの手を取って食堂へ誘うと、黙ったままだけどついて来てくれて、バレない様にホッと息を吐き出した。
ーーーーーー
カウンターに座ったナタリアさんは、落ち着きなく物珍しそうに食堂の中を見回している。
警備隊は警察みたいなもんで、一般人が警察署の中に入る事なんてそうそうないだろうから珍しいんだろう。
俺も警察署の中とか入れて貰えたらキョロキョロしそう。お世話にはなりたくないけどね。
「……すごい。本当に瘴気が全然出てない」
そっちか。
やっぱりこっちの世界の人には普通に瘴気とやらが出て見えてるんだ。
「お口に合うかわからないけど、ホットポムポムです」
ナタリアさんの前にコップを差し出すと、ゆっくり持ち上げ一口飲むと……こちらの気持ちが温かくなるような笑顔で笑ってくれた。
これだよこれ!!俺が求めてたヒロイン。
同じ月猫亭って事でちょっと緊張してたけどナタリアさん文句無しのヒロインだよ!!
感動しすぎてちょっと涙出てきた。
「さっきはごめんね。姐さん達の真似したらちょっとは融通して貰えるんじゃないかと思って……見よう見まねでやっても私にはまだ経験が足りなかったみたい。ガイトドフさんにも呆れられちゃった」
いやいや……姐さんってあれだよね、エレーナさんとかって事だよね?真似なんてする必要ないから。エレーナさんを思い出して身震いしちゃったよ。
「いやいや……十分ご馳走になりました。ところで融通って?俺に会いたかったって……」
それも演技の一環かもしれないけど、用事が無ければわざわざ北区という危険と知られている場所まであんなに小さな子を連れて来ないよな?
「えっと……恥ずかしいお願いなんだけどね。ご飯を食べさせて貰いたくて……」
「ご飯?俺のですか?そんなわざわざ……ナタリアさん厨房で働いてるなら……」
おっと、これは鑑定で知った情報であんまり口に出すべきじゃなかった。慌てて口を塞いだけど、隊長から聞いてると思ってくれたのか、ナタリアさんはそこについては突っ込まないでくれた。
「シーナちゃんの作ったポルポルボルのパンクズ揚げにホエルメルを挟んだ物を食べさせて貰ったのが、とても美味しかったから」
一瞬、何の呪文かと思ったけどあれか、チーズインチキンカツ。食べさせて貰ったって何処で?いつ?
パッと頭に思い浮かんだ映像は俺の弁当を仲良く食べる隊長とナタリアさん、ルノさんの為にレベル上げとか格好いいじゃんと思ってたけどデートしてたのかよ!!
羨ましい!!と思ったが、引きの映像が仲良く弁当を食べる二人の後ろには積み重なる魔物の死体の山……羨ましい……のかな?
ルノさんにデートに行こうと誘われて弾丸魔物狩りツアーとか言われたら嫌すぎるな。
「女の子を魔物狩りに連れ出すなんて、デリカシーの無い隊長で申し訳ないです」
隊長の為にも俺がきちんとフォロー入れといてやらなきゃな。
「ガイトドフさんとはチームを組んでもらってて、クエストに向かう時はいつも同行させて貰ってるの、ガイトドフさんの為に作った物、勝手に頂いちゃってごめんね。それで……相談なんだけど……」
「ご飯ですよね?俺なんかの飯で良ければ……て、言っても食材費は俺が出してる訳じゃないから隊長にも相談しないと、なんですけどね」
隊長が断る事はないだろうけど、勝手は良くないだろう。
「だよね……うちは貧乏だからあんな高級な物買えるほどお金は出せ無いし……シーナちゃん落とせばと思ったけど、ルノルトスさんに敵うわけ無いよね……」
「いや、高級でもないし、ルノさんと競う必要ないですから」
発想がおかしいなぁ。
「うちの店はぼったくりだからおいといて、あんなに完璧に魔力抜きされた料理が高級でないわけがないじゃない……金貨なんて用意出来ない」
「金貨!?いやいやいや、原材料いくらだと思ってるんですか!!」
野菜使ってないし、いっても銅貨1枚で十分すぎる。
「まさか虹貨!?そんなの無理に決まってる!!」
虹貨?見たこと無いけど虹色の宝石で作られた金貨の上のお金だっけ?
わっとナタリアさんはカウンターに突っ伏して泣き出してしまった。
何で泣くの!?女の子難しい!!
「お!!カイ、リーナ!!元気だったか!!」
小さな腕をめいいっぱい広げて走ってくる二人の体をしゃがんで受け止めた隊長が抱き上げた。
「タイチョー、寂しかったよ!!」
「俺もお前らに会えなくて寂しかったぞ!!」
両脇から頬に可愛らしいキスを受けて、隊長も愛しそうにキスのお返しをした。
ほのぼのとした親子のある日の一コマ。
「隊長の隠し子?」
「違う、違う。あの子らはカイとリーナ。月猫亭で働いてるナタリアの弟と妹だよ」
俺の疑問に今日の門番、アシルさんが律儀に答えてくれた。鑑定してみると、確かに件のナタリアさんの義理の弟と妹だった。
隊長が159回もふられてるからもっと険悪なのかと思ったが二人の懐きっぷりから、かなり家族ぐるみで仲良くしてそうな雰囲気じゃないか。
ほっこりする光景……そっかぁ~あの時ルノさんにはこう見えてたのかぁ~。て、おい……俺は流石にあそこまで子供じゃないぞ!?ルノさんには俺がどう見てんだ?
「カイ、リーナ!!走ったら危ないって言ったでしょ!!」
幼い二人に、そう声を掛けながら俺の横を通り過ぎて行った影……素朴なワンピースにエプロン。肩までの茶色の髪が元気良く揺れている。
これがナタリアさんかっ!!若い!!
隊長がプロポーズしてるって言うから勝手に年上の経験豊富なお姉様を想像していたが……若い、若すぎないか!?
ナタリア・リシェール 18歳 女 エルポープス出身。
18歳って……俺との方が歳近いじゃん!!隊長ロリコンだったか!!
「おお、ナタリア。ついに結婚する気になったか」
「シーナちゃん紹介してくれるって言ってたのに全然音沙汰ないから、仕事の邪魔かと思ったけど、勝手に来ちゃった」
あ……隊長の黒歴史がまた更新された。意外に軽いプロポーズだった……ん?あ……。
ナタリアさんの紹介文を読んで……隊長の予想外に純粋な思いを見てしまって、俺はバツが悪くなり退散しようとゆっくり後退りしたけど……。
「シーナ!!紹介するぞ、俺の未来の嫁のナタリアちゃんだ!!」
きっちり紹介されてしまった。
「貴方がシーナちゃんね、ずっと会ってみたかったの」
ナタリアさん、流石というか……ホワッとした笑顔で完全に隊長をスルーしてる。
「あの……はじめまして、シーナです」
「紳士のルノルトスさんがしっかり守ってるとは聞いてるけどこんなに可愛いくて警備隊の住み込みなんてしてて平気なの?ガイトドフさんにイタズラされたりしてない?心配だわ」
お……俺の鼻が血を吹き出さないか心配です!!
ぎゅ~!!と抱きしめられて……胸が当たってます!!そんな心配そうなウル顔で覗き込んで来ないで!!
「誰がこんなガキに手ぇ出すかよ」
両肩に幼子を乗せて笑ってないで貴方の嫁を止めてください!!
「シーナちゃん会えて嬉しい」
「ナ……ナタリアさん……俺は……」
ナタリアさんの体を押し返そうとして、胸が手に…すみません!!不可抗力であって……わっわざとじゃありませんっ!!
「ナタリア、離してやれ。年頃の男の子にはちと刺激が強いみてぇだ」
「ルノルトスさんが幸せそうにデートしてたって噂だし、ガイトドフさんからも可愛いって聞いてたけど、本当に可愛かったから、つい……ごめんね。気を悪くしないで?」
キュッと手を握られて小首を傾げられながら謝られちゃあ文句は言えねぇ。
「へらへらしてんな。本当にお前はコロッと騙されそうだな」
隊長はそう言ってナタリアさんの首根っこを掴んで俺から離す。嫁の扱いがぞんざい。
「失敬な。俺はちゃんと女の子の本質を見抜いた上で……「なら、こいつの色気の無い色仕掛けに乗ってんなっての」
「えへへ……」
隊長に首根っこ掴まれながらナタリアさんは舌をペロッと出すと隊長の手から抜け出した。
「よろしくしてもらいたいのは本当だよ。よろしくね、シーナちゃん」
「は……はあ……」
差し出された手と握手を交わすと元気良く手を振られる。
あれ?
鑑定では結構、重い過去でそれでも強く生きている健気な女性像だったんだけど……。
「で?今日のその格好はなんだ?」
「男の子の好感度を上げて取り入るなら、ふわふわワンピースは鉄板でしょ!!」
隊長の指摘にナタリアさんはワンピースを見せつけるように裾を託し上げた。素朴で健気な女性はかなり活発な様で……。
「シーナちゃんお姫様探してるんだよね?どう?お姫様みたいだった?」
スカートの裾を翻しながらくるくる回る姿は可愛らしいけれど……隊長め、人の失言を言いふらしたな。
「はん!!似合わねぇ化粧なんてしてんじゃねぇよ。だいたいこんな安物の服着たお姫様なんているわけねぇ……ってイタタタっ!!」
隊長の口が両脇から引っ張られ変形している。
「ナタリア頑張ってお洒落したんだ!!」
「そんな事言うタイチョー嫌い!!」
「分かった、分かった!!綺麗だよ!!どこからどう見てもお姫様です!!」
隊長の謝罪に二人は満足そうに頷くと、お詫びとばかりに隊長の頬にキスをした。
何これ……森のくまさんと戯れるメルヘンか!?
お兄さんキュンとしちゃったよ!!
この世界の子供は皆、未来に絶望し感情を失った瞳をしていると聞かされてたのに、全然キラキラしているじゃないか。ちょっと痩せてるのが気になるけど元気そうだし。
「よろしくね、えっと……カイとリーナ?」
手を差し出すと二人は顔を見合わせてからおずおずと小さな手で触れてから、ぎゅっと握ってくれた。
「俺はチビ達と遊ぶので忙しい、シーナはナタリアに茶でも飲ませてやってくれ」
茶でもって……あんたのせいでナタリアさん沈んじゃってるんですけど……。
「あの……ナタリアさん、俺は派手なドレスとかより素朴なワンピースの方が良いっていうか……その、よく似合ってると思いますよ」
実際キュンキュンさせて頂きました。隊長のは嫉妬だと思うし。
「…………」
慰めようとしてもナタリアさんは唇を噛み締めて俯いたままだ。
どうすんだよこれ……俺に女の子喜ばす話術なんて期待しないでよ。
「あ~……ゆっくりお茶でもしませんか?」
ナタリアさんの手を取って食堂へ誘うと、黙ったままだけどついて来てくれて、バレない様にホッと息を吐き出した。
ーーーーーー
カウンターに座ったナタリアさんは、落ち着きなく物珍しそうに食堂の中を見回している。
警備隊は警察みたいなもんで、一般人が警察署の中に入る事なんてそうそうないだろうから珍しいんだろう。
俺も警察署の中とか入れて貰えたらキョロキョロしそう。お世話にはなりたくないけどね。
「……すごい。本当に瘴気が全然出てない」
そっちか。
やっぱりこっちの世界の人には普通に瘴気とやらが出て見えてるんだ。
「お口に合うかわからないけど、ホットポムポムです」
ナタリアさんの前にコップを差し出すと、ゆっくり持ち上げ一口飲むと……こちらの気持ちが温かくなるような笑顔で笑ってくれた。
これだよこれ!!俺が求めてたヒロイン。
同じ月猫亭って事でちょっと緊張してたけどナタリアさん文句無しのヒロインだよ!!
感動しすぎてちょっと涙出てきた。
「さっきはごめんね。姐さん達の真似したらちょっとは融通して貰えるんじゃないかと思って……見よう見まねでやっても私にはまだ経験が足りなかったみたい。ガイトドフさんにも呆れられちゃった」
いやいや……姐さんってあれだよね、エレーナさんとかって事だよね?真似なんてする必要ないから。エレーナさんを思い出して身震いしちゃったよ。
「いやいや……十分ご馳走になりました。ところで融通って?俺に会いたかったって……」
それも演技の一環かもしれないけど、用事が無ければわざわざ北区という危険と知られている場所まであんなに小さな子を連れて来ないよな?
「えっと……恥ずかしいお願いなんだけどね。ご飯を食べさせて貰いたくて……」
「ご飯?俺のですか?そんなわざわざ……ナタリアさん厨房で働いてるなら……」
おっと、これは鑑定で知った情報であんまり口に出すべきじゃなかった。慌てて口を塞いだけど、隊長から聞いてると思ってくれたのか、ナタリアさんはそこについては突っ込まないでくれた。
「シーナちゃんの作ったポルポルボルのパンクズ揚げにホエルメルを挟んだ物を食べさせて貰ったのが、とても美味しかったから」
一瞬、何の呪文かと思ったけどあれか、チーズインチキンカツ。食べさせて貰ったって何処で?いつ?
パッと頭に思い浮かんだ映像は俺の弁当を仲良く食べる隊長とナタリアさん、ルノさんの為にレベル上げとか格好いいじゃんと思ってたけどデートしてたのかよ!!
羨ましい!!と思ったが、引きの映像が仲良く弁当を食べる二人の後ろには積み重なる魔物の死体の山……羨ましい……のかな?
ルノさんにデートに行こうと誘われて弾丸魔物狩りツアーとか言われたら嫌すぎるな。
「女の子を魔物狩りに連れ出すなんて、デリカシーの無い隊長で申し訳ないです」
隊長の為にも俺がきちんとフォロー入れといてやらなきゃな。
「ガイトドフさんとはチームを組んでもらってて、クエストに向かう時はいつも同行させて貰ってるの、ガイトドフさんの為に作った物、勝手に頂いちゃってごめんね。それで……相談なんだけど……」
「ご飯ですよね?俺なんかの飯で良ければ……て、言っても食材費は俺が出してる訳じゃないから隊長にも相談しないと、なんですけどね」
隊長が断る事はないだろうけど、勝手は良くないだろう。
「だよね……うちは貧乏だからあんな高級な物買えるほどお金は出せ無いし……シーナちゃん落とせばと思ったけど、ルノルトスさんに敵うわけ無いよね……」
「いや、高級でもないし、ルノさんと競う必要ないですから」
発想がおかしいなぁ。
「うちの店はぼったくりだからおいといて、あんなに完璧に魔力抜きされた料理が高級でないわけがないじゃない……金貨なんて用意出来ない」
「金貨!?いやいやいや、原材料いくらだと思ってるんですか!!」
野菜使ってないし、いっても銅貨1枚で十分すぎる。
「まさか虹貨!?そんなの無理に決まってる!!」
虹貨?見たこと無いけど虹色の宝石で作られた金貨の上のお金だっけ?
わっとナタリアさんはカウンターに突っ伏して泣き出してしまった。
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