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愛されたいと願う
本音
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高2の年末年始……高3の年末年始も秀哉さんの家で過ごした。
両親に秀哉さんの家で過ごす事を電話で伝えると『あらそう。良かった』の一言で終えられて、連絡先は伝えたけれど、秀哉さんの家にお礼の連絡を入れてくれたのかは分からない。
秀哉さんのご両親は特にその事に触れてきたりもせずに、僕を温かく迎えてくれたけれど、無礼が恥ずかしくて申し訳ない。
……秀哉さんからはまだ病気の話はされてない……むしろ悪化しているのか年々一緒に過ごす時間は短くなり、一緒にいても距離が遠い。
直接話せば良い事も、雪先生づてだったり、電話だったり……。
愛してくれているのは、伝わってくるけれど……もっと一緒にいたい。抱き締めて貰いたい。
欲求は年々高まって、消化できないまま喉につっかえている。
ーーーーーー
高校生活最後の年明け……寮に戻って陸人と部屋でお土産話をして過ごしてしていた……と言っても、僕に秀哉さんとのお土産話は無くて、主に陸人の話を聞いているだけだったけど……。
秀哉さんと同じ時間を過ごす事はほとんど無く、ご両親も仕事……家政婦の華絵さんが誘ってくれて近くの神社に初詣に行った。
陸人は貴司さんと旅行に行ってきたらしく楽しそうに旅先の思い出を話してくれる陸人の笑顔に胸がズキズキと痛む。
心が傷む……傷口から良くない物が噴き出すように黒い感情が心を染めていく……大好きな陸人なのに……こんな感情は良くない。
「もう少しで卒業だね……」
……卒業後はお互い別の道を歩く。
番契約をして、僕も陸人も番持ちになる。
番契約……僕は出来るのかな?
番契約は書面だけの仮契約とは違い、触れ合わなければならないのだけれど……顔も合わせて貰えないこの状況でどうやって番になれというんだろ?
僕は……秀哉さんの素顔を……牙をいまだに見た事が無い。
「このチョーカーもよくもってくれたよ。早く番になりたいって貴司がずっと噛んでくるからさ。もうボロボロ……海里は大事にされてて良いね」
僕の首輪に手を伸ばした陸人の手を払った。
求められボロボロになった陸人の首輪。
全く触れられずにおろしたての様な真新しさの僕の首輪。
どちらが大事にされてるかなんて、どちらが愛されているかなんて……一目瞭然じゃないか。
「大事になんて……されてないっ!!」
「……海里?どうした?急に……」
「3年間、秀哉さんの方から触ってもらった事なんて無い!!同じ家にいても顔を見せてくれない!!直接話してもらえない!!これのどこが大事にされてるの!?」
ずっと押さえ込んでいた気持ちが……遂に溢れた。
こんな事を陸人にぶつけるのはただの八つ当たりだと頭の中でわかっているのに一度決壊してしまったものをせき止めるのは難しく……駄目だという心の声を振り切って隠していたものが吐き出されていく。
「僕が欲しかった優しい家族も愛してくれるアルファもいて、ベータにだって苛められた事無いんでしょ!?どうして!?どうして同じオメガなのに僕ばっかりこんなに我慢しなきゃいけないんだよ!!」
恵まれた家に産まれた陸人は、小さな頃から番の約束を交わしていた貴司さんに常に守られていて、1人で周りの視線に怯えながら街を歩いた事も無いだろう。
家族に疎まれて、尻尾を踏まれる事も、ドアに挟まれる事も無かったはずだ。
「僕だって愛されたい……陸人ばっかズルいよ……僕だって家族に『おかえり』って迎えてもらいたい。秀哉さんと旅行に行きたい.手を繋いで、一緒に隣りを歩いて、抱きしめてもらいたい……」
「海里……」
伸ばされた陸人の手から逃げる様に距離を取った。
驚いた表情の陸人。
僕がずっとこんな卑屈な気持ちで陸人の側にいた事を知られてしまった……もう当然、元の関係には戻れない。
一時の感情で自分の居場所を自分で壊してしまった。こんなんだから……僕は誰にも愛されない。愛される資格なんて無いんだ。
「陸人は俺の欲しいもの全部持ってて、綺麗だし、明るい。こんな僕にも優しくて……羨ましくて妬ましくて……側にいると惨めになって嫌なのに……なのに……」
ずっと秘めていたものを吐き出してしまった後悔と大切なものを失う喪失感に襲われ、壁に凭れたままズルズルと体が崩れ落ちる。
泣いても泣いても涙が溢れ……初めて声を上げて泣いた。
お父さんに知らない場所に置いていかれた時も、お母さんに産まなければ良かったと何度言われても、妹に車のドアで尻尾を挟まれた時も……ずっと我慢出来ていたのに。
「海里……」
「陸人といると楽しい……でも辛くて……なのに陸人の話を聞いてたくて……嫌いなのに……陸人が好きだって離れられなくて……ごめん、ごめんなさい」
嗚咽まじりに支離滅裂な事を吐き出す僕に、部屋を出て行くかと思った陸人は抱きしめて背中を摩ってくれた。
陸人にしがみつくと人の温もりを感じて気持ちが休まった。
家族にも、秀哉さんにも貰えない温もりをくれる陸人との関係を、壊す様な事を言った僕を陸人は優しく撫で続けてくれた。
両親に秀哉さんの家で過ごす事を電話で伝えると『あらそう。良かった』の一言で終えられて、連絡先は伝えたけれど、秀哉さんの家にお礼の連絡を入れてくれたのかは分からない。
秀哉さんのご両親は特にその事に触れてきたりもせずに、僕を温かく迎えてくれたけれど、無礼が恥ずかしくて申し訳ない。
……秀哉さんからはまだ病気の話はされてない……むしろ悪化しているのか年々一緒に過ごす時間は短くなり、一緒にいても距離が遠い。
直接話せば良い事も、雪先生づてだったり、電話だったり……。
愛してくれているのは、伝わってくるけれど……もっと一緒にいたい。抱き締めて貰いたい。
欲求は年々高まって、消化できないまま喉につっかえている。
ーーーーーー
高校生活最後の年明け……寮に戻って陸人と部屋でお土産話をして過ごしてしていた……と言っても、僕に秀哉さんとのお土産話は無くて、主に陸人の話を聞いているだけだったけど……。
秀哉さんと同じ時間を過ごす事はほとんど無く、ご両親も仕事……家政婦の華絵さんが誘ってくれて近くの神社に初詣に行った。
陸人は貴司さんと旅行に行ってきたらしく楽しそうに旅先の思い出を話してくれる陸人の笑顔に胸がズキズキと痛む。
心が傷む……傷口から良くない物が噴き出すように黒い感情が心を染めていく……大好きな陸人なのに……こんな感情は良くない。
「もう少しで卒業だね……」
……卒業後はお互い別の道を歩く。
番契約をして、僕も陸人も番持ちになる。
番契約……僕は出来るのかな?
番契約は書面だけの仮契約とは違い、触れ合わなければならないのだけれど……顔も合わせて貰えないこの状況でどうやって番になれというんだろ?
僕は……秀哉さんの素顔を……牙をいまだに見た事が無い。
「このチョーカーもよくもってくれたよ。早く番になりたいって貴司がずっと噛んでくるからさ。もうボロボロ……海里は大事にされてて良いね」
僕の首輪に手を伸ばした陸人の手を払った。
求められボロボロになった陸人の首輪。
全く触れられずにおろしたての様な真新しさの僕の首輪。
どちらが大事にされてるかなんて、どちらが愛されているかなんて……一目瞭然じゃないか。
「大事になんて……されてないっ!!」
「……海里?どうした?急に……」
「3年間、秀哉さんの方から触ってもらった事なんて無い!!同じ家にいても顔を見せてくれない!!直接話してもらえない!!これのどこが大事にされてるの!?」
ずっと押さえ込んでいた気持ちが……遂に溢れた。
こんな事を陸人にぶつけるのはただの八つ当たりだと頭の中でわかっているのに一度決壊してしまったものをせき止めるのは難しく……駄目だという心の声を振り切って隠していたものが吐き出されていく。
「僕が欲しかった優しい家族も愛してくれるアルファもいて、ベータにだって苛められた事無いんでしょ!?どうして!?どうして同じオメガなのに僕ばっかりこんなに我慢しなきゃいけないんだよ!!」
恵まれた家に産まれた陸人は、小さな頃から番の約束を交わしていた貴司さんに常に守られていて、1人で周りの視線に怯えながら街を歩いた事も無いだろう。
家族に疎まれて、尻尾を踏まれる事も、ドアに挟まれる事も無かったはずだ。
「僕だって愛されたい……陸人ばっかズルいよ……僕だって家族に『おかえり』って迎えてもらいたい。秀哉さんと旅行に行きたい.手を繋いで、一緒に隣りを歩いて、抱きしめてもらいたい……」
「海里……」
伸ばされた陸人の手から逃げる様に距離を取った。
驚いた表情の陸人。
僕がずっとこんな卑屈な気持ちで陸人の側にいた事を知られてしまった……もう当然、元の関係には戻れない。
一時の感情で自分の居場所を自分で壊してしまった。こんなんだから……僕は誰にも愛されない。愛される資格なんて無いんだ。
「陸人は俺の欲しいもの全部持ってて、綺麗だし、明るい。こんな僕にも優しくて……羨ましくて妬ましくて……側にいると惨めになって嫌なのに……なのに……」
ずっと秘めていたものを吐き出してしまった後悔と大切なものを失う喪失感に襲われ、壁に凭れたままズルズルと体が崩れ落ちる。
泣いても泣いても涙が溢れ……初めて声を上げて泣いた。
お父さんに知らない場所に置いていかれた時も、お母さんに産まなければ良かったと何度言われても、妹に車のドアで尻尾を挟まれた時も……ずっと我慢出来ていたのに。
「海里……」
「陸人といると楽しい……でも辛くて……なのに陸人の話を聞いてたくて……嫌いなのに……陸人が好きだって離れられなくて……ごめん、ごめんなさい」
嗚咽まじりに支離滅裂な事を吐き出す僕に、部屋を出て行くかと思った陸人は抱きしめて背中を摩ってくれた。
陸人にしがみつくと人の温もりを感じて気持ちが休まった。
家族にも、秀哉さんにも貰えない温もりをくれる陸人との関係を、壊す様な事を言った僕を陸人は優しく撫で続けてくれた。
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