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アスの強さの話
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「俺の妻から手を離してもらおうか」
ここにいるはずの無い愛しい声がする。
「凶禍の蒼い悪魔……何故ここへ……」
「自分の妻が連れ去られようとしているのを黙って見ている訳が無いだろう」
お城へ向かったと思ってたけど……見守ってくれていたのか。
「お前を殺す許可は貰ったからな、今日は昨日の様に逃がしてはやらんぞ……」
ゆっくり瞬きをする様に瞳を閉じて……次に目を開いた時、アスの目は赤く輝き、瞳孔は裂けた様に縦に細く変化していた。
いつも穏やかなこの空間が暗く……暗雲が立ち込め稲妻が走る。
ダンジョンの中なのに……どうなってんだろうなぁ……洞窟内で昼夜がある事自体不思議だったのだが……。
アスが来てくれた安心感からだろうか、そんな暢気な事を考えながら目の前の光景をどこか他人事の様に見ていた。
「っ!?……ヒュウガ!?」
ぼんやりしていると横からヒュウガに抱き攫われた。
「そんなヘマはしないと思うが……巻き込まれるぞ」
パキィィィィンッ!!
高い音が響き、振り返ると勇者の剣が粉々に砕けていた。
アスの開いた手からパラパラと塵が舞う。アスが手で刃を握りつぶした様だ。
戦うアスの姿……アスの日常。
「ヒュウガ、降ろして……」
渋るヒュウガに隠れて見るからと詰め寄り、何とか降ろして貰う。
建物の影からアスの姿を覗き見る。
「アスかっこいい……」
剣を失った勇者が素手で立ち向かうのを軽く去なしていく。
「……知らないって幸せだよな……」
「?……何か言った?」
何でも無いとヒュウガは俺を哀れみの目で見てきた。
「……っ!!!!」
思わず目を閉じる。
形状を槍の様に変化させたアスの触手達が倒れた勇者に向かっていく。
いくらアスが死ぬよりは……とは言え、スプラッターは見たくないので顔を背け、ヒュウガの手を握った。
「ヤマトに助けられたな……」
アスの声に恐る恐る目を開けると……。
触手達は勇者に刺さるギリギリのところで停止している。
圧倒的な力の差に勇者の目は見開かれている。
「…… なるべく穏便に済ましてやろう。ただし……少し弄るぞ」
アスが勇者の額に手を当てると……。
「うっ……うぎぐぁあぁぁっっっ!!」
勇者の体がガクガクと大きく痙攣して、白目を剥き、口から泡を吹いて倒れた。
「少し弄りすぎたか?」
ニヤリと笑うアスの顔を見ていると、ドキドキして、手足が震え、鳥肌が立ち、ひやりとした汗が滲む。
「アス格好良過ぎ……」
「カラスマ……恐怖と恋のときめきは別物だぞ……」
呆れた様なヒュウガの目。
………?
ヒュウガを見ると……抱きしめられた。
「バカな子程可愛いとは言うが……うん……そのまま騙されたままで良いと思う」
……????
ヒュウガが何を言いたいのかはわからなかった。
アスがヒュウガを呼び、勇者の体を投げた。
「部屋に運んでおけ。目覚めた時にはもう脅威はないだろう」
アスは俺の頭を撫でて笑った。
「俺は城へ行ってくる。もうお前をここから連れ出そうとする奴はいないから安心して待ってろ」
ふわりと笑顔を向けられてアスに抱き付きいってらっしゃいのキスをした。
ヒュウガが何か呟いていたが俺の耳にはもう聞こえなかった。
ここにいるはずの無い愛しい声がする。
「凶禍の蒼い悪魔……何故ここへ……」
「自分の妻が連れ去られようとしているのを黙って見ている訳が無いだろう」
お城へ向かったと思ってたけど……見守ってくれていたのか。
「お前を殺す許可は貰ったからな、今日は昨日の様に逃がしてはやらんぞ……」
ゆっくり瞬きをする様に瞳を閉じて……次に目を開いた時、アスの目は赤く輝き、瞳孔は裂けた様に縦に細く変化していた。
いつも穏やかなこの空間が暗く……暗雲が立ち込め稲妻が走る。
ダンジョンの中なのに……どうなってんだろうなぁ……洞窟内で昼夜がある事自体不思議だったのだが……。
アスが来てくれた安心感からだろうか、そんな暢気な事を考えながら目の前の光景をどこか他人事の様に見ていた。
「っ!?……ヒュウガ!?」
ぼんやりしていると横からヒュウガに抱き攫われた。
「そんなヘマはしないと思うが……巻き込まれるぞ」
パキィィィィンッ!!
高い音が響き、振り返ると勇者の剣が粉々に砕けていた。
アスの開いた手からパラパラと塵が舞う。アスが手で刃を握りつぶした様だ。
戦うアスの姿……アスの日常。
「ヒュウガ、降ろして……」
渋るヒュウガに隠れて見るからと詰め寄り、何とか降ろして貰う。
建物の影からアスの姿を覗き見る。
「アスかっこいい……」
剣を失った勇者が素手で立ち向かうのを軽く去なしていく。
「……知らないって幸せだよな……」
「?……何か言った?」
何でも無いとヒュウガは俺を哀れみの目で見てきた。
「……っ!!!!」
思わず目を閉じる。
形状を槍の様に変化させたアスの触手達が倒れた勇者に向かっていく。
いくらアスが死ぬよりは……とは言え、スプラッターは見たくないので顔を背け、ヒュウガの手を握った。
「ヤマトに助けられたな……」
アスの声に恐る恐る目を開けると……。
触手達は勇者に刺さるギリギリのところで停止している。
圧倒的な力の差に勇者の目は見開かれている。
「…… なるべく穏便に済ましてやろう。ただし……少し弄るぞ」
アスが勇者の額に手を当てると……。
「うっ……うぎぐぁあぁぁっっっ!!」
勇者の体がガクガクと大きく痙攣して、白目を剥き、口から泡を吹いて倒れた。
「少し弄りすぎたか?」
ニヤリと笑うアスの顔を見ていると、ドキドキして、手足が震え、鳥肌が立ち、ひやりとした汗が滲む。
「アス格好良過ぎ……」
「カラスマ……恐怖と恋のときめきは別物だぞ……」
呆れた様なヒュウガの目。
………?
ヒュウガを見ると……抱きしめられた。
「バカな子程可愛いとは言うが……うん……そのまま騙されたままで良いと思う」
……????
ヒュウガが何を言いたいのかはわからなかった。
アスがヒュウガを呼び、勇者の体を投げた。
「部屋に運んでおけ。目覚めた時にはもう脅威はないだろう」
アスは俺の頭を撫でて笑った。
「俺は城へ行ってくる。もうお前をここから連れ出そうとする奴はいないから安心して待ってろ」
ふわりと笑顔を向けられてアスに抱き付きいってらっしゃいのキスをした。
ヒュウガが何か呟いていたが俺の耳にはもう聞こえなかった。
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