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始まりの世界
第一話
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『6日午前2時半ごろ、路上で「人が倒れている」と近くの会社の男性従業員から110番通報がありました。倒れていたのは20~30代の女性で、搬送先の病院で死亡が確認されました。遺体に目立った外傷はありませんが、大量の血液が抜かれており1週間前に起こった同様の事件との関連も含め捜査を進めております』
最近世間を騒がせているニュース。
《吸血鬼殺人事件》
「どう思う?やっぱり吸血鬼の仕業だと思うか?」
『まぁ、十中八九そうだろうさ』
俺の横で黒猫は毛繕いをしながら、さも当然とばかりに答えた。
黒猫の姿をしているが、俺の母親だ。
『たまに原始の血の濃い奴がこうして現れてくるのさ、大人しくしてれば善し、自制の効かない奴を滅するのがお前の仕事だね』
「同族を殺す事になるのに良く平然と言えるな……」
『………人の味を1度覚えたヤツはもう止まらなくなるぞ?この先も被害者は増え続けるだろうさ。吸血鬼の存在が明るみになり、静かに迷惑をかけぬよう暮らしている奴等にまで被害が及んだらどうするのさ?お前だってどうなるかわからん、自分の為、家族の為だと思ってキビキビ働くんだよ』
「へいへい……息子使いの荒い母親で」
千鳥 佑人19歳。
吸血鬼の母親と人間の父を持つ、ダンピール。
吸血鬼と人間のハーフである。
吸血鬼の気配を追える能力と吸血鬼を消滅できる能力を持っているため、この現代社会でヴァンパイアハンター等という、非現実的な事をやっている。
しかし、現実に吸血鬼は存在している。
長い年月で社会に適応して生きている。
この母親もそうだ。今でこそ、猫の姿をしているが、元々は力の強い吸血鬼であったらしい。
俺の出産と引き換えに力を失い。
表向きは一度死んだことになっているが、猫の姿を取って力を蓄えているらしい。
力が戻ったら人の形を取り戻して、何も知らない父と再婚を、と意気込んでいる。
「被害者がアンデッドになる事は無いんだよな?」
『体がアンデッドに変化するにはそれなりに時間が掛かる。その前に火葬されるからねぇ、余程の事がなけりゃ大丈夫だろうよ』
母親に尻尾でてしてしと押され、窓から夜の街へと飛び出した。
ーーーーーー
「美しいお嬢さん、その血を私に分けてはいただけませんか?」
若いチャラ男が女性の首筋に顔を埋めた。
「やだぁ~ドラキュラ?でも片瀬君になら噛まれた~い」
女は顔を真っ赤にしながら嬉しそうにはしゃいでいる。
「ははっ!!じゃあ、今夜ベッドでどう?いろんなとこ噛んであげるよ~?」
夜の街。
人々がまだ多く行き交う路上で体を擦り寄せながら歩く一組の男女を遠巻きに見ている。
人も死んでいるというのに、呑気なもんだな……。
吸血鬼という生き物は往々にして美しい見目をしている。
ダンピールの俺も……と、言いたい……言いたかったが、父親の血を濃く継いだのか普通。
顔も成績も運動神経も超普通。ド平凡。
こうして、夜だけは身体能力は上がるが……。
夜上がったて意味ねぇっつーの!!
昼間学校で良いとこ見せてキャーキャー言われたい!!
あんなイチャイチャラブラブしたヤツらなんて勝手に朽ちろ!!
そうひがみつつ、路地裏の暗闇に消えていった二人の後を追った。
ーーーーーー
「こちらへおいで……その首を差し出すんだ……」
暗闇に光る赤い瞳。
その瞳に操られる様に、女はがくんと首を落とし喉元を男にさらけ出した。
ニヤリと笑い、大口を開けた男の口には二本の牙が生えていた。
その牙が女の首に刺さろうとしたとき、男の頬を風が掠め、皮膚を薄く切った。
「そこまでだ。人を殺めた吸血鬼は滅せられる運命なのは理解してるよな?……この街に入ってきた事を後悔しろ」
俺が銃口を向けると男は女を押しどけると背中を見せて走り出した。まだ噛まれる前、放っておけば催眠も解けて、前後の記憶は勝手に消えている。軽い結界だけ女性にかけて、一応安全だけ確保してやり、男の跡を追って駆け出した。
「はぁ…はぁ…クソっ!!この街にヴァンパイアハンターがいるなんて聞いてねぇぞ!!」
逃げながらごみ箱や自転車やらを倒して道を塞いでいくのを避ける為に壁を走り、男の前に降り立つ。
「空を飛ぶ力すら持たない三流が……いや…三流だからこそか?」
俺が引き金を引くと銃口から光の玉が発射されて、男の眉間を打ち抜いた。
「うああああぁぁっ!!!」
打ち抜かれた眉間から、徐々に灰になり最後は風に流されていった。
「手応えの無いヤツ……」
ハンドガンを脇下のホルスターにしまって、わずかな灰の中に残る赤い宝石の様な結晶を拾い上げた。
『この街にヴァンパイアハンターがいるなんて聞いてねぇぞ!!』
聞いてない……誰に何を聞いてない?
ハンターの情報が出回っているのか?
俺はハンターとして正式に登録していないからなぁ。
その謎の情報のせいで、この街に大量の吸血鬼が流れ込むとか超面倒くさいんだけど……。
他のハンターが派遣されてきてはくれないだろうか?
まあ、それなりに力のある強い吸血鬼は母の気配を感じてこの街の周辺には近づかないからいいんだけどな。
大きなあくびをして、家へ戻った。
最近世間を騒がせているニュース。
《吸血鬼殺人事件》
「どう思う?やっぱり吸血鬼の仕業だと思うか?」
『まぁ、十中八九そうだろうさ』
俺の横で黒猫は毛繕いをしながら、さも当然とばかりに答えた。
黒猫の姿をしているが、俺の母親だ。
『たまに原始の血の濃い奴がこうして現れてくるのさ、大人しくしてれば善し、自制の効かない奴を滅するのがお前の仕事だね』
「同族を殺す事になるのに良く平然と言えるな……」
『………人の味を1度覚えたヤツはもう止まらなくなるぞ?この先も被害者は増え続けるだろうさ。吸血鬼の存在が明るみになり、静かに迷惑をかけぬよう暮らしている奴等にまで被害が及んだらどうするのさ?お前だってどうなるかわからん、自分の為、家族の為だと思ってキビキビ働くんだよ』
「へいへい……息子使いの荒い母親で」
千鳥 佑人19歳。
吸血鬼の母親と人間の父を持つ、ダンピール。
吸血鬼と人間のハーフである。
吸血鬼の気配を追える能力と吸血鬼を消滅できる能力を持っているため、この現代社会でヴァンパイアハンター等という、非現実的な事をやっている。
しかし、現実に吸血鬼は存在している。
長い年月で社会に適応して生きている。
この母親もそうだ。今でこそ、猫の姿をしているが、元々は力の強い吸血鬼であったらしい。
俺の出産と引き換えに力を失い。
表向きは一度死んだことになっているが、猫の姿を取って力を蓄えているらしい。
力が戻ったら人の形を取り戻して、何も知らない父と再婚を、と意気込んでいる。
「被害者がアンデッドになる事は無いんだよな?」
『体がアンデッドに変化するにはそれなりに時間が掛かる。その前に火葬されるからねぇ、余程の事がなけりゃ大丈夫だろうよ』
母親に尻尾でてしてしと押され、窓から夜の街へと飛び出した。
ーーーーーー
「美しいお嬢さん、その血を私に分けてはいただけませんか?」
若いチャラ男が女性の首筋に顔を埋めた。
「やだぁ~ドラキュラ?でも片瀬君になら噛まれた~い」
女は顔を真っ赤にしながら嬉しそうにはしゃいでいる。
「ははっ!!じゃあ、今夜ベッドでどう?いろんなとこ噛んであげるよ~?」
夜の街。
人々がまだ多く行き交う路上で体を擦り寄せながら歩く一組の男女を遠巻きに見ている。
人も死んでいるというのに、呑気なもんだな……。
吸血鬼という生き物は往々にして美しい見目をしている。
ダンピールの俺も……と、言いたい……言いたかったが、父親の血を濃く継いだのか普通。
顔も成績も運動神経も超普通。ド平凡。
こうして、夜だけは身体能力は上がるが……。
夜上がったて意味ねぇっつーの!!
昼間学校で良いとこ見せてキャーキャー言われたい!!
あんなイチャイチャラブラブしたヤツらなんて勝手に朽ちろ!!
そうひがみつつ、路地裏の暗闇に消えていった二人の後を追った。
ーーーーーー
「こちらへおいで……その首を差し出すんだ……」
暗闇に光る赤い瞳。
その瞳に操られる様に、女はがくんと首を落とし喉元を男にさらけ出した。
ニヤリと笑い、大口を開けた男の口には二本の牙が生えていた。
その牙が女の首に刺さろうとしたとき、男の頬を風が掠め、皮膚を薄く切った。
「そこまでだ。人を殺めた吸血鬼は滅せられる運命なのは理解してるよな?……この街に入ってきた事を後悔しろ」
俺が銃口を向けると男は女を押しどけると背中を見せて走り出した。まだ噛まれる前、放っておけば催眠も解けて、前後の記憶は勝手に消えている。軽い結界だけ女性にかけて、一応安全だけ確保してやり、男の跡を追って駆け出した。
「はぁ…はぁ…クソっ!!この街にヴァンパイアハンターがいるなんて聞いてねぇぞ!!」
逃げながらごみ箱や自転車やらを倒して道を塞いでいくのを避ける為に壁を走り、男の前に降り立つ。
「空を飛ぶ力すら持たない三流が……いや…三流だからこそか?」
俺が引き金を引くと銃口から光の玉が発射されて、男の眉間を打ち抜いた。
「うああああぁぁっ!!!」
打ち抜かれた眉間から、徐々に灰になり最後は風に流されていった。
「手応えの無いヤツ……」
ハンドガンを脇下のホルスターにしまって、わずかな灰の中に残る赤い宝石の様な結晶を拾い上げた。
『この街にヴァンパイアハンターがいるなんて聞いてねぇぞ!!』
聞いてない……誰に何を聞いてない?
ハンターの情報が出回っているのか?
俺はハンターとして正式に登録していないからなぁ。
その謎の情報のせいで、この街に大量の吸血鬼が流れ込むとか超面倒くさいんだけど……。
他のハンターが派遣されてきてはくれないだろうか?
まあ、それなりに力のある強い吸血鬼は母の気配を感じてこの街の周辺には近づかないからいいんだけどな。
大きなあくびをして、家へ戻った。
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