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森へ
頭の中の想い人
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森の入り口まで来ると、ずっと前を向いて走っていたライさんが、急に振り返り俺を抱きしめて、勢いを殺せないままそのまま落ち葉の中を二人で転がった。
「ははは……」
俺を体の上に乗せて強く抱き寄せて……ライさんは笑い声を上げる。
「ライさん?」
ボレアス国のフュラ・ユイヴィールとの戦いでおかしくなってしまったんだろうか?
「あははははっ!!あんな攻撃的な防御魔法初めて見た!!御園君は意外に好戦的なんだね」
「あれは……本当に俺の力なのかもよくわからなくて……ただあんなの駄目だって……」
雑賀君に人を殺させるのも、ライさんが殺されるのも嫌だった。
「ふふふ……助けてくれてありがとう」
ライさんの唇が俺の唇にちょんっと触れた。
暫く落ち葉の上で無言で抱きしめ合った……静かな森の中で耳を寄せたライさんの胸から命の鼓動が聞こえてくる。
「ライさん……左腕……俺のせいですよね」
「俺が勝手にした事だから……それにもう治して貰ったしね」
「え?」
顔をあげてライさんの顔を見ると……先程の戦いで頬にあった傷が消えていて、傷付いていた腕や、身体中の傷が消えて服も元に戻っている。
「御園君がずっと治癒の魔法掛けてくれてるでしょ?自分では気付いてないのかな?」
「俺が?俺は、聖女の力を手に入れる事が出来たんでしょうか?」
自分の手を見つめてみても実感は無い……けれど……俺を抱き締めてくれていた手を緩められると、体が風船の様に空へ昇ろうと浮き上がる。
「わわっ!!手を離さないで下さい!!何処までも飛んで行っていまいそうで怖いんですから!!」
慌ててライさんの服を掴むと離れかけた体を再び抱き寄せられた。
「まだ魔力が安定してなくて、無意識に全開放出しちゃってるんだね。落ち着けば操作できるようになるよ」
落ち着かせる様に背中を撫でてくれる温かい手。
「失わなくてすんで良かった……」
首にしがみつき……唇を重ねた。
「んっ……はぁ……ふ……んん」
お互い無我夢中に唇を奪い合い、体を入れ替えられて、覆いかぶさるライさんの重みを感じる。
「御園君……本当に聖女になってくれた」
瞼に何度もキスをされる。俺の目……ライさんと同じ目の色になってるのかな?俺はちゃんと雑賀君にお別れを言えたんだ。
ぎゅっとライさんにしがみついた。
「俺……ボレアス国のフュラ・ユイヴィールと会って、本当に雑賀君なのか全然わからなくて……」
「記憶も感情も無く、戦闘向きに体も変化させられるって言ってたからね」
それでも本当に雑賀君ならわかるんじゃないかって思い上がってた。
「俺の記憶の中で、雑賀君はいつも笑っていて……笑顔じゃない時の雑賀君はこんなんだったかって思い出そうとした時、俺は笑顔の雑賀君しか知らなかった。恋に落ちたのは一瞬で、恋に浮かれてたのは数日だった。あとは自分の想像の雑賀君に恋してただけで、扉に追い詰められていた事さえ、好きだなんて言いながら俺は雑賀君のこと何も知らなかったって思い知らされました」
そして、雑賀君の笑顔を思い出していると……しだいにライさんが向けてくれる笑顔ばっかり浮かんで来て……なんて現金なんだろう。
「恋に必要なのは時間じゃないとは思うけどね。俺だって御園君に恋をしたのは一瞬だったよ?初めて見た時、花の妖精かと思ったんだ」
度々ライさんの口から告げられるけど……。
「なんなんですか……その、花の妖精って、ちょっと恥ずかしいんですけど……」
「ん~?何でかなあ?御園君の周りには常に花びらが舞って見えるんだよね」
どんな心霊現象だと、慌てて自分の周りを見るけど当然そんな花びらは何処にも見えない。
魔法が見えないみたいに、俺には見えていない何かに取り憑かれているのだろうか?
「ちょっと……ライさん……」
ライさんの服を引っ張り、ライさんを引き離そうと頑張ってみる。
「何?」
「何……じゃ無くて……何をしようとしてるんですか」
俺がライさんには見えるらしい花びらを必死に探しているうちに、いつの間にか前をはだけられていた。
外気の冷たさに体が震えた。
「せっかく御園君と想いが通じ合った事だし……早く前回の上塗りをしたいなって」
ライさんは悪びれなく、にっこり微笑むと俺の胸に唇を押し付けた。
「ちょっ!!待って下さい!!ここ外!!それに、いつ魔物が出るかわからないしボレアス国の人だってまだ近くにいるかも……」
「そう、いつ死ぬかわからない……死は孤独だ。後悔しても何も出来ない。だから生きているうちにたくさん御園君と触れ合っていたい……死後の孤独も君との思い出で満たされる様に……」
そうだ、フュラ・ユイヴィールと聖女は死の恐怖の記憶だけを持ってるって……いつもライさんが笑顔だから忘れがちだったけど、この人も常にその恐怖と戦っているんだった。
ライさんの体を静かに抱きしめると……2人の周りに光のドームが現れて白く色づき、外の景色が遮断された。
「これは、了承してくれたって事で良いのかな?」
「聞かないで下さい……」
自分の意思で出した訳じゃないけど、きっとそう言う事であっていると思う。
「御園君、顔真っ赤……」
「ライさん……貴方は……ん」
言いかけた言葉はライさんの唇に塞がれた。
「ははは……」
俺を体の上に乗せて強く抱き寄せて……ライさんは笑い声を上げる。
「ライさん?」
ボレアス国のフュラ・ユイヴィールとの戦いでおかしくなってしまったんだろうか?
「あははははっ!!あんな攻撃的な防御魔法初めて見た!!御園君は意外に好戦的なんだね」
「あれは……本当に俺の力なのかもよくわからなくて……ただあんなの駄目だって……」
雑賀君に人を殺させるのも、ライさんが殺されるのも嫌だった。
「ふふふ……助けてくれてありがとう」
ライさんの唇が俺の唇にちょんっと触れた。
暫く落ち葉の上で無言で抱きしめ合った……静かな森の中で耳を寄せたライさんの胸から命の鼓動が聞こえてくる。
「ライさん……左腕……俺のせいですよね」
「俺が勝手にした事だから……それにもう治して貰ったしね」
「え?」
顔をあげてライさんの顔を見ると……先程の戦いで頬にあった傷が消えていて、傷付いていた腕や、身体中の傷が消えて服も元に戻っている。
「御園君がずっと治癒の魔法掛けてくれてるでしょ?自分では気付いてないのかな?」
「俺が?俺は、聖女の力を手に入れる事が出来たんでしょうか?」
自分の手を見つめてみても実感は無い……けれど……俺を抱き締めてくれていた手を緩められると、体が風船の様に空へ昇ろうと浮き上がる。
「わわっ!!手を離さないで下さい!!何処までも飛んで行っていまいそうで怖いんですから!!」
慌ててライさんの服を掴むと離れかけた体を再び抱き寄せられた。
「まだ魔力が安定してなくて、無意識に全開放出しちゃってるんだね。落ち着けば操作できるようになるよ」
落ち着かせる様に背中を撫でてくれる温かい手。
「失わなくてすんで良かった……」
首にしがみつき……唇を重ねた。
「んっ……はぁ……ふ……んん」
お互い無我夢中に唇を奪い合い、体を入れ替えられて、覆いかぶさるライさんの重みを感じる。
「御園君……本当に聖女になってくれた」
瞼に何度もキスをされる。俺の目……ライさんと同じ目の色になってるのかな?俺はちゃんと雑賀君にお別れを言えたんだ。
ぎゅっとライさんにしがみついた。
「俺……ボレアス国のフュラ・ユイヴィールと会って、本当に雑賀君なのか全然わからなくて……」
「記憶も感情も無く、戦闘向きに体も変化させられるって言ってたからね」
それでも本当に雑賀君ならわかるんじゃないかって思い上がってた。
「俺の記憶の中で、雑賀君はいつも笑っていて……笑顔じゃない時の雑賀君はこんなんだったかって思い出そうとした時、俺は笑顔の雑賀君しか知らなかった。恋に落ちたのは一瞬で、恋に浮かれてたのは数日だった。あとは自分の想像の雑賀君に恋してただけで、扉に追い詰められていた事さえ、好きだなんて言いながら俺は雑賀君のこと何も知らなかったって思い知らされました」
そして、雑賀君の笑顔を思い出していると……しだいにライさんが向けてくれる笑顔ばっかり浮かんで来て……なんて現金なんだろう。
「恋に必要なのは時間じゃないとは思うけどね。俺だって御園君に恋をしたのは一瞬だったよ?初めて見た時、花の妖精かと思ったんだ」
度々ライさんの口から告げられるけど……。
「なんなんですか……その、花の妖精って、ちょっと恥ずかしいんですけど……」
「ん~?何でかなあ?御園君の周りには常に花びらが舞って見えるんだよね」
どんな心霊現象だと、慌てて自分の周りを見るけど当然そんな花びらは何処にも見えない。
魔法が見えないみたいに、俺には見えていない何かに取り憑かれているのだろうか?
「ちょっと……ライさん……」
ライさんの服を引っ張り、ライさんを引き離そうと頑張ってみる。
「何?」
「何……じゃ無くて……何をしようとしてるんですか」
俺がライさんには見えるらしい花びらを必死に探しているうちに、いつの間にか前をはだけられていた。
外気の冷たさに体が震えた。
「せっかく御園君と想いが通じ合った事だし……早く前回の上塗りをしたいなって」
ライさんは悪びれなく、にっこり微笑むと俺の胸に唇を押し付けた。
「ちょっ!!待って下さい!!ここ外!!それに、いつ魔物が出るかわからないしボレアス国の人だってまだ近くにいるかも……」
「そう、いつ死ぬかわからない……死は孤独だ。後悔しても何も出来ない。だから生きているうちにたくさん御園君と触れ合っていたい……死後の孤独も君との思い出で満たされる様に……」
そうだ、フュラ・ユイヴィールと聖女は死の恐怖の記憶だけを持ってるって……いつもライさんが笑顔だから忘れがちだったけど、この人も常にその恐怖と戦っているんだった。
ライさんの体を静かに抱きしめると……2人の周りに光のドームが現れて白く色づき、外の景色が遮断された。
「これは、了承してくれたって事で良いのかな?」
「聞かないで下さい……」
自分の意思で出した訳じゃないけど、きっとそう言う事であっていると思う。
「御園君、顔真っ赤……」
「ライさん……貴方は……ん」
言いかけた言葉はライさんの唇に塞がれた。
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