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聖女の役割

熱に頭を侵されて

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お風呂から上がり、自分の部屋に戻っても何となく落ち着かなくて物をあっちへこっちへ移動してみたりしている。
メソンの森に向けて旅に出る事に決定したとは言え……ピンとこない。
冒険なんてした事ないのは当然として……登山とかキャンプもした事が無いので何を準備して、どんな心構えでいればいいのかわからず無駄に部屋の中をウロウロしている。

動き易そうな洋服を探してみたけれど、全体的にフワフワしたドレスの様な物が多く、聖女はどうやって旅をしていたのだろうと不思議に思っていると……タンスの上に小瓶を見つけた。

モルテさん特製の良いお薬。
あの時転がって来たのを拾って着替える時、ここに置いたのをずっと忘れていた。

ライさんはろくなものじゃ無いだろうと言っていたけど、あんな人でも数十万人の中から選ばれた人で、誰よりも俺が聖女になってここを出て行く事を望んでいる人だ。

旅に出る前に……聖女に目覚める可能性があるならば試してみるべきではないだろうか。
ライさんは守ってくれると言うけれど、守られてばかりというのも悪いし聖女になったほうがライさんだってきっと助かるはず……。

透明な薬を一滴、手の甲に出してみた……刺激は無い。匂いも無い。
その一滴を舐めてみる……味も無い。舌先にも何も感じないし毒ではなさそう。
作った本人もいるんだし、何かおかしな事が起きても助けてくれるだろうと、小瓶の中身を全て飲み干した。

魔法のある世界。女体化したりするのかと思ったけど……特に体に変化は無い。
当然のごとく魔法を使える気もしない。

まあ、こんなもんだろう。

「……寝よ」
急にばからしくなり、いま不安でも明日になれば、なるようになるだろうと布団の中へ入り込んだ。


メソンの森……ボレアス国のフュラ・ユイヴィールと聖女と会える機会がくるかもしれない。
会ってどうするでもないけれど……会いたいな……雑賀君。

不安と僅かばかりの期待を胸に、そのまま眠りについた。

ーーーーーー

心配そうな顔をしたライさんが俺の額に手を乗せている。

「……ちょっと熱いかな……どうしたの?布団被らずに寝てた?」

ちゃんと布団に入ったし朝起きた時もちゃんと入ってた。
首を横に振るとライさんは「う~ん」と考え込んでしまった。

「ごめんなさい……旅の準備をするって言ったのに……」

「気にしないで?こんな時に居ないとか、モルテの奴リコニトルのくせに……」

そのリコニトルは俺が役立たずなせいで朝からお城に呼び出しを食らっているんだけど……。
クラクラする頭を持ち上げて体を起こそうとしたが、視界は大きく揺れ……ベッドから落ちかけた体をライさんに支えられた。

「無理はしない方がいい……道具を買いに行くのはやめて家の中にある物を探ってみるよ。何かあったらすぐにベルで教えてね」

「……動ける様になったら、ちゃんと手伝います」

朝起きてから体が火照ってた様に熱くて、重く、だるかった。
無理やり体を動かし、朝食を作り、モルテさんを見送って、さぁ街へ買い物に行こうと身支度を整える頃には立ち上がるのもしんどくて……見兼ねたライさんにベッドへ押し込まれた。

ライさんが部屋から出て行って、眠れば元気になるだろうと思っていたのに、目が冴えて眠れない。
頭はぼんやりしてるのに……心臓の鼓動も早い。
原因があるとするならば、疑うまでもなくモルテさんの薬だろう。
これが聖女に変わる為の体の変調ならいいんだけど……困った事が……。


布団に入っていたのでバレなかったと思うけど……下半身が大変な事になっている。ライさんの手が触れる度に、はち切れそうになる程、痛かった。

うぅ……出したい。
自分で落ち着けさせようと手を伸ばしかけて、ここでは汚れるから駄目だと止めた。トイレかお風呂。
ベッドサイドに置かれたシルバーの小さなベル。

さすがにこんな事の為にライさんを呼ぶ事は出来ない。
壁に凭れながらそっと部屋を出た。

トイレに行くには……ライさんのいる部屋の前を通り過ぎなければいけない。
姿を見られたら確実に寄って来られて、バレる。
トイレは諦めてお風呂へと移動した。
嬉しい事にこの世界のお風呂は魔法で浄化したお湯を循環させているので、いつでも入れる。

「……ん……」

浴室に入るなり、自分のモノに手を添える。
自分で触れただけでもゾクゾクと快感が背筋を走った。

『良いお薬』ってそういう薬か。
ライさんが止めてくれていたのに自分は本当に、馬鹿だなぁと自己嫌悪しながら虚しく自分のモノを慰めた。

「ふあ……ぁあ……」

この歳で……一人でやった事ないとは言わないが、味わった事が無いぐらい気持ちが良い。
普段一人でやる時に声なんか出したことないけど……自然と声が漏れて浴室の壁に反響した自分の声に嫌悪感を抱いた。唇を噛んで声を押し殺しながら数回上下させるとあっけなく射精を迎えた。

「はあ……しんどい……」

体の芯はまだ重く、お風呂に浸かって解そうかと桶でお湯をすくって体を流した。
……治まる気配がない。
出したばかりだというのにお湯をかけた刺激でまた勃ってしまい、お湯の温もりがますます頭へ血を昇らせる……本当にろくでもない薬だった。

出しても……出しても終わらない。
寧ろ出すごとに強く心に込み上げる物がある。
『相手』が欲しい。
誰かに触れたい。
誰かに触れられたい。
ライさんが頭に浮かんだけれど、すぐに頭を振って追い出した。

ライさんは優しいから俺が苦しんでいれば助けてくれるだろうけれど……最初にここに来てからそういう事は断られているし、薬は飲むなと止められていたのでこういう姿は見せ辛い……何とか自分で押さえなくては……。


「あ……はっ……はぁ……ああぁ……」

何度も何度も擦り上げて……そろそろ触れるのも痛いのに高まる射精感。

『御園君……御園君!!どこだ!!』

微かにライさんの声が聞こえる。
勝手に部屋を抜け出した事がバレたみたいだ。
その声はだんだん近づいてくる……こんなとこ見られたら……手を止めなきゃと思うのに、もうイク寸前で止められない。

「御園君っ!!大丈夫か!?」

「あああぁぁ……んんっ……!!」

ガラッと開けられた扉、ライさんの見ている前で白濁した液が床へと吐き出された。
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