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ずっとそばにいる
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あたしは左肩を見てみた。
「マシュー」
返事はなかった。
あれ、いない。右肩を見てみた。
「マシュー?」
叔母さんもふしぎそうにあたしのことを見つめる。あたしの周りを見はじめて、なにやら探してくれるよう。
「マシュー」
前も後ろも、右も左も、探してみた。白くて丸くてふわふわしていて温かいマシュー。あたしの近くにいるはずなのに、いない……?
「マシュー? どこ? あれ、どこ行っちゃったの?」
見回しても見つからない。
ついさっきまで、たしかにマシューに触れた感触があったのに。
「マシュー……マシュー?」
どこに行っちゃったんだろう。
──ゆいちゃん──
「あ、マシュー!」
どこからか声が聞こえた気がしたけれど、ふり返ってもだれもいなかった。
──ゆいちゃんは、もう大丈夫──
「マシュー?」
声だけが聞こえる。しかも、声が耳の中で聞こえて頭の中に届くような、変な聞こえ方で。いろんなところに顔を向けてもマシューは見えない。
──ぼくは、ゆいちゃんのそばにいる──
はっきりと言い切る、マシューの言葉。
──ずっとそばにいるから──
「マシュー……」
……そっか。
「マシューも、お父さんお母さんとおんなじなんだね」
マシューの返事はなかった。聞こえなかった。ただやわらかい風が吹いただけで。
でもね、マシューの言葉を信じたい。……信じてみたい。
「……見えなくなっちゃっただけなんだよね」
マシューも、あたしのそばにずっとずっと──いてくれる。お父さんとお母さんみたいに、ずっとそばにいてくれるんだ。
「そうだよね、マシュー」
すると、肌にふわりと触れるような、やさしくてあたたかいそよ風が、そっとあたしのことをヨシヨシとなででくれた。
完
「マシュー」
返事はなかった。
あれ、いない。右肩を見てみた。
「マシュー?」
叔母さんもふしぎそうにあたしのことを見つめる。あたしの周りを見はじめて、なにやら探してくれるよう。
「マシュー」
前も後ろも、右も左も、探してみた。白くて丸くてふわふわしていて温かいマシュー。あたしの近くにいるはずなのに、いない……?
「マシュー? どこ? あれ、どこ行っちゃったの?」
見回しても見つからない。
ついさっきまで、たしかにマシューに触れた感触があったのに。
「マシュー……マシュー?」
どこに行っちゃったんだろう。
──ゆいちゃん──
「あ、マシュー!」
どこからか声が聞こえた気がしたけれど、ふり返ってもだれもいなかった。
──ゆいちゃんは、もう大丈夫──
「マシュー?」
声だけが聞こえる。しかも、声が耳の中で聞こえて頭の中に届くような、変な聞こえ方で。いろんなところに顔を向けてもマシューは見えない。
──ぼくは、ゆいちゃんのそばにいる──
はっきりと言い切る、マシューの言葉。
──ずっとそばにいるから──
「マシュー……」
……そっか。
「マシューも、お父さんお母さんとおんなじなんだね」
マシューの返事はなかった。聞こえなかった。ただやわらかい風が吹いただけで。
でもね、マシューの言葉を信じたい。……信じてみたい。
「……見えなくなっちゃっただけなんだよね」
マシューも、あたしのそばにずっとずっと──いてくれる。お父さんとお母さんみたいに、ずっとそばにいてくれるんだ。
「そうだよね、マシュー」
すると、肌にふわりと触れるような、やさしくてあたたかいそよ風が、そっとあたしのことをヨシヨシとなででくれた。
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