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君に煽られる夜 3/3 ※

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【Side アレク】


「……自分で動いてみようか」

 私がそう声をかけると、彼女が一瞬、戸惑うような表情を見せた。

「……ほら。……ココ。ココを擦るように動けば気持ちいいだろう?」

 小さな子どもに教えるように優しく囁きながら、彼女の腰を持ち、中の敏感な部分に当たるようする。すると、彼女はすぐに喜悦の声を上げ、そして私が動きを止めれば、……ゆっくり、快感を追うように動き始めた。

「あ、んっ。……はっ、ぁあ、はぁ、……ん、んん……」

 かたく目を閉じ、切なげに眉を寄せて。私のペニスの感触をじっくり味わうように腰を動かすマリ。
 正直それは、達するには程遠いようなつたない動きといえたが、そのあまりにも淫らな姿は、私を酷く興奮させるもので。

「マリ、……気持ちいい?」

「んッ、うん、気持ち……いいっ」

 私が尋ねると、耳と頬を真っ赤に染めながらも素直に答えるその様は、とても可愛いものだった。

(ホント、可愛いな……)

 ただただそう思い、動きたい衝動を抑えながらも、あともうちょっとと彼女の痴態を愛でる。

 ――白い首筋にじわり浮き始めた汗。

「んぁ、っ。ね、アレク……も、むりぃ……ッ」

 それを舐め上げた刹那、彼女がそう声をあげた。

 求める快感の域には届かず、もどかしいのだろう。
 瞳に涙を溜め、懇願するような表情で私を見つめている。

(…………限界、だな)

 と、思った。

 マリも。私も。

「……頑張ったね」

 私はそう言うと、口を少し開けて舌をチラつかせて。それに応えるように、彼女が私の首に腕を回し舌を絡めてきたその次の瞬間。

 私はマリを抱き締め支えながら立ち上がり、そのままベッドへと移動して彼女を押し倒すと、……そのまま理性を手放した。


「んんっ! んあっ、や、あっあっあっ、ああっ! 待っ、んっ! んんっ!!」

 ホールドし本能のままに突き動かせば、その動きに合わせて彼女が鳴き、漏れ出た制止の言葉は唇ごと塞いだ。

「んんっ、ん、ん゛っ……ッ、んんんーーっっ!!!」

 もうすでにギリギリだったのであろう。
 抽送を開始してすぐに、くぐもった声をあげながら彼女が激しく痙攣し、達したのが分かった。

 それでも。

 その搾り取るように蠢く彼女のナカがあまりにも気持ち良すぎて、まるで狂ったかのように腰を打ち付ける動作は止められず、また、……止める気もなかった。

「ぷは、っ! あっ、ぁんっ?! や、アレク、まって! ああっ! あっあっあっっ! 私、まだイッ……ひっ、やぁぁ!」

 彼女を犯しながらも唇を離すと、彼女も声をあげて狂ったように泣きがる。

 その姿すら愛しいと思いながら、一際激しく突き入れて。

「っ! ぐっ、く……、……ーーーっっ!!!」

 その最奥に、私も欲をぶち撒けた。

「はっ、……ッ、、は、はぁっ、く、……は、っ」

 最奥の、更に奥へと送るように。このナカさえ私のモノであると、その証拠を塗り付けるように、吐き出したソレをペニスで塗り広げる。

「ふ、ぅ、ん……っ、はぁ、は……っ」

「……マリ、可愛すぎ。……溺れそう」

 腕の中で、頬を上気させ荒く息を吐く愛しい妻にそう囁き、頬にキスをする。

「は、ぁ、……んっ。……アレク、……もっと」

 すると返ってきたのは、この上なく可愛い妻からの、この上なく可愛いおねだり。

(……本当に、この人は……)

 ――どれだけ私をとりこにすれば気が済むのだろうか。

 そう内心で苦笑しながら。彼女の望むままに、優しく唇を喰み、優しく舐め、唇が開けば『彼女がされて気持ちいいコト』をしてあげる。

 熱くヌメる舌を舐め、絡めて、上顎を優しくくすぐれば、気持ち良さそうに甘い息を漏らされて。彼女にはそんなつもりはないのだと分かっていつつも、勝手に煽られる自分がいる。
 
(今出したばかりだというのに……)

 繋がったまま少しキスをしただけで、再び欲がその鎌首かまくびをもたげる気配がした。

(……酔っているのは私のほうか……?)

 飲み慣れた酒だったし、酔うほどは飲んでいない筈なのに。
 それに、普段の私はそれなりの地位にいて、その立場故に鍛練と共に感情のコントロールもしている筈なのに。

 彼女に関する事となると、私は途端に自身を制御できなくなるようで。

 不意にその事が恥ずかしくなり、たまれなくなって。唇を離して彼女の首筋に顔を埋めれば、彼女の甘い香りに混じった汗の香りが鼻腔を満たし、さらに欲を刺激されてしまった。

「……ん? ……アレク……?」

 ナカの変化に気付いたのだろう。
 彼女が少し戸惑いの混じる声で私の名前を呼んだ。

「…………君が悪い」

 本当は制御できない自分が悪いのだとは思いつつ、耳元でそう囁く。

 上体を起こして。片手で彼女の膝裏を持ち上げて。
 口角をゆっくり上げながら、私は彼女を見下ろした。

「え? ちょっと、……えっ?」

「……もっと。と言ったじゃないか」

「へ? あ、あれは、キスの事で……っ」

 そんな事分かっているが。
 彼女の中で完全に熱を取り戻したソレは、もうどうすることもできないのだ。

「そうなの? ……私はてっきり、もう一回とおねだりされたのだと思ったよ」

 ゆっくりと抽送を始めながら、そう言い放つ。

「え、ちが……や、ぁんっ」

「それに、いつも二回してるじゃないか。それとも、……私と何度もするのは嫌?」

「そ、んなっ、ぁ、こと、ない。けどっ」

「……じゃあ、……いいだろ」

「んあっ!! ……ッ、えっ?! アレク?!」

 一度ガツリと中を穿ち、一気に引き抜いて。
 持っていた脚を倒して彼女をうつ伏せにし、後ろから腰をすくい上げると、再び一気に突き入れた。

「あっ、あっ! ま、アレクっ! まって!」

「……無理。っ、本当に、はぁっ、狂いそうなんだ。は、……く、っ、あと少しぐらい、付き合って?」

「ひっ、んあぁっ!!」

 奥を突けば、マリが髪を振り乱す。

 紅い痕散るその背を跳ねさせ、私の執着を刻まれて。

 ――愛を確かめ合う筈のその行為は、いつしか、ただ、雄が本能で雌を求めるような行為へと変わって。

 私が彼女に溺れているように、彼女も私に溺れればいいと願いながら。私はひたすらに、本能で彼女を求め、本能で彼女を愛し、本能で彼女を犯した。

 そして、彼女が救いを求めるようにシーツを握りしめ、熱を逃すように背中をしならせた刹那のこと。

「ひっ、あっ! んっ、んんっ!! っ、や! あ、んっん゛ん、や、ぁーーー………っっ!!」

 一際高く彼女が鳴き、体を震えさせてナカを締めつつ熱く蠢かせれば、本能で彼女が私を求めているのだと感じて嬉しくなって。

「く、ッ……ーーーー!!」

 その幸福感は壮絶な快感となり私を呑み込んで、私は彼女に求められるまま、その最奥に再び吐精したのだった。



 *



(……ん)

 朝の気配を感じて目を開ければ、愛しい女性が横で眠っていて、静かに寝息をたてていた。

(……マリがいる)

 腕の中にすっぽり収まる、柔らかく甘い存在を確かめるため慎重に抱き寄せる。すると、どうしようもない多幸感が私を包んで、思わず更にキュッと抱き締め、その頭に頬をすり寄せた。

(……まだ起きないか。……珍しいな)

 マリは朝が早い。いつもは私より早く起きているか、私のほうが早く起きたとしてもすぐに彼女も目覚めてしまう。
 抱き締めて頬をすり寄せても起きないのは珍しい……、というか、初めてな気がする。と、そう思って、彼女のその珍しい姿を見るため顔を覗き込む。

(寝顔も可愛い……)

 普段の凛とした空気もなく、安心しきった顔で眠るマリ。その様子は、どことなくあどけなさを感じて可愛くて、堪らず頬を撫でれば彼女が瞼を震えさせた。

 大きなダークブラウンの瞳が私を映す。

「……おはよう。マリ」

「…………おはよぅ、アレク」

 私に寝顔を見られていたのが恥ずかしいのか、私の胸にグリグリと頭を寄せて小さく挨拶をする彼女がまた可愛くて、再びキュッと抱き締めた。

「……体、大丈夫?」

 昨夜は、あの後いつものように彼女を抱きかかて浴室へ行ったのだが、初夜の時並みに彼女がフラフラしていて無理をさせてしまったと少し反省したのだった。

「……すこし腰が重いし喉もヒリヒリするけど、大丈夫」

 すこし眉をよせ、怒った表情で言われてしまった。

 慌てて彼女の上体を起こし、ベッドサイドに置かれた水差しからグラスに水を注いで彼女に渡す。

「すまないっ。……久しぶりに君とずっといられたのが嬉しくて、……がっついてしまった」

「…………」

「本当に悪かった。反省してる」

 続けて慌てて謝るも、彼女は無言のまま水を飲むばかりで。
 本気で怒らせてしまったと思えば心がザワめき、どう謝れば許してもらえるだろうかと考えれば目が泳いだ。

「……ふ、ふふっ」

 そのまま目線を合わせられずにいると、不意に彼女が笑ったので。思わず顔を見れば、眉をハの字にさせて少しすまなそうな顔をした彼女が見えた。

「ふふふ。ごめんなさい、悪戯いたずらが過ぎたわ。……いいのよ。……気にしないでいいの」

「マリ、だが……」

「ねぇ、アレク。……私だって次元を越えてしまうほど貴方を愛しているのよ? そんな貴方からあんな風に求められて、……嬉しくない訳ないじゃない」

「……本当に?」

「本当に。……好きよ、アレク。求めてくれて嬉しいわ」

 そう言ってふわりと微笑む彼女があまりにも美しくて、そのままキスをすれば、愛しさが溢れてどうにかなりそうになった。

「…………したい」

 思わずその気持ちが声となって零れ出る。

「……え?」

 ポカンとした表情の彼女の手からグラスを取り、残りの水を飲み干す。それをベッドサイドに置いてから、私は再び彼女を見た。

「マリ、……君が欲しい」

「ア、レク? まさか。待って、今は朝よ?」

「今日まで休みだし、大丈夫。それに、……君が煽るのがいけない」

「え、本気で?!」

 そう言って慌てる彼女を組み敷いて、生理現象では片付けられないほど張り詰めたズボンをソコに押し当てる。

「っ!!?」

「……ね? 本気だろう?」

 そう言った後は、制止の言葉が発せられる前に唇を塞ぎ、私はまたもや本能のままにマリを求めたのだった。
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