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【一夜】骨董品
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占い師を生業とする私は、普段は出張や露店、クチコミによって仕事を得ているのですが、常連客を増やしたいと思い、地元で最も大きなフリーマーケットに出店することにしました。
占いのジャンルは、ベタではありますが、よくあるタロットカード。
しかし私の場合は、それに加えて幼い頃から持っていた霊視能力も合わせて行っていました。
場合によっては口寄せや除霊なんかも行うことがあり、表向きは占いではあれど、常連さんにはどちらかと言うと霊媒師や霊能力者のように思われていたと思います。
私としては、幼い頃から疎ましくすら思っていた能力が役に立って嬉しかったので、今では感謝こそしています。
初めて参加したフリーマーケットではありますが、占いブースの数は少なかったですね。
地元では大きくて有名なので、やはり盛大に盛り上がっていました。
その日は、まあまあお客さんが来てくれた方だと思います。
しかし、終盤になって1人変わったお客さんがいたのです。
歳は50代くらいでしょうか、優しそうなほっそりとした、特別目立った風も無い普通の男性でした。
男性は昼過ぎ頃から、私のブースをチラチラと見ながら行ったり来たりしていたので、何か気になることがあるのだな、くらいで私は思っていたのです。
すると終盤頃になって、意を決したのかようやく男性の足が止まりました。
「あのう……占いと言うより、相談……でも、よろしいでしょうか?」
私はカードを脇に置くと、どうぞと椅子に誘導しました。
男性は古びた新聞紙に包まれた15cm程度の長方形の物を取り出すと、私の前でその中身を見せてきました。
「これなんです」
それは竹製の、とても古びたアンティーク調の、1つの箱でした。
「これをみていただけませんか?」
明らかに霊視の事を言っていると思った私ですが、言われる前にこの箱の異様な感覚をどう応えようか少し悩んでいたのでした。
「はっきり教えて貰えますか」
私は少しオブラートに包むように、真実を伝えることにしました。
「あまり、良いようには思えませんね。出来ればお祓いなどされた方がよいかと」
すると男性は、少し寂しそうに微笑みながら
「ありがとうございます。実はね、先程すごく気に入って買ったんですよ。でも、捨てる決心がつきました」
私は少し不思議に思い
「何も捨てなくても? 気に入ったのであれば、お祓いするなどしてはどうでしょう?」
と提案してみたのです。
この後、男性はもう少し宜しいですかと事の始まりをお話してくれたのです。
「わたしね、もう両親に亡くなられまして、幼い頃からの家で一人暮らしなんです。結婚したいんですが、独身なんですよ。お見合いしても、相談所などでも上手くいかなくて。それが、ある日恐ろしいことがあったんです。わたしの趣味は骨董品を集めることで……高いものではなく、安くて気に入ったものなんですけど。今は亡くなった父の部屋に、色々な物を保管してるんですよ。その部屋から突然、夜になると物音がするようになったんです。誰もいるはずないのに……それで、なんの音が突き止めようと、ある晩音がする中、その部屋の中に入ったんですよ。何もありませんでした。急に怖くなって部屋から出ようとした耳元で男の怨みに満ちたような低くて嫌な声がしたんです。『 お前を絶対に幸せにしない』って」
聞きながら、私はゾッとしました。その瞬間、私の中の霊感の何かがリンクしたのでしょう。
「その物音が始まる前、骨董品を何か買いませんでしたか?」
私の質問に男性は
「そういえば、古い刃の※取られた刀を買った覚えがあります」
「日本刀のようなもの?」
「そうです、以来。あまり良くないものに惹かれるようになってしまって……益々怪現象といいますか……物音が酷くなるようになって、それに比例するように人との付き合いも上手くいかなくなったような気がします。どうするべきでしょうか?」
お祓い、では手遅れな気がしました。
ですので私は
「手放すことは難しいのでしょうか? 出来れば全て手放すことがいいでしょうね」
と告げたのですが、男性は怒るわけでもなく、わかっているのでしょうか、諦めたような表情で
「やっぱりそうですよね。けど、まだ決心がねえ……」
と言いながら、私の元を去っていきました。
あの男性があれからどうされたのかはわかりませんが、古いものというのは、一歩間違えたら怖いものだなと思った出来事でした。
※銃刀法違反を避けるため
占いのジャンルは、ベタではありますが、よくあるタロットカード。
しかし私の場合は、それに加えて幼い頃から持っていた霊視能力も合わせて行っていました。
場合によっては口寄せや除霊なんかも行うことがあり、表向きは占いではあれど、常連さんにはどちらかと言うと霊媒師や霊能力者のように思われていたと思います。
私としては、幼い頃から疎ましくすら思っていた能力が役に立って嬉しかったので、今では感謝こそしています。
初めて参加したフリーマーケットではありますが、占いブースの数は少なかったですね。
地元では大きくて有名なので、やはり盛大に盛り上がっていました。
その日は、まあまあお客さんが来てくれた方だと思います。
しかし、終盤になって1人変わったお客さんがいたのです。
歳は50代くらいでしょうか、優しそうなほっそりとした、特別目立った風も無い普通の男性でした。
男性は昼過ぎ頃から、私のブースをチラチラと見ながら行ったり来たりしていたので、何か気になることがあるのだな、くらいで私は思っていたのです。
すると終盤頃になって、意を決したのかようやく男性の足が止まりました。
「あのう……占いと言うより、相談……でも、よろしいでしょうか?」
私はカードを脇に置くと、どうぞと椅子に誘導しました。
男性は古びた新聞紙に包まれた15cm程度の長方形の物を取り出すと、私の前でその中身を見せてきました。
「これなんです」
それは竹製の、とても古びたアンティーク調の、1つの箱でした。
「これをみていただけませんか?」
明らかに霊視の事を言っていると思った私ですが、言われる前にこの箱の異様な感覚をどう応えようか少し悩んでいたのでした。
「はっきり教えて貰えますか」
私は少しオブラートに包むように、真実を伝えることにしました。
「あまり、良いようには思えませんね。出来ればお祓いなどされた方がよいかと」
すると男性は、少し寂しそうに微笑みながら
「ありがとうございます。実はね、先程すごく気に入って買ったんですよ。でも、捨てる決心がつきました」
私は少し不思議に思い
「何も捨てなくても? 気に入ったのであれば、お祓いするなどしてはどうでしょう?」
と提案してみたのです。
この後、男性はもう少し宜しいですかと事の始まりをお話してくれたのです。
「わたしね、もう両親に亡くなられまして、幼い頃からの家で一人暮らしなんです。結婚したいんですが、独身なんですよ。お見合いしても、相談所などでも上手くいかなくて。それが、ある日恐ろしいことがあったんです。わたしの趣味は骨董品を集めることで……高いものではなく、安くて気に入ったものなんですけど。今は亡くなった父の部屋に、色々な物を保管してるんですよ。その部屋から突然、夜になると物音がするようになったんです。誰もいるはずないのに……それで、なんの音が突き止めようと、ある晩音がする中、その部屋の中に入ったんですよ。何もありませんでした。急に怖くなって部屋から出ようとした耳元で男の怨みに満ちたような低くて嫌な声がしたんです。『 お前を絶対に幸せにしない』って」
聞きながら、私はゾッとしました。その瞬間、私の中の霊感の何かがリンクしたのでしょう。
「その物音が始まる前、骨董品を何か買いませんでしたか?」
私の質問に男性は
「そういえば、古い刃の※取られた刀を買った覚えがあります」
「日本刀のようなもの?」
「そうです、以来。あまり良くないものに惹かれるようになってしまって……益々怪現象といいますか……物音が酷くなるようになって、それに比例するように人との付き合いも上手くいかなくなったような気がします。どうするべきでしょうか?」
お祓い、では手遅れな気がしました。
ですので私は
「手放すことは難しいのでしょうか? 出来れば全て手放すことがいいでしょうね」
と告げたのですが、男性は怒るわけでもなく、わかっているのでしょうか、諦めたような表情で
「やっぱりそうですよね。けど、まだ決心がねえ……」
と言いながら、私の元を去っていきました。
あの男性があれからどうされたのかはわかりませんが、古いものというのは、一歩間違えたら怖いものだなと思った出来事でした。
※銃刀法違反を避けるため
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