マダムのお気に召すままに

ENZYU

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マダムのお気に召すままに

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「よいかクェーサー、わらわがガスを撒いたら攻撃するぞよ」
「分かりました」

 電脳世界に入ったサヨリヒメは、クェーサーと共にオンラインゲームに興じていた。
 3人一組になって戦うバトルロイヤルゲームだ。サヨリヒメが放ったガスにより敵の動きが遅くなる。その隙にクェーサーが突撃し、敵を一掃した。
 漁夫られないよう、クェーサーのキャラでシールドを張って警戒しつつ安全圏へ。激しいバトロワをクェーサーの活躍により順調に生き残っていた。

「凄いのぉクェーサー! キル率高すぎ君じゃ!」
「これでよいのですか」
「良き良き! おっと次の敵が来たぞ、撃つのじゃあ!」

 他のプレイヤーと違い、2人はVRで遊んでいるようなものだ。臨場感は相当なものである。ちなみに姿はゲーム内のスキンになっていた。
 しかしクェーサーは随分と当てている、初心者だと言うのに異常なキル率だ。

『おっと来たよあんた! さっきのやり合いで削れてるけどイケる!? 私が先行くからカバーよろしく!』

 聞き覚えのある声のVCと繋がった、白瀬の声だ。
 どうやら夫と共に遊んでいるようだ、ネットの世界は狭い物である。

「身内同士のぶつかり合いとは奇遇じゃのぉ、返り討ちに……なんでVCが聞こえるんじゃ?」
「ハッキングしました。相手の声が聞こえれば戦略も取りやすいので」

 クェーサーの意味深な発言の後、まるで見えているかのような速度で白瀬達を発見し、百発百中のエイムで撃ちぬいた。
 なんか嫌な予感がするサヨリヒメであった。

「のぅクェーサー……おぬし、オートエイムって知っとるか?」
「ウォールハックと共に搭載しました」
『こいつら……チーターじゃんか!? おい通報だ通報! 動画取ってる? 運営に知らせろぉ!』
「切断じゃ! 逃げるぞクェーサー!」
「なぜですか」
「チートは違反行為なのじゃあ!」

 AIだから正々堂々なんて言葉を知らないようだ。きちんとチートはダメだと教えてから、サヨリヒメはホラーゲームの世界へ連れて行った。
 そこでは、包丁を振り回す殺人鬼に追いかけまわされる羽目になっていた。

「ぬおお!? こやつ手鏡かぁ!? ネコか恵みを付けとくべきじゃった!」
「私達の位置を把握しています。ウォールハックは違反です、通報しましょう」
「これアドオンの効果じゃから、ちゃんとルールにのっとった効果じゃから。ひょええ先回りされた!?」

 サヨリヒメが切り付けられそうになった時、クェーサーが身代わりになった。
 クェーサーは常にサヨリヒメを守るように立ち回り、結果2人は無事に試合に勝利していた。

「ふぃ~……あのアドオンはジャンルが変わるのぉ。しかしクェーサー、あんなにわらわを守らんでもよかったのじゃぞ?」
「サヨリヒメが傷つくのを、見たくなかったのです。ゲームの世界であろうと、私が貴女を守ります」
「むむ……は、恥ずかしい事を言うのぉ……」

「なぜ恥ずかしがるのですか」
「う、うららかな乙女心と言うやつじゃ。なんだってこんな男らしゅう育ちおったのじゃ……不覚にも恰好いいと思ってしもうたわ……」
「それより、先ほどの対戦相手。また白瀬でしたね」
「ぬお? 確かにIDが同じじゃの」

『gg♡ matayarouze!』

 今度は白瀬から称えられた。クェーサーは喜びを感じ、手を握りしめた。

「チート無しで勝つと、気持ちがいいですね」
「分かってくれたか。殺伐としたゲームが続いたの、ちょいと骨休めするぞ」

 サヨリヒメが連れて来たのは、アメリカが舞台のゲームだ。
 タンデムバイクに乗って、湾岸沿いを思いっきり走っている。クェーサーの背にしがみつき、サヨリヒメはバイクデートを楽しんでいた。
 クェーサーはヒロイックな外見をしているから、まるで特撮のヒロインにでもなったかのようだ。サヨリヒメは、運転するクェーサーに額を押し付けた。
 バイクデートは、サヨリヒメの憧れていたシチュエーションだ。思わぬ形で夢が叶い、サヨリヒメは幸せそうな顔をした。

「のう、クェーサー」
「なんでしょうか」
「名を呼んだだけじゃ」

 胸をどきどきさせながら、サヨリヒメはクェーサーを抱きしめた。
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