獣(創作BL)

ENZYU

文字の大きさ
上 下
5 / 9

xxx.覚醒

しおりを挟む

制圧される立ち位置にいて尚、制圧を拒んだエリアとのやむを得ない抗争が起こった。
その抗争の末にようやく相手のエリアのトップ側は頭を下げて、エリア49に服従することを決める。
スタルギアはいつも血を見ると心の内側に湧き上がる薄暗い欲望に苛まれると同時に、困惑していた。
少しの怪我ならなんとも思わないが、流れ落ちていく血を見ると破壊を求める気持ち、その者の生き血を、肉を貪りつくしたくなる欲望が湧く。
流されたらすっきりするのだろう。
けれどスタルギアは基本的には他人の血を飲むことも、肉を喰らうことなどもごめんだった。
同僚の瞬夜についてはそういうことを行っている噂を耳にするが。
少なくとも自分はそんなものとは無縁だ。
考えてみるだけでも鳥肌が立ち気分を悪くしそうになり、すぐ様気持ちを切り替えようと書類の最終確認に移り始める。

「失礼します、スタルギアです」

丁寧なノック音の後に続く挨拶。
特に紹介はなくとも相手が誰であるかは扉の向こうの主、ジンにとってはわかるのだが、スタルギアは毎回丁寧に挨拶をした。

「入れ」

ジンの許可の声と共に開く扉。まとめ終えた書類を提出する為に、ジンへと向かい合うスタルギア。

「頼まれていたものを整理し終えたので、お持ちいたしました」
「ああ、ご苦労だったな」
「いえ」

そういいながらも疲労の色が残る表情を隠せないでいるスタルギアの表情は、だからといって無理やり疲れを隠そうという作り物ではなかった。
ジンの言葉一つで充実感を得て、満足しているような自然な表情だった。

「突然だが、今週の休日にここを開ける予定ができた」
「はい、承知しました。主がいない間もここをお守りします」

自分の責務を全うしようと決意するスタルギアの表情。だがそれはすぐに崩されることとなる。

「そこへは、お前も一緒に向かうこととなる」
「…っ!勝手に早とちりをしてしまい申し訳御座いません」

本当に申し訳なさそうに気を落として肩を落とすスタルギア。そんな様子を見てジンは笑みながら頬杖をつき問う。

「何か不都合だったか?」
「いえ、そんなことはありません。お供して少しでも役に立てるよう頑張ります」
「行き先は温泉だ。一泊二日程くらいじっくりと休養の時間をとろうと思ってな」
「温泉、ですか」

やはり何かしら堅苦しい物事を考えていたのだろう。拍子抜けしている様が丸わかりだった。

「そうだ」
「わかりました、ではこちらの方でも準備を進めておきます」

今度は少々気が落ち着かないような様子で、丁寧に頭を下げて失礼しますと最後に言葉を残した後に扉の方へと踵を返していく。
そんなスタルギアの後ろ姿を見送った後、ジンは唇の端を引き上げながら瞳を閉じた。





当日、車内でジンと向き合う形になり座っているスタルギアは、そわそわと落ち着かない様子ながらなんとか冷静さを保とうとしていた。
ジンは腕を組んでその様子を楽しそうに見つめる。
これでは気が休まるどころではないだろうに。

「スタルギア」
「はい」
「今度、お前が身分を偽り、とある老人に引き取られる孤独な青年を演じた上で、潜入捜査を頼みたいと思っている」
「はい、なんなりと」
「その為に今日と明日で心を整理して、再び気持ちを切り替えろ」
「わかりました」

深呼吸をするスタルギア。そこまで緊張することもないだろうに。
窓の外を眺めるスタルギアを、微かに笑みながら見つめる姿。
やがて目的地へと到着する。あたりはとっくに漆黒の夜へと姿を変えていた。
車を降りて、石畳の道を歩いていくと、門が見えてきて、その中へと足を踏み入れる。
立派な旅館の外観を眺め足が止まりそうになるが、きちんとジンの後に続いて扉を潜っていく。
車の運転手は、車を再び運転し始め二人が帰る頃に迎えにくるそうだ。

「お待ちしておりました」

女将が頭を下げて、ジンとスタルギアを迎え入れていく。
予約していたのであろう部屋へと案内されて向かっていく。
やがて女将もいなくなった後に部屋にはジンとスタルギアの二人きりだけになった。
窓の外を見てみると、大きな桜の木がそこによく映えていた。
空に映る月と、風に舞い散る桜の花びら。

「食事からにするか、それとも温泉か」

魅入りそうになったその時、後ろから声が聞こえ主を無視して一人だけ景色に魅入り耽ってしまうところだったことを恥じ入る。

「は、食事からがよろしいかと…」

返事をしてジンの元へ向かうスタルギアへと、浴衣が渡された。
自分が失態を犯していた間にジンは既に着替え終えていたらしい。羞恥心に顔が熱くなっていくのがわかった。
有難う御座います、と小さくお礼を言いながら浴衣を受け取る。
着替えようとしたところでずっと注がれている視線が気になってしまい、微かに視線を上へ向ける。
どうしたものかと一瞬の内に様々な逡巡をしたが、スタルギアはそのまま勢いに任せて着替えていくことを決意した。
帽子一つ外して、視界が広がるだけでも、緊張が増した。
そのままジャケットを脱いで、ネクタイを緩めていくと、露になる肌の上をまるで視線だけで犯されていくような錯覚を感じた。
何を考えているんだとスタルギアは己を叱責して、それ以降は何も考えぬように努めながら着替えを進めた。






食事の用意された場に、正座になって座りトレーに入れられ用意された、一人ワンセット分の食事へと向き合う。
正面を向くと、浴衣姿のジンの姿が映る。
浴衣を着ていても尚逞しい体躯、普段はシャツに隠されているが
今は鎖骨や首元が開かれているのがまた普段とは違う色気を放っている。
魅入り始めている場合ではない。
ジンよりも近い目の前の食事へとスタルギアは向かい合う。
手を合わせて小さく頂きますというと、箸をとって旬の食材の使われた食べ物を掴みに行く。
そういえば、とスタルギアはジンの食事の様子をあまり見たことがないことを意識して、料理から再びジンへと視線を向けた。
箸の先に掴まれた魚が口元へと運ばれていくのを見届けた。
口元が開かれて、上品な様で魚を食べていく様。その後に白いご飯を口へと運び一緒に咀嚼していく。
一連の流れの色気にすっかり視線を奪われてスタルギアは固まってしまう。
が、指摘される前に少しずつ、客観的に見た今の自分がどういう様でジンに魅入ってしまっているかを意識して恥じ入る。
背筋を正して食事へと意識を戻して霧散させようとした。




脱衣室に行く前、あえて着替える時間をずらす為にお手洗いにでもいこうか、嘘をつかずそのまま一緒に行くことにするか迷った。
結果的に共に脱衣所に入って着替えをすることに決めた。
視線を、意識を奪われ続けてはいけない。思わぬ失態を犯してしまうかもしれない。
スタルギアはさっさと浴衣を脱ぎ、腰にタオルを巻いて風呂場へと入っていった。
内風呂もいいが、せっかくの温泉なのだ。
露天風呂の方へと向かおうと決意して、静かな夜の空が映える景色を眺めながら足先から風呂へと浸かって行く。
肩まで浸かると熱い湯が身体の芯まで染み渡るような感覚を覚える。一息ついて景色に耽ると、先ほども見た桜の光景を此度でも拝めることができた。
月が夜を照らし、桜は淡く繊細な花で魅了する。向こう側の山や街々の光景も美しかった。
微かにきらめく星が黒い空のところどころに散っている。
後ろからちゃぷんと湯に入ってくる音と気配を感じ、スタルギアはつられるように後ろを振り向いた。

「いい眺めだな」
「…はい」

くぐもった弱弱しい声で返事をしてしまったことに恥じる。
そしてジンの身体に目がいきそうになりつつも、なんとか反らしながら再び前を向いた。
もとからもう少し離れた場所に浸かっていたほうがよかったかと思った。
同時にそろそろ上がって身体でも洗い始めようかという思いもあり
距離が離れた場所へ行くことを決めすぐに出られるような場所を選んだ。

「何故そんなに離れる必要がある」

くすっと笑いながら低い美声がスタルギアに問いかけてくる。

「寄れ」

丁度スタルギアの平行線の向こう側にジンがいた。
短い言葉にどくんと心臓が跳ねるのを感じながら、小さく息を飲み少しずつ距離を詰めていく。
すぐ傍に寄り添いすぎるのも図々しいのではないのだろうかと思いつつも、とりあえず横にまで寄り動きを止めた。
鎖骨を伝う水滴が色っぽく、胸筋、上腕二頭筋へと視線が映り、こんな上の立場の方ですら身体に傷があるのだと魅入る。
そして過去が気になってしまう。
視線が下がり、透き通る湯面の下へと流れてはっと我に返った。
すべて自分が勝手に意識しているせいだと思い、心を落ち着かせるよう努めて深呼吸をする。
が、うなじ付近の一部だけ長い髪の部分に揺れ動く違和感を感じ肩が跳ねてしまった。
視線だけ移すと、どうやらジンの左手が髪の毛を梳いていったらしい。
サイドの髪が弄ばれ始めたことで、水滴がスタルギアの頬に伝う。
耳元を辿っていく手が、頬へと移り顎へと伝うように撫でていく。困惑しながらも意図を探るようにジンの赤い瞳を見つめ返した。
以前、スタルギアは自分の瞳について、ジンに猫の目のようだと言われたことを思い出した。
透き通る金色の瞳から、その時の様子によって、くるくると目まぐるしくかわるスタルギアの心情がばれてしまっている。
わかりやすい性格だとは別の人物からも、また別の人物からも言われていたことだ。
どちらもジンの秘書を務め、ナンバー2として敬われ、特殊部隊を指揮し、管理したりしていた人物だ。
肩を伝っていく指先にもう身体は火照ってしまい指先一つに意識が集中させられて、熱い吐息を零してしまう。
せめて声を出すまいと微かに震えながら耐えて、意図は読めないが期待してはいけないと己を自制し逆上せる前に湯船から上がろうとした。

「あの、逆上せてしまいますので…」
「そうだな」

スタルギアから手を離し、スタルギアはほっとしつつも物足りなさを感じてしまいながらも反応しかけた雄をどうにか誤魔化しながらも、立ち上がって湯船から上がる。
するとジンもそれに続いて上がる。中に入りシャワーへと手をかけようとしたところで背後の影に覆われて、壁に追い詰められる。

「…っ」

後ろを向いていたため、隙だらけの背中へと指先が触れられる。
撫でていく場所は丁度スタルギアが人生の中で一番大きな傷を負った場所だった。
まだ数年前の新しい傷痕を指先がなぞっていく。

「お前はまだ士官学校を出たばかりだったな」
「はい…っ」

少しでも声を出すと、上ずったものになりそうでなんとか抑えた声で手短に答える。
触れられた場所から快楽の波が広がっていく。視線を下に向けると先ほどよりも雄が反応してしまっている。

「士官学校に通う姿はよく目にしていた。その強い眼差しを気に入ったのと同時に、そのくらいの歳の頃に傭兵をしていたことを思い出して懐かしく思った」

甘さに打ち震えながらも、もっと若い歳から経験を積んでいったジンの姿を安易に想像した。
早くの内から危険な場所に駆り出され活躍していたジンの姿を想像した。
後ろから伸びてきた手が今度は乳輪の中心のある突起をなでて、摘んだ。
ジンは鏡越しに丸見えになった欲に溶け切った瞳も、タオルの上から主張するスタルギアの雄も把握した上で更に快楽を煽る。

「…ぁ…んぅ……っ」

もう堪えることの叶わない甘い声が漏れ出す。
すすり泣く様な声に恥じる間もなく、しゃがみこんだジンがスタルギアの腰を抱き寄せた上で乳首へと口元を寄せて、吸い付く。

「んっ……あぁ…駄目」

ジンの肌にタオル越しとはいえ雄の部分が密着して擦れた。
吸い付いた後、甘く噛み付く様からあふれ出す品のある野生的な魅力に更に腰へと快楽が溜まっていく。
けれど現状を受け容れて流されていいのだろうかと困惑する部分もあった。
何故こうなったのか考えようとするが、舌先が敏感な乳首の先端を舐め上げていき思考が霧散する。
震える身体を支える為に、ジンの肩に手をつくことしかできなかった。
乳首の周りを円を描くように舌先でなぞり、再び舌先で先端を舐めて弄んだ後、強く吸い上げる。
頭の芯が煮えきり、押し付けてしまった腰を後ろへと引こうとするが、腰を抑えるジンの手がそれを許さない。
その上臀部を手で包み込まれて揉まれると射精感が募った。
肩に乗せた手に力を込めて、どうにか逃れないとと焦燥感が募るが、歯先に噛まれて笑まれると糸が切れてしまったかのように耐え切れなくなった。
見開いた瞳から生理的な涙が零れた後に瞳が潤み、思い切り閉ざされ顔を左右に振りながら射精の反動で身体が震える。

「…ぅ、…ぁぁぁああっ……はっ…」

一番震えた腰はしっかりと手で支えこまれ、乳首を吸い上げられながら絶頂の快楽に溺れた。
ぼやける視界の中途切れ途切れに喘ぎ、熱い吐息を零すスタルギアを見つつジンの唇が撓りあがる。

「休息よりも、こちらを求めて落ち着かない様子だったからな。続きが欲しいなら…寝室でだ」
「……っ………」

何もいえなくなってしまい黙り込む。
そして密着した体、触れてくる指先や手の平を意識し、少し乳首を執拗に攻められただけで達してしまった己を恥じた。
思えばずっと意識し続けて、もう随分前から求めていた存在が近距離に近づき、触れただけでスタルギアには刺激が強すぎた。
今まで想像してはそんなことはありえないと否定していたことが、今こうして現実になっている。
ジンの言葉をゆるゆると逡巡すると、続きという言葉の意味合いを悟り、更にスタルギアの顔に熱が集まった。
ジンはスタルギアから身体を離して身体を洗う為に次の行動に移っている。
煩く跳ねる心臓の鼓動はジンの耳にはどう聞こえたのだろうか。

――――――――――――――――――――――――――――――――

湯船から上がり、浴衣を着てスタルギアは旅館の者の手により既に敷かれている布団を眺めた。
正座しながらも、後ろから聞こえてくる足音に耳を傾けて鼓動を高鳴らせてしまった。
期待しているのか、回避しなければと焦燥感に駆られているのか、もはやスタルギアにはわからなかった。
だが、背後から現れ耳元で囁かれるなりなんなり手を出される予想に反して、ジンはスタルギアの横を通っていくと布団の上へと座り込みそのまま横たわろうとしていた。

「…!?」

瞬時にスタルギアは信じられないものを見たような顔をした。
声をかけようかかけまいか迷った。けれど言葉にして直接ジンに強請ってもいいのだろうか。
無言で求めてしまい、ジンに見透かされても確かに結果は同じことではあるが。
どうしたものかと混乱しかけると、本当にジンは横たわり布団をかけてしまった。
向こう側を向いているから、スタルギアにはまだ目を閉じているかどうかはわからないが瞬時に決断は固まった。

「あ、の…続きは」

擦れた小声になってしまったが、他に何の音もない部屋では聞き取れる程度の声だった。
姿勢を正して、ジンの背中に真っ直ぐと視線を送ると、喉奥で笑い、肩を揺らしたジンが振り返る。
髪の毛が敷布団へと流れて、赤い瞳が真っ直ぐとスタルギアへと向けられた。
その瞬間余計なものは霧散してしまったかのように、スタルギアの中で欲望が急激に募った。

「話があるならもっとこちらへ来い」

向き合うために、ジンが起き上がりスタルギアを見つめ続ける。
雄々しい威圧感と狂気を深い深淵のような赤い瞳に映し、そして余裕に溢れた色気を放っていた。
艶やかに笑むその獣に誘い込まれるがままに、スタルギアは距離を縮めてジンを見つめ続ける。
さて、ここからどうしたものかと生唾を飲み込むながらじっと黙って見続けてしまう。
逡巡しながらも、ゆっくりと顔を近づけていくスタルギアの表情は、色っぽく情の筒抜けた瞳をしていた。
スタルギアが怯む間もなく、ジンの手が伸びて近づいてきた後頭部を押さえ、噛み付くように唇を重ね合わせ、舌を絡ませて貪りつく。

「…んっ……ぅ」

それに必死に答えるようにスタルギアの舌が伸びる。
けれど、すぐに舌を吸い上げられて、上顎を擦り上げられると、スタルギアの身体から力が抜けていき、微かに腰が震えてしまう。
舌で蹂躙され息も絶え絶えになったスタルギアは、手を伸ばしてジンの浴衣を掴んだ。
飲み下しきれない唾液がスタルギアの顎を伝っていき、金色の瞳が本人が意図しなくとも強請るようにジンを見つめていた。
絡み合う吐息の中、向きを変えつつ長い口づけはまだ続く。
ジンの舌が少しでも引いていこうとすると、スタルギアはそれを追いかけて引きとめようとする。
宥めるようにジンの指先がスタルギアの髪の毛を弄ぶと、やっと舌と舌が離れていくが、銀色の糸がまだ二人の間を引いて繋がっている。

「はっ……っ…」
「熱いな」

肌蹴た浴衣の中から晒されるスタルギアの肌にジンの指が触れ、そう呟く。


「俺の前でも、”いつものように”自ら慰め、乱れてみせろ」
「…!?」
「あんなに恋焦がれた瞳をしていたんだ。一人で想像して昂ったことがないわけがあるまい」

図星を指摘されてスタルギアは頭が真っ白になった。

「うつ伏せになれ」

逆らうことのできない美声で、耳から犯されて行く様に言葉を投げかけられる。
肩を震わせながらも、下半身側をジンへと向ける形で、スタルギアはうつ伏せた。
電気がついたままの状態だったが、ジンは暗い場所でも見通せる為、無駄になってしまうだろうと思い諦めていた。
この先は言われなくとも、先ほどの言葉の通り自分でジンを思い慰めている様を晒せばよいのはわかっているが
羞恥心がスタルギアの動きを鈍くする。
だが身体が昂っているのも確かだった。
そっと手を伸ばしてまずは帯を解いてさらに浴衣を乱していく。そうすることで太腿や臀部の辺りが更に曝け出された。
昂った雄を撫でてやって微かに漏れ出してしまっている蜜を手に絡め、太腿を伝い、臀部の窄まりへと指先を滑らせる。
いつもは、好きではなかったがジンの大きさを想像し玩具を挿れて腰を振って満たされてしまっていた。
そんな秘かな行いと、今目の前で見られていじっている様を考えるだけで、恥ずかしくてたまらなかったが、更に昂ったのも事実だった。
もちろん指は一本だけで足りるわけがなく、2本、3本と増やしていき物足りなさを紛らわすようにバラバラに動かして責め立てる。
出し入れを繰り返して、内壁が擦られ、すぐにいい箇所を刺激すると支える足から力が抜けそうになり、なんとか自分で体制を立て直した。

「…っぁ……は、…んん」

せっかく後ろにいるのなら瞳を直接見たい。と思ったがさすがに羞恥からそれを避けるように顔を伏せて目を閉じる。

「何故まだ物足りなさそうな様をしている?自分のいいところを刺激すればいいだけのことだ」

ジンが近づき、背中を撫で上げてスタルギアの耳元に囁いた。低音が滴り落ちることでぞくりと身震いをする。

「手伝いが必要か」
「ぅ、…っ」
「もう少し足を開け」
「っ…はい」

震えるスタルギアはそのまま言われたとおりに足を開いた。
後孔に挿れられていた手を抜かれて、ジンの指先で入るかはいらないかの窄まりをいじられるとそれだけで奥が疼いた。

「こう、だろう」

ジンの指は、先ほどのスタルギアの指とは違って、浅いところにゆっくりと入り内壁を撫でるだけで、昂らされていく。
すぐに指を増やされて、押し広げるように動かされた後、前後へと小刻みに突かれる。
指を動かしながら、先ほどよりも近い距離でジンの視線が後孔に注がれている。


「ぁあっ……や、…まって……」

布団を握り締めながら、そのまま上がってくる絶頂感に堪えるように唇を噛み締めた。
引いていったかと思えば奥まで貫く指先を締め付けながら身震いした。

「達け」

艶っぽい低音に限界と諦観を感じ、欲望を解き放ってしまうと熱くこみ上げた後白い粘液を零す雄と共に
奥も更に疼きが湧き、さらに強請るようにジンの指を締め付けた。
暫くしてから指を抜くと、身体を弛緩させたスタルギアがジンを見つめる。
膝立ちになったジンが浴衣を少し着崩し、既にいきり立った雄を取り出した。
がこのまま貪欲に求めるスタルギアを満足させるわけにはいかない。

「少しは我慢しろ」

そうジンが囁くと同時に、紐が出される。
雄へと触れられる気配にスタルギアがびくっと跳ねたが、そのまま気にもせずに紐をそこへくくりつけていく。

「…何、を」

緩まぬように縛り付けて、案の定息苦しそうに溶けた瞳で後ろを振り返るスタルギアを見つめると、ジンはそのまま奥底まで腰を進めた

「!??ぁあっあ゛あ゛……はっ…」

布団を握り締める手の力が強まり、見開いた瞳からは生理的な涙が溢れる。
後ろを振り返ろうとするが身体を支え、呼吸に努めることで精一杯になってしまった。
灼熱の杭に奥まで穿たれ、尾てい骨から背中を駆け巡る快楽に脳髄が痺れる。
余韻に浸る暇もなく、肉と肉がぶつかる音を聞きながら穿たれる。
駆け巡った快楽は最終的に腰に溜まり、スタルギアを苛む。
揺さぶられ涙ぐむ視界の中で握り締める自分の手を見つめながら、悲鳴のような鳴き声を我慢できずに漏らし続ける。

「は、あっ……んっ!…ぁぁあ…」

肩に吐息を感じ、次にそこを強く吸い付かれると、赤い印が残った。
統合部からはいやらしい水音がなり、ぽたたっと零れ落ちた粘液が布団を汚す。
快楽に痺れ射精できない苦痛に苛まれながらも、腰は突き上げられる動きに合わせて動かされ、強請ってしまう

「…固、い…あ……もっと…」

奥まで突き入れられて、腰と恥毛が密着されたまま後ろでジンの動きがとまる。
そして、スタルギアの項あたりまで顔を近づけ、ひと舐めしてから箍が切れたように噛み付かれ
痛みと再び動かされた腰から与えられた快楽に苛まれた。

「つぁっ…ふ…!」

首筋から零れ落ちた血がスタルギアの胸元を伝って布団に落ちる。こんなに汚していいのだろうかと一瞬思いながらも赤い血を見つめた。
突き刺さる歯の痛みと、舌で嬲られ吸われる感触、腰がぶつかり熱い肌が音を立てて
固く張り巡らされた血管の浮く熱い雄は、スタルギアのいい箇所を何度も抉った。

「もっ……も、駄目」

高まりながらも堰き止められて射精のままならないスタルギアの雄は限界を向かえていた。
が、一度大きく身体が震え頭が真っ白になった途端、身体が生まれ変わるように今まで感じたことのない衝撃を感受した。
足の先まで震え、必死に手を握り締め耐えるように背筋を駆け巡る快楽を感じ
腰は灼熱に焼かれたように感じ、内側にじんと甘く刺激的な感覚が広がった。
その拍子に、内壁が蠢いてくわえ込んだ雄が刺激されることになり、最奥でジンも精を放った。
熱い粘液が送り込まれることで、スタルギアの体内は更に熱くなる。
すっかり前かがみに蹲ったスタルギアは、何が起こったか把握できないまま、気だるく身体の端まで散る快楽を感じ、未だ少し震えている。
過呼吸寸前の呼吸をなんとか落ち着かせながら、達した直後の敏感な身体に残る余韻と、射精はできていない為未だに残る快楽が渦巻いていた。
小さく雄で内側を突かれるだけで、びくっとスタルギアの身体は跳ねた。

「ここだけで達ったか…」

すっかり静かになってしまったスタルギアの身体を抱き抱え、繋がったまま仰向けになるように押し倒した。
虚ろな瞳はジンを捕えて潤んでおり、飲み込みきれない唾液が口元から垂れて、頬が赤く染まる。
やっと呼吸が整ってきたところで、昂った雄を縛り付けていた紐を緩めて解いてやる。

「……は…」

そして、雄が引き抜かれ、そのまま放置されるのかと思いきや、浴衣を整え横抱きにされた。
どこに行くのだろうかと疑問に思いスタルギアはジンの赤い瞳を覗き込む。

――――――――――――――――――――――――――――――――

連れて行かれたのは風呂場、先ほど出された粘液が垂れて確かに着替えたり
布団を変えたりしたとしても、このままでは眠れないなとぼんやりと考える。
手を煩わせていることを恥じるべきか、その前にジンを求めてやまなかった自分を恥じるべきかスタルギアの中で逡巡された。
シャワーのついている近くには、鏡が設置されており、その前でジンの上に乗せられる形で股を開かされてスタルギアは困惑した

「…ま、待って」
「駄目だ」
「……っ」

指先が伸びてそこで搔き出されていき、シャワーで腿などに伝うものを流していくかと思いきや、いきなりシャワーをとる手を目にして更に困惑する。
が、なんとか耐えようとした。
結果シャワーの強い水滴が後孔に刺激を与え、身体が跳ねて残った快楽の炎を煽る。

「…んぁあっ!……っあ」
「暴れるなよ」

太腿をがっちりと固定する頑丈な腕に爪を立てながらすがる他はなく、できるだけ声を抑えつつも吐息と喘ぎが漏れ出してしまう。
事務的な動きに感じていることに羞恥を感じたが、内側を搔き出す為に挿れられては出されていく指と、直接当てられたシャワーに耐え切れなかった。
先ほどよりも弱い刺激だからと言って、見逃しかけた雄からの射精を目の辺りにして、身体を震わせながら鏡越しにジンの表情を伺ってしまう。

「すっきりしたか」

そう笑んで艶の伴った低音がスタルギアの耳元で囁く。スタルギアの身体の変化を把握した上で、わざとこの言葉を選んだ。
びくんっと肩が震えて俯きながら瞳を潤ませる。
細かいスタルギアの表情の変わり具合はさっきからずっと後ろで伺いながら、ジンは処理を行っていた。
身体を震わせて、目を反らしたいが見ていたい気持ちもあるのか、執拗に指先に注がれる視線。
そして時折こちらの表情を鏡越しに覗く仕草。
大体の処理を終えたことを確認し、シャワーを止めて、スタルギアを抱え込む。
意識を手放したい反面まだ意識を保っていたい葛藤に苛まれているスタルギアの瞳が映る。

「大人しく眠れ」
「……っ」

内心で、どこかの誰かと似ていることを感じながらも
スタルギアは自分と同じ出身であると明確に把握しているジンはスタルギアを個人として強く認識して受け容れる。
そしてスタルギアは、内側で未だに燃え残る快楽の火種を感じつつ、そしてどこか強制的にジンと離される寂しさを感じながらゆっくりと瞼を閉じた。
少しだけ訂正しようと思ったことがある。
こんなことを考えてはいけないが、ジンの血なら、肉なら少しだけ口にしてみたいと思ってしまったこと。
一瞬だけと自分を戒めて、その一瞬に浸った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...