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新たなキャラクター

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「クラウドさん」

俺と彼が話している事に気付いたフリードとジョーカーがやってくる。
ロキ・クラウド、それが彼の名前だ。
フリードは騎士歴と年齢が上だから部下でも敬語になってしまうらしくロキに注意されている。

ロキはニコニコと笑い俺達に手を振り去っていった。
腰まで長く一つにまとめている茶髪が揺れていた。

フリードとジョーカーに連れられ俺も歩き出した。

「…何を話していたんだ?」

「俺の事分からないみたいだったから軽い自己紹介だよ」

「そうか」

ジョーカーもロキについて気になるらしく去った後の方向を眺めていた。
ロキは誰にでもフレンドリーに見えて誰にも心を許していないんだ。
ゲームでもロキの子供化の話はヒロインにしかしていないし他の攻略キャラクターにも知られたのはロキが話したんじゃなくて聖騎士覚醒をしたら大人に戻るからその時に軽く説明しただけだ。

だからフリードもジョーカーもロキについて謎だらけなのだろう。

しかし真っ昼間の寄宿舎だけどこんなに人がいっぱいいるんだな、皆いっせいに休みなわけないよな。
ゲームではエキストラまで風景に描かれていないから分からなかった。
フリードとジョーカーは多忙の中俺のために休みを取ってくれた事は知ってるんだけどね。

「なんか人がいっぱいいるね」

「ん?あぁ、もうすぐ就任式だからな」

「えっ?でも就任式はこの前…」

フリードとジョーカーが騎士団長と副騎士団長になった時に就任式をしたと思うけどと首を傾げる。
見てないから実際は分からないけどまさかまだやってなかったのか?

フリードは首を横に振って教えてくれた。

どうやら魔法学園の入学式の日に聖騎士就任式があるらしい。
聖騎士就任式といっても本物の聖騎士ではない…偽物だけど国に認められた聖騎士だ。

聖騎士がいない国は弱い国だと思われ他国に攻め込まれる。
だからいろんな国は自分達の国だけの聖騎士を優秀な騎士から選ばれる。
聖騎士がいると思わせる事で国民達は安心して、他国はどの国に本物の聖騎士がいるか分からなくなり迂闊に手を出せなくなる。
そうやって長年国は平和に過ごしていた。

そうか、前の聖騎士はもう引退して新しい聖騎士になるのか。
俺は学園があるけど、終わってすぐに駆けつければ就任パレードには間に合うかもしれない。
ゲームのイベントでもあったパレードを生で見てみたかった。

「俺達は新しい聖騎士の護衛をするんだよ」

「イリヤは見に来るのか?」

「うん!」

二人が国の聖騎士にならないのは知っている。
普通は強い騎士がなるんだけど、騎士団長とか副騎士団長という役職持ちは聖騎士になれないとゲームでフリードが話していた。
本物なのになと苦笑いする、フリードも俺に気付き困った顔をしていた。

そしてとある部屋の前に到着した。
いくつも部屋がある廊下の一番奥の部屋、ここで今日から俺が住む場所。

フリードは鍵を開けて中に入る。

部屋はとても広く高級ホテルのスイートルームってこんな感じなのかなと周りを見渡す。
屋敷のロビーにもシャンデリアがあったが部屋の中にもあるなんて豪華だ。
こんなところに俺が住んでいいのか恐縮してしまう。

「俺とジョーカーの世話係だからな、三人部屋だ」

「いろいろ見てもいい?」

フリードとジョーカーは頷き、荷物を床に置いて歩く。
部屋に三つ扉があった。

一つを開けるとそこにあったのは難しそうな本がぎっしり入った本棚と社長が座りそうな椅子と机、武器と書類がいっぱいある。
仕事部屋かな、書類の山を崩さないようにそっと部屋を出た。

次は入り口のドアと近いドアを開けた。

洗面所だった、ここで服を脱いで風呂に入るのか。
風呂のドアとトイレのドアがある。

「イリヤ」

「うわっ!」

いきなり後ろから抱きしめられて口から心臓が飛び出そうになるほど驚いた。
ジョーカーが俺の顔色を伺ってくる。
恋人なら普通のスキンシップなのかもしれないけど恋愛初心者には至近距離の美形の顔は堪えられそうにない。

顔を赤くしてジョーカーから目を逸らすと「イリヤ」と今度は悲しげな声で言われて俺はジョーカーの方を振り返った。
すると鼻がくっつくほど至近距離でジョーカーは俺に顔を近付けていて驚いて変な声を出した。
そしてその声に気付いたフリードが別の部屋から出てきた。

「どうした!?イリヤ!」

「…何でもない」

俺の代わりにジョーカーがフリードに伝えたがフリードは信じていない顔でジョーカーを見ていた。
俺はジョーカーに何もされていないのに腰が砕けてしまい、床に座り込んでいた。

なんだろう、今日のジョーカーいつもよりフェロモンが強く感じるんだけど…気のせいなのかな…直視出来ないくらいだけど…

ジョーカーに抱っこで立たされてちょっと恥ずかしかった。
最後の部屋は皆で行く事になった。
さっきフリードが出てきた場所だ。
残りといったら一つしかないけど…

そして部屋に入り驚いた。

そこの部屋の真ん中には大きなキングサイズのベッドが一つだけあった。

「…え?一つ?」

「一緒に寝るの嫌なのか?」

今度はフリードが落ち込んだ声を出したから首を横に振った。
嫌なわけない!…ないけど、俺…寝相悪くないだろうかと気になってしまう。
いつも一人で寝てるから自分の寝相が分からない、ベッドからは落ちた事はないけど…
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